進撃の巨人〜ただ1人の為の力〜   作:ねみネム生活

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夏が長いなぁ……暑いのはクーラで何とかなるけど、田舎だから虫がきつい。
そう考えると、冬が一番いいのかな?虫出ないし……

そう言えば、1文毎に行を変えてますけど、変え無い方が読みやすいとかあるのかなぁ。
読みにくいとかあったら、報告いただけると幸いです。



9話 正解を導く力

 

「……あと少し……っ……」

 

 順調に奇行種を本部へと誘導していたトワは、本部から500メートル程離れた場所で足を止める。

 

「トワ分隊長……?」

「……流石に、数が多い」

 

 トワの後ろをついてきていたアルミン達か追いついて来る。

 足を止めたトワを不思議に思いながらトワの見る本部へと視線を向けると、大型だけでも20体以上。

 中型、小型を含めると50は超えるだろう数の巨人が群がっており、更に周囲から続々と巨人が近づいて来るのが見える。

 

「……このままだと僕たちがガスを補給する前に本部が崩れる。そうなってしまえば、ガスの補給が出来ない僕たちは終わりだ」

「だったら、早く本部に入って補給しないと!」

「どうやってこの数の中、本部まで辿り着くんだよ」

「それは……」

 

 アルミン達は、巨人によって少しづつ崩れていく本部を見て焦る。

 だが、まるで波の様な巨人の群れを掻い潜る術が無い。

 

「……っ!?アルミン!」

「え?なっ!?」

 

 その時、奇行種が叫び声を上げて群がる巨人へと走り出す。

 

「……!付いてきて……」

「トワ分隊長!?くっ……僕たちも行こう!」

 

 その直後にトワは一直線に本部へと飛び出す。

 アルミン達はトワの行動に正気を疑うも、本部へと辿り着く為には多数の巨人を掻い潜って行くしか無いと、トワの後を追う。

 

 一列に並ぶ家屋を挟んで、左の道を奇行種が、右の道をトワ達が進む。

 

「トワ分隊長!巨人が向かってきます!」

 

 本部に近づくにつれ、トワ達に気づき向かって来る巨人が増える。

 大半は奇行種に向かって行くが、少なくない数の巨人がトワ達に迫る。

 

「……大丈夫……速度、落とさないで……!」

 

 前方から向かって来る巨人の群れに、速度を落としそうになるアルミン達。

 トワはそのままの速度を維持して付いてくる様に告げ、1人、速度を上げ向かってくる巨人を討伐していく。

  

「トワ分隊長!どうするつもり……なっ!?」

 

 本部に群がる巨人と先頭を進むトワが直ぐ近くまで近づいた時、トワの目の前を1体の巨人が飛んで行く。

 

「巨人が……!」

「……今……!」

 

 その巨人は複数の巨人を巻き込みながら転がっていき、それによってトワ達の視線の先には数体の巨人を残すだけになる。

 トワはその瞬間を逃さず、ガスを噴射させて巨人に迫り、次々と巨人を討伐していく。

 

「……後……2体……!」

 

 残った2体は中に気を取られ、無防備にうなじを晒している。

 トワは速度を上げ、2体の巨人を討伐すると、巨人が開けた穴の縁に降り立つ。

 

「は……?」

 

 トワの目の前には突然の事に驚いた表情で固まる訓練兵が1人。

 

「…………」 

「……大丈夫……?」

 

 トワはブレードを鞘にしまうと、固まったままの訓練兵に優しく声をかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「普通に考えれば分かる……こんなでけぇやつに……勝てるわけがねぇことくらい」

 

 ジャンが伸ばされる巨人の手を前に諦めかけたその時。 

 

「は……?」

 

 いきなり2体の巨人が倒れ、巨人に開けられた穴の縁に1人の少女が降り立つ。

 

「…………」

「……大丈夫……?」

「……っ!?ト、トワ分隊長!?だ、大丈夫です!」

 

