お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
というか…剣術使ってねぇ〜
千弘の背後に現れた男は不敵な笑みを浮かべていた。それに対して千弘は振り返ると首を傾げた。
「貴方は?」
千弘が尋ねるとその男はウインクをしながら答える。
「バラガン陛下の従属官【シャルロッテ・クールホーン】ちゃんよ。よろしくね♡」
「成る程。私は護廷十三隊 第十二番隊隊員『園原千弘』以後お見知り置きを」
千弘はクルクルと回りながら自己紹介を終えるとクールホーンに目を向けた。
「そうだ。貴方にお尋ねしたいのですが、井上織姫という方が何処にいるかご存じですか?」
そう尋ねるとクールホーンは頷いた。
「えぇ。知ってるわよ。教えてほしい?」
「是非」
「そうね…なら____
_____私に勝ってみなさい」
その言葉と共にクールホーンの前脚が振り回された。
「お」
前脚が振り回されると千弘は腰に納めていた斬魄刀を鞘ごと取り出し目の前に差し出す形でその振り回された前足を受け止めた。千弘も大概だが、クールホーンの脚を振り回す速度は正に規格外であった。本来ならば動いた直後でも千弘は即座に見切り弾く筈だが今回は受け止めていたのだ。
二人の脚と鞘がぶつかり合った事で辺りに暴風が舞った。
「ぐぅ!?な…なんつう力のぶつかり合いだよ!?」
クールホーンの繰り出した脚と千弘の斬魄刀の塚がぶつかった。それによって二人の中心から衝撃波と共に暴風が吹き荒れ辺りにいたハリベルやアパッチ達を吹き飛ばしていった。
そんな中、その中心地にいたクールホーンは自身の蹴りを剣の塚だけで受け止める千弘に笑みを浮かべた。
「やるじゃない貴方。私のエクスタシーキックを受け止めるなんて」
「不意打ちとは感心しませんが、貴方こそ。これほどの重い蹴りは初めてですよ」
「あら。安安と受け止めといて随分買ってくれてるじゃない」
「それは勿論。結構強いので」
クールホーンは千弘の買い言葉に笑みを浮かべると拳を構えた。
「ヌン…!!」
「…!!」
クールホーンの放った蹴りが千弘の腹へと直撃すると共に彼の身体を一直線にその場から吹き飛ばした。
「ぐぅ!?」
「きゃぁ!」
「なぁ!?スンスンなにやってんだ!?」
蹴り飛ばしたと同時に巨大な風圧が生じ付近にいたネムやハリベル達は近くの壁へと寄り掛かりその風圧を凌いでいたが、風圧が強すぎる為か体重の軽いスンスンは吹き飛ばされようとしていた。
そんな中、千弘を吹き飛ばしたクールホーンは千弘が吹き飛んでいった方向を見つめると態勢を低くさせる。
「逃さないわよ」
その言葉と共にクールホーンの身体は一瞬で虚空へと消え去っていった。
「消えた…!?ハリベル様…今のは一体…」
「…」
マリーローズとスンスンの腕を握っていたアパッチが今の現象について尋ねるが、ハリベル自身も何が起こったのか認識して出来なかったのか、目を震わせていた。
そんな時。ハリベル達はふと横に目を向ける。そこには千弘と共にいたネムの姿があった。
「お前に聞きたい…アイツは…園原千弘は何者なのだ…?」
尋ねられたネムは淡々と答えた。
「ただの雑用であり私の友人です」
◇◇◇◇◇◇
千弘の身体はそのままラスノーチェスの宮廷内の壁を次々と突き破りながら吹き飛んでいく。
「いくわよ」
その一方で後方から砂埃を上げながら駆け抜けてくるクールホーンは一瞬にして吹き飛ぶ千弘まで追いつくとまるでバレーのように高速回転しながら飛び上がると吹き飛ぶ千弘に向けて脚を突き出した。
「あの夏の日の〜〜〜○○○○!!!!」
その叫びとピー音と共に振り上げられたその脚は見事に吹き飛ぶ千弘の腹へと直撃し、彼の身体をくの字のように曲げるとその場からさらに吹き飛ばした。
ドガシャァァァァァァン!!!
