夢幻のリザレクティア 作:瑤姫
「ごめん……今から君を、治すよ。本当に、ごめん」
逆光で顔の見えない男。果てしない苦痛と果ての無い虚無感と──死の淵に来る冷たさに、声もまともに宇覚えていない。
ただ、光差すような声が。ただ、私を暗闇より救い上げる声が。
「君は僕を好きになってしまうだろうから──だから、ごめん」
脳裏にこびりついて、離れない。
「……はぁ。えと、それで僕に何の用でしょうか……?」
「知らないか、と聞いている。男の回復術師は少ないだろう? だから、知り合いにそういった奴がいないかと聞いているんだ」
「えっと……ごめんなさい、知らないです」
昼休み。
いつも通り一人でお弁当を食べていたら、突然話しかけられての――これ。
彼女の名は緋央茜。校内でも有数のA級保持者であり、カースト的に見ても僕より遥か上にいる存在。僕のようなC級保持者とは天と地ほどの差のある相手だ。勿論あっちが天で。
そんな彼女が僕なんかに何用かというと、昨日のこと……戦場でやらかした際に己を助けてくれただ"男の回復術師"を探しているのだとか。
校内の男子回復術師全員に聞いて回っているとかで、いやはや、律儀というかなんというか。
「そうか。時間を取らせたな」
緋央さんはそれだけ言い残してクラスを出て行く。もうすぐ昼休みも終わるというのに、他のクラスの回復術師をあたりに行くのだろうか。
「ちょっと茜! もう授業始まるよ? 戻って戻ってー」
「青羽、わかったから押すな押すな」
あ、帰って来た。
国立能力保持者育成学園──通称アカデミア。
全国から特殊な能力を持つ子供をかき集めて育て上げる学園であり、在園生徒は戦場──デーモン、あるいは単純に悪魔と呼ばれる侵略生物との戦地に送られる。
在園生徒にはSからEまでの等級区分が振り分けられ、戦闘者、支援者、などと言った細かい括りを与えられ──学園生活を行いながら、襲い来る悪魔より人類を守り通す。今はまだ現実的じゃないけれど、あわよくば悪魔共を殲滅し、完全なる平和を掴み取る事。それが最終目的と言えるだろう。
冴えない根暗男子Cこと僕、夢野透もアカデミアに通う生徒の一人だ。
括りは支援者のC級保持者。緋央さんも言っていたように、珍しい男子の回復術師。回復術師はどうにも女性に偏る傾向にあって、それが何故なのかは日夜研究されているものの、特にこれと言った理由は発見されていない。ただ事実として現実としてそうである、というだけ。
まぁレア度は高い方ってこと。C級だけど。
昼休み終わり。まだまだ授業は残っていて、加えて夜には悪魔との戦闘があるものだから、英気は養わなければならない。
ただ、授業中に寝る──なんてことは許されない。サボりもだ。一応エリート校ではある、ということ。特殊な能力を持っていても不良である生徒は別の育成施設に送られるので、昼間の内だけでも"学生"をやらせて貰えている事を胸に、授業は真面目に受けなければならない。
「授業を始めるぞー。みんないるかー?」
だから、時間ぴったりにやって来た教師のこの問いは意味のないものだし、さっき時間ギリギリまで人探しをしようとしていた緋央さんは割と特殊な部類であるのだ。
「よーし。じゃあ始めるぞ。魔力効率化理論の続きだ」
今日も。
あまり身のためになるとは言えない授業が始まる──。
「終わったー!」
「俺今日出動じゃないから帰るわー」
「マジ? ギムナジウム寄らねえ? クソ暑いから泳ぎたいんだけど」
「あー、一時間だけなら付き合うよ」
「保坂も来るだろ?」
「行くよー」
ようやく一日の授業が終わり、途端騒がしくなる教室。
仲のいいグループが放課後の予定を話し合い、男女共にガヤガヤとした雑音に溢れ始める。
その中で、一人。
どのグループにも入らず、孤高キメて帰り支度をしている奴がいた。
まぁ僕なんだけど。
