異世界のブサイク男に転生してしまったショタコン腐女子は意中のショタと結ばれるためなら世界だって相手にできる! ~そうだ買国しよう~   作:ゼルダ・エルリッチ

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 それから、私(ゲラルト)とロワちゃん、ウェイン王子の三人は、お城の中を「散歩」することになった。やや後ろを、ニニムちゃんが付いて来る。

 

 

 ニニムちゃんはウェイン王子の補佐役ってことだし、当然だろうけど。

 

 

 なら、どこかにナナキきゅんは……? う~ん、居ないか。

 

 

 ナナキきゅんはフラーニャちゃんの護衛だしね。残念。

 

 

 

 しばらく歩くと、ウェイン王子が重厚な扉の前で立ち止まる。

 

 

「ここなら声も漏れませんし、内密にお話ができますよ」

 

 

 なるほど、秘密の会議室ってわけだね。

 

 

 いよいよアニメのワンシーンみたいになってきたな。

 

 

 実際、アニメのワンシーンってことなんだけど。

 

 

 

 扉が閉まる。

 

 

 すると早速、ウェイン王子が大袈裟に手を広げて言ってきた。

 

 

「さて、ゲラルト卿。ロウェルミナ殿下のお話では、貴殿は重要な情報を握っておられるとか。これは、我がナトラとアントガダル領、ひいては帝国との関係性において、極めて重要なことと存じます。まずは、貴殿がどうされたいのか? そのお立場についてお伺いしたい」

 

 

 う~ん、さすがは天才王子。色々考えての発言なんだろうね。

 

 

 それはともかく、私がどうしたいのか? ときた。

 

 

 どうしたいか? と一言で言えば、ナナキきゅんと結婚したいってことなんだけど、そんなこといきなり言えるわけないしね。

 

 

 まあ、折角のチャンスだ。ここは少し、強気で攻めてやろうか。

 

 

「私の望みは、ただ一つです。それは、我がアントガダル領と帝国、そしてナトラ王国の三者による、強固な同盟です。そのために、我がアントガダルは帝国に反旗を翻そうとしている諸侯たちの情報を、帝国に捧げたく思います。そしてそれに伴って、ナトラとのつながりを深めたいと思っています」

 

 

『ナナキきゅんのために』

 

 心の中でそう付け足した。

 

 

「なるほど。ゲラルト卿のお心は理解致しました。帝国皇女として、深く感謝致します」

 

 

 ロワちゃんが、真剣な顔立ちのまま頭を下げる。

 

 

 さっきまでは笑ってごまかしてたけど、今回はロワちゃんも本気モードだ。

 

 

「アントガダルが帝国に力添えしたいという点はよく分かりました。ですが……」

 

 

 ロワちゃんがそう言って、ウェイン王子の方を見る。

 

 

「ナトラ王国との同盟をそれほどに望まれる理由は、なんなのでしょう? アントガダルは帝国領の一つです。しかし、ナトラとはそこまでのつながりを持っているわけではありません。今日私がナトラへ赴いたのも、私が個人的にウェイン王子と面識を持っているからというだけのことに過ぎません。ぜひ、その理由をお聞かせ下さい」

 

 

 理由……、理由か。

 

 

 正直な所、ナナキきゅんがナトラにいるからってことなんだけど。

 

 

 でも……、

 

 

 それだけじゃないってことに気付いた。

 

 

 アニメ見てて分かったことだけど、ナトラには、凄くいいところがあったんだ。

 

 

 それは、ナナキきゅん、そしてニニムちゃんにも関係がある。

 

 

 つまりは、「フラム人」の扱いについてのことだ。

 

 

 ナトラでは伝統的に、フラム人を王室の重要な役職として迎えているらしい。

 

 

 その理由は、フラム人が素晴らしい才覚を持ち合わせているから。

 

 

 奴隷的に扱っている国があるという理由から差別的な目を向けられることの多い彼らフラム人に対して、ナトラはその本来の才を認め、しごく正当な扱いをもって受け入れている。

 

 

 当たり前のようなことだけど、これはやっぱり難しいことだと思う。

 

 

 人ってものは、様々な悪しきしがらみに、まみれているからね。

 

 

「それはナトラ王国が、フラム人の皆さんに対して極めて誠実であるからです」

 

 

 真面目くさって応える。

 

 

 これについては、ナナキきゅんを別にしても、私の嘘偽らざる本心だしね。

 

 

