お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
虚圏へと到着した千弘とネムは辺りを見回した。
「ここが虚圏…」
見渡す限り広がるのは無限の砂漠。辺りに木々が生えてはいるものの葉っぱは一枚もなくただの枯れ木となっていた。
そして、上空には暗い空が広がりそれとは対照的に白い月が輝き辺りを照らしていた。
「変な所ですね。はぁ…取り敢えず井上さんを探しますか」
「はい。名前から察するに…女性の方と思われます」
「女性ですか。では取り敢えず髪の長い若しくはすぐに女性と分かる人を探しましょう。あの塔の中とか」
そう言い千弘は遠くに聳え立つ巨大な城へと指を向けた。そこには白で統一された巨大な建造物があり、白で統一されている一方で、複雑な形状をしていた。千弘とネムはそのまま塔へと向けて走り出した。
走り出す中、千弘は何かを思い出す。
「そうだネムさん。取り敢えずあの城 撮っておきますか」
そう言い千弘はネムに提案した。千弘の提案にネムは頷くと胸元にしまっていたカメラを取り出すと目の前にある巨大な城をパシャっとカメラに収めた。
「さて、次行きましょか」
その時だった。
ドガァァァァン!!!!
「「ん?」」
離れた場所から巨大な大爆音が響くと共に砂煙が湧き上がった。
「何でしょう…?あれは…」
「恐らく蟻地獄か何かですよ。放っておいて行きますよ」
そう言い二人は城へと走っていく。
ーーーーーーーー
その城の前に立つと千弘は辺りを見回し入り口を探し出す。その中で一つの入口を見つけ出すとネムと共に侵入した。
「ほっほっほっほ」
「…」
千弘が降りて行きその後にネムが続く。そして、暗い階段の道を抜けていくと一気に広い空間が目の前に現れた。
「お?ここは…」
千弘達が出てきたのは円形の部屋でまるで照明をつけているかのように外よりも明るかった。正面を見れば入ってきた時と同じ形状の入り口が目の前に数箇所あり、その奥は暗闇に包まれていた。
その時だ。
「見つけたぞ侵入者!!!」
「「ん?」」
一つの声と共に辺りの入り口から次々と大量の足音が聞こえてきた。すると、辺りの入り口全てから次々と仮面を被り白い和服を身につけ、槍を手に持った謎の集団が現れた。
現れた集団は即座に千弘達を追い詰めるかのように辺りを取り囲むと槍の先端部分を向けてきた。
「たった二人で来るとは命知らずな奴め!!」
「大人しく降伏するのだ!!!」
その姿はまるで仮面をかぶっているかのようであった。即ち“虚”である。
虚に取り囲まれた二人の内、ネムは相変わらず無表情で直立していた。まるでこの状況を何とも思わないかのように。
「取り敢えずどいてください」
その傍らで溜息をついた千弘は刀へと手を伸ばすと一瞬だけ強く握った。
その瞬間
「「うぅ…!?」」
「「が……!?」」
千弘達を取り囲んでいた虚達が一瞬にして力が抜けたかのようにその場に倒れた。
「峰打ちしたので。では行きましょうか」
「はい。千弘さん」
大量の虚を一瞬で気絶させた千弘はネムと共に数カ所の内、一つの出口を選びその奥へと進んだ。
◇◇◇◇◇◇
一方で千弘達が潜入した巨城 ラスノーチェスのとある一室では。藍染直属の精鋭部隊『十刃』の全員が集められていた。皆は厳格な表情を浮かべながら紅茶が置かれた長いテーブルに掛けてある椅子へと座りながらある一点を見つめていた。その一点には白い帽子を被りながら紅茶を啜る藍染の姿があった。
紅茶を飲み終えた藍染は本題に入る。
「さて、皆も既に知っているとは思うが虚圏に“7人”の侵入者が現れた。その内の一人に私が警戒している『園原千弘』もいる」
その言葉と共にテーブルの中央に映像が映し出され虚の兵士達を次々と気絶させながら進む千弘とネムの姿があった。
「「「「「…」」」」」
集められた十刃達はその映像を険しい目で見つめる。中でも千弘にコテンパンにされたグリムジョーやヤミーはよっぽど腹が立っているのか映し出された千弘の映像を見た瞬間に恐ろしい程、睨みつけていた。
「園原千弘と涅ネムの目的は不明だが、あとの5人は間違いなく井上織姫の救出だ。君達もいずれ出会す事だろう。別に殺しても構わない。だが、園原千弘と出会した時は無理に闘わなくていい。誤魔化すなり逃げるなり上手くやり過ごす様にしてくれ」