 ほんの僅かの間、トワを見惚れていたジャンはトワに話しかけられ正気に戻る。

 

「ミカサ……!?お、お前……生きてるじゃねぇか!」

 

 その時、トワの後に続いていたミカサ達が窓から飛び込んでくる。

 死んだと思っていたミカサが生きていた事に、ジャンは驚きつつも嬉しそうに叫ぶ。

 

「ハァハァ……死ぬかと思った」

「ガスもギリギリだよ……」

 

 コニーは息も絶え絶えの様子で座り込む。

 他のメンバーもコニー同様に疲労困憊の様子。

 

「でも……やったよ、アルミン!作戦は成功だよ!」

 

 それでも作戦の通りに奇行種をここまで連れてくる事に成功し、自分達も本部に辿り着く事が出来た事に、ミーナはアルミンの手を取って喜ぶ。

 

「作戦って何のこ……」

「アァァァァァ!!」

「っ!?……ありゃあ……何だ……?巨人が巨人と戦ってる……だと……?」

 

 巨人の叫び声にジャンが外を見ると、巨人が巨人と戦っている光景。

 

「……アルミン……あの奇行種だけだと……保たない……私も一緒に時間を稼ぐけど……なるべく急いで……」

 

 戸惑うジャン達を他所に、トワは難しい顔をして状況を確認する。

 巨人が動く度に幾つもの罅が入る壁に、数の暴力に押され気味の奇行種。

 このままだと本部は保たないと判断したトワは、アルミン達がガスを補給する時間を稼ぐため、巨人を引きつけようと窓へ向かう。 

 

「トワ!?待って!無茶だよ!?」

「……あの奇行種だけだと……守りきれないから……」

 

 トワがクリスタの横を通り過ぎようとした時、トワが何をしようとしているのかを察したクリスタに手を掴まれて引き止められる。

 

「でも!でも……!」

「……大丈夫……ね?」

「っ……」

 

 トワは徐々に瞳に涙が溜まっていくクリスタの頭に手を置いて微笑みかける。

 

「……こっちは……任せた……」

「…………うん」

 

 クリスタがトワの手を離すと、トワは最後に優しく頭を撫でて外へ飛び出していく。

 

「……っ……」  

 

 トワを見送ったクリスタは和がれる涙を手の甲で拭き取ってから振り返る。

 

「アルミン、急ごう」

「クリスタ……良かったの?」

「良くないよ……トワが無茶するのも、それで傷つくのも嫌だ。でも、トワは誰かの為に傷つく事を厭わない。今だってそう……私達の為に無茶してる。そんなトワに私が出来る事は、早くここを脱出して、トワが無茶しなくて済むようにする事だけだから……」

「そっか……クリスタは強いね」

「……え?」

「自分に出来る事をちゃんと分かってて、そのために行動できる……僕なんてユミルに怒られるまで何も出来なかったから」

 

 アルミンはユミルに怒られた時の事を思い出す。

 エレンを巨人に食べられたショックで、動くことも出来ず、ミーナにまで危険に晒してしまった。 

 

「作戦ももう考えてあるんだ。でも、それが正しいのか分からない……自分に自身が無いんだ。兵士を目指したのもエレンとミカサの後を追ってるだけ。昔から気何も変わってない……何も出来ない……」

「それは違う」

「ミカサ……?」

 

 自分の言葉を否定する声に、アルミンが顔を上げればミカサが立っていた。

 その顔は少し怒ったような表情を浮かべている。

 

「何も出来ないなんて事は無い。私もエレンも、以前はその力に救われた」

「……え?そんなこと……」

「自覚が無いだけ……後で話そう。今は時間がない」

 

 アルミンは伸ばされるミカサの手を掴み立ち上がる。

 

「大丈夫……自信を持って。アルミンは正解を導く力がある」

「……うん」 

 

 アルミンは一度深く息を吐くと、ジャン達に向き直る。

 