好きで孤高キメてるわけじゃない。さっきも述べたように男子の回復術師というのは希少で、だからこそ話の合う合わないが交友関係にまで出る。このクラスにいる回復術師は僕以外だと全員女子で、流石にその輪に入るのは憚られる。必然、孤立する。
無理に話を合わせればいいだけ、と思われるかもしれないけど、支援者は支援者の、戦闘者は戦闘者の気持ちしかわからない。共感できないのだ。その能力を使えないから。類似能力を持つ子や魔法適正が似通っている子を見つけられたらワンチャンあったかもしれないけれど、少なくともこのクラスにはいなかった。だから一人。
言い訳しないで言うと、コミュ障だから、一人。
ざわつく教室内が段々と静かになっていく。それはつまり、みんながみんな出て行って、人が減っているからに外ならず。
そうやって一人になってから、ようやく教室を後にできる。
……はず、だったんだけど。
「……」
「……」
「……」
「……えと」
睨まれている。
すごく。ひどく。物凄く。
むすっとした顔で、「私はあなたに文句がありますよ」と表情で語っている。
「なに、かな?」
「何故」
「あはい」
「帰り支度をしているのでしょうか──と。問います」
「それは、うん。帰るためだね」
「何故、と。再度問いますが」
「何故も何も……授業が終わったから、帰る。何か、ダメかな」
僕を睨みつけてきているのは少女。
B級保持者の戦闘者。古谷里香さん。
「記憶違いでなければ、あなたは今日私とタッグを組んで出動する──違いますか?」
「ああ、そういうこともあるかもね」
「はい。かも、ではなく、そうです」
「けど一度寮に帰るのは、別に悪い事ではない、よね?」
「いいえ、悪いです。一夜とはいえ、これから背を預ける仲になるのですから、お互いの動きを知るためにギムナジウムで戦闘訓練を行うべきだと思います」
「あー、うん。ほら、シミュレーターの、支援NPCの回復術師Cを選んでくれたら、大体僕の動きと同じだと思うよ」
「NPCでは声かけに反応しません。わかっているんですか? 私達はこれから、命を懸けた戦場に向かうんですよ? そんな熱の無い心持ちで、無事に帰ってこれると思っているんですか?」
あー、うん。
熱血ちゃんか……。
確かに今日、僕と古谷さんは出動だ。
出動。読んで字のごとく。
悪魔撃退のために日夜勉学や訓練に励んでいる僕達だけど、何も毎日毎日戦わされる、ということはない。出動日、というものが決まっていて、さらにはタッグを組む相手も学園側が決めて。軍部に上がって、どんな状況でも戦えるように、と戦地に向かわされる。
だからまぁ、古谷さんの言いたいことはわかる。相手をさせられるのが低級の悪魔とはいえ、すり合わせをしておきたい、という気持ちは確かにわかる。
わかるけどさ。
「授業の後に、訓練して、実戦は……疲れちゃうよ」
「……」
またむすっとした表情になる古谷さん。
うーん。これは、認識の差という奴かな。古谷さんは不安、なんだろうか。低級の悪魔でも、ほとんどしゃべったことの無い相手と組むのは危機を覚える、とか。
僕が不真面目、という事はないと思う。同じことを言われて断る生徒は多いはずだ。むしろ戦場に疲弊した状態で、注意力散漫な状態で向かう方が危険だと思う子も多いだろう。
「あー。夢野透。能力、適性魔法共に回復系……肉体回復、精神回復、魔力回復みたいなマイナーなものも使えるよ。……これじゃダメかな」
「……古谷里香。近接戦闘者です。使用武器はチャクラム。括りは近接戦闘者ですが、遠距離にも対応可能です」
「うん、わかった。じゃあ、僕はこれで」
カバンを持って、立ち上がる。
立ち上がって教室の出口まで。その間ずーっと古谷さんは僕を睨んでいたけれど、気にしない方向で。
大丈夫、ちゃんとやるから。どうせ──やることは、同じだから。
「またあとでね、古谷さん」
