ソードアート・オンライン/コンプリート・ストラテジー   作:空素

18 / 18
大分久々の更新となってしまった事をここに懺悔します…。

楽しみに待ってくれた方(そんな人が果たして居るのか?)には本当に申し訳ないです…!

言い訳をするなら、慣れない引っ越しで慌ただしかったとか(事前に連絡しろ)、太陽をぶっ壊して王国を救ったりとか(ゲームしてるやんけ!)してました!すみません!

今後もボチボチとなるでしょうが、更新して行ければと思います…。


SideEpisodeー残す者、残される者ー

ー???Sideー

 

2024年11月7日午後5時前後。

ほぼ日も落ちかけ、夕闇に閉ざされつつある空を眺めながらふと我に返る。

 

窓側に向いていた体勢を正面に直し、目の前に横たわるベッドに目を向ける。

ベッドはシーツも掛け布団も枕に至るまで一切の柄の無い無地の純白のものだ。

 

それもそのはず、この場所は病院であり、目の前のベッドは医療用に使用されるものなのだから。

 

使用者は自分ではない。

ベッドには既に使用者ーー患者がいる。

点滴に繋がれており、仰向けの状態で寝かされている。

 

そして、その頭部には、ヘッドギアを思わせる電子機器が装着されていた。

 

寝ている人物は大怪我をしている訳でも、大病を患っている訳でもない。

 

《ナーヴギア》。

 

この悪魔の機械が装着された人物の意識を仮想世界に閉じ込め、昏睡状態に陥らせているのだ。

 

ナーヴギアの隙間からは、昏睡前から比べて随分と伸びた黒髪が垂れていた。

その黒髪を掻き分けてやり、顔を露わにする。

露わになった人物の顔はすっかり痩せこけ、肌も赤みを失っている。

 

掛け布団で覆われている首から下に関しても、寝たきりの状態が続き、筋肉が落ちてしまっている。

 

その姿を見ていると、不安に駆られてしまう。

このまま戻って来ない、そんな不安が。

 

「お兄ちゃん…」

 

目の前の人物は兄だった。

 

特別、仲が良かった訳では無かったが、悪かった訳でもない、と自身では思っていた。

しかし、兄の方は歳を重ねるにつれてだんだんと素っ気なくなり、最終的にはほとんど口を利かなくなってしまった。

 

そんな中起こった《SAO事件》。

 

兄も重度のゲーマーだった事もあり、《ソードアート・オンライン》の世界に囚われてしまった。

 

最初は事件を起こした《茅場晶彦》が許せなかった。

そして、兄を閉じ込めたSAO及び仮想世界を恨んだ。

更には、兄がのめり込む、自分に関わらなくなった原因であるゲームそのものを憎んだ。

 

しかし、そこでふと思った。

 

兄がゲームにのめり込むようになり、結果的にSAOに囚われてしまったのは自分のせいなのではないかと。

 

昔のように仲が良ければ、兄はゲームに没頭することなく、他の趣味に打ち込んでいたかもしれない。

 

そうすればソードアート・オンラインに興味を抱く事もなく、仮想世界に囚われてしまうこともなかったかもしれない。

 

わかっている。

そんなものは結果論に過ぎない。

過去は変えられない。

 

ならば信じて待つだけだ。

無事に帰って来てくれる事を。

 

でも、出来る事ならばーー。

 

ふと我に返ると、すっかり日が落ち、病室は暗闇に閉ざされていた。

 

電気を点けようと椅子から立ち上がると、窓に自分のーー桐ヶ谷直葉の姿が映り込む。

 

兄ーー桐ヶ谷和人が仮想世界に囚われてからというもの、常に気が気でなく、暇を見付けては足繁く病室に通っていた。

 

美容院に行く事も無くなり、兄と同じ黒髪はすっかり伸び、腰の辺りまで達していた。

 

自分も女子である為、最低限の手入れを欠かす事はなく、またヘアバンドで後ろでまとめてポニーテールにしてある。

 