「皆、聞いてくれ!あの巨人は巨人を殺しまくる奇行種だ!しかも僕たちには興味が無い!」

 

 アルミンは状況が理解出来ず、立ち尽くしたままのジャン達に、奇行種を指差しながら告げる。

 

「あの巨人は並の巨人より強い!上手く利用すればここを脱出出来る!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……30分……」

 

 トワはアルミン達がガスを補給して本部から脱出するのに大体30分程度かかると予測する。

 その間本部を守りつつ、クリスタ達が脱出しやすい様に巨人の数を減らす必要がある。

 

「ふぅ……」

 

 壁を登ろうとする大型の巨人を討伐したトワは一度本部の上に登り、巨人を見下ろす。

 

「……10……20……30……」

 

 小型から大型を含め、30を越える数の巨人が見える。

 

 更に辺りを見渡し、トワは転がる兵士を探す。

 その中でも比較的血が乾いていない兵士は、本部に突撃した者である可能性が高く、ガスは殆ど残っていないだろう。

 そのため、トワは血が乾いている兵士の姿を探す。

 その兵士は巨人との攻防が始まって早くに負けてしまった筈であり、ガスが残っている可能性が高い。 

 

「ガスは……5つ……」

 

 トワは、3つの兵士に当たりを付ける。

 その内の1人は補給兵だったのか近くには2人分のガスボンベが転がっている。

  

「……私の役目は……本部を崩させないこと……中に巨人を入れないこと……あの奇行種を死なせないこと……」

 

 トワは自分がしなくてはいけない事を確認する。

 本部を崩させないことはもちろん、巨人を中に侵入させてしまえばクリスタ達に危険が迫り、奇行種を死なせてしまえば1人で大量の巨人から守りきらなければいけない事になり、それは不可能だと言える。

 

「……難しいけど……私がやらなくちゃ……それに……」

 

 トワの体が小刻みに震える。

 トワでもこの数の巨人に恐怖を覚えたのか?

 それが違うことはトワの纏う雰囲気で分かる。 

 

「私……怒ってるんだ……」

 

 トワは表情にこそ出さないが、目を覚ましてからずっと内心では腸が煮えくり返りそうだった。

 クリスタを傷つけた巨人に、何より間に合わなかった自分自身に。

 周りに人が居れば恐怖の余り逃げ出しそうな程の殺気を纏いトワはアンカーを発射する。

 

「八つ当たりに……付き合って……」

 

 トワは集まってきた巨人の群れに向かって飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

「……これは……ひどいな……」

「こんなにも巨人が侵入してるなんて……」

 

 トロスト区に辿り着き、壁に登ったリヴァイ達は壁内を見下ろす。

 その悲惨な光景にエルドとペトラは顔をしかめる。

 

「リヴァイ兵長!あれを!」

 

 突然、エムブラが声をあげる。

 リヴァイ達がエムブラの指差す方へ視線を向けると、巨人が群がる本部が見える。

 

「巨人があんなに……!」

「あそこに人が取り残されてるのか!?」

「早く助けに行かないと!」

 

 ペトロ達が慌てる中、本部の壁を登ろうとする巨人が次々と討伐されて落ちていくのが見える。

 

「……どう思う?」

「恐らく考えている事は同じかと」

 

 それを見たリヴァイとエムブラは、そこにトワが居ると考えた。

 

「お前ら、覚悟はいいな?」

 

 リヴァイはエムブラ達が頷くのを確認すると壁を飛び降り、立体機動に移った。

 




アウラ「原作通りだと、本部は崩れる心配は無かったんだけど、トワが多くの訓練兵を助けた結果、それに比例して多くの巨人が引き寄せられる事になってしまったって訳だね。今回はそこまで未来を変えた訳では無いし、この程度で済んだのかな。リヴァイ達が帰ってきてるけど、どの道帰ってくる未来だったしね」

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