穢れた血のスリザリンです...   作:sesamer

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卑屈なTS少女を書きたいのですが難しいですね。個人的には狛枝くらいの卑屈さでやっていきたいのですが。



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「えー、君も囚われのお姫様を守りたいってクチ?」

「そんなわけじゃないんだけど……」

 

 ロンは呆れたように肩をすくめた。まあその気持ちも分からないわけではない。イレナ・アーシュの存在は特にスリザリンにとって物凄い波紋を呼んだようだった。スリザリンにマグル同士の子の魔法使いが入るのは前例にないことで彼女を排斥する動きが高まっているらしい。

 

 これに関してはスリザリン生が僕にちょっかいを出さなくなって清々していたのだが、スリザリンが動けば対抗心を燃やすのがグリフィンドールの特徴というロンのお兄さん達の言葉通りで、彼らは徒党を組んで卑劣なスリザリンの虐めからイレナを守ろうとしているみたいだ。

 

「ただちょっと気になったことがあったんだ」

「気になったこと?」

「うん」

 

 僕はイレナが組み分け帽子を被った時の様子を思い出す。それは直前に組み分け帽子にグリフィンドールに行きたいと必死に頼んでいた僕と似ていて、実際に彼女は僕が選ばなかったスリザリンへと行った。

 

「イレナも僕のようにグリフィンドールとスリザリンのどちらかを選んだんじゃないかなって」

「エッ、まさか君スリザリンに行く気だったのかい!?ハリー・ポッターなのに!?」

「ハリー・ポッターは関係ないよ。ただ組み分け帽子にスリザリンを勧められただけ。まあマルフォイに会わなきゃ選んでたかもしれないけど」

「そりゃあマルフォイ様様だ!けどあのお姫様がグリフィンドール?てっきりあの頭でっかちと同じくレイブンクローかと思ったよ!」

 

 そう言われると先日の魔法薬学のグリフィンドールとスリザリン合同授業を思い出す。スネイプが僕やネビル、ハーマイオニーに質問を振って難癖を付けるのは恒例のものになっていたがその後にイレナにも質問を振ったのだ。ハーマイオニーの呟きからすると一年の授業では習わないはずのものにも関わらず、彼女は直ぐに正解を答えたのだ。面白くなさそうなスネイプの顔は今でも思い出せる。

 

「頭でっかちで悪かったわね」

 

 うげ、と呟くロンと一緒に振り向くとそこにはハーマイオニーがいた。彼女は僕達(というかロンが)弁明する前に小走りで廊下の向こうへと行ってしまった。僕らはお互いに見合って肩をすくめる。

 

「それで……イレナに会いたいだって?無理だと思うよ」

「だよねぇ」

「あの子ホグワーツ中を走り回ってるらしいぜ。そのせいでグリフィンドールもスリザリンも捕まえられないらしい。半分は我が寮のことながら面白いよ!」

「ロンってあんまり良い性格じゃないよね」

 

 というかどちらかというと悪い性格に入るのではないか。まあ気持ちが分かる僕も似たようなものだけど。

 

「それならどっちがお姫様を捕まえられるか賭けてみる?」

「それは賭けにならないじゃないか」

「スリザリンに賭けるなんて例え99%勝つとしても嫌だもんね!」

 

 そう言ってお互いに笑い合う。先程のハーマイオニーの姿が頭を過ぎるがまあ気にするほどでもないだろう。その選択を後悔するのはハロウィンパーティが始まってからだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「ええと、道を譲ってはくれませんか?」

 

 目の前にはグリフィンドールの上級生が数人いて私は彼らに道を塞がれていた。

 

「イレナ・アーシュ、君はスリザリンで虐められているんだろう?僕達と一緒にマクゴナガル先生に相談しよう!」

 

 目の前の正義漢達の言葉に面倒を覚えながらどう反応するべきか迷う。

 確かにスリザリンの間で私は腫れ物のように扱われているし物を隠されたり足を引っ掛けられされたりの虐めを受けているのも事実だ。

 

