お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
「さて、第二ラウンドと行こうか」
新たなる姿へと変貌し千弘の縛道による拘束を引きちぎった藍染は東仙を担いだギンを引き退らせると、そのままゆっくりと歩いてくる。皆が構える中、千弘は姿を変えた藍染に首を傾げていた。
「何ですかその姿?天に立つおじさん最終形態ですか?」
「そんな口もすぐに叩けなくなるぞ。私はもう死神でも虚でもない。全てを超越する存在へとなり得たのだからな」
その瞬間____
_____藍染の姿が一瞬にして空気へと溶ける様にして消え去ると千弘の前へ現れる。
「…!!」
「おっ」
斬魄刀を引き抜いた藍染は千弘に向けて振り下ろす。対して、千弘も斬魄刀を鞘ごと引き抜くとその一撃を受け止めた。
二人の斬魄刀が衝突した事で鳴り響いた金属音と共に二人を中心に巨大な衝撃波がサークル状に広がり辺りの瓦礫を吹き飛ばしていく。
その衝撃波は千弘の背後に立っていたネム達だけでなく藍染の後ろに立っていたギン達にも影響を及ぼしていった。
「ぐ!?」
迫り来る突風によってハリベルやアパッチ達は腕で顔を覆い風を防いでいたが、その凄まじい威力に耐えきれず少しずつ身体が後ろへと引き摺られていった。
そんな中、目の前では迫り来る風圧をものともせず腕を組みながらクールホーンは見据えていた。そしてクールホーンの身体の影に隠れるようにネムも同じく目の前の光景に目を向けていた。
「手助けは野暮な様ね」
「千弘さん…」
皆が見ている合間にも戦いは続いていた。藍染が瞬歩の何十倍ものスピードで周囲から千弘に向けて切り掛かっており、千弘もそれを刀の塚で全て防いでいた。
一度その場でぶつかり合うと二人は消え別の場所でぶつかり合う。
次々と辺りには刀と刀のぶつかり合う金属音が響き渡ると共に衝撃波が発生し瓦礫を吹き飛ばしていった。
「あら。藍染もやるわね。あの子と互角だなんて。いや、互角というより彼が遊んでいるのかしら?」
「恐らく。ですが、藍染隊長も…相当な力を得ているかと。千弘さんとあそこまで渡り合う相手は…初めて見ます…」
そう言うネムの額からは一筋の汗が流れていた。
ーーーーーーーーーー
二人の闘いは苛烈さを増していき、その領域はもはや死神も虚さえも介入できない程にまで発展していた。
「フン…!!」
「おっ」
二人は次々と空中で衝突し合い、辺りに影響を及ばせながら互いの武器をぶつけていく。それは遂に剣だけでなく拳や脚などもぶつかり合っていき先程まで剣の金属音のみを響き渡らせていたが、肉体と肉体がぶつかり合う鈍い音までも響き始めていった。
「ぬん…!!」
一瞬にして藍染は千弘の背後へと現れると拳を放つ。それに対して千弘も拳を放ち二人の拳が衝突し再び衝撃波を発生させた。瓦礫を吹き飛ばしていく中、藍染は再び姿を消してしまう。だが、千弘自身も藍染の動きを先読みし、同じく姿を消すと再び現れた彼の前に立った。
「ばぁ!」
「な…!!」
それを見た藍染は咄嗟に長く俊敏な脚を千弘目掛けて振り回した。それに対して千弘も小さく華奢な脚を振り回して藍染の脚へとぶつけていった。
空中で再び肉体がぶつかり合う中、双方は即座に体勢を立て直すと空中から地面へと着地し、互いに向かい合うと再び武器を衝突させた。
「…!!」
「よっ」
次々と刀がぶつかり合い金属音を響き渡らせる中、再び大きく衝突し、両者は鍔迫り合いとなる。
鞘と刀身が擦れ合いながら火花を散らせる中、藍染は自身の刀を難なく受け止める千弘に向けて笑みを浮かべる。
「どうだ園原千弘。これほど長く続いた戦いは久しぶりだろう」
「はぁ…まぁ確かに霊術院に入ってからはそうですね。みなさん体調が悪いのか、模擬戦の時はみんな倒れてしまいましたから」
藍染は刀に力を込める中、タイミングを見極めると即座に力を抜きその場から瞬歩で一瞬にして千弘の背後へと回ると刀を振るった。
それをアッサリと千弘は見えているのか、振り向かず、直立する。すると、藍染の刀が一瞬にして千弘の見えない斬撃“不可視の抜刀”によって弾かれた。
「く…!!」