「「「「「…」」」」」
その言葉に皆は頷くものの、中には藍染に対して忠誠心の欠けらのない者や恨みを持つ者もいる。そんな者達は藍染の言葉を全く信用していなかった。そして自身の強さに絶対の自信を持つ者も。
「…という事は…この坊ちゃんには打つ手無しって事ですかい?」
「その通りだスターク。今の所はね」
「……了解です」
スタークは藍染の言葉から打つ手アリという事を読み取ると頷いた。それは他の十刃の何人かも同じである。
そして 緊急の招集が終わると皆はそれぞれ散っていった。
だが、藍染の話を聞いても一部の十刃は聞き入れておらず既に動き出していた。
◇◇◇◇◇◇
城の中へと侵入した千弘とネムは暗い回廊を進んでいた。
「ハイサイ!ニーハオ!アンニョハセヨ!グーテンターク!」
「ごはぁ!?」
「な…なんだこの強さ!?」
「いだぁぁぁ!!!」
次々と迫り来る虚の兵士達を千弘は挨拶しながら何処から取り出したのか分からないハリセンで次々と倒していった。暗い回路をぐんぐんと進んでいくと再び目の前に明かりが見えてくる。
「千弘さん」
「はい!次の部屋が見えてきましたね!」
目の前が明かりに包まれると再び広い空間のある部屋へと辿り着いた。
「ここは…」
千弘達が入ってきた空間は先程の回廊よりも更に広い場所であり辺りには巨大な柱がいくつも立てられていた。
「ここは特に調べる必要は無いようですね。先を急ぎましょうか」
「はい。千弘さん」
辺りに柱以外、何も調べる必要はないと判断した千弘はネムと共に再び前方に見える道への入り口へと走り出した。
その時だった。
「貴様らが侵入者か」
その声が響くと共に突然、目の前にスキンヘッドの巨漢が現れた。
「私はゾマリ・ルルー。愛染様の計画のため……貴方方にはここで捕まっていただきます」
現れた巨漢ゾマリを見た千弘は先程の兵士達よりも話が通じると考えたのか、ハリセンを仕舞いゾマリに尋ねた。
「あ、すいません。ちょっとお聞きした___」
その言葉が言い終わる直前。ゾマリが数十人に分裂し千弘とネムを取り囲んだ。
「凄い!!!影分身の術ですか!?って事は螺旋丸も…」
「否!これは私が最も得意とする【響転】による残像です!我が響転は十刃(エスパーダ)最速。いくら力のある貴方でも見切るのは不可能でしょう。さぁどこから攻撃してくるかお分かりかな?」
その言葉と共に辺りを高速で移動するゾマリの速度は更に上がり無数の分身を作り出した。
「……」
そんな中、ある一点を見つめた千弘は手を出した。
その瞬間
「よいしょ」
「我が力『愛(アモール)』によっ___うごぉ!?」
先程まで辺りを取り囲んでいたゾマリの分身が消えると共に本体のゾマリが驚きの声を上げると共に地面へとめり込んだ。
「な…私の響転を見切り本体を捉えただと!?」
地面へと押し込まれ身動きが取れないゾマリは自身の肩に手を置きながら見つめる千弘に驚く。その一方で千弘は当然かと思うよな表情を浮かべていた。
「まぁ。あんな速度でずっとやられてちゃ慣れてしまいますよ」
「あんな速度…!?それに慣れるだとぉ!?たった数秒で私の響転をぉ!?」
「いや、ソニードか任天堂か知らないですけどあんまりでしたよ。あ、取り敢えず井上織姫っていう人が何処にいるか教えてくれませんか?」
「あんまり…!?く…!!だがこれしきでは終わらせません!!ヌン!!」
咄嗟にゾマリは身体に力を入れ、埋まっていた地面から抜け出そうとする。
「……………」
だが、いくら抜け出そうとしても地面から身体を出すことが出来なかった。いや、寧ろ更に埋まっておる。よく見れば千弘の手がまだゾマリの肩に置かれていた。
「………あ…あの…手…退けてもらえませんか…?」
「いいですけど井上さんの居場所を教えてください。あと、もう邪魔はしないですか?」
「し…知らないです…あと邪魔もしません…」
「分かりました」
その言葉に頷くと千弘は手を退けてゾマリの横を通り過ぎ、奥の部屋へと進んでいく。
そんな中、千弘の背後を狙うゾマリの巨大な影があった。
「背中がお留守で___ゴハァ!?」
「正当防衛キック!!」
ドガァァァァン!!!