返事は無かった。
さて、その戦場である。
悪魔は夜にしか活動しない。だからこそ昼間に学園生活を送ることができているのだけど、何故彼らが夜にしか活動できないのか、はまだ解明されていない。わかっているのは、逢魔が時を境に現れ、夜が更ける程その強さを増して行き、朝に近づくに連れ弱体化していく……そんな存在である、ということだけ。
だから、それまでだ。
それまで僕らが悪魔を抑えきればいい。ただそれだけ。
出動者にはそれぞれ担当区画があり、上級悪魔の出る区画は軍部の人たちが対応する。学生に回されるのは基本低級悪魔の出現区画だけど、緋央さんのような学生にして十分に戦い得る子は中級・上級悪魔の出る区画に出されたりもする。
「夢野透」
「やぁ、こんばんは、古谷さん」
「……落ち着いていますね」
「まぁ、初めてじゃないしね」
戦闘において、戦闘服というものは各自の判断に任される。学園内で売っているものを使う子もいれば、普段着を戦闘服にする子もいる。動きやすい服装で。それを最低条件に、悪魔に勝ちさえすればなんでもいい、やる気が出るならなんでもいい、という方針だ。
だからたまに、変なコスプレをしてくる子もいる。
幸いにして……だろうか。古谷さんはそういうタイプではなく、Tシャツに短パン、強化繊維のインナースーツという、機能美というべきかちぐはぐというべきかわからない格好で来た。
ちなみに僕はジャージ。なんだかんだ言ってこれが一番動きやすいし。
「……夢野透」
「うん?」
「それは?」
ソレ、と。
古谷さんが指さす先。それは僕の腰。その両側についた、金属の棒。
凡そ回復術師が持つ物ではないそれに、興味が湧いたのだろう。
「トンファーだよ。暴徒制圧用の非殺傷武器。まぁ、護身用だね」
「近接戦闘ができるのですか?」
「護身程度にはね。悪魔を倒せる程じゃないよ」
「……そうですか。なら、やはりあなたは前に出ることなく、支援に徹してください」
「うん、そのつもり」
ガラ、とドアが開く。轟と流れ込んでくる空気。冷たい空気だ。夜の空気。
いつもより近い空に、二人。
何を付けるということなく落下する。
そう、ここは戦場。その上空。
低級とはいえ数多の悪魔蔓延る戦地へ、文字通り投下されたのだ。
「確認されている悪魔は二十二体。どれもが低級。ですが、油断は禁物です」
「古谷さん、どれだけ離れても、どれだけ暴れても構わないからね。僕の回復術に射程は無いから」
「……了解です」
うん、今なら彼女の心が読めるよ。「だからそういうのを事前に擦り合わせしておきたかった」。無線越しでも、彼女の顔にそう書いてあるのが見える。
その上で少しだけ心配そうな声色なのは、そんなスペックの魔法や能力が使えるとしたら、C級保持者には振り分けされないと知っているからだろう。つまり、C級保持者である以上は、何かしらデメリットがあると。
それを話さないから。事前に教えないから。
だから彼女は、こうも不安がっている。
もうすぐ地面だ。
「斬走……!」
古谷さんが言霊を一つ呟く。言葉と共に形成されるは緑白い巨大チャクラム。ごっそり減った彼女の魔力は、しかしそれ以上減る事はない。一度作ってしまえば後は自由に動かせるタイプか。
僕らはそれぞれ戦場へ着地する。高所より落ちてダメージ無く着地する、という魔法は、適性に関係なく最初に覚えさせられるものだ。ゆえにコレで怪我をする者はいない。
「行きます!」
「マナ・コントラクト」
巨大チャクラムを車輪のように戦場を駆け始めた古谷さんにパスを繋げる。彼女が今失った分の魔力を回復させる魔法だ。正確には分け与えてるだけなんだけど。僕は僕で魔力回復を自己で行って、回復魔法の使用に支障が無いよう調節する。
荒野の戦場に緑白い斬撃が走り回る。流石はB級保持者、低級悪魔の装甲なんかものともしない。無策にも向かってきた青い外皮の悪魔をスッパリサッパリ切り裂いて駆け抜ける。