「私は、フラム人の皆さんに対する、西側諸国の姿勢が悲しくてなりません。人は皆、国や人種の垣根を越えて、平等であるべきです。才ある者は、正当に扱われるべきです。ナトラでは、それが正しく行われています。全ての国は、ナトラのその姿勢を見習うべきです。ですから私は、ナトラに敬意を表し、ナトラ王国との強い同盟を望んでいるのです。そして私は、フラム人の皆さんに対する諸国の歪んだ意識を正すために、尽力したいとも考えています」

 

 

 うひゃー、なんかいいこと言っちゃった感じだよ。

 

 

 ゲラルトの口から出る言葉じゃないね、こりゃ。

 

 

 そのままニニムちゃんの方を見て、深々と頭を下げる。

 

 

 ニニムちゃんの信頼をも得ることができれば、私(ゲラルト)のナナキきゅんに対する株も上がるってもんだしね。ふへへ。

 

 

 凄くいいこと言った割には、結局下心丸出しかよ! 

 

 

 まあ、中身が私だから仕方ねえか……。

 

 

 

 さて、

 

 

 皆さんの反応は?

 

 

 

 まあ予想できたことだけど、皆、ポカーンとしてる。

 

 

 まさかこんな俗物丸出しのゲラルトオヤジが、人の心の本質にまで言及してくるとは思いもよらなかっただろうからね。

 

 

「ゲラルト卿」

 

 

 口を開いたのは、ウェイン王子だった。

 

 

「あなたの高きお志、深く感銘致しました。ナトラの民に代わりまして、厚く御礼申し上げます」

 

 

 そう言って頭を下げる。

 

 

 再び頭を上げると、その顔は真面目くさっていた。

 

 

 どうやら、本心みたいだ。

 

 

 よし! ウェイン王子の心を動かせたみたいだね。

 

 

 ウェイン王子って、ニニムちゃん大好きみたいだし。

 

 

 なにしろ、自分の「心臓」って言っちゃうくらいだからね。

 

 

 

 

 じゃあここは、どさくさに紛れてニニムちゃんにも接触しちまおう。

 

 

「ウェイン王子、私は、あなたがうらやましい。このような美しく優秀なお方がお側に仕えてくれているなんて。私も、あやかりたいものです」

 

 

 そう言って笑う。できるだけ、下品にならないように気を付けて。

 

 

「恐縮です、ゲラルト卿。彼女は実に優秀で、よくやってくれますよ」

 

 

 ウェイン王子が真面目くさって言う。

 

 

 でも、私はアニメ見てこの二人の「素」の部分をよく知ってるから、なんだか笑えてしまった。

 

 

「聞く所によれば、王子の妹君であられるフラーニャ王女の元にも、フラム人の方が仕えてらっしゃるとか。さぞかし、優秀で美しい方であられるのでしょうね」

 

 

 よっしゃー!

 

 

 どさくさに紛れてナナキきゅんに接近作戦、発動!

 

 

「ええ、妹の側近として仕えてもらっていますが、彼も実に優秀な人材です」

 

 

 そうだろそうだろ! 

 

 

 知ってるよ!

 

 

 ……心の声は置いといて。

 

 

「できれば一度、ゆっくりお目にかかりたいものですね。色々と、お話を聞いてみたいものです」

 

 

 第二作戦、実行!

 

 

 これでナナキきゅんに接近できれば、言うこと無しだけど……、 

 

 

「いや、まあ、それは追々ということで」

 

 

 ウェイン王子に話を流されてしまった。

 

 

 う~ん、ちょっと無理があったか。

 

 

 今は帝国とナトラとの同盟関係の話が先だ。無理にナナキきゅんのことに話を持っていくような場面じゃなかったな。

 

 

 

 

 その後は、更に真面目くさった話になる。

 

 

 まずは、私(ゲラルト)が本当に帝国への反乱分子の情報を提供できるのか? ということだけど、それについては、ウェイン王子がお得意の策略でなんとかしてくれるようだった。 

 

 

 つまりは、グリナッヘの持つ蜂起計画の証拠書類を抑えることができれば、あとはそれを元に、グリナッヘを懐柔することができるだろうということだ。

 

 

 私(ゲラルト)にはその前段階として、グリナッヘを説得して自ら帝国に傾くようにしてほしいとのことだったけど、まあ、グリナッヘって結構親バカだったし、こんなバカ息子でも真剣に話をして頼み込んだら、なんとかしてくれるだろうと思う。

 

 

 なんとかいかなくても、その時はウェイン王子の手先の者が、証拠書類を抑えて力づくで事を進めてくれるということだった(要するに、書類さえ抑えられれば後はどうにでもできるというわけね)。

 

 

 

 それに伴って、同時にもう一つの問題が。

 

 

