ソードアート・オンライン/コンプリート・ストラテジー 作:空素
多分原作読んじゃうと文章が引っ張られちゃうからね…。
それでちょっと原作と違うところがあっても、この作品独自の流れと思って見逃して下さい…。
正体を暴かれたヒースクリフ、もとい茅場晶彦は、凍り付く空気の中、マスターコマンドによって、攻略組プレイヤー達を強制麻痺状態にさせた。
一方的に虐殺し、証拠を隠滅するかと思いきや、茅場はたった一人、俺だけを麻痺させずに、逆に正体を暴いた俺を賞賛しながら提案した。
この場で一対一のデュエルを行い、茅場に勝つ事が出来れば、この75層の時点でゲームクリアとし、生存する全てのプレイヤーを解放する、と。
当然、その際には防護する障壁の原因である、《
茅場ーーヒースクリフはいずれ、正体を明かし、攻略組を抜け、第100層にて最終ボスとして立ち塞がる算段だったらしい。
想定外とは言え、見事、正体を暴いた俺に対する報酬として、この千載一遇の好機を与えたい、という事だった。
しかし、相手はあのヒースクリフ。そう簡単に勝たせてはくれないだろう。
そもそも、単なる罠かもしれない。
俺をこの場で始末し、その後、この場にいるプレイヤー全員を始末し、何食わぬ顔で血盟騎士団に戻るつもりなのかもしれない。
だが、例え罠だったとしても、やらなければならない。
これまで苦しめらた多くのプレイヤー達の為にもーー否、それは建前だ。
本音はもっと浅ましく、暗く、淀んだ憎悪だ。
例え、死ぬ事になっても、ただでやられるつもりは無い。
差し違えてでも、俺は、こいつをーー。
麻痺状態になって地面に這い蹲る仲間達に目を向ける。
湧き上がるのは、感謝の気持ちと謝罪の気持ち。
愛する人を一瞥し、茅場ーーヒースクリフへと向き直る。
「ただでやられるつもりは無いが、もし俺が死んだら、アスナが自殺しないよう取り計らってくれないか」
ヒースクリフは余裕の表情を浮かべ、頷く。
「良かろう。君が居なくなった後の事は任せてくれたまえ」
そう言い、ヒースクリフはシステムウィンドウを操作する。
俺のHPに合わせて、ヒースクリフのHPが減少し、目の前に《デュエル》の選択メニューが表示される。
迷い無く、ヒースクリフからのデュエルを承諾する。
デュエルのルールは、《完全決着モード》。
デスゲームと化したSAOでは、相手を殺さない為に、《半減決着》或いは《初撃決着》モードでのデュエルが基本だった。
《完全決着》はその名の通り、相手か自分のHPがゼロになるまで終わらない、文字通りの死闘だ。
デュエル開始までのカウントダウンが表示される中、両手の剣を構える。
対するヒースクリフも不敵な笑みを浮かべ、大盾から長剣を引き抜く。
カウントダウンは残り10秒を切った。
「キリト君…こんなの…こんなのって無いよ!!」
締め付けられる胸の痛みを振り払うように、カウントダウンがゼロに達した瞬間、右脚を踏み締め、駆け出した。
ヒースクリフは大盾を構えたまま、防御を固めている。
生半可な盾の防御ならば、盾の上からの攻撃でも、相手のHPを削ることは可能だ。
だが、相手は不可侵の絶対防御を誇る《神聖剣》の使い手ヒースクリフだ。
構える大盾の外角から右手の剣《エリュシデータ》を水平に振るう。
容易く防御されるが、空かさず左の剣《ダークリパルサー》を僅かに空いた胸元目掛け、突き出す。
しかし、これも流麗な盾捌きで凌がれる。
ならばと、今度は下段から右手の剣で斬り上げる。
問題無く防がれるが、これは囮だ。