だがそれもアッサリと潰えた。騙し討ちを読んでいた千弘の回し蹴りによってゾマリの身体はそのまま蹴り飛ばされると共に壁を次々と突き抜けていき外まで吹き飛ばされてしまった。
「あ、やり過ぎた…まぁいっか。では次行きましょうかネムさん」
「はい」
それから二人は道を進んでいく。何故か先程の部屋を出ると道の作り方が変わっており、辺りに火が灯されると共に道幅が広くなっていた。
「お〜い!井上織姫さ〜ん!どこですかぁ!いたら返事してくださ〜い!」
千弘は辺りに呼びかけながら城内をネムと共に進んでいく。だが、いくら呼び掛けてもそれらしき姿も見当たらず声も返ってこない。
その時だった。
「ヒャッはぁぁぁぁぁ!見つけたぜチビガキぃぃぃ!!!」
巨大な破壊音を鳴り響かせながら近くの壁が破壊され、その瓦礫の煙の中から長身痩躯の男が超巨大な錨の様な戦斧を振り回しながら飛び出してきた。
「死ねぇやぁぁぁぁ!!!!」
「ぎゃぁぁぁあ!!!!通り魔撃退パァァァァンチッ!!!!!」
バキィィィンッ!!!!!
「ゴハァァァアアアアアアッ!!!」
その瞬間 千弘が男の振り回してきた戦斧を握り潰し破壊すると共に叫び声をあげながら拳を放った。それによって拳が腹へと見事に減り込み、男はゆっくりと身体を『く』の字に曲げその場から一瞬にして何層もの壁を巨大な破壊音を鳴り響かせながら突き抜けていった。
◇◇◇◇◇◇
「…!!こ…これは…一体…」
とある一室にて休んでいた十刃の一人、『ティア・ハリベル』は突如として鳴り響いた巨大な破壊音に驚き状況を確かめるべく即座に部屋を出た。
そこにあったのは何層もの壁を突き抜ける穴。その穴はなんと幾重にも重ねられた壁を全て串刺しにしたかの様に続いており、隣どころかその先の部屋も丸見えの状態となっていた。
「…!あれはノイトラ…!」
そしてその穴を除き終端地点らしき場所を見るとそこには十刃の中で最も防御力が高い身体を持つ『ノイトラ・ジルガ』が目を回しながら気絶していた。
「ハリベル様!何があったんですか!?」
「凄い音がしましたけど!」
その音を聞きつけたのかハリベルの従属官である3人も奥の部屋から出てくるとその光景を見て唖然とする。
「な…何だよこれ…」
「こんなもの……あり得ない…こんなことができる死神がいるという…の…!?」
「完全に化け物…ですわ…」
3人が壮絶な光景に声を震わせている中、ハリベルはノイトラが吹き飛んだ方向とは逆方向。つまり風穴を開けた存在がいると思わしき場所から声を聞き取った。
「……」
『うぅ…』
『大丈夫ですか千弘さん…よしよし』
聞こえてきたのは少年の啜り泣く声とそれをあやす女性の声。それはゆっくりと此方に近づいてきた。
「は…ハリベル様…」
「……お前達は下がっていろ…」
その鳴き声の主はゆっくりと近づいてくる。
「うぅ…あ!何か面白いものがありましたよ!」
「これは…持って帰りましょう。あと、其方も写真に収めるべきかと…」
「わ〜!いいですね!早速データとして撮っておきましょう!」
何かを採取しているのか、その声の主達は途中の位置で止まり始めた。その不気味な状況に従属官達だけでなくハリベル自身も冷や汗を流し始めた。
すると
「あ!こっちから人の声がしますね。井上さんの事で何か知ってるかも」
「では早速会って話を聞いてみましょう」
遂に自身らに気づき始めたのか此方へと向かってきた。それを聞いた瞬間 ハリベルは立ち上がる。
「…お前達は逃げろ…!」
その言葉と共にハリベルは駆け出し目の前の角を曲がっていった。
「「「ハリベル様!」」」
従属官達が驚きの声を上げると彼女が向かっていった方向を見つめていた。
その時だった。
「はぅぅぅ…!」
「「「!?」」」」
いつもより甲高い声と共に冷静さを失った甘い声が聞こえてきた。その声を聞いた瞬間 3人は奮起し飛び出した。
「テメェ!!ウチのハリベル様になにやって__」
「随分と性根が腐ってい___」
「締め殺すだけでは済みませ___」
角へと飛び出し目の前の光景を目にした瞬間 3人は固まってしまった。
そこには巨大なバックライトに照らされながら緑と青の学生服を着こなし、足腰を強調するかの様に立ち人差し指を向ける男女とその真ん中で鎖のついた長ランを着こなし腹筋を強調しながらジョジョ立ちをするハリベルの姿があった。
「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」