お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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虚圏動乱編
現地へと向かいます。 謎の男との交戦


 

それから日が経ち、旅禍達の騒ぎによる廷内の補修も完全に終え瀞霊廷にはいつもの日常が戻り始めた。

 

だが、そんな日も束の間だ。現世にて白い装束に身を纏った謎の男達が現れたらしい。その者達の霊力は凄まじく、一般の死神を凌駕し隊長格に匹敵する者ですら太刀打ちできなかった様だ。

 

 

まぁそんな事など“彼”には関係ないが。

 

◇◇◇◇◇

 

そんなある日の事だった。

 

「ふんふんふ〜ん♪味見味見〜♪」

 

「…」

 

千弘は十二番隊隊舎の庭にて囲炉裏を置き秋刀魚を焼いていた。その秋刀魚は見る限り品種改良させた秋刀魚草の花の部分であり、黒い煙を上げながら全身から香ばしい香りとアッサリとした脂が滴り落ちていた。

そしてその傍らでは相変わらず風に煽られながら揺れる秋刀魚草があった。特に地面に直接植えられている個体は以前よりも大きさが増しており最大サイズである3メートルを越していた。

 

「千弘さん…そろそろ焼けたかと」

 

「その様ですね!それにこちらも良い感じに育って来ていますよ。これなら数ヶ月後には5メートルにいきそうです!」

 

「はい…楽しみです…」

千弘の言葉に頷いたネムの手がギュッと千弘の手を握った。

 

「あら?どうしました?」

 

「いえ…何でもありません…」

 

手を掴むネムの頬は紅くなっていた。それを千弘は不思議そうに見つめているとネムは即座に顔を逸らす。

 

 

すると

 

「おい。こんな真っ昼間に庭で何をやっているのかネ。匂いに釣られてしまったではないカ」

 

近くの回廊の奥から一枚の手紙を手に持ちながらマユリが歩いてきた。

 

「あ、局長。食べます?良い感じに焼けてますよ」

 

「後でもらおう。それよりも…ちょっと君に急用を頼みたい」

 

「急用?」

 

「あぁ。現世視察に行ってきてもらいたいんだヨ」

 

そう言いマユリは手に持っていた手紙を差し出したそれを受け取った千弘は内容も見ずにあっさりと承諾する。

 

「現世視察?良いですよ」

千弘はマユリから受け取った手紙を開いてみる。そこには内容と行くべき場所が記されていた。

 

「空座町で素材の採取と特定の場所の調査…ですね。分かりました」

 

「因みにネムも同伴だ」

それから指令を受けた千弘はネムと共に現世へと向かった。因みに千弘が去った後にマユリがホッと胸を撫で下ろしたのは別の話である。

 

○○○○

 

現世視察。それは死神に課された責務の一つである。死神の仕事はまず悪霊や地縛霊を成敗し本来帰るべき場所へと帰らせる即ち尸魂界へと向かわせる事ともう一つは恨みが募り変形した化け物【虚】の討伐である。

 

【虚】とは白い骨格の様な装甲を身に纏う化け物であり人間や死神達を襲う。だがその【虚】は元は人間の悲しき怨念の集まった者。それを斬り本来帰るべき場所へと向かわせる事も重要な責務なのである。

 

現世視察とは即ち尸魂界の死神達が現世へと赴き調査を行うという事なのだ。

 

 

そしてそれとは別に現世にて死神と同じ力を持ちながらも死神ではなく、責務をこなす者がいた。その者を『死神代行者』と呼ぶ。死神代行とは文字通り死神の代わりであり現世にて生活しながら虚や悪霊を退治する事だ。

 

その代行者とは前回の尸魂界を騒がせた旅禍の一人であり、オレンジ色の髪を持つ青年であった。名を『黒崎一護』

 

その青年である一護は現在、窮地へ立たされていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

「おい。冗談だろ死神ぃ?」

 

肺に不足していた空気を必死で補給するかの様に小刻みで激しく呼吸する一護。目の前に立っているのは白い袴に肩と腕を包み込む程度の白い上着を身に纏う水色の髪の男であった。

