お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
「戻りましょうよ。護廷隊へ」
「__!!」
その言葉は藍染だけでなく付近に立っていた一護にも聞こえていた。咄嗟に一護は驚き意義を主張するべく声を出そうとするが、即座にそれを止めた。
「貴方は確かに犬のフンに等しいクソ野郎ですが、これまでの功績は全て本物です。貴方が考案した鬼道の詠唱方法は今でも教科書に残っています。頭なら私が共に下げましょう。だからお願いです。この先の尸魂界でも貴方のお力が必要なのです」
「…」
千弘から差し伸べられた手を藍染は見つめていると、ゆっくりと右腕を動かしその手を取ろうとした。
だが、それを彼自身が許さなかった。
「私に…改心しろというのか…?罪を認めて更正しろと言うのか…?ふざけるなッ!!!!」
藍染は叫びながら差し伸べられた千弘の手を取ろうとした右腕で振り払うと立ち上がる。
「私は間違ってなどいない…!!首を垂れるのは私の考えの真意にすら気付かない貴様らの方だろう!!」
立ち上がった藍染はそのまま千弘の胸ぐらを掴み上げた。
「…!まずい!!」
その行動を見た一護は咄嗟に千弘を助けるべく動こうとしたが___
____既に千弘は手を動かしていた。
「ならとっととくたばれやクソ眼鏡こらぁぁぁ!!!!」
「がぁ…!?」
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?????」
千弘の手が水平に動きだし身体を掴み上げる藍染を再び後ろの建造物へと叩きつけた。そのどんでん返しに一護の驚きの声が響き渡る中、叩きつけられた藍染はゆっくりとその場に倒れた。
そして藍染を吹き飛ばした千弘は再び彼の胸倉を掴み上げると、再び往復ビンタを開始した。
「いいですか!貴方の目的が何なのか知ったこっちゃありませんが普通 皆の前で提案して協議するのが常識でしょうが!しかもカッコつけたのか何なのか知らないですがお雛さんや獅郎くんを傷つけた上に『天に立つ』とか厨二全開の事言い出してアンタ幾つですか!?側から見れば言動も行動も意味不明なモンばっかりなんですよッ!!!!」
「ぐ…!?」
次々と放たれていく千弘のビンタ。それによって先程までの異形な姿は皮膚がガラスのように砕け散り、元の白い衣服となっていった。そして元の姿へと戻った藍染は千弘のビンタが終わるとその場に両手をつきながら倒れる。
「ガハァ……なぜ意識が遠のいていく…!?進化した私ならばこの程度の攻撃で意識など………___
______え?」
次々と意識が薄れていく中で、いつのまにか力さえも抜け落ちている事に気づいた藍染は咄嗟に辺りを見回すが、ある一点を見た時、これまで聞いた事がない程の腑抜けた声を漏らしてしまう。
「あ、あと浦原さんから『出来たら藍染さんから崩玉取り返して欲しいっス』って頼まれてたので、申し訳ないですけど、これ預からせてもらいますね」
その目に映ったのは自身の体内にあった崩玉をいつのまにか手に持っている千弘の姿であった。
その光景を見た藍染は先程から次々と見せつけられた千弘の超常的な力を思い出す。
「君は……どこまで馬鹿げている………のだ…」
そして 崩玉が自身を見限り千弘に屈服している光景を目にしながらゆっくりとその場に倒れたのであった。
その時であった。
「よっと。ようやく見つけたぜ黒崎一護ぉ!!!」
「な!?テメェは!!」
付近の瓦礫から巨大な袋を担いだグリムジョーが飛び降りてきた。
だが、グリムジョーは知らなかった。不運な事にそこには自身では手も足も出なかった死神である千弘がいた事を。
「あら?貴方は…」
「げ!?テメェは!!」
ーーーーーーー
ーーーー
ー
その後、倒れた藍染を千弘は這縄でぐるぐる巻きにして拘束する。それと同時にネム達を担いだクールホーンが現れた事で上に向かう必要も無く無事に合流も出来たのだった。
因みに驚く事にグリムジョーが担いでいた袋の中身はなんと千弘の任務対象である織姫であり、幸運な事に任務を達成する事もできたのであった。
その途端に千弘はグリムジョーへと多大な感謝の念を抱き何度も何度も頭を下げていた。
「いやぁ、貴方には何とお礼を言ったら良いか…まさか私達の知らない場所で密かに任務を手伝ってくれていたなんて…」
「違ぁぁう!!!俺は黒崎一護と全力で戦う為にこの女を連れてきたんだよ!おい頭下げんじゃねぇ!お礼を言うんじゃねぇ!!!」
「まぁまぁ。あ、お礼と言っちゃなんですが、此方の秋刀魚草 ミニミニサイズを」
「またコイツかよ!?だからこんな不気味な生物いらねぇっつってんだろ!!」
「グリちゃん。ツンデレで可愛いのは結構だけど偶には答えるのもアリよ」
「誰がグリちゃんだぁ!?誰がツンデレだ!?この変態オカマがぁ!」