 かと言って目の前の彼らに反応でもしたらいよいよスリザリンでの私の居場所は無くなるし(今も無いだろとは言ってはならない)最終的にに引き起こされるのはグリフィンドール対スリザリンの全面戦争だ。

 

「今だってスリザリン達を避けるために逃げているんだろう?君のような何の罪のない人がそのような思いをするなんておかしいんだ」

 

 そういう面があるのは否定できないが今走り回ってるのは完全に別件だし、用事が済んだら虐め問題も大分楽になるだろう。そもそも物を隠されたところで呪文で呼び寄せればいいし、その他のイタズラも大した被害は無い。

 

「全てはスリザリンの唱える純血主義のせいなんだよ。あんなガキみたいな主張のせいでこの世界のマグル生まれは苦労しているのに」

「純血主義はガキの主張ではないと思います」

「何だって?」

 

 ついつい出てしまった反論に内心後悔しつつも、あの糞みたいな組み分け帽子と会話して思ったことを話す。

 

「魔法族は微塵も思ったことないと思いますがマグルは恐ろしい存在です。彼らは数で魔法族を上回り、技術力で魔法族を上回り、そして人を殺す力で魔法族を上回った」

「確かに個々人の強さではマグルは魔法族に到底及びません。ですがマグルが本気になれば魔法族を全て根絶するのは難しくないと思っています」

「なっ!そんなわけないだろ!?マグル生まれだからってマグルに幻想を抱きすぎなんじゃないか!」

「それです」

 

 私は彼らを指……を指すのは失礼なので手を向けながら話を続ける。

 

「魔法族はマグルに何の力も持たない可哀想な種族だという幻想を抱いている。丁度マグルが魔法使いという存在に幻想を抱いているのと同じようにね」

「その上で魔法族は口ではマグル生まれを差別するな、マグルは保護しろと躍起になって唱える。真の差別の土台は自分達が作っているのに」

「サラザール・スリザリンは本当に優れた人だ。他の3人は恐らくホグワーツを建てた時、自分達がマグルと魔法族の融和を成すのだと信じて疑わなかったんでしょうね。ただサラザール・スリザリンだけは自分達が生きてる間にそれが成されるとは思っておらず、自分達が死ねば一生成されることはないだろうということが分かっていた」

 

「き、君は何を言ってるんだ……?」

 

 彼らから理解できない物を見るような視線を受けても一度始まった語りが止まらないのはいわゆるオタクのサガって奴だろう。

 

「しかし彼はグリフィンドールの正義の名の元に敗北し魔法族はマグル生まれを受け入れた。その結果がマグルを遠ざけて彼らに微塵も理解を示そうとせずにマグル生まれを受け入れようとする魔法界だ」

「マグル生まれをマグルではなく魔法族として扱う。そこに今の魔法界の矛盾が詰まっている。そしてサラザール・スリザリンはその矛盾を産み出さない為にマグルと魔法界の線引きを決めようとしたのだ」

 

「………」

 

「まあサラザール・スリザリンに直接話を聞けるわけでもないし今の話に証拠があるわけでもないので、完全に子供の戯言なんですけどね」

 

 そう言って肩をすくめつつ、彼らの間を通ろうとする。彼らは各々の顔に困惑を浮かべつつも私に道を譲ってくれたのだった。

 それにしてもなんとかなったな。あの場面でグリフィンドールとスリザリンどっちに加担しても反対側から虐められることになっただろうし、下手な反論でもすれば両方から叩かれてただろう。

 その点スリザリンのことめっちゃ語りながらも特に質問には答えずにオタク特有の早口で乗り切るのはかなりグッドだったんじゃないか?コミュニケーションとしては間違いなくバッドだけど。

 

 それに今必要なのは虐めについて相談できる頼れる人ではなく頼れる部屋なのだ。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 ホグワーツの警備は魔法界でも5本の指に入るレベルだろう。原作では賊入られまくり争い起きまくりでちょっと頼りにならないイメージだが転移を封じる結界に子供達を守るには十分すぎる強さを持った教師陣(主にハグリッド)そして最終兵器ダンブルドアが備えるまさに要塞だ。

