お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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グリムジョーの災難

 

あれからしばらくして。千弘のビンタによって顔面がフグのようにパンパンと腫れ上がった男は膝をつきながら荒い呼吸をしていた。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

「成る程。グリムジョーですか。勢いのある良い名前ですね」

 

相手から名前を聞いた千弘は顎に手を当てながらフムフムと頷いた。その一方でグリムジョーの全身は何ともないが顔だけは酷く腫れや痣が目立っていた。その理由は簡単だ。何度も何度も名を名乗ろうとしてもその度に千弘にビンタを喰らい妨害されていたからだ。

かれこれ同じ事を30回。それを経てようやく彼は自身の名を名乗る事に成功したのだ。それによってビンタは止まったものの、その威力が桁違いなのかグリムジョーは動けなくなっていた。

 

「テメェ…一体何者なんだよ…!!」

 

完全なる別次元の実力者にグリムジョーは舌打ちをしながら睨みつける。それに対して千弘はやれやれと首を振りながら答えた。

 

「何度も言ってるでしょ。ただの“雑用”と」

 

「ふざけんじゃねぇ!!ただの雑用がこんな腕力してる訳ねぇだろぉうが!何なんだよテメェのその力はぁ!!」

 

「そう言われましても…う〜ん…」

 

「ぐ…ッ!!!」

まるで近くのないその態度にグリムジョーの額に更に青筋が湧き上がると立ち上がり剣を抜いた。

 

「認めねぇぞ…!俺は絶対に認めねぇぞ…!!!」

 

そして 剣を構えたグリムジョーは鋭い目を更に鋭くさせると共に全身に力を込めると千弘へ向かって飛び立った。

 

 

 

 

「こんなふざけたガキにやられてたまるかぁぁぁあ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガキじゃありません!!」

 

「ぶべぇらぁ!?」

 

だが、結果は同じ。千弘の一声と共に一瞬で目の前に現れたと同時に放たれたビンタによってグリムジョーの身体は再び空高く吹き飛ばされていった。

 

「人様に向かってガキとは何事ですか!それにこちとらピチピチの100代なんですよ!!」

 

 

 

その時だった。

 

突然と夜空の景色に一筋の黒い線が引かれると共に開くとその中から東仙が姿を現した。

 

「東仙…ぐ!?」

 

「何をしているグリムジョー…!」

 

現れた東仙はすぐさま吹き飛ばされたグリムジョーを羽交い締めにする形で受け止めると千弘に目を向ける事なく暗い空間の中へと引っ張り出した。

 

「あ!お〜い!東仙隊長〜!!」

 

「早く引くぞ…!!」

 

「な…!?放しやが______」

 

そして 千弘の声に耳を傾ける事なく東仙がグリムジョーを中へと引き摺り込むと、時空の歪みは消えていき元の夜空の景色へと戻っていった。

 

 

「あ…。はぁ…せっかく再会できたのに冷たい人だなぁ…」

 

グリムジョー達が去り辺りが沈黙に包まれると千弘は溜息を吐きながらその場からネムの元へと着地する。

 

「さて、また探しますかネムさん」

 

「その必要はありません。もう見つけました」

 

「あら!」

 

千弘はネムへと呼び掛けると再び屋台を引き始めようとするがそれを止めた。今回の調査内容は現世にしか咲かない花の調達なのだ。だが、千弘が戦闘(説教)している内にネムが採取し終えていたらしい。

 

「これはこれはお手が早い!さすが副長ですね!」

 

「__!!お…お役に立てて光栄です…千弘さん…」

 

千弘から満面の笑みと共に絶賛の言葉を貰ったネムは顔を真っ赤に染めながら誤魔化すかの様に俯いた。

 

そんな時だった。

 

「おいアンタ!」

 

「「?」」

 

背後から自身らを呼び止める声が聞こえて来た。振り返るとそこには斬魄刀を杖代わりにして立ち上がる一護の姿があった。

 

「私ですか?」

 

「いや女の人じゃなくて……小さい方の」

 

「あぁ私ですか」

 

一護に呼ばれた千弘は首を傾げる。

 

「なんですか?」

 

「さっきの奴らは一体なんなんだ…?すげぇ強かったし…一瞬感じた霊圧が虚と似ていた…何か知ってるのか!?」

 

一護の問い掛けに対して千弘は先程、東仙に回収された男グリムジョーを思い出す。確かにあの男の霊圧は虚と似ていた。だが、それ以外は何も分からなかった。

 

いや、そもそも彼は興味が無かった。

 

「申し訳ありません。私にもよく分からないです」

 

「そ…そうか…」

 

「では、そろそろ失礼させていただきます。行きますよネムさん」

 

「はい。千弘さん」

 

一護が頷く姿を見た千弘はネムに目を向けると再び屋台を押しながら暗い夜の回路を歩いていった。

 

 

その後 欠けた仮面を付けた男達は虚が更に進化を遂げた破面である事が発覚。グリムジョー以外にも四人の破面がその場にいたらしいが、松本乱菊、日番谷冬獅郎、斑目一角、阿散井恋次、綾瀬川弓親の活躍によって見事に討伐されたらしい。

