狂兵でしょうか?いいえ、漂流者です   作:三途リバー

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燃えよ剣

 

音を半ば置き去りにした豊久の吶喊に、セイバーは深手を負ってなお反応した。

いや、正確には反応()()()()()と言うべきか。

セイバーの身体への負担など度外視した魔力頼りの超反応は、その代償として彼女の傷口から泥のような血を噴出させる。

 

「ふっ、ぐぅあァァァっっっ………!!」

 

「シィッ!!!」

 

それを避けようともせず、豊久は波平に満身の力を込めた。

 

セイバーの首の皮一枚を掠めたところで、波平は聖剣に阻まれる。

文字通り血反吐を吐きながらの鍔迫り合いによって両者の魔力は飛散し、周囲の空間を歪めていった。緋と黒、二色に具現化した魔力が2人を中心に爆ぜていく。

 

「────卑王、鉄槌……!極光は反転する!」

 

だがその様相も、セイバーの言葉と共に一変する。

それまでバチバチと断続的に弾けていた魔力が聖剣へと集約され、その刀身は赤黒く輝く。拮抗していた波平が徐々に押し返され、やがて完全に豊久が弾き飛ばされた。

 

「光を呑め!『約束された(エクスカリバー)』……」

 

逆袈裟に構えられた聖剣から、爆発のように魔力が吹き出す。

その威力は、余波でセイバーの足元が溶け落ちるほどのものだった。

 

「『勝利の剣(モルガーン)』!!!」

 

宣言通り、全てを喰らい尽くして塗り潰す、そんな黒光が豊久に迫る。

常人ならば避けようと足掻くか、それ以前に恐怖で足が竦んで動けすらしない。

 

 

 

 

 

されど男は、常人にあらず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右手は柄頭を握り締め、左手は切先を載せるように添える。

重心を落とし、身体を滑らせ、必殺の宝具に錯撃を喰らわせんと豊久は牙を剥く。頬の真横を光が通り過ぎ、肉を焼く異音が響こうとも止まらない。目を逸らさない。

ただ一瞬の大振りの隙、魔力を出し切り反応もできないセイバーの刹那の間を狙って駆ける。

 

その技は、タイ捨ではない。示現でもなく、戦場で培った我流の刀術ですらない。

 

「借りっど」

 

それはかつて、好敵手が放った最期の一撃。

無数の流派が入り乱れる都を、銃火器飛び交う戦場を戦い抜き、血に染め……豊久を()()()()()鬼の剣。

 

 

 

────盗人野郎が。

 

 

苦々しげに、しかしどこか満足気に。

吐き捨てる異装の武士(さぶらい)の姿が、刃を繰り出す豊久に重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まった時、マシュに庇われた私が目にしたのは抱き合う様に豊久さんにもたれかかるセイバーの姿だった。

 

足元にはおびただしい血痕が飛び散り、彼女の鎧も、それを抱き留める豊久さんの体も鮮血に染まっている。

 

「──……──……」

 

「──────。──。」

 

「…──、────。…──…─……」

 

二言、三言。爆風にやられ、耳鳴りのする私には拾えない会話がなされるうちに、豊久さんの腕から光の粒子が立ち上り始めた。

仏頂面で、どこか痛ましいものを見るような豊久さんとは反対に、消えかかるセイバーはどこか穏やかな顔付きをしている。

 

ふと、彼女の視線がこちらに向いた。

 

(て、ば、な、す、な)

 

聞こえずとも分かる、口の動き。

その意味を問い正そうとした時には、既にセイバーの霊核は宙に溶けていた。

 

「勝っ……た、の…?」

 

呆けたような所長の声で、浮ついていた私の意識が漸く状況を認識し始めた。

 

「豊久さ」

 

「ふん、所詮は駒か」

 

その声を聴いた瞬間、忘れかけていた怖気が再び背筋を這い回る。 そうだ、まだだ。まだ、終わっていない──!

 

「マシュ!」

 

「はい!!」

 

最早ツーカー、指示を出さずともマシュは前へと飛び出していく。

なにやってんのと慌てるジェルミさんを尻目に、マシュは躊躇うことなく鉄塊をレフ教授へとぶっつけた。

 

「随分とお転婆に育ったな、マシュ。無菌室の中で朽ちていくだけのモルモットが」

 

「レフ、教授ッ…!」

 

しかし容易くそれを受け止め、レフ教授は厭らしい笑みを顔に貼り付ける。

あの視線、あの物言い、そしてあの膂力。

 

「人間じゃ…ない…!?」

 

足が竦む感覚に囚われ、無意識のうちに後ずさろうとしたその瞬間。

 

「置き土産だ!」

 

突如として地面から生えた木が、教授の身体を()()()()

 

「消え掛けの野良犬が!!」

 

「ハッ、らしい声も出せるじゃねぇか!偉ぶった物言いよりよっぽど似合うぜ三下!」

 

キャスターの声に応じ、巨人の腕の如き大木は炎に包まれる。

 

「おい嬢ちゃん!」

 

「はっ、はいぃ!?」

 

呆気に取られ、またまた飛んで行った意識を無理やり叩き起すようにキャスターは私を怒鳴りつけた。

 

「オレぁもう限界だ!野郎を仕留めきるまでは流石に保たねぇ!最後のお節介と思ってよぉく聞きやがれ!」

 

気付けば、キャスターの身体からも粒子が立ち上っている。聖杯戦争を最後まで生き延び、勝者となってもいつまでも現世には居続けられないということか。

 

「キャスター…!」

 

「生き延びろ!んでもってまたオレを呼べ!今度ぁ槍持った状態でな!あとオカマぁ!!!」

 

「何!?今ちょっとそれどころじゃないんだけど!」

 

炎が生み出す風に煽られ、ジェルミさんが怒鳴り返す。

 

()()()()を死なすなよ!そいつの心臓はオレが奪る!」

 

「なに言いやがるクソボケが。奪られるのはおいじゃない」

 

笑顔を残し、消え行くキャスターに応えるように。

彼が繋いだ一隅の機を無にせぬように。

 

「くぅふぅりん、貴様(きさん)よ!」

 

豊久さんは、()()()()()()()突っ込んでいく。

 

「チェストぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!!!!」

 

焔に巻かれた大樹諸共、裂帛の斬撃が影を断ち割った。

 

 




ドリフターズ4巻、アニメだと最終回、土方が豊久にトドメを刺そうとしたシーンを皆さん覚えておいででしょうか。

ドワーフ親方によって阻まれましたが、あの瞬間、明らかに牙〇構えてましたよね。
史実の土方は諸手突きを得意としていたそうですが(信憑性は正直微妙)、憎き薩奸に引導渡すなら自分の最強を、新撰組土方歳三としての在り方を懸けた一撃を選択したんじゃないかなっていう勝手な妄想であの片手平突きをここまで擦りました。
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