DMMO RPGユグドラシル、多くの熱狂的ファンに愛された人気ゲーム。
12年の歳月が流れ今宵最後を迎える。
最後の時まで後十数分という中、ユグドラシルの中でも伝説的なギルド、アインズウールゴウンのギルド長であるモモンガは悲壮に包まれていた。
ブラック企業に勤めるヘロヘロさんが来訪し、久しぶりの会話を行えたが仕事の疲れからログアウトしてしまった。
一人寂しく過去を振り返るモモンガだが唯一今日までログインし続けた友を不安の中で待っていた。
「リリカルさん、最後まで一緒にプレイしましょうって約束したのになぁ」
オーバーロードの赤い炎のような目で天井を眺めながら呟く。
「そうだ、玉座の間でラスボスみたいに待ってよう!!NPCたちも並べて魔王みたいに!!」
魔王ロールをしながらの掛け合いは普段から二人の鉄板ネタとして何度なく行ってきたことである。
まぁ、最後の時にやると打ち切り漫画のようだけどそれもまた面白い。
決めたら早く容赦が無いのがモモンガである。
玉座には集められるだけの僕が並べられることであろう。
一人の会社員が自宅に急ぐ、人が住むには地獄となったこの世の中で唯一の癒しであるユグドラシル。最後の時をいっしょに迎えようと約束した友人に会うために・・・
なんとかログインすることができたが終了までは残り数分しかない。
モモンガのログインは確認できたので玉座まで光の粒子を撒きながら全力で滑空する。
彼のアバターは、妖精種で子供の容姿を取ってある。中性的で可愛い見た目をしている。
服装は白のシャツに、金の刺繍が入った煌びやかなベストを合わせ、黒ズボンと皮のブーツになる。貴族の子供という表現がしっくりくる見た目である。
人間と違うのは蝶のような羽を持ち光の粒子を発生させているところである。
「モモンガさん!!」
玉座の間へ滑り込んだリリカルはギルド長の名を叫んだ。
玉座には絶望のオーラを纏いスタッフオブアインズウールゴウンを手にしているモモンガ。すぐ横にはアルベドが立っていた。
ここまでなら割といつも通りなのだが、玉座までの道の左右には階層守護者たちの直属である高レベルNPCが列を成しており、ガルガンチュアを除く階層守護者たちとセバス率いるプレアデスもモモンガの玉座近くで待機している。
この大盤振る舞いに硬直するリリカルを前に、モモンガは内心イタズラが成功した子供のように喜んでいた。
「よく来たな・・・リリカルよ貴様の勇気は賞賛に値するが・・・いかな貴様とてナザリックが誇る精鋭を前には手も足も出まい」
眼光に炎が灯りモモンガがリリカルを射貫く、完璧な魔王ロールである。
「くっ、流石はナザリックの支配者であるモモンガだっ!!ここまでの戦力を持って対峙するとは、こうなれば最後の抵抗をするしかあるまい・・・」
打ち合わせなしに行われるこのてのやり取りは二人が大好きな掛け合いである。最後に出来て良かったとモモンガは嬉しさと悲しさを感じながら続ける。時間はもう僅かであるがいかにして落とすのかを期待するモモンガ。
「よかろう、勝敗は決している。貴様の足掻き見届けてやろう!!」
モモンガは立ち上がりリリカルへ近づいていく。
「ペロロンチーノ、ぶくぶく茶釜秘伝の奥義受けてみろ!!」
「え?」
一気に空気が変わった。先程までの緊迫した様相から一転し、予測してなかった空気となる。
特に不安にさせたのがペロロンチーノの名前が出たからだ。業の深さは他のギルメン達も認める変態ペロロンチーノいったい何が行われるんだ!!
瞬間衣装が変わる。先程とは違うフリルをあしらい、薔薇が散りばめられた紫のドレスに変わった。そして、乙女座りとなり、右手で傾いた体を支えながら、左手を自身の頬に添えて小指を唇にあてる。
すると、玉座の間の光が消えてリリカルがライトアップされる。
(えっ?!なにこれ!?えっ)
映し出されたリリカルはモモンガを睨み
「乱暴するのね・・・、薄い本みたいに、あなたがもってる薄い本みたいに!!」
「ひょっ!?」
モモンガの無意識に漏れた悲鳴と共にまた暗転し再び明るくなった時にはそこにリリカルはおらず、メモがモモンガの前に置かれていた。
メモ「姿勢指導ペロロンチーノ、演技指導ぶくぶく茶釜、演出るし★ふぁー」
時の流れを忘れていた二人だがこの時既に0時をまわっていたのである。
最後に言っておくがリリカルのアバターは、一応男である!!大事なことなのでもう一度言うリリカルは可愛いが、男である!!