お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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虚圏の侵攻

 

あれから数日。千弘達の住む瀞霊廷は緊迫状態へと陥ろうとしていた。それもその筈だ。破面が侵攻してきたのだから。因みに破面とは大虚が変化した虚の最上位種である。その強さは破面になる以前の状態に依存する。破面となる大虚は大きく分けて3つの種類があり、下から『最下級大虚』『中級大虚』『最上級大虚』と分けられている。話によると最上級大虚から進化した破面の強さは別格であり、仮にこの破面が10体もいれば尸魂界を滅ぼす事は容易いと言われている。その上その強さは隊長格を大きく凌駕するらしい。

 

まぁ、彼には関係ないのだが。

 

◇◇◇◇◇

 

 

「なななな〜なな〜な〜I wanna start fight!!so what!」

 

いつものように千弘はネムと共に秋刀魚草へと水を上げていた。育ちは順調であり、一番大きな個体の体長がもうすぐ4メートルへと達しそうであった。

 

 

そんな時であった。

 

 

「ほぅ?ここが噂の隊舎か」

 

いつものように秋刀魚草へと水を上げていた千弘にネムとは別の女性の声が掛かる。振り返るとそこには褐色の肌を持ち、身体のラインをそのまま浮き上がらせる様なスポーティな衣服を纏う女性が立っていた。

 

「おや?貴方は」

 

「ん?あ〜すまんすまん。まだ名乗っていなかったな。儂の名は『四楓院 夜一』じゃ。よろしくのぅ」

 

「おぉ!四楓院家の方でしたか。これは失礼。私の名は…」

 

「まぁ待て待て」

 

ニコニコと笑みを浮かべながら手を振り夜一と名乗る女性に対して千弘も自身の名を名乗ろうとすると彼女は手を前に出して口を止める。

 

「お主の名前も知っておるぞ。『園原 千弘』護廷十三隊最強の男とな」

 

「え?」

 

夜一の言葉に千弘は首を傾げ即座に否定する。

 

「いやいや何を言っておられるのやら。私が最強?そんな馬鹿な。私なぞまだまだ副隊長にすら程遠いのに…」

 

「ふむ…噂通り謙虚な男じゃのう」

 

すると 夜一という女性は自身の背後にある秋刀魚草へと目を向けた。

 

「それよりも儂が気になっておるのはその植物?じゃ。なんなのじゃ?それは」

 

「あぁ。これは秋刀魚草です。身が引き締まって美味しいですし良い声で泣きますよ」

 

「ほぅほぅ_______泣く?」

 

「えぇ。例えるなら悲しい出来事があって堪えきれずに背中で泣くダンディな男の様に」

 

『う…うぅ…!!ちく…しょう…!!』

 

千弘が秋刀魚草を強引に揺らすと秋刀魚草の先端部にある秋刀魚が正気の宿っていない目から涙を流し口元を噛み締めながら少女の様な声で泣き始めた。

 

「ふむ。中々面白いではないか」

千弘の紹介や秋刀魚草の不気味ながらも哀愁漂う泣き方に夜一は興味を示したかのように秋刀魚草をジロジロと見つめる。すると、彼女は段々と目を輝かせながら千弘へと尋ねた。

 

「美味い物でもあるのじゃな?」

 

「えぇ。普通の秋刀魚よりも身が詰まってますし脂も乗ってます。それに育てて更に巨大化させれば味も更に変化しますよ。小さければ小さい程、市販の秋刀魚に近く、大きければ大きい程、骨は太くなり取り除きやすくなると共に身も引き締まり焼いた際の脂の量も多く市販のものより美味しくなります」

 

「ほうほう…!」

 

千弘の説明を聞いた夜一は更に目を輝かせ遂には涎までも垂らしながら千弘へと目を向けた。

 

「よければ数匹譲ってもらえないか!?良い値で買うぞ!」

 