 

そして勿論のことだが、千弘がグリムジョーを撃退した事も一護からルキアを経由して元柳斎へと報告された。

 

◇◇◇◇◇◇

 

それから一夜明け。

 

破面を撃退したにも関わらず相変わらず千弘は十二番隊隊舎の掃除を済ませ、ネムと共に庭に植えてある秋刀魚草へと水をあげていた。

 

「そう言えばあの青い髪の人って破面だった様ですね」

 

「はい。日番谷隊長の報告によると十刃(エスパーダ)と呼ばれる10人の精鋭部隊の一人だそうです」

 

「成る程。はぁ…捕縛しておいた方が良かったなぁ…」

 

ネムから聞かされた話に千弘は溜息を吐きながら後悔すると空を見上げた。

 

「あとマユリ様からしばらく休暇という伝言を預かっています」

 

「またですか?」

 

◇◇◇◇◇◇

 

一方。

 

 

草も木もないただ果てしない砂漠の大地が続き灰色の空に白銀の月が輝く不気味な世界『虚圏』では。

 

 

「おかえり。グリムジョー」

 

「……」

 

東仙に救出され虚圏へと帰還したグリムジョーの目の前には帽子を被りながら巨大な玉座に座る藍染の姿があった。玉座へと座りその姿から発せられる存在感と威圧感は東仙に横槍を入れられ苛立っていたグリムジョーを強引に鎮ませる。

 

「さて、今回は散々な目にあった様だね。まぁ無理もないだろう。“彼”が相手だったのだから」

 

「えぇ。まぁ…」

 

藍染の言葉にグリムジョーは軽く答えるだけであった。その様子を横から見ていた東仙はグリムジョーを睨みつける。

 

「どうしたグリムジョー…謝罪の言葉はないのか…?」

 

「別に」

 

「貴様__!!」

「……」

 

「いいんだ要。私は何も怒ってなどいない」

 

東仙がグリムジョーへの言葉を強めると、藍染が声を掛け制止する。東仙を宥めた藍染は再びグリムジョーへと目を向けた。

 

「今回の事は…彼の御し難い忠誠心の現れだと思っているんだが……違うかい?」

 

藍染の問いにグリムジョーは表情を変える事なく頷いた。

 

「……そうです」

 

「_!!!」

 

その瞬間 東仙の白い目が開かれグリムジョーの襟元を掴み上げた。

 

 

「藍染様!この者の処刑の許可を!」

 

「ハッ!私情だな。ただ俺が気に食わねぇだけだろ。統括官様がそんなんでいいのかよぉ?」

 

「グリムジョー…私は調和を乱す者を何よりも嫌う…許すべきではないと考える」

 

「ソイツは組織の為か…?」

 

「…否。大義の為だ…!!!お前の行動にはそれは見当たらない」

 

その瞬間 東仙が手に持っていた太刀が一瞬、光ると共にその一閃がグリムジョーの左腕目掛けて放たれた。

 

「__!!」

 

その一閃は一筋の流れ星の如く軌跡を残しながらグリムジョーの左腕へと入り込むとすり抜けていく。

 

その直後。グリムジョーの左腕が音を立てる事なく身体から切り離され地面へと落ちた。

 

「な…!?」

 

「破道の五十四…【廃炎】…ッ!!!」

 

グリムジョーが斬り飛ばされた瞬間の痛みに声をあげる中、東仙は斬り飛ばした左腕に向けて刀を振るう。すると、振われた刀の先端から青い球が飛び出すと湾曲しながらグリムジョーの左腕へと向かっていき彼の腕を焼失させた。

 

「て…テメェ…!!よくも俺の腕を…!!」

 

腕を斬り飛ばされたグリムジョーは痛みを堪えると共に怒りの声をあげると刀を構え東仙へと駆け出した。

 

「ぶっ殺してやる…!!!」

 

その時だった。

 

「グリムジョー」

 

「…!!」

 

再び藍染の声がその場に響く。それを聞いた途端にグリムジョーは東仙へと向かっていく脚を止め、藍染へと目を向けた。そこには先程とは異なり自身をまるで睨みつけるかの様に冷たい視線を向ける藍染の姿があった。

 

「お前がそこで要を攻撃すれば…私はお前を許す事はできない」

 

「……」

 

その言葉を聞いたグリムジョーは舌打ちをすると剣を腰に収めた。これ以上は藍染の気に障り彼に殺されてしまうと感じたからだ。

 

それからグリムジョーは重い足取りで下がっていった。

 

 

そして下がる際に藍染は彼を呼び止め言い残した。

 

「それとグリムジョー。もう一つ言っておくよ。

 

 

 

_____私に余力を残して勝てなければ彼には一生敵わないぞ…!」

 

 

「…!!!」

 

その言葉を受けたグリムジョーはようやく認識した。自身が闘った相手は虚圏をたった数日で支配し自身らを統べる藍染すらも敵わない相手である事を。

 

 





因みに藍染様はあの後、東仙に帽子を作ってもらい現在は頭にそれを被っております。
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