そして 吹き飛ばされた千弘の身体はラスノーチェスの分厚い壁を突き破り遂に外へと飛び出した。
「あら、ちょっとやりすぎたかしら?」
それと共に飛び出したクールホーンは千弘が落下した砂場へと着地すると横たわる身体を見下ろした。吹き飛ばされ砂場へと落下したその身体はボロボロであり死神特有の黒い装束も所々に穴が空いていた。
「聞いていた割には案外あっけないわね。ねぇ!もう終わりかしら?」
クールホーンは倒れている千弘へと呼び掛ける。だが、呼び掛けても千弘が起き上がる気配は無かった。
その時だった。
「ごはぁ!?」
クールホーンの身体が突然と前屈みとなる。突然と腹部から襲ってきた巨大な苦痛にクールホーンは胃液を吐き出すと共に腹部へと目を向けた。
「あ…あんた…!!」
見ればそこには先程、目の前で倒れていた千弘が拳を握り締めておりクールホーンの腹へと深くその拳を突き刺していたのだ。
「あのすいません…流石に貴方の方から殴ってきたのでおあいこですよね?」
「…!!」
自身の腹へと拳を打ち付けるその表情は全くの無表情であった。
その直後。クールホーンは声を上げる事なくそのまま一直線上に吹き飛ばされていった。
「ぐ…ぬぅ!!!」
だが、クールホーンは咄嗟に空中で吹き飛ぶ状態を立て直した。
「……」
状態を立て直し胃液に塗れた口元を拭うと共に殴られた箇所へと手を当てる。感じるのは想像を絶する程の痛みであった。
「……フフ(予想以上のダメージね…だけどそれがいい。ウズウズしてきたわ)」
だが、その痛みを感じた事によってクールホーンの内に秘められた本来の力を発動させるキッカケを作ってしまった。
「いい。いいわね貴方!ここまで気持ち良い攻撃は初めてよ!」
「え?」
千弘が首を傾げる中、クールホーンは高らかな笑い声を上げると腰に掛けてある刀へと手を伸ばすと握り締めた。
「……“煌めき照らせ”ッ!!!」
その瞬間。クールホーンの身体が紅桜の花びらに包まれると共にその身体が巨大な大爆発を起こした。
「…ん?」
爆発した衝撃によって辺りに暴風が発生し散る砂が巻き上がり超巨大な砂嵐を発生させる。だが桜色の爆炎によって生じたその砂嵐は奇しくも現世に咲く桜の如き美しき姿へと変わっていく。
更に発生したその衝撃波の威力は凄まじく、二人がいる場所から遠く離れた場所に位置するラスノーチェスを小刻みだが揺らしていた。
「よくお聞きなさい!破面は必ず自分の力を抑えた斬魄刀を持っていてそれを解放する事で本来の強さを取り戻し何倍も強くなる事が可能なのよ!」
その言葉と共にクールホーンを中心に巻き起こる爆炎の中から巨大な白き翼が羽を散らしながら生えた。
「ほとんどは解放したらお終い。だけど私は数少ない第二段階の解放を持っているのよ!さぁ!ここからは一気に本気で行くわよ!!」
その言葉と共に砂嵐が晴れ包まれていた煙が吹き去っていく。
「…!」
千弘は驚愕した。そこに浮いていたのは上半身の胸回りと下半身の腰回りの部分だけを装甲で覆いそれ以外は全て生身を曝け出すアダムのような姿となったクールホーンであった。
服の下から曝け出された褐色の肌と見事に鍛え積み立てられた筋肉。その筋肉は翼から発せられる白い光に照らされ見事にその肉体美を披露していた。
白き翼が放つ光と筋肉が反射する光によって虚圏の薄暗い空が昼の如く照らされていった。その姿はまさに女神(嘔吐)に等しいと言っても過言ではない。
【シャルロッテ・クールホーン】『夜ノ女神ノ羽衣』
「花のように散りなさい」
輝きを放つ中、クールホーンはゆっくりと拳を構える。
その瞬間 クールホーンの身体がその場から消えると共に千弘の目の前へと現れると共に握りしめた巨大な拳を千弘へ目掛けて放った。
「ヌン!!」
「お」
放たれた拳を千弘は紙一重で避けていく。千弘の真横をすり抜けていった拳の拳圧は軌道上にある空気を突き抜けていき地平線の彼方へと存在する砂を吹き飛ばしていった。
「ぬぁぁぁ!!!!」
その直後。クールホーンの雄叫びと共に次々と拳が放たれた。千弘は向かってくる拳を全て避けていく。
そして迫り来る拳の雨が降り注ぐ中、千弘は遂に自ら動き出した。
「ヨッ。ハッ!」
向かってくる拳をアッサリと避けるとクールホーンの顔面へと数十発の連打を放った。
脆い音と共にクールホーンの身体へとその連打が叩き込まれていく。
「……効いたわ。少しね」