また、成長期という事もあり、髪だけでなく色々と成長し、二年前とは容姿が大きく変化している為、もし和人が戻って来たら別人と見間違えるかもしれない。

 

そんなことを思い浮かべ、自然と笑みが溢れる。

窓側から電気のスイッチがある扉側へと歩き出す。

 

すると、扉が開き、人が部屋に入って来た。

 

「うわ、真っ暗じゃない!」

 

その人物は声を上げるなり扉近くの壁のスイッチを押し、明かりを点ける。

 

突然の光に、暗闇に慣れた目が細まる。

 

光に慣れた視界の先に立っていたのは、母ーー桐ヶ谷翠だった。

 

「えへへ…ちょっとボーッとしてたら真っ暗になってた…」

 

母を心配させないように、茶目っ気を出しながら頭を掻く。

 

「もう、ビックリするじゃない。…今日の和人はどう?」

 

母と共に、眠る兄のベッドに近付く。

母は近くの椅子にバッグを置くと、兄の顔を覗き込んだ。

 

「うん、今日もいつも通りだったよ。全く、寝坊助なんだから!毎日、起こしにくる身にもなって欲しいよね!」

 

あくまで明るくいる為に、そんな軽口を口にする。

 

「全く、ホントね!良い歳なのに妹と母親に起こしに来てもらうなんて!」

 

母も一緒に便乗してくれる。

 

しかし、その目元に滲む不安は拭い去る事は出来ない。

 

その後は無言のまま、二人で兄を見守っていた。

 

しばらくして、母が立ち上がる。

 

「さて、それじゃあそろそろ帰りましょうか」

 

無言で頷き、釣られて自分も立ち上がる。

 

毎日通っているが、この帰る間際が一番辛い。

 

今帰ったらもう会えないのではないか、明日同じように会えないのではないか、そんな考えが後ろ髪を引き、足取りが重くなる。

 

病室から出る前に振り返り、ベッドの和人を一瞥する。

 

「また、明日来るからね、お兄ちゃん!」

 

鼻の奥がツンと疼き、目尻に涙が滲む。

 

「大丈夫、お兄ちゃんは居なくなったりしない」「絶対に帰って来てくれる」と、自分に言い聞かせ、落ち着かせる。

 

「おや?」

 

扉を閉めたところで、そんな声が耳に入る。

 

母ではない、男性のものだった。

声のした方を見ると、メガネを掛けたスーツ姿の男性が立っていた。

 

和人の病室で何度か会ったことがある。

 

確か、SAO事件の対策本部に属しているという人だった気がする。

 

「あら、こんばんは」

 

母が気付いて挨拶と会釈をする。

それに釣られて自分も会釈する。

 

「こんばんは、お帰りですか?」

 

メガネの男性は穏やかに微笑みを返す。

 

その微笑みが、とても胡散臭く感じる。

 

「ええ、そちらはお勤めか何かで?」

 

前々から、どうしてもこの人は信用にならないと感じる。

 

「まあ、そのようなものですかね」

 

貼り付けたような笑みの裏に何か隠しているのではないか、そんな曖昧で不躾な勘が不快感を湧き上がらせる。

 

「我々のような現場にいない人間はどうしてもデータで物事を読み取りがちになって、本質を見失う。そうならないようにこうして現地に赴いて、自分自身の目で見て、物事を判断しなくてはならないと思うんです」

 

その不快感はいつしか不満となって溜まり、不満は怒りとなって込み上げてくる。

 

「それにこうして現地に赴けば意外なところに解決の糸口がーー」

 

抑え込むのもままならず、それは火山の噴火のように噴き出した。

 

「そんな事で本当に解決出来るんですか!?」

 

自分でも驚く程の声が出た。

 

母も男性も突然の大声に目を点にしている。

 

病室で大声を出してはいけない。

頭では分かっていても、止まる事は出来なかった。

 