車輪状態のチャクラムは進行方向と後方に斬撃を行い、それが高速移動するのだから悪魔たちは避けるしかない。翼を持つ者は空へ。持たざる者は地中へ。ああ、けれど、地中は悪手だ。相当深くまで潜らないとチャクラムによって背を抉られてしまう。
そして、空中とて安全圏ではない。
チャクラムとは投擲武器だ。つまり、遠くにいる者にこそ本来の効果を発揮する。
戦地を爆走した回転率のまま射出されるチャクラム。それは凄まじい速度と凄まじい精度を以て、空に逃げ果せた悪魔の体を両断する。
二枚、射出して──終わり、ではない。まるでブーメランのように彼女の手に戻ってくるチャクラム。避けて、受け止めて終わりではないと気付いたのだろう。悪魔たちはギャイギャイと何かを騒ぎ立てながら、その口に魔力を集束させ始める。
低級悪魔の基本技能、魔力球。あんな小さなものでも当たれば骨折は免れない。頭部へ直撃などしたら、頭蓋骨や首の骨が折れる、なんてこともあるだろう。人体を抉る程までの威力は出ないけれど、十二分に脅威と言える。
それを一斉に溜め──古谷さんに向かって撃ち出した。
全方位からのその攻撃に、さしもの古谷さんも防御姿勢になる……と思いきや。
ゴリ、ゴリッとこそがれる古谷さんの魔力。それはさらなるチャクラムを形成した事を意味する。
初めから出していたもの含めて、六枚。
彼女はそれを、防御に回す……ことなく射出する。六枚が六枚、不規則な弧を描いて悪魔を撃破していく。彼女の身に魔力球が直撃しているにもかかわらず、だ。悪魔たちがどれほど魔力球をぶち当てようと、どれほど凄惨な音が響こうと──悪魔を断つ刃は止まらない。
たかだか二十二体──六枚刃の敵ではなかった。
魔力球の着弾。それにより立ち昇った砂煙が収まった頃。
戦場にあったのは、悪魔特有の碧い血に溢れた地獄だけ。人間の赤はどこにもない。
中心地には、無傷の古谷さんが立っていた。
彼女に近づく。
「……お疲れ様です」
「うん、お疲れ様。凄いね、キルタイムは十分もかかってないよ。二十一体を相手にコレなら、A級も夢じゃないんじゃない?」
「いえ……夢野透。あなたの回復があってこそです。それに、今の私には明確な弱点があります。それを克服しない限りはA級など足元も見えないでしょう」
彼女の弱点。
まぁ、推測だけど……チャクラムを飛ばしている間は動けない、とかかな。車輪として使っているときはアレだけ爆走していたから思い至り難いけど、悪魔の魔力球を避けずに僕の回復術に頼った辺り、多分そうだ。
口には出さないけどね。誰がどこで聞いているかもわからない。もしかしたら聴力に長けた悪魔が地中の奥深くで聞いているかもしれない。だから、弱点なんか声に出すべきじゃあない。
そして。
「……待ってください。今、二十一体と言いましたか?」
「うん。そうだよ」
跳躍する。同時、僕の足のあったところに伸びてくる青い腕。それは空を掴み、だからこそ隙となったその腕をこっちから足で絡めとる。そのまま仰向けにひっくり返って、恐らく頭部のあるだろう場所に打突。腕を引っ張り上げて打突威力の底上げも忘れない。そしてもう片方のトンファーを地面への支点にして、地中にいたソイツを引きずり出す。
最初に地中に潜った悪魔。空を飛べない悪魔の一体だ。背中の斬痕は、しかし浅い。
「これが最後の一体。古谷さん、トドメお願い」
「……はい」
ひっくりかえった姿勢でそういえば、古谷さんはまたもむすっとした顔で、けれど頷いてくれた。
頭蓋を突かれて前後不覚になっていた悪魔の首が掻っ切られる。
「……申し訳ありません」
「え、なにが?」
「戦闘者として……支援者を危険に晒すなど、あり得ません」
真面目か。
