ソードアート・オンライン/コンプリート・ストラテジー   作:空素

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数日、更新止まったので今回はちょっと長め……

嘘です、短く纏め切れませんでしたん


決意

攻略組の面々が続々と出口へ向かっていく中、俺は一仕事終えたアスナへと歩み寄る。

 

二人並び、攻略組の後を追って歩き出す。

 

「お疲れ」

 

対するアスナは、複雑な表情を浮かべて微笑む。

 

「まだ、ひと段落とは言えないけどね。まだまだやる事は残ってる」

 

そう言ってアスナは気を引き締めるように頬を叩く。

 

この場で起きた事の顛末を《血盟騎士団》で報告、加えて《聖竜連合》との会談、それを経て、全プレイヤーに公開されるだろう。

それは、間違いなく、アインクラッドに大混乱を引き起こす。

 

特に《血盟騎士団》内部は、団長を失った事やヒースクリフを擁していた当事者という事で、地位の入れ替えや他のギルドとのやり取りで忙殺される事になる。

 

攻略に人員を割く余裕が出て来るかどうかも怪しい。

 

そこでふと思い出す。

 

「アスナ、俺も一応はKoBのメンバーだし、何か出来ることがあれば手伝うけど…」

 

諸々の仔細は省くが、先日、俺はアスナをかけてヒースクリフと一騎討ちのデュエルを行った。

結果は敗北。

俺はヒースクリフが提示したKoBへの入団という条件を飲み込み、紅白衣装に身を包んだ。

 

その後、様々な事件があって休暇を挟んだりもしたが、まだ有効な筈だ。

 

それを踏まえての提案だったが、アスナは呆れ半分に微笑んでいた。

 

「団長ーーヒースクリフはもうKoB所属じゃない。だからもうキリト君があそこに居る必要はないよ」

 

言われてみれば確かに、あの条件を提示したヒースクリフはいないのだから、俺があそこへ戻る理由はない。

 

「その代わりと言ってはなんだけど、しばらくKoBは忙しくなると思うの。攻略に支障をきたすくらいには、ね。だから、その分、攻略を頑張ってくれないかな?」

 

KoBが忙しくなるという事は、副団長であるアスナもまた、ギルドに付きっ切りになると言うことになる。

 

《攻略の鬼》、《閃光のアスナ》と言われているくらいなのだ。

本来は攻略優先に進めたい本心がある筈だ。

 

だが、それでも立場上、アスナが勝手な行動をとる事は許されない。

例え、全プレイヤーを思っての行動だったとしても。

 

副団長として団員を無碍には出来ない。

 

「分かったよ。アスナがそう言うなら、久々にソロで攻略を進めてるよ」

 

気が付くと、自分達は76層への階段を登っているところだった。

 

先の方では、先頭のプレイヤーが扉へ辿り着いている。

 

「気を付けてね。クォーターポイントを過ぎて、迷宮区だけじゃなく、フィールドでも何が起こるか分からないから」

 

74層から、ボス部屋であらゆるクリスタル系アイテムが使用不可能となる《クリスタル無効化エリア》だった。

 

今回の75層は、これまではボス部屋の扉が開きっぱなしで、危険時には撤退出来たが、突入と同時に扉は閉まって消滅してしまい、退避不可能の戦闘を強いられた。

 

「確かに、ソロでの攻略も厳しくなって来てはいるな…」

 

今後、これまで出来ていた事が不可能となり、それが原因で窮地に陥る可能性は大きい。

これからは先入観を捨て、あらゆる状況に対応できる攻略を実現して行かなければ、この先、生き残ることはできない。

 

ソロであれば尚更、危機に陥る可能性は大きくなり、死亡するリスクも跳ね上がるだろう。

安易に、大丈夫などと軽口を言えなかった。

 

「厳しいようなら、クラインさんやエギルさんに頼ってね?二人もキリト君のソロ攻略のことは心配してるだろうし」

 

クラインもエギルも、最前線では数少ない友人だ。

アスナ抜きとなると、確かにこの二人以外に頼れる程に信頼を置けるプレイヤーはいない。

 