 それは、アントガダル家に潜りこんでいる、西側の工作員達についてだ。

 

 

 あの、腕を切り落とされちゃったオカッパ君と、その一味のことね。

 

 

(オカッパ君については、アニメ見た時、「この子、結構カワイイし、悪役じゃなかったら推せたんだけどなー」なんて思ってたんだけど、それは置いといて。)

 

 

 その工作員達について、これまたアニメでのちょっとだけの情報しか持ち合わせていない私だけど、今アントガダル家は、結構というか、かなりヤバい状況にある。

 

 

 グリナッヘが帝国に反旗を翻そうと画策したのも、元はと言えば、この工作員たちに上手く乗せられたからに過ぎない。

 

 

 そして用が済めば、彼らは口封じのためにグリナッヘを暗殺して、蜂起計画の証拠書類を隠滅してしまうつもりでいる。

 

 

 彼らにとっては、帝国を引っ掻き回して弱体化させることができればそれで良しというわけだ。

 

 

 つまりグリナッヘは、ただの捨て駒というわけ。

 

 

 この情報のことをウェイン王子に伝えたところ、ウェイン王子はかなり驚いていた。

 

 

 ただのバカ息子のゲラルトが、潜入中の工作員に気づいていたというのがびっくりしたらしい。

 

 

 いや、ホントはゲラルトは、全く気付かないで女の尻ばっかり追い回していたんだけどね……。

 

 

 

 

 さて、この問題は非常に重要。なにしろ、それこそ命に関わる問題だし。

 

 

 いざとなったら、連中はグリナッヘだけでなく、息子のゲラルトもためらわず手にかけるだろう。

 

 

 だけどさすがはウェイン王子で、この工作員達のことは王子もすでに感づいていたらしかった。アニメでも、色々そう言ってたしね。どこで調べたんだか(それとも、はったり?)。

 

 

 なので私としては、ここはウェイン王子の策に全部委ねたいと思う。

 

 

 私が色々考えた所で、天才王子の真似事はやっぱり無理だし。

 

 

 

 

 そんなこんなで、話はまとまった。

 

 

 やれやれ。取り敢えずは、難しい外交の話は乗り切ったって感じだね。

 

 

 こんな頭のいい人達とこんな小難しい話なんて、元来私に務まるはずがないんだよ。

 

 

 でも、なんとかごまかせたみたいだ。

 

 

 

 結果から言うと、私はこのまま自国領に帰って、父であるグリナッヘに話を通して、なんとか彼を説得しなくてはならない。

 

 

 もちろん、工作員達に知られないように、内密にだ。

 

 

 それができたら、後は工作員達を捕縛し、帝国への反乱分子の諸侯を鎮圧するという手筈だった(まあ、言うのは簡単なんだけどね)。

 

 

 本来のアニメだと、死んだゲラルトに反乱の罪を全て被せて、結果として事態を収めたロワちゃんの株が急上昇、という展開なんだけど……、まあ、ウェイン王子のことだ。今回もそれに近い結果に収めてくれるんだろう。

 

 

 例えゲラルトが生きているバージョンの展開だとしても、それは変わらないと思う。

 

 

 なにしろ、天才王子なのだから。

 

 

 取り敢えず、ゲラルトがこの場でナトラによって暗殺される……なんていう展開にならなくてよかった。

 

 

 アニメ見た限り、そんなことさえ起こりそうな雰囲気だったからね。罪なすりつけるために。

 

 

 まあ、さすがにそこまで非道なことはやらないだろうけど、ウェイン王子のことだから何を考えつくか予想が付かないし。

 

 

 今頃そんなこと考えて、冷や汗かいちゃったよ……。

 

 

 

 

「ゲラルト卿、最後に一つ、お尋ねしますが」

 

 

 話がまとまった所で、ロワちゃんが尋ねてくる。

 

 

「さきほどの酒宴の席でのことですが、私とウェイン王子との計画について、卿は何かご存知といった様子でしたが……、それについて、まだ伺っておりません」

 

 

 あー、そうだった。

 

 

 まだ話は終わってなかったんだった。

 

 

 元々そっちの方面から私が話をもちかけたんだし。

 

 

 私としては、ゲラルトの身を売り出すためにウェイン王子やロワちゃんとの関わりを深めておきたいと思っただけだったんだけど……(あわよくばナトラを買国、なんて言ってもいたけど、それはこの際、置いといて)。

 

 

 ゲラルトが二人の計画を知ってたら、それはやっぱ怪しまれるよな。

 

 

 折角、良い関係になれそうなのに、今頃になって後悔する。

 

 