斬り上げによって、右半身を前に出し、左半身を引いた状態だ。
つまり、今、ヒースクリフからは左手が見えていない。
そこから、身を捻り、反時計回りの回転斬りを繰り出す。
大盾の外角から脇腹を狙った斬撃。
だが、ヒースクリフは左脚を一歩引いて体の向きを変え、防御を間に合わせる。
剣を押し込もうとするが、大盾の防御は不動を貫く。
透き通った青碧の刀身と紅白の十字盾が激しく衝突し、火花を散らす。
例え、卓越した攻撃性を誇る《二刀流》であっても、出鱈目に攻撃しただけでは、ガードブレイクどころか削りダメージすら与えられない。
逆にこちらの攻撃を《
防御の隙を突こうとしたが、やはり防御力だけでなく、盾捌きも抜きん出ている。
完全に盾の死角を理解し、弱点を克服している。
ならば、やはりあの防御を打ち崩す程の連撃を叩き込み、隙を作るしかない。
左の剣を振り抜き、そこから両手の剣で斜め十字を描くように上段から振り下ろす。
双刃と大盾が激突し、激しい火花と衝撃波を散らす。
立て続けに、時計回りに身を捻り、両手の剣で水平に薙ぐ。
薙いだ両手の剣の内、左の剣を斬り返し、一拍遅れで右の剣を同じように返す。
右手の剣だけを斬り返し、両手の剣を突き出す。
しかし、これまで防御一辺倒だったヒースクリフが構えを変える。
危機感を感じ、すぐさま剣を引き、後退するように地面を蹴る。
そして、その判断は正しかった。
後退する俺の頬をヒースクリフの長剣が掠める。
大盾の防御にばかり気を取られれば、長剣による鋭い反撃が待っている。
《神聖剣》と言えば、その防御力だけに目が行きがちだが、攻撃性も決して侮れない。
高い水準で攻撃と防御を両立させた、攻防一体の技術。
それが《神聖剣》の真髄だろう。
ソードスキルにしても、生半可なものではないだろう。
以前、ヒースクリフとは《半減決着》モードでデュエルを行なったが、こちらが《二刀流》の奥義技を見せたのに対し、奴は一切のソードスキルを使用していない。
それでも、俺は奴に敗北した。
一抹の焦燥が胸に去来する。
焦燥を否定するように、着地と同時に、俺は再びヒースクリフへと疾駆する。
そして、両手の長剣が眩い輝きを放つ。
《二刀流》最上位剣技《ジ・イクリプス》。
ヒースクリフのーー茅場の口元が吊り上がった。
しかし、一度発動したソードスキルは中断出来ない。
無理に中断しようとすれば、《
もう、止まる事は出来ない。
《
まともに受ければ、プレイヤーは勿論、モンスターであってもタダでは済まないだろう。
両手の剣と大盾が激突する度に、衝撃波が空間を揺るがし、飛び散る光芒が周囲を埋め尽くす。
全27連撃にも及ぶ《二刀流》の最上位剣技は、しかし、ヒースクリフの防御を打ち崩すことは無かった。
《ソードスキル》をデザインしたのは茅場晶彦だ。
全てとは言わずとも、おおよその《ソードスキル》の長所と短所は知り尽くすているだろう。
いや、あの天才プログラマーなら、全てのスキルを把握していてもおかしくはない。
ましてや、自らの《神聖剣》と相対する《二刀流》のスキルであれば尚更。
スキル後の硬直を強いられ、隙を晒す俺に対し、凌ぎ切ったヒースクリフは不敵な笑みを浮かべ、長剣を構える。
不思議と恐怖はなかった。
ただ胸を包むのは、敗北感と謝罪の言葉。
ーーアスナ、ごめん。
その瞬間、世界が歪んだ。
試しにオリジナルの細かい戦闘描写を入れてみましたが、どうですかね?
もっと手に汗握る戦闘が描けるようになりたいですなぁー。
では、次回「茅場、死す」でお会いしましょう!