「キリト君がもうちょっと人とコミュニケーションを取ってくれればねー」

 

などとアスナに流し目で痛いところを突かれて、俺はぐうの音も出ず、押し黙る。

 

「そう言えばキリト君知ってる?最近、勢いのあるソロプレイヤーが居るんだって。確か、75層のボス攻略前には74層でレベリングしてたって」

 

全く存ぜぬ情報だった為、俺は素直に驚いた。

 

「いや、初耳だな。ソロで74層まで戦えるようなプレイヤーが居るなんて…どんな奴なんだ?」

 

基本、こう言ったMMORPGのトッププレイヤーは常連が多い。

確かに、新規参入でもセンスが良かったり、時間を注ぎ込んでトッププレイヤーへ参入することも珍しいことではない。

 

だが、このSAOはプレイヤーの上限が決まっている。

 

新規参入はあり得ないし、デスゲームという性質上、どれだけ必死にレベリングしたところで、自身の寿命を縮めるだけだ。

 

それこそ、死に物狂いで戦っても死なないような立ち回りが出来る、ずば抜けたプレイヤースキルの持ち主で無い限りは。

 

更に言えば、そんなプレイヤーが今まで何処に紛れ込んでいたのかも気になった。

 

「流石にキリト君みたいに、常にソロって訳じゃないみたいだけど、固定じゃなく、色んなパーティーを転々と回りながら、進んで来たみたい」

 

固定ではなく、常にパーティーを変え続けるというのは、ソロ以上にリスクが高い。

 

対Mobに関しては、ソロの方が危険だが、プレイヤーと組むと言うのもリスクを伴う。

 

土壇場での裏切りは勿論だが、報酬関連でのトラブルも多く、また今は減ったが、加入したパーティーが《犯罪(オレンジ)》ギルドのパーティーだった、という事もある。

 

「よくそんなに調べたな」

 

素直に感心していると、アスナは自信満々に笑顔を向ける。

 

「“昔からお得意の情報屋さん”がいるからね。スカウト出来る人材がいないか常に探してるのよ」

 

なるほど、と腑に落ちた。

 

確かに“奴”ならばそんな目立ったプレイヤーの情報を逃すはずも無いし、攻略の鬼であるアスナがギルドに引き込める有能なプレイヤー探しをしていない筈もなかった。

知り合いに情報屋が居るなら尚更だ。

 

俺もそのプレイヤーについて詳しい情報を買おうか考えていると、ふと視界に光が入る。

 

先頭のプレイヤーが扉を解き放ったのだろう。

石の扉が石床を擦る音を聞きながら、新たな階層ーー新たな世界へと思いを馳せる。

 

果たしてこの先に何が待ち受けるのか。

果たしてこの先で何が起こるのか。

 

だが、何があろうとも、隣に立つ、大事な人だけは命に変えても守り抜く。

 

決意を心に灯しながら、俺はアスナの手を優しく握った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そこは、周囲を黒曜石のような黒光りする壁と、対照的に純白の地面が蛇行するように続く場所だった。

 

それはまるで迷路のように入り組み、正しく《迷宮区》と呼ぶに相応しいと言えるだろう。

 

加えて、出現する骸骨系のMobは、武器と鎧を装備しており、《ソードスキル》まで使いこなす、一筋縄ではいかない強敵だ。

 

更に、この階層では、所謂《ネームドモンスター》であるリザードマン系のモンスターの出現も確認されており、エンカウントすればうっかりでは済まないだろう。

 

ここは、《アインクラッド》第74層の迷宮区。

最前線ではないが、前線には違いなく、魔物が蔓延る魔窟だった。

 

そこに、骸骨系のモンスターを相手取る、一人のプレイヤーがいた。

 

骸骨モンスター《デモニッシュ・サーバント(以下骸骨)》の得物は片手直剣で、中型の盾も装備している。

 

骸骨が片手直剣スキル《バーチカル・アーク》を繰り出す。

 