 

一護は斬魄刀の切り札『卍解』を使用し現在の実力は隊長である朽木白哉に匹敵する力を手に入れていた。

そんな彼が全身がボロボロで満身創痍の状態であり、相手側は傷一つついていなかった。

 

その男は耳の穴に小指を入れながら気だるそうに一護を睨みつける。

 

「俺はまだ刀すら抜いてねぇんだぜぇ?なのにそっちだけ息切らしやがってよぉ。ずりぃだろ」

 

「ぐ…!!」

 

この男の身体能力、霊圧が隊長達と比べて明らかに桁違いだったのだ。卍解の状態であるにも関わらず刀が身体を刺すどころか切り傷さえも与えられない上に相手の蹴り数発だけでこの有様である。

 

「ウルキオラの野郎が何で始末しなかったのか不思議で仕方ねぇが、まぁいい。そろそろ決着といかせてもらうぜ」

 

その言葉とともに水色の髪を持つ男の脚が動きゆっくりと此方に向かってくる。

一護は咄嗟に考えた。どうするべきか。どう巻き返すか。いや、コイツをどう追い返すか。

 

「(くそ…!!)」

 

何の案も浮かばず下唇を噛み締めた。

 

 

 

 

その時だった。

 

 

ドドドド…!!

 

 

「……ん?何だ…?」

 

突然と後方から激しく砂埃を上げながら何かが向かってきていた。その音を耳にした水色の髪の男は振り向き、一護も目を凝らしながらよく見つめた。

 

敵か?はたまた味方か?

 

 

『さ〜んまさんま!秋刀魚で秋刀魚!夕飯秋刀魚!秋刀魚のリズムに乗っちゃって〜♪』

 

 

「「な…なんだありゃぁぁぁぁ!?」」

 

 

なんとそこには一人の小柄な少年が独特な音楽を大爆音で流すと共にリヤカーを引きながら走っている姿があった。しかもその荷車の後ろにはそれを手伝うかの様に押している女性の姿があった。

 

そしてその荷車はスピードを落とすどころか更に加速させながら此方へと向かってくる。

 

「到着ですよネムさ〜ん」

「はい」

 

「なぁ!?おい来るな!止ま__ごはぁぁ!?」

 

そのまま水色の髪の男は荷車を引く少年によって空中へと吹き飛ばされた。

 

「到着」

 

その言葉と共に男を吹き飛ばした少年はその場で止まった。その様子を一護は唖然としながら見つめていた。

 

その一方で空中へと吹き飛ばされた男は口元を拭いながら自身を吹き飛ばした相手へと鋭い目を向けた。

 

「クソがぁ…!何者だぁテメェ!!!」

 

「え!?誰かいるのぉ…!?」

 

「テメェだテメェ!!!」

 

「あぁ、私ですか」

 

男に指名された少年はその場で後ろの女性とクルクルと回転し始めながら名を名乗り始めた。

 

「私の名は護廷十三隊 第十二番隊所属。雑用兼技術開発局生物開発課『園原 千弘』!」

 

「同じく十二番隊副隊長兼園原千弘さんのお世話係 涅ネム」

 

「何だそのポーズ!?初めて見るけど無性に腹立ってきやがる…!!!」

 

その言葉と共に少年と女性は月夜に現れ月に代わってお仕置きする女性戦士の決めポーズをすると男にアッサリと近づき秋刀魚の身体から草が伸びている謎の植物【秋刀魚草】を差し出す。

 

「此方、秋刀魚草です。記念にどうぞ」

 

「誰がンな得体の知れないモン貰うか!!いらねぇわ!」

 

「え〜美味しいのに」

 

男は差し出された手を突き飛ばし現れた千弘とネムへと鋭い目を向けた。その一方でネムは無表情で直立し千弘は男が突き飛ばした秋刀魚草をキャッチすると屋台へと戻した。

 

「それよりも雑用だぁ?副隊長ならともかく何で雑用の雑魚がここに来て___「月に代わってお仕置きよ!!」ごはぁ!?」

 