グリムジョーがハリベルと共にウルキオラを介抱しているクールホーンへと叫ぶ中、合流したネムは千弘に駆け寄った。
「千弘さん…お怪我はありませんか…?」
「はい!この通り何とも!」
千弘はそう言い傷一つついていない身体を見せる。その様子を見たネムは安堵の表情を浮かべながら千弘の頭を撫でた。
因みに一護の方では何故か子供の破面に抱きつかれており、その傷を心配していた織姫がアタフタしていた。
すると
そんな賑やかな中、クールホーンと共に降りてきた市丸ギンが千弘へと向かって歩いていった。
「いや〜お見事お見事。さすがやな千弘くん。あとは僕に任せてもらおうか」
「市丸隊長…?」
千弘の付近へと歩いてきたギンは手を叩きながら千弘を称賛すると彼が担いでいる藍染へと目を向け刀を抜く。それを咄嗟に見た千弘はギンを警戒した。
「何をするのですか?」
「決まってるやろ。殺すんや…!!」
その言葉と共にギンの目が一瞬開くと共に刀の切先が千弘の担いでいる藍染へと向けられた。
『死せ……神殺槍ッ!!!!』
その刀は一瞬 塵と化すと即座に形を変え数百メートルもの長さの刀へと変化していく。
それを変化工程からアッサリと見切った千弘は藍染を担ぎながらも一瞬にしてギンの前へと移動。そして手を掴み静止させた。
「ぐ!?」
突然の出来事に辺りで賑やかに会話していた皆は一瞬にして黙りその光景を見つめていた。
一方で、千弘に静止させられたギンは彼の握力に対して苦い表情を浮かび上がらせるとその場で剣を下ろした。
「はぁ…ほんまに君は速いなぁ…」
空が苦言を漏らす中、千弘は尋ねた。
「市丸隊長…なぜこんな事を?」
「……」
尋ねられたギンは最初は話す事に躊躇していたのか、途中から気が変わったのか刀を納め、理由を話した。
話によれば彼は元々、藍染を殺す為に彼の仲間となったのだ。その理由は自身がまだ護廷隊どころか死神にすらなっていない時に崩玉を完成させる為に数多くの死神や流魂街の人々の魂魄を奪っていた藍染が、自身の幼馴染である松本乱菊の魂魄をも奪っていたからである。全て奪われていなかった為に彼女は死んではいなかったものの、大切な人を苦しめた故に彼に恨みを抱き復讐を決めたのだ。
「あの子の命は助かったものの…傷つけたアイツを許せなかった。だからずっと機会を窺っていたんや…コイツを殺す為にどれ程待っていたか…!!」
その目はいつもの陽気と不気味を併せ持つ様な物ではなく果てし無き恨みを持つ悪霊の様な物であった。
「成る程。確かに大切な人を傷つけられれば恨みを持ってしまうでしょう。貴方の中には殺す以外にないという感じですか?」
「あぁ…仮に出来なかったとしても生きるのが嫌になる程の苦痛を与えられなきゃ気が済まへんね…」
「成る程」
ギンの理由を聞いた千弘はしばらくの間考え込む。すると、近くでウルキオラを解放していたクールホーンが何かを思いついた。
「良い考えがあるわよ」
ーーーーーーーー
ーーーーー
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瀞霊廷の一番隊隊舎。そこでは相変わらず厳格な表情を浮かべている元柳斎の姿があった。千弘とネムが虚圏へと任務に向かいもうすぐ一日経つ。彼の実力を知っている為にその報告と帰還を今か今かと待ち望んでいたのだ。
その時であった。
「__!!!」
突然と複数の巨大な霊圧を感じ取る。その霊圧は千弘程ではないが自身以外の隊長格の者達に匹敵あるいは勝る程のものであった。
「…!」
杖を手に取りながら瞬歩で一瞬にして上空へと移動。すると、元柳斎と同じく霊圧を感じ取ったのか浮竹や京楽、そして日番谷や乱菊といったマユリを除いた全隊長と副隊長が同じく空に現れた。
皆が見つめるその一点には空間に裂け目が生じていた。それは間違いなく虚が現世などを行き来する際に使用する【黒腔(ガルガンタ)】であった。
すると 裂け目が開きそこから数人もの破面が姿を現した。
「…」
咄嗟に元柳斎を除いた全員は刀を抜こうとするが元柳斎がそれを止めた。見るとその背後から次々と見覚えの人物が現れたのだ。
ゆっくりと姿を現したその人物を見た一同は驚きの表情を浮かべた。
「「「「「!?」」」」」
そこには任務対象である織姫、攻め入った一護やルキア達を引き連れている千弘とネムのすがたがあったのだ。更にその中にはなんと這縄によってぐるぐる巻きにされた東仙を担いだギンの姿もあり吉良や乱菊、修平、狛村は驚きの表情を浮かべる。
そんな中、千弘の背後からもう一人の人物が姿を現した。その人物を見た一同は先程よりも更に驚きの表情を浮かべる。
そこには自身らを見限った元五番隊隊長である藍染惣右介の姿があったのだ。___
_____スウェットを着て。
そんな中、先頭に立った千弘は皆に向けて敬礼する。
「ただいま戻ってまいりました!」