先程から幾千もの刃を受け止められた上に今度は刀で弾かれた藍染は後方へと後退すると弾かれた刀を見つめた。見れば刀には千弘の刀によるものなのか、若干の傷跡が見られた。
「やはりまだまだ君には及ばない…か。この状態になって尚…君の斬魄刀の刀身すら見えないとはね…」
「…?」
そう言い藍染は立ち上がると刀を振るう。藍染は何度も千弘へ攻撃を仕掛けていた。それに加えて千弘の刀の弾き返しによって身体の姿勢も崩す事も無かった。
だが、それも千弘には全く通用する事はなかったのだ。
「藍染隊長もう帰りましょうよ。コッチだってあと織姫さんも探さなくちゃいけないんですよ?勝負なら囲碁や将棋などで受けて立ちますから」
千弘本人は無自覚であったが、彼自身の力は崩玉を覚醒させ我が者とし超越者となった藍染すらも歯が立たないどころか次元が違うレベルにまで達していたのだ。
それでも藍染はまだ諦めてなどいなかった。遠く及ばない。ならば及ぶ存在になれば良い。
そう考えた藍染は千弘を無視して胸に手を当てる。
「ならば君に近づけるよう…更に進化すればいいだけの事…!!!!」
「一人でなにブツブツ言ってるんですか?」
藍染の願いが込められたその言葉に胸中に宿る崩玉が答えた。
「君に限界が無いと同じように崩玉を手にした私にも限界など存在しない!!!」
その瞬間 藍染の全身が光り輝き出すと共に先程よりも更に巨大な霊気が暴風として藍染の身体から溢れ出した。
◇◇◇◇◇◇
一方で、千弘によって救出された石田と恋次は回廊を進んでいた。そんな中、石田は千弘を見た際の恋次の反応を不思議に思ったのか、尋ねた。
「そう言えば…彼を見た時に君は凄く驚いていたが、彼は一体何者なんだ…?」
「…アイツのことか」
そんな疑問を抱く石田に対して恋次は思い出しながら話した。
「出生はごく普通の流魂街。特に特別な要素を持ってた訳じゃねぇ。階級でこそ平隊士で雑用が基本だが…奴のその実力は…もう桁違いだ。この世のもんじゃねぇ…」
「は…!?どういう事だ!?」
「そりゃそう思うだろうな。簡単に言えばアイツの強さが規格外なのさ。刀持たせりゃ微塵切り…刀無くせば殴り飛ばし…。抜刀術は速すぎて見えず本当にその場にただ立っているだけの様に見え、相手を斬るその刀の刀身さえも誰も見た事がねぇ。そんでもって刀が無くても相手を殴り飛ばす程の身体能力も持ってやがる…。アイツはマジで本気を出さなくても___
___俺達 護廷十三隊全勢力より全然上だ」
「…!!」
恋次の冷や汗を流す表情から石田はハッタリではない事を見抜き瞳を震わせた。
一方で話し終えた恋次は驚く石田に向けてある事を尋ねた。
「お前…確かアイツに吹き飛ばされたって言ってたよな…?」
「あ…あぁ」
石田が頷くと恋次は冷や汗を流しながら答えた。
「マジで幸運だぜ…本来ならデコピンや手刀だけでも首跳ね飛ばされてもおかしくねぇんだからよ…何で隊長にならねぇのか不思議で仕方ねぇよ…」
◇◇◇◇◇◇
「ぐぅ…!?」
藍染の身体から溢れ出る先程よりも更に巨大な霊気の嵐。その威力はもはや規格外でありラスノーチェスの壁や天井を吹き飛ばしていく程であった。それによってハリベルやアパッチ達は耐えきれず遂に地面へと両手を付きしがみつく様にして踏ん張り始めた。
「な…なんつう霊圧だよ!?藍染のヤロー…まだ実力を隠してやがったのか!?」
そんな中、そんな霊気の嵐の中を相変わらず平然と立っていたクールホーンがアパッチ達へ声を掛けた。
「アンタ達。私の後ろなら安全よ。危ないからこっち来てなさい」
クールホーンの呼び掛けにアパッチを抱えたハリベルと傷ついたスンスンを抱えたミラ・ローズは頷きネムに続き彼の背後へと移動した。
そんな時であった。
「うぉおおお!何だこれ!?凄ぉおおお!!!!」
「「「!?」」」
突然と目の前から千弘の興奮しながら仰天する声が聞こえてきた。その声にハリベル達は驚き咄嗟にクールホーンの肩に手を掛けると風圧に飛ばされない様にその場に目を向けた。
「な…何があったんだ!?」
ハリベルが疑念の声を上げる中、その声に気づいたのか千弘が顔を上げる。
「ハリベルさん!それに皆さんも見てくださいよ!!」