 

 だが賊の立場になって考えると個人的に1番厄介なのはゴーストの存在だ。彼等は直接的には無害だが肖像画から肖像画へと移動してあらゆるものを観測できる。

 

 つい先日僕が話したスリザリンへの自説もゴーストを通して教師に伝わったかもしれないし、彼らが目と耳になる限り透明人間になるか動物に変身するか教師や生徒に成り代わらないと突破できない。

 

 だからホグワーツにおいて何の特殊な力を持たない魔法使いが暗躍するのはとても難しいことなのだ。それはハリーの父親達が数年間掛けて動物もどきを習得したことからも分かるし(厳密にはこれは友人の為なのだが多分あいつらは悪戯の為でもあるだろう、魔法省に登録してないし)ハリーに透明マントを渡したことからも分かる。

 

 こうして見ると本当にジェームズはヤバい奴だな。

 

 そういうわけでゴーストも含めて誰もいない廊下を急ぐ。事前にホグワーツの全ての階層を回ったお陰で怪しいところは全部ピックアップしている。

 

 それにハリーが見つけた時期から考えても主に高学年が使う上層階にあるはず……数少ない見張りが注意してるのは賢者の石が眠る隠し部屋がある下層階で、そもそもクィリルは見張りじゃなくて賊。そして最大の敵のゴーストはパーティに出席している為不在。それらを考えるとハロウィンパーティを体調不良で休んで必要の部屋を探索するチャートは完璧ってわけだ。

 

 必要の部屋の出現条件である部屋の前をうろうろするのに時間は掛かったが、なんとか扉が出現したので安心した。今頃ハリー達はハーマイオニーを助けにトロールと戦ってるのかな。

 

 必要の部屋とはハリーポッターにおいて屈指のチートアイテム(というか部屋)だ。本当に必要な物を探す人間の目の前にのみ出現し、入る人間が必要とする物が存在する部屋を用意してくれるのだ。

 

 勿論用意するにも限度があり、食べ物や生き物を作り出すことはできないし存在しない物を用意することもできない。原理は分かっていないが恐らくはホグワーツのありとあらゆる隠し部屋に繋がっていて、入室する者の心を読み取って適した隠し部屋に案内するのだろう。

 

 だから私が必要としていたのはあくまでも魔法界でそこまで珍しくもないものだ。実際ダンブルドアや高名な魔法使いなら割と持ってるらしい。ただ彼らの前で使っても隠し事が露見するから意味がないわけで……

 

「ハリーポッターに転生するって分かってたなら死に物狂いで閉心術の勉強したんだがな……いや、ガキが閉心術を使ってる時点で怪しいことこの上ないな。結局舞台に上がるには憂いの篩は必要条件か」

「というか開心術がチートすぎるんだよ。これがあるから舞台に上がりたくなかったのに!全部あのクソ帽子のせいだ!」

 

 人がいる場所が言えない愚痴を募りつつ、おおよそホグワーツ一年生が持っててもおかしくない情報だけを厳選してそれ以外の物は篩に保存する。

 

 憂いの篩とは記憶を抜き出して保存する水盆だ。記憶の抜き出し自体は杖でするのだが、その記憶の保存や再現は篩がないと不可能だ。ちなみに記憶の抜き出し方法についても篩の隣にあった説明書に書いてあった。スゲェな必要の部屋。

 

「とにかくこれでダンブルドアやスネイプと対面しても危険は無くなったわけだ。一年生の時点でここを見つける時点でかなりの不良だと思われるが」

「それに寮の自室で寝泊まりするよりもここで過ごした方が安全だ。これは別に寮に命の危険があるわけじゃないけど……いや、最終的にはそれも怪しいな」

 

 必要の部屋の凄い所は既に入ってる人間がいる場合、新たに入る人間は既に入ってる人間と同じ部屋を望んだ上でその人の承認がなければ入ることはできないという所にもある。魔法界には反則的な魔法や魔法道具がたくさんあるがこの部屋はその中でも個人的にはかなり上位に入る。