「いつになったら犯人は見付かるんですか!いつになったらあの機械を外せるようになるんですか!いつになったらゲームはクリアされるんですか!いつになったらーーお兄ちゃんは帰って来るんですか!!」

 

言いたい事、腹の中の鬱憤を全て吐き出し、息を切らせる。

 

「ちょっと、スグ!」

 

母が諌めるように小さく叫ぶが、肩で息をしたまま、相手を睨み付ける。

男性は俯いたまま、頭を下げた。

その姿を見て、何だか自分が居た堪れなくなり、早歩きで脇を通り抜ける。

 

背後では、母が男性に謝罪している声が聞こえる。

 

申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

自分の鬱憤を晴らす為だけに喚き散らし、母にも周りの人にも、散々迷惑をかけ、足早に立ち去る。

 

自分が嫌で嫌で仕方がない。

でも、あの男性に謝罪しようとは到底思えなかった。

そこにもまた、自分の弱さが見えるようで自己嫌悪を感じる。

 

そのまま母を待たずに階段を下り、ロビーを通り、病院の外に出る。

 

顔を上げると、そこには雲ひとつない夜空が広がっていた。

 

「帰って来てよ…お兄ちゃん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、母と合流し、無言のまま、母が運転する自動車で帰宅し、無言のまま夕食を食べる。

せめてもの罪滅ぼしにと、洗い物は自分で二人分をこなし、その後、すぐに入浴を済ませると自室に篭る。

 

髪を乾かし、軽く肌を保湿すると、ベッドに腰掛ける。

ドッと疲れが込み上げ、そのまま仰向けに倒れ込む。

 

ふと顔を横に向けると、ベッドの頭の上の台部分に、円環状の機器があるのが目に入る。

 

《アミュスフィア》。

《ナーヴギア》の後継機に当たる、フルダイブマシンだ。

 

ナーヴギアの危険な部分を取り除き、安全性を考慮したデザインをしており、現在、SAO事件最中であっても多く普及している。

 

いや、既に多くの人はSAO事件を忘れずとも過去のものにしてしまっているのだ。

 

《アミュスフィア》の普及に伴い、少なくない新規タイトルが世に出回るようになっている。

 

自分のプレイしている《アルヴヘイム・オンライン》もその一つだ。

 

最初は単なる好奇心からだった。

 

兄が事件に巻き込まれ、最初は大きく取り乱した。

しかし、徐々に落ち着き、物事を前向きに考えられるようになった頃、ふと思った。

 

兄を魅了したゲームとは、仮想世界とはどんなものなのだろう、と。

 

そして、その頃、話題になっていたのが、妖精の世界を舞台にしたファンタジーゲーム《アルヴヘイム・オンライン》通称《ALO》だった。

 

最初は当然、不安も恐怖もあった。

アミュスフィアは安全性を売りにしているとは言え、同じ仮想世界を創り出すフルダイブマシンなのだ。

 

だが、その不安も、恐怖も、新しい世界への好奇心の前に霧散していった。

 

その時初めて、兄と同じ立場に立ち、少しだけ兄の気持ちを理解出来たような気がした。

 

手を伸ばしてアミュスフィアを取り、頭に装着する。

 

仰向けに寝転んだままゆっくりと目を閉じる。

 

ダイブしている間だけは、現実の不安や恐怖から解き放たれる気がした。

 

ーーだからあたしは、今日もあの妖精郷に飛び立つ。

 

「リンク・スタート」




今回は、前回で本来ならゲームをクリアしていた筈の日が終わったので、現実の様子を直葉視点で描いてみました。

本時空のスグちゃんは髪が伸び、パッツンなのは変わらずですが、ロングポニテになっています!

理由は、作者はリーファの容姿が好きなので、現実でもスグにロングになって貰いたかったからです(性癖)!

次回からこそ階層攻略に踏み出して行こうと思います!

スグ(ついでに名前が明かされなかった胡散臭いスーツのメガネ)の出番もまだまだあるのでお楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。