才能全振り野郎が美少女に頑張れ頑張れされる話   作:不知火勇翔

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ウィキで皇祖神の名前を出すのはマズいと聞いたので、ニックネームにします。


大会2

 

 『金色の光』と『闇』が、辺りの風を吹き飛ばした。

 ヤンヤヤンヤ騒いでいた観客が一斉に口を閉じて、その発生源を注視した。

 そこにあったのは、3つの影だった。

 1人はさっきと同様、辻奏吏。

 しかし装いが違っていた。

 黄金色の和服を羽織り、瞳も金色に。

 さながら日本神話上の神々のような、そんな出で立ちだった。

 奏吏の左隣には黒髪ロングの女性がいた。

 背丈は奏吏より少し大きいくらい。お淑やかな印象を受ける女性で、彼女もまた黄金色の和服を着ていた。

 奏吏の右隣には、小さな男の子がいた。

 彼もまた他2人と同じような格好をしていたが、色が黄金色ではなく黒を基調とした和服だった。

 突然3人となった奏吏達に、観客はまず不正を疑った。

 イメージの舞台で3人に増えることなど、有り得ないのだ。

 少なくとも、日ノ本の記録には残っていない。

 ざわめきが拡大する中で、優香は心の中では大はしゃぎしていた。

 彼らがお披露目される。

 それが意味する所は、奏吏の超絶強化だ。

「・・・何なの?一体」

 観客と同じく頭に疑問符を浮かべるリオンが呟くと、耳敏く聞き取った優香が答えた。

「イマジナリーフレンドって知ってますか?」

「・・・まぁ、知識としてはね。確か辛い経験をした子供が、ぬいぐるみを空想上の友達として作り上げ、・・・それなの?」

「少し違います。ただ本人が意識的に作ったものが勝手に動く例を出したかったまでです。小説家が、キャラが暴走する、勝手に動き出すとか言うことありますよね。あれはある程度キャラの方向性が決まっているため脳が勝手に処理している状況なんですが、それを奏吏さんは現実に映すイメージでやってのけるんですよ」

 早口でまくし立てる優香に気圧されるリオンだが、彼女もプロだ。すぐに異常性に気づいた。

「・・・あの2人は、もしかして自分で考えたりするの?」

 それが可能なら、奏吏は1対1の試合で1対3を作ることができる。酷いチートだ。特にイメージでの削り合いでは。

「あの2柱は奏吏さんレベルのトラベラーではないみたいですよ。なので単純なかけ算ではないと思います。多分」

 リオンは眉をひそめた。

 それでもチートなのだ。

「楽しみですね。どうやって国木さんを蹂躙するんでしょうか」

 初めて見る優香の浮かれた態度を見ながら、リオンは心の中で奏吏の評価を数段上げた。

「・・・やるじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方ステージの上では、奏吏が2柱を公開したことを今更ながら後悔していた。

「ホント、見てられなかったわよ?あんなそよ風に引っ掻き回されるなんて」

「あーちゃん終始オロオロしてたよな」

「!?仕方ないでしょ!?奏吏が死んだら私達も消えるんだし!」

「あーはいはいはいはい。そうだねー」

「聞きなさいよ!」

 太陽神をモチーフにしたキャラクター『あーちゃん』と、月の神をモチーフにした『つーくん』が口喧嘩を始めたが、奏吏は2人を構っていられなかった。

 ステージの反対側にいる国木五朗幻が、凄い顔をして奏吏を見ていたからだ。

「ん?アイツずっと見てくるわね」

「あ、確かに」

 ようやく気づいた2柱が口喧嘩を切り上げて五朗幻の方を見る。すると五朗幻が口を開いた。

「・・・・・・とてつもない才能だな」

 才能、で片付けられることに奏吏の心が少しだけ痛んだ。

「生命の創造。そんな神にも等しい所業をやってのけるか。・・・ようやく、クソどもが目をかける理由が分かったぞ」

 目を閉じて分かったような口振りをした五朗幻は、閉じていた目蓋をゆっくりと開いた。

「ならば、ここで再起不能になるまで潰すしかないな」

 風が、再び巻き起こった。

 五朗幻の作る神に似せた風は、風を使うため銃弾のように限りがある訳ではない。

 壊される物も消費する物も無いことが長所であって、対怪獣戦では強く出られるが、対人戦では物量で押すしかない。

 それが強いのだが、飛び抜けた奏吏には通用しなかった。

「つーくん」

「はいはい」

 国刀を優雅に鞘から抜き放ったつーくんは、刀から闇を噴出させ、その闇で嵐の壁を押し留めた。

「風ごときでボク達がやられると思ったか?」

 シャランッとつーくんが刀を振ると、闇がうねる嵐を上から押さえつけた。

 風の竜がもがくが、底知れない闇は全てを呑み込み、そのまま捻り潰した。

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「」」」」」」

 見ていた観客は言葉を失い、ただ黙って常識が破壊されていく光景を眺めた。

 彼らにとって、西の竜とは数十年前から強者であった。

 怪獣戦では陣頭指揮を取りながら自らも戦って勝ちを重ね、日ノ本の盾と呼ばれる時代もあった。

 彼らにとって、国木五朗幻は強者であった。少なくとも、雑魚のようにあしらわれるなど、誰が予想できただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと、奏吏が歩を進める。

 既に両者の間には不自然に動く風など無く、国木五朗幻が万策尽きたことを物語っていた。

「・・・・・・僕、俺の勝ちでいいか?」

 優香に言われた通り、舐められないように強めの口調で言ってみた奏吏だが、自分でも笑ってしまうくらい様に成っていなかった。

「・・・・・・あぁ。私の負けだ」

「勝者、辻奏吏ぃ!!!!!!!」

 実況の宣言と共に、奏吏は国木五朗幻に背を向けた。

 次の試合があるからだ。

 ただまぁ、国木五朗幻を圧勝したため苦戦することは無いだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果、奏吏は参加者全員に大差を見せつけて優勝した。

 ネットでは2柱が本物の人間ではないかと疑う声で溢れたが、トラベラー協会(シンクの手先)が声明を出し、口下手な奏吏に代わって優香が記者に懇切丁寧な説明をしたため、騒動は収まった。

 しかし奏吏がつけた『火』は、小さいながら着実に燃え広がっていた。

 

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