V字を描く、片手直剣スキルの中でも基礎的な技だが、高階層モンスターの高度なAIによって、それはブーストされ、まともに受ければ大ダメージは免れない凶悪なものになっている。

 

プレイヤー自身も、決して重装備ではなく、寧ろ機動力を主軸にした革装備であり、軽装の回避型だった。

 

しかし、相対するプレイヤーは、初撃の上段斬り下ろしを横に滑るように移動して躱し、続く下段斬り上げを骸骨の横に回り込んでやり過ごす。

そして、硬直した骸骨の盾を潜り抜け、右手の長槍の連撃を見舞った。

ソードスキルではないが、その鋭い刺突攻撃を受け、骸骨のHPが全快から4分の1が削られる。

 

ソードスキルではないのは、バーチカル・アークの技後硬直は短く、反撃される恐れがあるからだ。

 

硬直から解放された骸骨が振り向きつつ、回転斬りを繰り出す。

滑らかな後退でこれを躱すが、骸骨が更に攻める。

 

骸骨の直剣が輝きを放ち、一気に距離を詰め、振り下ろされる。

 

片手直剣の突進スキル《ソニック・リープ》だ。

 

一気に距離を詰める突進技だが、突進中の剣にも攻撃判定があり、巨大な敵を斬り裂くようにも使える。

だが、突進後は短くない硬直時間がある。

 

斬撃の軌道を見極め、身を捻る。

骸骨の直剣は空を斬り、隙を晒す。

ガラ空きの横っ腹へ槍のソードスキルを繰り出す。

 

力強く踏み込み、長槍を突き出し、続けて二連撃目を突き出す。

 

《フェイタル・スラスト》。

 

二段構えの連続攻撃だが、一段目には高い《仰け反り(ノックバック)》効果があり、特にカウンターの場合はその効果に補正がかかる。

仰け反ったところに続く二連撃目は、単純な重攻撃であり、故に相手が怯んでいると、より効果が高い。

 

手厚いカウンターを受けた骸骨のHPは一気に4分の1になり、赤く染まる。

 

骸骨は半ばヤケクソ気味にソードスキルを繰り出した。

 

片手直剣スキル《ホリゾンタル・スクエア》。

 

バーチカルに並ぶ基本技のホリゾンタルの派生技だが、隙の無い怒涛の四連撃は躱しにくく、また一撃一撃も重い。

全段ヒットすれば軽装備であるこのプレイヤーのHPは瞬く間に消し飛ばされるだろう。

 

しかし、プレイヤーは長槍を背中に納め、逆に骸骨へと突っ込んだ。

 

そして、初撃を潜り抜けて背後に回り、続く一撃も背を向けた状態で空振らせ、振り向き様の三連撃目もしゃがんで回避し、四連撃目が撃たれる寸前にソードスキルでカウンターを叩き込んだ。

 

“短剣スキル”《アーマーピアース》。

 

その手には、長槍ではなく、短剣が握られていた。

 

順手、或いは逆手に持った短剣で突き刺す、短剣の中では一撃重視の技で、その名の通り、相手の防御を貫通或いは鎧の隙間などに当たった場合は確定クリティカルとなる。

 

加えて、カウンターならば、言うまでもない。

 

喉元に短剣を受けた骸骨は、頭蓋骨が斬り離された。

 

HP残量を越える大ダメージを受けた場合に起こる、オーバーキル表現だ。

 

頭蓋骨、遅れて胴体がポリゴンの欠片となって飛散し、プレイヤーの眼前に《報酬(リザルト)》画面が浮かび上がる。

 

目ぼしいものが無い、見慣れた報酬を確認すると、別の項目を確認する。

 

「戦闘時間、約20秒…」

 

それは、会敵から撃破まで要した時間の項目だった。

 

「遅い…もっと早く…もっと強く…」

 

プレイヤーーー少女は、空色の髪を靡かせ、駆け出す。

 

「私はもっと、強くなる…!」

 

その水色の瞳は氷のように冷たく、山猫のような獰猛さを宿していた。




骸骨討伐RTAをしているこの少女は一体…。

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