 

「まあいくら必要の部屋がチートでも、私自体は何の力も持たないから尾行されてこの部屋を抑えられると終わりだ。ダンブルドアは知ってるしハリーもいつか見つけるし。ただ誰の目も存在しない、本や教科書が多数存在する、そして薬学なんかの器材も存在するというのは暗躍にピッタリすぎる。原作で悪用されなくて本当に良かった、いや死喰い人を招くも十分悪用だけど」

 

 そういうわけで私は必要の部屋を何度か出入りして準備に取り掛かり、集めたものを勉強と就寝する為の部屋に置いておくのだった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

「いやぁ、それにしても僕の呪文は見事だっただろ?まさかトロールをやっつけちゃうなんてなぁ〜」

「……まあ浮遊呪文は見事だったわ。だけど先生方が言った通り本来トロールなんて私達の手に負えるはずがないのよ!」

「大丈夫大丈夫!もし次現れても僕がパパッと退治してみせるさ!」

 

 ロンとハーマイオニーが仲良くお喋りしているのを安心して見ながら僕は考え事をしていたのだが、不自然に思ったロンに尋ねられる。

 

「どうしたのさハリー。まさか僕の勇姿に嫉妬したり?」

「するわけないだろ。ただ、あの時パーティに参加していなかったのはハーマイオニーだけじゃなかったから」

「ああ、そういえば君がご執心なイレナ嬢もあの時休んでたね」

「……まさかイレナさんのこと疑ってるの?彼女はネビルのヒキガエルを探すのを手伝ってくれた良い人よ?」

 

 ハーマイオニーがじとっとした目を向けるのを見て慌てて訂正をする。そういえばハーマイオニーとネビルに初めて会った時にもう1人手伝ってくれてる人がいるって言ってたけどイレナのことだったのか。

 

「疑ってないよ。そもそも彼女はスリザリンとスネイプに虐められてるから僕達の味方になってくれるかもしれない、そうでしょ?」

「それはそうだけど……イレナだってスリザリンだしなぁ」

「だけど組み分け帽子であんなに時間が掛かったってことは本人はそこまでスリザリン向きじゃないってことも考えられるわ!私もレイブンクローを勧められたけどそれを蹴ってこっちに来たんですもの」

「それはそれでマグル生まれなのにスリザリンに行きたがるって変な奴になると思うんだけど……」

 

 なかなか納得がいかないロンからするとイレナもスリザリンの手先らしい。

 

「まあ彼女が味方になってくれるかは置いといても、スリザリン生から見たスネイプの話は聞きたいな」

「教授に限って悪いことをしてるとはとても思えないけど……まあスリザリンが1番怪しいのは事実だから聞けることを聞くのは間違ってないと思うわ」

「だけど肝心のそのイレナの場所が分からないんだろ?ちょっと前は色んな所を走り回ってるのが目撃されたけど、最近はその話も聞かないから自室に引き篭ったんじゃないかって噂だぜ?」

「それにしてはスリザリンの動きも大人しいし……やっぱり話を聞くべきだと思う」

 

 話が平行線になり始めた時、ハーマイオニーがそういえばと話始める。

 

「さっきスネイプ教授の所に質問しに行ったらイレナがいるのを見かけたわ!もしかして教授が匿ってくれているのかも!」

「「スネイプの所にだって!?」」

 

 僕とロンの声が重なる。いやそんなどうでもいいことを気にしてる場合じゃない。

 

「それは大変なことだよ!スネイプに酷いことをされてるかもしれない!」

「いやいや、寮長が自分の寮生に嫌がらせするわけないでしょう?」

「いや……スネイプのことだ。もしかしたら抵抗されない立場を利用して自分の悪事に加担させてるかもしれない。今すぐ突入しよう」

 

 こうして僕らはスネイプの研究室へと急いで向かった。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 魔法薬学の研究室はスリザリンの談話室に近しい雰囲気だ。じめっとしていて蛇が住んでてもおかしくないような、寮監が同じだから似たのだろうか?いや、どちらもスネイプ教授が来るずっと前からそうだったのだから偶然なのだろう。