そこには全身から暴風の如き霊気を放つ藍染を地面にうつ伏せで踏み倒しながら背中に跨り髪を次々とむしり取っている千弘の姿があった。
「確かにこれはもう死神でも虚でもないですよ!いくらむしり取ってもまだまだ髪が伸びてきます!!これはもう毛の神ですよ!!」
「「こんな時に何をやっているんだお前は!?」」
覚醒して全身から霊気を放つ藍染の背中に乗りながら髪をむしり取っている千弘に遂にハリベルまでもが仰天の声を上げる中、身から溢れ出る霊気は更にハゲしさを増していった。
「うぉすごい!!ちょっとどれぐらいまで伸びるかやってみよ!!!」
「良い加減にし…ごふ!?」
「おいやめろ!!何か可哀想に見えてきたぞ!?」
「千弘!そろそろ私に代わりなさいよ!!」
「お前もお前でなに乗ろうとしてんだよオカマ!?」
覚醒しようとする藍染が地面に叩きつけられる光景にアパッチ達が見てられないかのような表情を浮かべる中、遂にその千弘の所業に藍染も堪忍袋の尾が切れたのか覚醒中にも関わらず怒鳴り声を上げるが、千弘の脚が後頭部を踏みつけた為に再び地面に沈められる。
その間にも藍染の覚醒は着々と進んでいく。崩玉の意思が藍染の願いを受け入れ、それに応えるべく藍染の身体へと力を注ぎ込んでいったのだ。
千弘が持つのは果てしなく続く無限の体力とコンマ数秒の内に放つ無数の斬撃、圧倒的な身体能力。
対して藍染にあるのは相手を完全な催眠下における鏡花水月のみ。
藍染側が圧倒的に不利な立場である故に崩玉はこの答えへと行き着いた。
相手が持つのは“無限の斬撃”ならば此方が持つのはそれに対抗しうる頑丈な身体と霊力そして______
_________果たしなき速度で分裂する細胞。
それによって藍染の全身の細胞が次々と変質化していき髪も怒涛の勢いで伸びていった。
「ぐぅ!?」
その細胞の変化は藍染の全神経を駆け巡り彼の全身を刺激すると共に更に輝かせていった。
「ヴォオオオオオオオオオ!!!!!」
「ヴォオオオオオオオオオ!!!!!」
千弘に踏みつけられながら覚醒の雄叫びを上げる藍染。そしてその上では千弘も同じく雄叫びをあげながら次々と伸びてくる髪をバッサバッサと切っていった。
「うぉおおお!!!凄い凄い凄い!切っても伸びてくる!!ウィッグ何個作れるんですかコレぇええええ!!!」
「いい加減私の背中から降りろぉおおおおおお!!!!」
「いいじゃないですか星海坊主さん」
「誰が星海坊主だぁぁぁ!!!!」
その時であった。
藍染の身体の発光が突然止まると共に再び輝き出し藍染の身体が巨大な光に包まれた。
「「…!!」」
その閃光にギンやクールホーン達は眩しさのあまり目元を手で覆う。すると、光がゆっくりと収まった。
クールホーンやその背後にて光を防いでいた皆は閃光が収まると身体の影からゆっくりと顔を出しその場へと目を向けた。
「な…!!」
「こ…こりゃエラいこっちゃ…」
そこにあった光景を目にしたハリベル達やギンは瞳を震わせた。そこにいたのは人間としての面影を消し去り“別の存在”へと成り果てた藍染であった。全身の肌は正気さえも抜けた真っ白なものへと変わり、背からはまるで蝶のような異形な翼。そして青と白で分けられていた目も悪魔のような赤い血の色へと変色していた。
そしてなによりも注目すべき点は“霊気”である。
「なんやこれ…全く霊気が感じられん…」
崩玉によって藍染の身に秘められた膨大な霊気が精錬されると共に量も質も限界を超え誰にも感じ取る事ができぬ領域へと達してしまったのだ。
それは藍染自身でも驚く程の結果であった。
「まさか…ここまで強くなれるとはね。まるで生まれ変わった気分だよ…」
覚醒を終え新たな存在へと生まれ変わった藍染は不適な笑みを浮かび上がらせる。
ただし、千弘に乗られたまま。
「あれ?今度はメイクですか?」
「いい加減降りろ!!!」
千弘の剣速レベル
通常時。鞘に入れたまま扱う。見えるぐらいゆっくり振り回す時もあれば見えない程、早く振り回す事もある。
抜刀時
なにもしない→相手を細切れ若しくは吹き飛ばす。
刀に手を伸ばす→微塵切り
刀を強く掴む→完全微塵切り
刀身を見せる→不明