 う~ん、ここは一つ、私の正直な気持ちを伝えつつ、ごまかしておくしかないね。 

 

 

「それについては……、私の憶測で申し上げたまででして……」

 

 

 笑ってごまかそうとしたけど、冷や汗が凄い。

 

 

 やっぱちゃんと言わないとだめか。

 

 

「いえ、ごほん。では、私の考えを申し上げます。私は、今のままでは、帝国は分断の恐れさえあると思います。内部の覇権争いなど、馬鹿げています。ですから私は、覇権争いに暮れる兄君達よりも、賢明なるロウェルミナ殿下が帝位を継がれるのが一番良いと思っているのです。そしてそのためには、優秀なウェイン王子のお力添えが必要不可欠であるとも思います。我がアントガダルも是非その輪に加わりたく思い、恐れながら提言をさせていただきました。そのために少々演出めいた真似をしてしまいましたことは、深くお詫び申し上げます」

 

 

 ……こんなところで、ごまかせたかな? 

 

 

 まあ、この二人のことだから完全には納得してくれないだろうけど、少なくとも害意は無いってことは伝えられたと思う。

 

 

 ヘタすれば、二人を脅迫に来たと思われて、やっぱり暗殺される……ってことにもなりかねなかったろうしね!

 

 

 う~ん、ゲラルトの立場って一体……。

 

 

 

 

「なるほど、あなたは予想以上に頭の切れるお方のようです」

 

 

 しばらくたって、ウェイン王子がニッコリ笑う。

 

 

 え、と……、これって褒められてるのかな?

 

 

『見た目と違う』ってバカにされてるようにも取れるけど……。

 

 

「ゲラルト卿、貴殿は素晴らしい選択をなされた。帝国とナトラは、貴殿へ、そしてアントガダルへ、協力を惜しまないでしょう」

 

 

 おおー、やったね。

 

 

 取り敢えず、ウェイン王子から認めてもらうことができた。

 

 

 あとは、このまま上手く反乱を鎮圧させることができれば、私の覚えも更にめでたくなるってわけだ。

 

 

 本当に、ナトラとアントガダルを併合、っていう所までいっちゃうかもしれない。

 

 

 そこまでいかなくても、ナトラと強固な連帯が生まれることは確かだ。

 

 

 これは、何としても成功させなければ!

 

 

 

 

「では、私は早速自国へ戻り、父グリナッヘの説得に当たります。ウェイン王子におかれましては、どうぞ手筈の通りに」

 

 

「心得ました。事が上手く運びますよう、最善を尽くします」

 

 

 とにかく今は、時間が重要だった。

 

 

 アントガダルの屋敷に潜入している工作員達が、いつ行動を起こすとも限らない。

 

 

 ウェイン王子の考えでは、このまま一気呵成に事を片付けちゃおうとのこと。

 

 

 最優先すべきなのは、もちろん反乱の鎮圧。

 

 

 工作員の捕縛も重要だけど、こちらは万一逃したとしても、すでに彼等の計画は台無しになっているわけだから手遅れということにはならない。

 

 

 捕まえて身元を明かすとは思えないけど、まあ、放っておくよりはマシだ。

 

 

 

 

 というわけで、帰国の途につく。

 

 

 ふー、緊張した。

 

 

 馬車に乗り込み、思わず安堵の溜め息をついた。

 

 

 そもそも、こんな私が役者の一人になるのが間違いなんだよ。

 

 

 やっぱり私は、アニメは見ているだけの方がいいや。

 

 

 

 動き出した馬車を、ウェイン王子を始めとするナトラの人達が見送ってくれる。

 

 

 私も窓から顔を出して、それに応えようとしたら……、

 

 

 え……?

 

 

 列の後ろに、ウェイン王子の妹のフラーニャちゃんがいた。

 

 

 そして、その後ろの方に……、

 

 

 

 いたーーーー!!!

 

 

 ナナキきゅんだーーー!!!

 

 

 

 うおおーー!! かわいいいいいいい!!!!

 

 

 遠くだったけど、一瞬でその可愛さが伝わってくる!

 

 

 今すぐダッシュで走っていって、ハグりたい!!

 

 

 頬ずりしたい!

 

 

 

 ナナキきゅーん!! って、全力で叫びたい気分だったけど、かろうじて我慢。

 

 

 代わりに、ナナキきゅんの方に向けて大きく手を振った。

 

 

 ナナキきゅんの方は、なんだかポカーンとしてたけど。

 

 

 

 待っててね! ナナキきゅん!

 

 

 私は、立派になって必ず君を迎えに行くから!

 

 

 アイル・ビー・バック!(ちょっと古いか……)

 

 

 

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