いや、緋央さんといい古谷さんといい、どれだけ生真面目なんだ。僕、怪我とか一切してないけど。というか先の戦闘も回復魔法を使い続けただけで、僕ほぼ何もしてないに等しいんだけど。
悪魔を殺したのも、痛い思いをしたのも古谷さんだ。魔力球の着弾直後に回復しているとはいえ、痛みがゼロというわけじゃない。それを耐えてのこの物言い。
「結果が全てだよ。戦果は上々だし、それでいいと思うけど」
「……お気遣いありがとうございます。ですがこれは、私のプライドの問題なので」
「ああ、そういう」
自分が自分で許せないのか。それは僕にはどうしようもないかな。
無線を入れる。
「夢野透、古谷里香。低級悪魔二十二体の討滅を完了。帰投準備を願う」
[[了解。帰投準備を行います]]
オペレーターさんの声と共に、僕達を降ろしてから遠くに待機していたヘリが近付いてくるのが見える。うーん仕事が早い。というか、多分僕らを評価するために遠くから見ていた、とかなんだろうなぁ、とか。
余計なことは口に出さないで。
「ほら、古谷さん。帰るよ」
「……はい」
まだ俯き、落ち込み、考え込んでいる古谷さんに行動を促す。
……今日の夜、ちゃんと寝れるといいけど。
その後、特に何事も無く僕達は帰投した。
「夢野透」
「あ、うん。何かな、古谷さん」
翌日。
出動があっても関係なく登校日な今日、僕は誰よりも早く学校に来て、勉強をするでも読書をするでもなく──伏せて眠っていたのだけど。
流石に声がかかっては、起きざるを得ない。仮眠だったしね。
さて、名前を呼ばれて顔を起こしてみたけれど、周囲に生徒はいない。僕が来てからそう時間が経っておらず、誰もいないときに古谷さんも来て、僕に声を掛けた、ということだ。
うーん。何用だろう。
「暇ならば、ギムナジウムに行きましょう。昨夜の戦場データを作成してきました。再現シミュレーターで、今度こそ完璧な状況を」
「出てくる場所がわかっているんだから、何の意味も無いんじゃないかな。再現シミュレーターは内容を知らない他人の戦場データでやってこそ意味があると思うんだけど」
「……では、昨夜出動した他者の戦場データで、今度こそ守り通して見せます」
「それこそNPCを使った方が良いと思うな。僕、ある程度動けるから、支援者を完全に守り通す、というのがやりたいなら動かないNPCの方が良いと思う」
言外に「やりたくないです」って言ってるのが伝わってるといいんだけど。
あ、伝わってるけど「うるさい、いいから来い」って言ってるのが見えるぞ。
「言い訳をする時だけは饒舌ですね、夢野透」
「行きたくない」
「四の五の言わずに来てください」
「うーん、言葉が通じないみたいだ」
まぁ、あんまり拒否するのも、キャラじゃないか。
「今日の放課後なら、いいよ。朝はやだ」
「わかりました。予約を取っておきます」
出動が無い日の、しかも明日が休日であるなら、まぁ。
ちょっとくらい付き合ってあげるのも良いだろう。
ところで。
「フルネームで呼ぶの、やめない?」
「唐突ですね。ではなんとお呼びすればいいですか?」
「普通に夢野でいいよ。夢野さん、とかさ」
「はあ。では夢野さん。これでよろしいでしょうか」
「うん。よろしくね、古谷さん」
うん。
うーん。
これは、初の友達ができたと……そう言っていいんだろうか。これ、友達だよね? 合ってるよね?
「夢野さん」
「うん、何かな」
「良ければ、土日。中級悪魔の討伐に付き合ってはくれないでしょうか」
「……それは、もしかして」
いや、いや。
展開が早いなぁ。これってさ。
「デートのお誘い、かな?」
「はい?」
違うらしい。
tips
能力:個人の固有技能。専用スキルみたいなもの。
魔法:魔法適正に合っていれば誰でも習得可能な技術。勉強や訓練は必要。
魔法適正:生まれ持った資質。治癒系、補助系、攻撃系、妨害系などに区分される。
言霊:能力を起動させるためのワード。無い人もいる。割合気分。