だが、その連打を受けたにも関わらずクールホーンは吹き飛ぶ事なく何食わぬ顔で笑みを浮かべるともう一方の拳を千弘へ向けて放った。
「セイヤァッ!!!」
「お?」
空気を突き抜けながら放たれたその拳は___
_______千弘の腹へと深く突き刺さり彼の身体を大きく前屈みにさせた。
「いい?連打っていうのはね。相手を仕留めるために一発一発殺意を持って撃つのよ」
その言葉と共にゆっくりとのけぞる千弘の前でクールホーンは即座に拳を構える。
「こんな風に_____ねッ!!!!!!!」
その直後。千弘の身体へと何百………いや、何千もの拳が放たれた。次々と放たれていく拳は千弘の全身へと叩き込まれていき彼の死覇装を歪めていく。
『夜ノ女神の乱舞(ラッシュ・オブ・ゴッドマリア)』
そして
「ゼィヤァァァ!!!!」
連打が終わった直後に雄叫びと共に振り回された脚が千弘の身体を蹴り飛ばしラスノーチェスへと吹き飛ばしていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「千弘さん…気を確かに…」
ネムさんの声が聞こえてくる。けど、それよりも私はある事を思い出した。
まだ霊術院に通って間もない頃だった。私は自身の武術に何かが足りないと思っていた。何故剣術だけでなく武術にまで手を出したのか。それは簡単だ。もしも斬魄刀を紛失してしまった際に身を守る術がないからだ。斬魄刀を紛失しても少しでも自身の身を守れるようにするために武術を学んだ。
だが、どれを学んでも上手くはいかなかった。動きは出来たとしても威力は見せられた手本どおりにはいかない。格闘術について専門である砕蜂隊長から一時期は教えてもらったが、彼女の教えられた通りにしても的である岩を木っ端微塵にする事が出来なかった。
『いいか!木を砕けと言ったのだ!誰がそんな数百メートルもの岩石を砕けと言った!?というか砕けたのか!?私でも斬魄刀を使わないと無理だぞ!?』
砕蜂隊長は私の身を案じてくれていたのか何度もそう私に言い訓練の中断を言い渡してくれていたが、私は諦めず何度も何度も拳を突き立て、遂に“割る”ことから“砕く”事が出来るようになった。
これで砕蜂隊長と同じ域に達する事ができた。そう喜びに満ちていたが、砕蜂隊長から言い渡されたのは意外な一言であった。
「貴様の身体能力は大した者だ。だか…まだ一つ足りていないモノがある」
「一つ…?」
「あぁ。それは“非情”だ。私と同じく“情けを捨てろ”そうすればお前は体術において誰にも負けぬだろう」
砕蜂隊長が言っていた事の意味が何なのかよく分からず今までずっと考えてきた。卒業して隊に配属された後も時折考えていた。
だが、ようやくその意味が分かった。
____“相手を仕留めるために一発一発殺意を持って撃つのよ”。
私に足りなかったのもの。それは他の感情もない純粋なる“殺意”
「行くわよ園原千弘ぉおおお!!!美しき世界を作り出す私の野望の礎とおなりぃいいい!!!!!」
「ひぃいいい!?ハリベル様ァァァァ!!空から!空から羽の生えた変態がぁぁ!!!!」
「お…落ち着けアパッチ!あれはクールホーンだ!クールほー……おぇ…」
「ハリベル様ぁ!?」
叫び声をあげながら“あの人”が向かってきた。
「貴方のお陰で分かりましたよ」
私は立ち上がり心から御礼を…感謝の念を抱く。
ありがとう砕蜂隊長。ありがとう___
______クールホーン先生。
向かってくる彼に向けて私は拳を握り締め最大限の殺意と感謝の念を込めながら放った。
「……!!!」
「____へぇ。やればできるじゃない。やっぱり藍染様の言った通り強いわね貴方…」
ーーーーーーーー
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「な…なぁミラーローズ…」
「なんだアパッチ…」
「私ら…何を見せられてんだろう…」
「気にしたら負けだ…」
ある一点をアパッチやハリベル達は変な物を見るような目で見つめていた。一方でハリベルは先程のクールホーンの姿があまりにも受け入れきれなかったのか、後ろでスンスンに背中をさすられながらエズいていた。
そこには倒れるクールホーンの腕を握り締める千弘の姿があった。
「……ふふ。まさか土壇場で殴るのをやめて刀の鞘で突くなんて器用な坊やね」
「…貴方は私の欠けていたモノを教えてくれた恩師。殺したくなかったんですよ」