 

 私は備品を元の場所に戻しながら相も変わらず飛んでくる教授の口撃を受け流す。

 

「それで……何を企んでるのかは答えてくれないのかね、ミス・アーシュ?」

「私は純粋に動物変化呪文がこの世界で最も危険だと確信しています。だからその対策で動物変化薬とその解除薬の調合法が知りたいのです」

「ふむ、最も危険とは大きく出たなミス・アーシュ。そこまで言うには当然その理由も答えられるのだろうな?」

「勿論です。一撃で敵の魔法使いを戦闘不能にする魔術はたくさんあります。それこそ許されざる呪文の3種はどれもそうだしそれ以外にも失神呪文、麻痺呪文、武装解除呪文など多岐に渡り、闇の魔法使いは主に前者を、闇祓いは主に後者を普段使いします」

 

「ただそれは戦争という非日常の話で、私のような一般人が1番脅威に思うのは現実的な魔法犯罪、魔法による虐めです。そこで重要なのは殺傷能力や戦闘時での扱いやすさではなく、魔法を使った時の露見しにくさだと思います」

「………」

 

 スネイプ教授は無言でこちらをじっと見つめている。これは続けろという目線だと思って話を続ける

 

「本で聞き齧った知識なんですが今の魔法省が魔法犯罪を取り締まる場合、現場に残された魔法の痕跡や被害者の検分を行なって犯人を特定します。なのでここで許されざる呪文なんか使ったら容易に逆探知されて捕まっちゃうわけですね。許されざる呪文を扱える魔法使いが容易に捕まるかは別問題ですが」

「仮に、今君が許されざる呪文を唱えようとしても吾輩が君を倒すのが先だろうな」

「だから仮の話ですよ、そもそも私許されざる呪文知らないし。ただこの話で重要なのは現場や証拠が残らない魔法犯罪を追うことは難しいということです」

「成程、それで動物変化呪文か」

「そうです。変化呪文で相手を物にして放り投げる、又は持ち逃げするのもアリですが野生の動物にして本能に沿わせて行動させてしまえば証拠も被害者も確認できない、完全犯罪の成立です」

 

 スネイプ教授は無言で私の話をうかがっていたが私の話に突っ込むべきところもなかったのだろう。別の切り口から攻める。

 

「それで、それを思いついたから私から習いたいと。それで教えてくれると我が校の教授達を侮っていたのかね?」

「いえ、そういうわけではありません。私からすると死なない程度の怪我をする呪文で嫌がらせされるのは平気で、殺されるほどの恨みも買ってないからこういう悪戯めいた呪文が1番怖いんです。だからその対策を知らないと怖くて仕方ないんです」

「その割には1番に相談すべき教授の元には向かってないようだが」

「確かにこの内容ならマクゴナガル教授に相談するべきなんでしょうが……人を動物にする変身術なんてすぐに覚えられるわけないし」

「それは魔法薬学ならすぐに覚えられるという話かな?」

 

 スネイプ教授の声が低くなったのを感じて慌てて否定する。不機嫌になったスネイプ教授は面倒なんてレベルではない。

 

「呪文ではなく薬草に目を付けたのは自分がやらなくてもいいからです。存在さえ分かれば後は調べて友人に頼るなり、他人に金を渡して依頼するなりで事前に準備して後は魔法に掛かった時に飲むだけでいい。ですが他人の呪文で解除してもらうにはその人にいてもらわないといけません。掛かるコストが全然違う」

「成程、この1ヶ月間はそういった詭弁を考えていたわけか……」

「詭弁というよりは理屈ですが、私のような小心者が教授と会うには色々な準備が必要でして……」

 

 教授が目を細めて私を見通す。私の言葉に何一つ嘘が混じってないことを確認するとため息を吐いて話を始める。

 

「良かろう、そのセットが終わったら帰りたまえ。次やってくる時には動物変化薬の材料を用意する」

「本当ですか!?」

「勘違いするな、吾輩は貴様が勝手に魔法薬を他人に作らせることを断じて許さない。自分で作れるようになるまで今までの手伝いと並行しろ」

「……ありがとうございます」

 