「いいですよ。取り敢えず一番大きいのは1匹10万。中型は6万。赤ん坊の小さいモノなら400円で。待てるのでしたらその植木鉢の赤ん坊の方がおススメですよ。育てればすぐ大きくなりますし、大きくなりすぎたら根っこごと抜いて地面に植え替えれば良いので」

 

「なるほどな。よし!コイツを貰おう!」

 

「どもども〜」

それから夜一は植木鉢に植えられた小型の秋刀魚草を2000円分(5本)買い取り鼻歌を歌いながら帰っていったそうな。因みにその後、何故だか二番隊隊長の砕蜂もやってきて大型の秋刀魚草の買い占めを強請ってきたのはまた別の話である。

 

 

 

その日の夜であった。縁側でいつものようにネムと共にお茶を飲んでいると、突如として彼女は切り出した。

 

「他にも買いたいと思う方が増える思うので栽培してみてはいかがかと」

 

「ナイスアイデアですネムさん!ではどこか土地を買い取って大農場にしましょう!」

 

それを聞いた千弘は目をキラキラと輝かせるとネムと共に早速、行動へと移した。破面によって廷内がざわついているにも関わらず廷内にある空き地の土地の権利を付近に住む者と交渉して手に入れそこに大量の秋刀魚草を植えていった。

 

すると、数日もしない内に発芽し植えてからたった3日で小さいながらも秋刀魚草達が出来上がった。

 

「取り敢えず価格設定を決めないと!場合によっては儲かったお金の分、十二番隊予算として全部貰えると思いますよ!」

 

100平方メートルの畑の中で秋刀魚草達が風に揺られる中、千弘は今後の計画をネムへと伝えた。それを聞いたネムは張り切り出したのか、無表情ながらも腕をグッと握り締める。

 

「では簿記はお任せを」

 

それから二人のビジネスは始まった。因みにここまでの予算は全て千弘の実費であり、これによって千弘は財産の95%を失う事となった。

 

だが、この商売は意外と好評となったのか、秋刀魚草となった個体はビジネスが始まったその日にアッサリと10体売れたという。

 

◇◇◇◇◇◇

 

そんなある日の事であった。

 

「おい。お前に指令ダ」

 

「はい?」

 

瀞霊廷でいつものように隊舎の掃除をし終え、秋刀魚草へと水やりをしていた千弘へとマユリが一枚の紙を手に持ちながら現れ、その紙を差し出した。

 

差し出された紙を千弘は受け取ると内容に目を通す。

 

「ふむふむ…現世に向かい『浦原喜助』へ今後の破面に対する策と案が記された書物を届けよ………ですか」

 

「そうダ。アイツにウチの隊員を送るのは不本意だが…まぁお前の事だ。引き込まれる心配はない。取り敢えずサッと渡してすぐ戻ってこい」

 

「了解です」

 

指令となれば文句は言わない。千弘はアッサリと理由も裏も考えずに穿開門を開き現世へと向かっていった。

 

浦原喜助とはマユリの前任の十二番隊隊長であり、技術開発局を設立した初代局長である。千弘からすれば大先輩と当たるだろう。

因みに千弘は初めて浦原と会う為なのか自作の秋刀魚焼きや焼き肉が敷き詰められた弁当を風呂敷に包みそれも持っていった。

彼曰く、初めて自身から会いに行く場合は“何か”を持って行く事が礼儀らしい。

◇◇◇◇◇◇

 

現在の現世の状況はとても凄まじいモノとなっていた。破面の出現の報告が上がってから滞在し始めた日番谷達と4体の破面が会敵していたのだ。しかもその破面の3体の内の2体が精鋭部隊である十刃であり全員の霊圧が辺りを覆い尽くしていた。

 

その中の一人。癖のある髪と小柄な体躯を持つ破面が此方を睨みつける日番谷達へと目を向けた。

 

