才能全振り野郎が美少女に頑張れ頑張れされる話   作:不知火勇翔

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音ゲーでバグってキングクリムゾンされたので投稿します。
サッカーしてねぇじゃん回です。


優香成分、全開!

 そこは正に絶景だった。

 単純に景観が綺麗なのとはまた違う。

シャンデリアのように煌びやかで、万華鏡のように沢山の色が複雑に散らばっていて、それでいて色の三原色のように色と強め合うのではなく、光の三原色のように淡い光となって辺りを照らしていた。

とある高名な学者はこう語った。

 トラベラーのイメージは人を写す鏡であると。

「・・・・・・・・・・・・・・凄いですね」

 派手さの無い、言うなれば色鉛筆で彩色されたような空間を眺めながら、神条優香は冷や汗をかきながらそう独り言ちした。

 学者の言う通り、トラベラーが描くイメージには個人差が出る。

 キツイ性格ならキツイ色、ぼんやりとしていたら薄い色、などが描き出すイメージには現れていく。

 さて、辻奏吏はどうだろうか。神条優香の疑問の結果がこれだ。

 全体的に淡い色。しかしぽわぽわとはまた違って、しかも色の偏りも少なく、見る者を落ち着かせる色合いだった。

 ペンキやインクみたいな無理が出ている色ではなく、あやふやであって、それを許容できる才能が辻奏吏にはあったということだ。

 干渉力も中々。ステージに立てば淡い光が観客を優しく包み込んでいるだろう。こと芸術の分野では引く手数多である。

 そういう色だった。

 思わず神条優香は口の端を釣り上げていた。

 

 

 

 

 

 カマキリの大虐殺から数か月。

 建物を一瞬で再建できるトラベラーの活躍もあり、着々と復興は進んでいた。

 既に通貨も使われ出し、西の人間が法外な値段で売ることが少なくなるぐらいには物資も潤沢となり、誘拐が横行することも少なくなっていった。

 ただ、死に過ぎたため人口は少ないままだ。

 辻奏吏と神条優香が通う学校の生徒も殆どが生きておらず、教師もまた同様にして数を減らしている。

 学校が再開するのは絶望的状況だ。

 つまり何が言いたいかと言うと、優香の特訓が朝から夜まで、休憩時間以外の全ての時間で行われているということだ。

 

 

「休みが欲しい!!!」

 

 

 奏吏は叫んだ。割とガチに、心身ともに異常をきたし始めていたのだ。

 鉛筆をイメージしていたはずが、いつの間にかシャーペンの芯になっていたり。リアルな鎌を作ろうとしたら窯を作っていたり。

 四六時中頭を酷使して限界に挑戦することを続けていた特訓のツケがやって来たのだ。

 奏吏としてはもう少し早めに限界が来ても良かったのだが、謎の頑丈さを見せた奏吏の心身は一か月も地獄の特訓に耐え抜いた。しかしまぁオーバーワークもいい所なので、ようやく優香が自重を見せた。

「確かに、休み無しはキツイですよね」

 忘れていたかのように言う優香に、奏吏は戦慄した。

「じゃあ大会の前日にデートでもしますか?」

 奏吏のモチベーションが3乗された。

 しかし男としてグッと堪えた奏吏は、あくまで冷静を装って言った。

「・・・・・・・・前日こそ練習じゃない?」

 いつもの様にクスっと怪しく笑った優香は、奏吏にズイっと近づいた。

「奏吏さんはほとんど出来上がっていますから、後は気の持ちようです。なので、私とデートした方が集中力も上がって良い結果を残せると思うんですよね。あと、単純に私としても頑張った奏吏さんにはご褒美をあげたいですし」

 優香の自分に向けられた笑顔が、人質としての価値を高めるためだと最近理解した奏吏だったが、迂闊にもドキッとした。

 ちなみに、聞く人が聞けば自意識過剰な発言にも聞こえるが、優香は奏吏が自分のことを既に好きになっていることを知っていての発言なことをここに記載しておく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして大会前日、つまりデート当日。

 デートで遊ぶ金が無いと言い出した優香は奏吏を連れて、フリーマーケットへ直行した。

 そしてイメージで作った冷蔵庫を10円や20円で売り始めた。

 トラベラーは希少なためこういったことをやる人が少なかったのか、10円冷蔵庫には多くの列ができた。

 そして二人がトラベラー、しかも高レベルだと察した客の数人が冷蔵庫以外も注文し、優香が安請け合いしたため10円電子レンジや10円扇風機など沢山の家電が飛ぶように売れ、3時間で惜しまれながら撤収した2人の手元には一万円が残った。

 20秒で一個売った二人は疲れのあまり公園のベンチに寝転がって、一時的に動かなくなった。

「だ、騙したな・・・・」

 奏吏は突然始まった狂気の宴で例の特訓以上に疲弊した頭で、落胆したことを優香に伝えた。すると優香はガバッと飛び起き、焦りながら言った。

「ち、違いますから!その、単に丸一日は持たないと思っただけですから!半日で一日分付き合いますから!!!」

 疲弊した頭で謎なことを言う優香に心の中で首を傾げる奏吏だったが、とにかく疲れたため何も言わず、その状態のまま瞼を下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、起きましたか?」

