ソードアート・オンライン/コンプリート・ストラテジー 作:空素
アルゴさんから届いたメッセージに目を通し、短い思案の後に、返事を返す。
アルゴさんからのメッセージには、内容の了承と、キリト君からも同じような内容のメッセージがあった事、自身の方でも探ってみると言った旨の内容が記入されていた。
アルゴさんならば、迂闊に情報を広めることは無く、迅速に情報を精査し、正しい情報を確認してから拡散してくれることだろう。
エギルさんやクラインさんも馴染みの人達に連絡していたが、彼らの知り合いであれば問題ないだろう。
75層以下の階層に関しては、私達に出来ることはこのくらいしかない。
それに、状況で言えば、こちらの方が厳しい。
「クラインさん、エギルさん、今からこの76層の異変ーーいいえ、事変について対策会議を行います」
最悪、孤立無援の状態で、この場にいるメンバーだけで攻略していかなければいけない可能性もあるのだから。
「今から?そりゃあ早い方が良いだろうがキリトは待たなくて良いのか?」
キリト君には、75層へ続く扉の確認に行ってもらっている。
キリト君の敏捷ステータスならばそろそろ戻って来る頃合いだろう。
「大丈夫。キリト君にはもう説明してあるから」
私はクラインさんとエギルさんに、他のプレイヤーを集めるように声を掛けて貰った。
プレイヤー達は転移門の前方に弧を描くように並び、その正面に私が立つ。
本日二度目の会議が始まる。
日は既に傾きかけ、空は朱く染まっていた。
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ーキリトSideー
アスナに75層へ続く扉の確認を頼まれ、俺は来た道を戻っていた。
敏捷力パラメータ全開で全速先進したいのは山々だが、行く時はモンスターが湧かなかったが、戻る時もそうとは限らない。
索敵スキルで周囲を探りながら、最低限の速度加速で草原を駆け抜けて行く。
時刻は16時頃、そろそろ空が赤くなる頃合いだ。
夜であれば、尚更、何が起こるか分からない。
慎重に、だが、迅速に目的を済ます。
そんなことを考えている内に、75層へ続く扉が見えてくる。
やはりその扉は閉まっている。
歩み寄り、手で押してみるが、一向に開く様子はない。
力が足りないのではなく、システム的に閉ざされている。
やはり、こちらからも戻る事は出来ないようだ。
この事を知らせる為に、メッセージを開く。
相手はアスナではなく、馴染みの情報屋で、《鼠》の異名で知られる頬の三本ひげのペイントがチャームポイントの女性プレイヤー、アルゴだ。
75層のボスが討伐された事、ヒースクリフの正体、76層の転移門の不良、そしてこの扉からも戻れないことを包み隠さずに、全てを書き込む。
そこで送ろうとして、踏み留まる。
追加で、とある質問も文章の末尾に加え、送信する。
メッセージを送り終え、俺は再び76層主街区への道を疾駆する。
アルゴへの文章、その末尾に付け加えた質問とは、アスナが言っていた、勢いのあるプレイヤーの情報についてだ。
今頃のこの時期になって注目されるようなプレイヤーがどんな人物なのか気になった。
また、そのプレイヤーが善意のあるプレイヤーとは限らない。
万が一の事態に備えると言う意味でも、そのプレイヤーの情報が欲しかった。
とは言っても、アルゴが扱うプレイヤー情報は、基本的には、プレイヤーネーム、容姿、性別、装備品、直近の目撃情報といったもので、そのプレイヤーの過去の変遷などのプライベートな情報は基本的には扱っていない。
その為、どう言った経緯で進んで来たのかなどを知る事は難しい。
尚、俺やアスナとは第1層からの付き合いなので、例外的に過去の情報を持っているが、それらは一応、シークレットとして扱われている。
走っている最中、アルゴからの返信が届く。
一旦、足を止め、周囲を警戒する。
索敵スキルで周囲のモンスターやプレイヤーの気配を探る。
一本道で、左右を高い岩壁に囲まれている。
モンスターは勿論、プレイヤーでも、例え高い《
何者の存在も確認出来ないことを確信すると、俺はアルゴからの返信内容を確認した。
「は?」
俺の口から気の抜けた声が漏れた。
アルゴからの返信の内容が驚くべきものだったからだ。
俺が驚いたのは、文章の末尾に追加したプレイヤーの情報への返答だった。
俺が想像していたものを超える内容に、唖然として硬直してしまった。
一先ず、この事は後で考えるとしよう。
俺はメッセージを閉じると、再び76層主街区へと駆け出した。
日は既に傾きかけ、空は朱く染まっていた。
キリトが目にしたものとは一体…!?