「い〜っぱいいるね死神。あの中にいるのかい?君が闘いたかった奴。ねぇ?“元第六十刃”」

 

「……あぁ」

その目線の先には数日前に千弘に張り倒されたグリムジョーの姿があった。元と呼ばれたグリムジョーは軽く頷くと即座に飛び立った。

 

「お…おいグリムジョー!」

 

「放っておきなよ。どうせ十刃落ちだ。僕らはコイツらと遊ぼうか」

 

グリムジョーを引き止めようとした大柄な体躯を持つ破面『ヤミー』を制した破面は日番谷達を睨みつけた。

 

「テメェ…何者だ…?」

 

「僕は第六十刃『ルピ・アンテノール』さて、誰が僕と遊んでくれるのかな?君?それとも全員かな?」

「おいおい!俺の分も残しとけよ!?」

 

「く…!!」

 

日番谷達は自身らが会敵している相手が苦戦していた相手よりも遥かに強力な破面である事を認識すると歯を噛み締めた。

 

 

 

 

その時であった。

 

 

両者が対峙している空の上に突如として穿開門が現れた。

 

 

「ん?ありゃ藍染の言ってた“穿開門”って奴じゃねぇか」

 

「じゃあ援軍か。こんな所に開くなんてバカか…まぁいいよ。撃っちゃって」

 

「ケッ!」

ルビの指示にヤミーは悪態を吐きながらも従う様にして口を開き口内へと光を収束し始める。

 

「…!させるか!」

 

「もう遅い。“虚閃”!!!」

 

日番谷達が動き始めようとしたその直後。収束された光が更に光出すと一筋の光の線となり穿開門へと放たれた。

放たれた虚閃は穿開門へと直撃すると赤い閃光を放つと共に大爆発を発生させ赤い爆炎へと飲み込んだ。

 

「「…!!!」」

 

「な…なんて事を…!」

 

その凄まじい破壊力を後ろから見ていた日番谷や松本達は瞳を震わせながら呆然と立ちた尽くしていた。今の威力をモロに喰らっていれば席官でも致命傷は免れないであろう。下手をすれば消し炭にされている。

 

 

その一方で、門を通ってきた者を殺したにも関わらずそれを歯牙に掛けないかのように二人の破面は再び日番谷達へと目を向けた。

 

「さてと、サッサとやろうぜ死神ども。なぁに安心しろ。お前らもすぐ今の様にしてやるからよ」

 

ヤミーは手を出し誘う様な仕草で日番谷達を挑発した。

 

 

 

 

その時であった。

 

 

 

 

 

 

 

「_____おい」

 

 

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

 

突如として聞こえたドスの効いた低い声。その声と共に辺りを超重度の霊圧が包み込んだ。その霊圧は日番谷達は勿論だが会敵していたヤミー達さえも動けない程のものであった。

その霊圧は十三隊歴代最強と謳われる元柳斎のいる日番谷達と藍染という知力と力を兼ね備えた死神がボスであるヤミー達の双方からから見ても全く得体の知れない者であった。

 

そして 皆はその霊圧が感じる方向へとゆっくりと目を向ける。そこは先程、穿開門が開いた場所であり現在もヤミーの放った虚閃の爆発による黒煙が舞っていた。

 

 

するとゆっくりと黒い煙が晴れてゆき中から一人の小柄な死神のシルエットが見えてくる。そのシルエットに見覚えがあるのかヤミー達は額から冷や汗を流し始めた。

 

「お…おいおい嘘だろ…?アイツってまさか…」

 

「えぇ〜…まさかこんなところで会っちゃうなんて…」

 

 

煙が晴れそこに立っていたのはボロボロとなった風呂敷と焦げた中身を抱えている千弘であった。

 

 

「私の大事なお土産を燃やしたのは誰ですか…?これじゃビンタどころじゃ済みませんよ…!!!」

 

 

真の最強が怒りを見せる。

 

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