狂兵でしょうか?いいえ、漂流者です   作:三途リバー

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なぜかこのタイミングでめちゃくちゃ多くの方に読んでいただけて、わけも分からず狂喜乱舞です


Fire Wars

 

『すごい、すごいぞ!3対1とは言え、あのアーサー王と対等に戦えてる!しかも相手は聖杯のバックアップを受けて魔力が無尽蔵になってる状態だ!』

 

通信機から場違いなほど興奮したドクターの声が響く。

だがそれも無理はない。

 

豊久さんが飛び出て切り結び、その隙にキャスターが仕掛けを設置。敵の足が止まったところにマシュが重い一撃を叩き込むという、初めて共闘したとは思えないほどの連携がセイバーを攻め立てている。

セイバーの異常なほどの硬さのせいで伝わりにくいが、攻撃は何度も何度も当たっている。着実にダメージは蓄積している筈だ。

 

『これはもしかしたら、もしかするかもしれないぞぅ!』

 

魔術士として、アーサー王という存在の大きさを誰より知るであろうドクターの興奮を窘めるのは酷な話かも────

 

 

「寝言は寝て言いなさい」

 

 

ぴしゃりとした一言は、所長のものだった。

思わず彼女の顔を覗き込むが、その瞳は私やジェルミさんを映していない。ぶれることなく、真っ直ぐに眼前の戦いへと向けられている。

 

「対等?どうにかなる()()?馬鹿言わないで、私達はあれを倒して、この特異点をどうにか()()の。善戦程度で喜んでちゃ世話ないわ、力いれなさい藤丸、ロマニ!喜ぶにはまだ早いわよ!」

 

「「・・・・」」

 

「な、なによサンジェルミ伯まで黙りこくって。私はカルデアのトップとして当然のことを…」

 

「いや誰よアンタ。ヒステリックキレ芸人おるがま☆あにむすはどこ行ったのよ」

 

「と、豊久さんに怒りすぎて血管何本か切れちゃった…?」

 

「そろそろ本気でシバキ回すわよあなた達」

 

いやふざけてるとかそういうわけではなく。

えっ待って所長こんなイケ女司令官キャラだっけ!?確かに責任感は強いし実は優しかったりと片鱗は見せてたけど!

 

『ふぐぅ・・』

 

「今度は何!?」

 

『ほんとごめん今本気で感動して泣きそう…』

 

 

 

 

 

 

「いやはや、全くその通り。見違えたよ、オルガ。現実から目を背け、運命を呪い、他人に当たるしかなかった小娘とは思えない」

 

 

 

 

 

悪寒。

恐怖とはまた違う、原始的な嫌悪感。

その声が耳に入った瞬間、背筋をいやな電流が撫でるような耐え難い不快感が私を襲った。

 

「あ・・・」

 

「魔術師三日会わざれば刮目して見よ、と言ったところかな。くく、皮肉なものじゃないか。あれほど欲していたレイシフト適正と長としての器を、そんなザマになって一度に手に入れるとは」

 

高台から姿を見せたのは、つい数時間前に言葉を交わした筈の人。

だけどその時とは決定的に()()。見え方が、在り方が、存在そのものが、最後にあった時とは違いすぎる。

 

「レフ・ライノール…」

 

「これはこれはサンジェルマン伯。貴方もここへ来ていたとは想定外だよ。それにマスター候補48番、最後の落ちこぼれ…君がイレギュラーを2騎も使役するとは思いもよらなかった。オルガの成長と言い、君らの存在と言い、ここへ来て驚きの連続だ。私の予想をこうも次々と裏切られると………」

 

あれは、人を見る目じゃない。対等な存在へ向ける憎悪の視線なんかじゃない。あれは最早…

 

「不快極まるぞ、矮小なクソ蛆虫どもが…!」

 

そう、虫けら。取るに足りない格下へと向ける侮蔑だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本丸(マスター)の異変をいち早く察知したのはマシュだった。

あるじの周辺を取り巻く異様な雰囲気に、彼女は思わず振り向いてしまう。

 

「戦場で目を逸らすか、小娘!」

 

「!!」

 

それを見逃すほど、騎士王は甘くない。

硬直したマシュの首筋に聖剣が吸い込まれ──

 

ガキィッ!!!!