 奏吏の視界一杯に、優香の顔があった。

「・・・・・・・・・」

 後頭部の感触で色々察した奏吏は見下ろしてくる優香から視線を外し、優香の拘束から脱して起き上がった。

 ちなみに内心はバックバクである。

「・・・・・・・・・」

「お、怒ってますか?」

 恐る恐る聞く優香。奏吏は明日まで口を聞かないと心に誓ったが、その決意は次の一言で瓦解した。

「じゃあ、3時ですけどデート再開しませんか?奏吏さんの行きたい所でいいですよ?」

「え、」

「えっ、て。付き合ってくれたじゃないですか。次は奏吏さんの番ですよ」

「・・・・・・・・・」

 奏吏はここで気がついた。

 自分がデートの中身を何も考えず前日まで張り切っていたことを。

 それだけ特訓が凄まじかったということだが、取り敢えず落ち度は奏吏にあった。

「・・・・・・・・・・何も、考えて無かった」

 ボソッと言った奏吏。優香は思わず噴き出した。

「・・・・・・・笑うことないでしょ」

「あはははは。あーそうですね。奏吏さんそういう所ありますよね」

「おい」

「はいじゃあついて来て下さい。楽しくさせますから」

 優香に連れられて、やって来たのは個人経営の小さな服屋だった。

「お邪魔しまーす」

 カランコロンと扉に吊り下げられた鐘を鳴らして中に入ると、中は明らかに女性ものの服ばかりだった。

 足を止めそうになる奏吏だったが、躊躇無く優香が中へ引きずり込んだ。

「あら、優香ちゃん。待ってたわよ」

 ハンガーに掛けられた服を見ていた、まだ二十歳前後の女性が優香に声をかけた。

「紹介しますね、亜里沙さん。彼が辻 奏吏さんです」

 突然店員さんらしき人を紹介され、とりあえず頭を下げる奏吏。

「奏吏さんにも紹介しますね。佐城 亜里沙さんです。ここのお店を一人で切り盛りしてる凄い人なんですよ」

「よろしくね」

「あ、はい。辻奏吏です」

 亜里沙が頷くと、「それで?」と優香に聞いた。

「遂にやるのね。結構待ったわよ」

「あ、はい。お願いします」

 亜里沙と優香の謎の会話についていけないでいる奏吏が黙っていると、優香がいつもより少しだけ含みを持った笑みを浮かべて、言った。

「亜里沙さんにはもう話してあります。奏吏さんはここにある服を何着でもいいんで選んでください。全部、着るので」

「/////////」

「ちゃんと、感想くださいね?」

 あざとさの極みのような上目遣い+不安そうな笑顔というダブルパンチに、奏吏は立ったまま死にかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 奥の部屋に行った優香を見送った奏吏は、店主の亜里沙に聞いた。

「トラベラーなら一瞬で服を作り変えられるのに、どうしていちいち着替えるんですかね」

 すると亜里沙は大仰に頭を抱えた。

「かー。分かってないわね、アンタ。童貞でしょ?」

「まぁ、そうですけど」

 色々あって女の子と親しくするのことを一時期は諦めた奏吏にとって、童貞を晒すことには何の抵抗も無かった。

「あのね。一瞬で変身するよりも、試着室の揺れるカーテンみたいに!今の場合だと恐る恐る出てくる優香が!可愛いんじゃないの!」

「はぁ。」

 劇場とかだと幕が上がったり下りたりするのが必要不必要とか、そういう話だと取り敢えず奏吏は理解した。

「あ、あの。」

 スッとではなく、コッチ側の反応を伺いながら出てきた優香は、まさしく天使だった。

 白いワンビースの上から髪色と同じ上着を羽織っていて、普段パーカーばかり(というかさっきまでそうだった)の優香からは想像もできないくらい女の子をしていた。

 頭が真っ白になって固まる奏吏に、優香は追い打ちをかけた。

「感想。いいですか?」

「か、感想?」

「言ったじゃないですか。何も言われないのは不安なんですけど」

「あ、うん。可愛いよ?」

「本気で思ってます?」

「うん(何故聞く?)」

「じゃあ、」

 近づき、正面から奏吏を抱き締めた優香は、幸せそうな笑顔で奥へ引っ込んだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あと5着か」

 俺は今日死ぬかもしれない、と心の中で呟いた奏吏は、謎に静かだった店主亜里沙に目を向けると、亜里沙は壁と向き合っていた。

「・・・・・佐城さん。何してるんですか」

「奏吏君。私はもう無理みたい」

「はい?」

「私では、目を焼かれるみたいだわ」

「ええ・・・・・」

「出てくる一瞬。それだけで分かったわ。あぁ、死ぬって」

 同じことを考えていた奏吏は、佐城亜里沙に仲間意識を覚えた。

その後2時間、可愛さの災害は続いた。

 

 

 

 

 

 

「いいわねぇ、青春って感じで」

 2人が友人関係を越えたイチャイチャをしながら歩いて行くのを店から眺めていた佐城亜里沙は呟いた。

「あれは、完全に恋する乙女の顔ね。凄いわ。人質としての価値を高めるために好感度を稼ぐつもりが自分も、なんて。どこの恋愛漫画かしら」

 

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