「全く…さっきの言葉を取り消したいものだわ。だけど、残念。あんな気迫を見せられちゃ取り消しようがない……がはぁ…!」
「先生!!!」
「「「先生!?」」」
血を吐いたクールホーンを咄嗟に先生と叫んだ千弘にアパッチ達は驚きの声を漏らす。
「ごめんなさい…さっきの織姫ちゃんのいるところを知ってる…って言うの…嘘だったの。貴方と戦いたいと思ってしまってね……本当に悪かったわ」
「そんな!先生が謝る必要なんかない!」
その一方で千弘は何故、藍染達と手を組んだのか尋ねた。
「先生…なぜ藍染なんかと…」
「初めて……破面化した際に言ったのよ…この世界を私の力で更に美しく彩りたいと…そしたら彼は言ってくれたの。『私と共に来れば今の腐敗した世界を壊し君の望む美しき世界へと変えられる』と。バラガン陛下から無駄と言われてきた事を彼は否定せず受け入れてくれた。だから私は彼の元についたのよ」
クールホーンの答えに千弘はピシッと固まると即座に真実を伝えた。
「それ嘘ですよ」
「…え?」
「アイツ平気で人裏切るし付け入るの上手いので」
「嘘…でしょ!?」
「マジです。現にこちら側にいた際に好意を寄せていた方や敬意を抱いていた方を斬られていたので。それに、私がここへ来た目的は織姫さんの救出は勿論ですが、その様な所業を成した藍染のクソヤローを殴り飛ばすためでもあるので」
「……」
千弘の言葉を受けたクールホーンは黙ると共に先程のシリアス雰囲気を一気に消し去ると立ち上がった。
「藍染様…いや…藍染…!!よくも私を騙してくれたわね…!!!」
その顔からは先程までの戦闘による疲労が一才もなく消え失せており、それを帳消しにする程の憤怒に満ちていた。
そしてクールホーンだけでなくハリベルも驚きの表情を浮かべ千弘へと尋ねた。
「そ…それは真実なのか…!?」
「えぇ。貴方方も何を吹き込まれたか知りませんが、まず、絶対嘘です。根拠はないですが…」
「…!!」
千弘の返答にハリベルは驚くと共に目を震わせながら言葉を失った。
「あ、ネムさん。お怪我はありませんでしたか?」
「はい。千弘さんも……お怪我がなくて…何よりです…!」
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ーーーーー
ーー
崩壊した箇所から離れた場所。藍染の待つ最奥の部屋からまだ遠い位置にある場所に一人の破面と二人の滅却師と死神が会敵していた。
「ハァ…ハァ…ハァ…!!」
「お…おい!無理すんな!!」
地面に手を突きながら倒れているのは六番隊副隊長である『阿散井 恋次』そしてその横で息を切らしながらも光の弓矢を手元に展開しているのは一時期に旅禍として廷内へと侵入した滅却師『石田雨竜』であった。
二人の目の前には桃色の髪を撫でながら素敵な笑みを浮かべる破面『ザエルアポロ・グランツ』の姿があった。
ザエルアポロは自身のボロボロとなった衣服に目を向けると彼らに背中を見せる。
「おい!どこへいく!?」
「着替えるのだよ。僕がそうする必要になったのは君らの所為だぞ?黙って待っていろ。そしてその面積の小さい脳みそで次の作戦でも考えているんだね」
そう言いザエルアポロは歩き出した。石田や恋次達は今までの戦闘でボロボロなのか無理にその後を追おうとはしなかった。
その時であった。
ドドドドドドドドド__!!!
「ん?なんだ?」
目の前の壁の奥から何かが向かってくる足音が聞こえてきた。その音は段々と此方へ向かってきているかのように大きくなっていく。
そして
ドガシャァァァァァンッ!!!!!
「!?」
「「な…なんだぁ!?」
遂に目の前の壁が破壊された。辺りへと瓦礫が散り土煙が舞う中、その中から此方へと向かってくる複数の影が見えてきた。
その影は近づいてくるにつれて大きくなると共に鮮明になっていく。
「な…!?」
それを目を凝らしながら見たザエルアポロは驚愕する。そこにいたのは……
「「藍染ぶっ飛ば〜す!!!!!」」
「ウキウキな千弘さん…可愛いです」
「待て二人とも!まずは話を聞いてからだ!!」
「ハリベル様!大丈夫なんですか!?こんな奴らについて!」
「本当にとんでもない事になり兼ねませんよ!?」
「まさに修羅の旅路ですわ」
土煙をあげながら駆け出す二人の死神と5人の破面達であった。
ザエルアポロ・石田・恋次「「「な…何だあれぇえええ!!!!!」」」