 ふう、これで来年の騒動も解決の目処が立った。スネイプ教授に感謝の念を込めながら研究室を後にする。

 

 

 

 ルンルン気分で歩いてたら急いだ様子のハリー達と遭遇する。そういえばハーマイオニーとは会話したけどコイツらには自己紹介もしてないな。ちょうどいい機会だし自己紹介でもするか。

 

「おや、お急ぎのようですが何かありましたか?あ、私はイレナ・アーシュと申します(精一杯のコミュニーション能力)」

「久しぶりねイレナ!こっちはあのハリー・ポッターとロン・ウィーズリーよ」

「「よろしく」」

 

 2人は声を揃えて挨拶する。仲良さそうだなとぼんやり思ってると3人は慌てたように話し始めた。

 

「そういえば最近はスネイプ教授のところにいるって聞いたけど何をしているの?」

「僕達はスネイプがトロール事件に関与してるんじゃないかと疑ってるんだ」

「スネイプ教授、ね」

 

 ああ、そういえばトロール事件なんてあったな。その時は忙しかったから大して気にもしてなかった。それが何故スネイプ教授が怪しいって話に?

 

「実はスネイプ教授がダンブルドアが隠してる秘宝を狙ってるんじゃないかと思ってるんだ」

「ハリー!」

「秘宝?」

「う、うん。それが何かまでは知らないけど、スネイプが普段見張りをしているクィレル教授に脅していた姿を見たんだ」

 

 両方から嗜められているハリーを見ながら考えを巡らせる。確かにハリーは英雄だし目撃証言にも一定の信憑性があるとは思うが、それを加味してもスネイプ教授が犯人とは断言できない。むしろ見た目的にはクィレルの方が怪しいだろう、なんだよターバンって。

 

「まあ私の方から言えるものは少ないですが、最近の私はスネイプ教授の元でアルバイトしているんですよ」

「「「アルバイト???」」」

「いえ、実は私って孤児院の生まれでして……学費無しって言葉でホグワーツに釣られたはいいものの、教科書代や備品代を工面する為に多少のお金が必要になってしまって」

「うぅん、僕はよく分からないけど孤児院からの援助はないのかい?」

「それは勿論あるのですが……壊されたり失くした持ち物を買い替えるほどのお金はないので」

「あぁ、うん。聞かなくてもいいことまで聞いちゃってごめん」

 

 ハリー達は申し訳なさそうに謝ってくる。個人的にはそのお陰で出来ることもあるので助かってるんだが、余計なことは言わないようにしよう。

 

「大丈夫です。そういうわけで寮監のスネイプ教授に相談したら、それならちょうどいいって仕事を出してくれて……」

「やっぱりスネイプ教授って良い人なんじゃない?」

「う、いや、だけどあの人は僕や君達を目の敵にしているし……」

「ハリーから見るとそうなのかもしれないけど、私は別にスネイプ教授がグリフィンドールを目の敵にしててもおかしくないと思うし」

 

 ワイワイ言い始めた3人を見つつ私は門限が近づいていることを確認する。私はいいけど3人は大丈夫なのだろうか。それとも3人は門限破りが常習犯になるくらいの不良だったりとか?いや天才ハーマイオニーと英雄ハリー・ポッターに限ってそんなわけないな、ハハハ!

 

「では私はそろそろ行きますね。門限も迫っているし」

「あっ!ヤバいよハリー!急がなきゃ!」

「ありがとうねイレナさん!」

 

 忙しそうにする3人を見送りながら私はスリザリンの談話室がある地下ではなく上の階へと登る。

 

 

 

「あー、そういえばイレナが普段どこにいるのか聞きそびれたな。まあいいか」

「どうしたの?ハリー」

「ううん!なんでもない」

 




イレナはスネイプとの会話で許されざる呪文について魔法犯罪に向かないと言ってますがひとつだけ大好きな呪文があります。
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