 

「イレギュラー…!」

 

赤い血飛沫を舞わせる直前、交叉した二振りの刀に阻まれた。

 

「重か一撃じゃのう。鋭か剣じゃのう」

 

野太刀と短刀代わりの打刀で器用に聖剣を挟んだまま、豊久は両腕の力を抜く。

 

「っ──!?」

 

「じゃっどん、叔父上の太刀には及ばんのう!」

 

豊久とセイバーの視線が交錯したのも一瞬のこと。

 

「どっせぇい!」

 

セイバーが口を開くよりも速く、その身は軽々と宙に放り出されていた。

 

「でかした!!」

 

無論、中空で受身を取れない敵の隙をキャスターが突かない筈もなく。

 

「猿真似以上本場未満ってなァ!!」

 

みしりと音が響く程に握り締めた杖から炎が立ち上り、石突がセイバーの姿へ狙い済まされる。

 

「『罪咎焦がす炎罰の杖(ゲイボルグ・ディグレイド)』!!」

 

胸板が地面に付きそうなほど低い体勢で放たれたのは、キャスターの偽称宝具……即ち、炎を撒いて奔る杖の全力投擲(今思い付いたそれっぽい必殺技)

 

呪いの槍を持たずとも、クラス適正がなかろうと、クー・フーリンは戦才溢れる万夫不当の勇士である。その全力を以て放たれる一撃は、いかな騎士王とて万全でなくば受けきれない。

 

「がはっっっ!!!!!」

 

炎と血による赤い軌跡を描き、貫いたセイバーの身体ごと杖は岩肌に突き刺さった。

 

「ぎ、あ…ぐ、ぅおおおぉあぁぁッッ………!!!」

 

「マジかよオイ、そりゃあ滅茶苦茶が過ぎんだろッ!?」

 

しかしそれでもセイバーは動きを止めない。

刺し貫かれ、磔にされてなお腹部の杖を引き抜こうと力を込める。少しずつ、されど着実に杖が抜けていくさまを見て流石のキャスターの顔にも冷や汗が浮かんだ。

 

「終わらんッ……まだ、私は…終われないィッ!!聖杯を、選定を、今一度……っ」

 

大量の血と、臓物すらもぶちまけながらセイバーは大地を踏みしめる。

一刻も早くマスターの下へ駆け寄ろうとしたマシュの足が止まるほど、その姿は凄惨だった。

 

「ますたぁば守れ、ましゅ」

 

進み出たのは緋い影。

その手に握られた刀は、もう刃が返されてなどいない。

全霊の殺意と翻意をもって、島津豊久は立ち塞がった。

 

「どういう風の吹き回しだ?首いらねぇんじゃなかったのかよ」

 

「応、いらん。いらんじゃっどん、あれは介錯してやらねばならん」

 

その目に映るのは、最早執念だけで歩いているであろう女子の姿。生気もなく、力もなく、ただ奇跡に縋る渇望だけを宿した痛ましい姿だ。

 

「お節介だねぇ。この聖杯戦争が終われば、アイツはまた聖杯を求める。成し遂げねぇ限り同じく血みどろで進むぞ。サーヴァントなんてのは所詮そんなもんだ。何も変わらねぇ、止まらねぇ。てめぇの願い叶えるまで七転八倒転がり続ける残骸だ。おめぇも俺も含めて……」

 

 

「そがいなこつ、おいが知ったことか!!」

 

 

雷霆。

そう、まるで雷霆のようにその言は戦場に響き渡った。

 

問うたキャスターが、身体を引き摺るセイバーが、主の下へ馳せ参じようとしたマシュが、闖入者と対峙していた立香達が、そして当の闖入者さえもが。

 

皆その動きを止め、意識を全て持っていかれるほどの咆哮。

 

「島津中務少輔豊久。介錯仕る」

 

そんな中、豊久はひとり動き出す。

野太刀を担ぎ、姿勢を落とし、獲物へ飛びかかる直前の獣のように全身を()()()()

 

「……阿呆か、貴様」

 

思わずと言ったようにセイバーの口から零れた罵倒。しかしその口元は微かに笑みを象ってさえいる。

 

「阿呆はうぬじゃ、あぁさぁ・ぺんどらごん」

 

言の葉を残し、絶速の踏み込みが大地を砕いた。

決着の刻は、近い。

 




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