「!?」

その瞬間 男の腹へ千弘の拳が突き刺さった。それによって男の身体はゆっくりとスローモーションでくの字へと曲がっていき、そして再び空中へと吹き飛ばされていった。

 

「嘘……だろ…!?」

 

一護は目を疑った。卍解した自身ですらも傷一つ付けられなかった相手をあの千弘という少年は斬魄刀を使うどころか拳だけでダメージを与えていたのだ。

 

一方で空中に吹き飛ばされた男は即座に体制を立て直すと少年を睨みつけた。

 

「テメェ…やりやがったなコラァ!!!明らかに隊長格の奴じゃねぇかぁ!!!」

 

そして男は空中を蹴ると千弘へと向かっていく。それに対して千弘はやれやれと首を横に振った。

 

「私が隊長格?何を言っているのやら」

 

水色の男が吐き出す中、千弘は屋台の中からスリッパを取り出す。

 

 

「私が隊長格ならば…他の皆さんは総隊長です____

 

 

 

 

______よッ!!!!!」

 

『奥義 スリッパでスパァァンッ!!!』

 

「がへぇ!?」

「スリッパ!?」

 

突然と手に取ったスリッパを持った少年は一瞬で向かってくる水色の男の前に現れると頬へ向けスリッパを叩きつけた。それによって男は口から唾を吐き出すと共にまたもや空中へと吹き飛ばされていった。

 

そして吹き飛ばされた男は再び体制を立て直すとスリッパで叩かれた箇所の右頬を拭った。

 

「…!!」

その手に付いていたのはまさかの“血”であった。更に身体全域に巡る衝撃。自身を吹き飛ばした少年は明らかに対峙した死神とは“別物”であると認識した。

 

「(コイツ…殴った時もそうだが弱ぇ霊圧とは別に何つぅ力だよ…!?あのオレンジ色の奴とは桁違いじゃねぇか…!!)」

それを見た男は目を大きく見開くと共に毛細血管が湧き上がる程まで血走らせた。

 

「ふざけんな…!!こんなガキに…!!」

 

「ガキではありません。園原千弘です。それよりも貴方のお名前は?」

 

男が現実を否定する中 目の前に自身をスリッパで吹き飛ばした千弘が現れた。

 

「園原千弘…は…!!」

 

再びその名を聞いた瞬間に男の中の脳内で“ある男”から聞かされた話を思い出した。

 

『君達に言っておく。園原千弘という男とはどんな事があっても刃を交える事は勧めない。逃亡を優先した方がいい』

 

自身に数字を与えたあの男。独特な髪型をしながらも巨大な強さで自身らを束ねるあの男が警戒する程の人物がこの少年だったのだ。

 

「テメェが…藍染が警戒してた…!!」

 

「あのインテリ眼鏡ですか?まだ生きてたのか…まぁいいや。その前に貴方のお名前を…」

 

「そうかぁ!テメェか!だったら手加減はいらねぇなぁ!!こっからは帰刃で____ぺふぅ!?」

 

 

刹那。刀を抜こうとした男の目の前に一瞬にして千弘が迫り頬に平手打ちをした。

 

平手打ちをした千弘は額に青筋を浮かべると共に男の胸元を掴み出すと反対側の手を構えた。

 

「人にどうこう言う前に名を名乗るのが常識でしょうがァァァァアアアアア!!!!!!」

 

ベシベシベシベシベシベシベシベシ

 

「ぶへぇぇええええええ!!!!!!」

 

 

「「……」」

 

水色の髪の男が千弘に胸元を掴まれ次々と顔面にビンタを打ち込まれ頬を腫れ上がらせていく。

 

「…何だこの状況…」

その光景を倒れていた一護は唖然としながら屋台にいたネムと共に見つめていた。

 

「さぁ名前を言いなさい!!!」

 

「せ…第六エスパ____ぶべぇらぁぁ!?」

 

「ふざけてないでさっさと言いなさい!!!」

 

ベシベシベシベシベシベシベシベシ…ッ!!!

 




因みに主人公は感情が高まるとおかしな行動を起こします。
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