お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
いつの年も入隊してから時が経ち名を連ねる死神が現れる。例で言えば浮竹十四郎や京楽秋水。そして雛森桃や日番谷冬獅郎。
だが、今世紀の卒業生の中には歴代の中でも最も異例な人材が紛れ込んでいたのだ。
その少年は“規格外”としか言えなかった。霊術院において筋力や探索力、そして霊力による記録を過去最高の記録として大幅に更新していき、その実力から市丸ギンに続き霊術院を一年で卒業し隊へ配属される事となった。
そんな少年をある日、総隊長は呼び出したのであった。
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霊術院の卒業式が終わった直後の瀞霊廷にある一際広大な広場。そこには瀞霊廷に住まう護廷十三隊の隊長と副隊長の全員が集められていた。皆の目の先には総隊長である『山本 重國 元柳斎』とその総隊長と対峙する一人の小柄な死神がいた。
背丈は子供程度。言うなれば最年少の日番谷冬獅郎とそう大差は無いほどだ。身に纏うのは死神の仕事着である『死覇装』それを着込んだ少年に対して寡黙な元柳斎は杖を持ちながら鋭い目を向ける。
「まずは卒業おめでとう…と祝っておこう」
「ありがとうございます。御大将」
元柳斎が祝言を述べると少年は頭を深々と下げた。それに対して元柳斎は頷くと少年へと尋ねた。
「さて聞こう…お主がなぜここへ呼ばれたか…分かるか…?」
元柳斎から尋ねられた少年は少しの間、唸るとすぐに答えを出す。
「……私が粗相をしでかした故にお灸を据える為でしょうか…?」
「否」
出した答えをすぐに否定した元柳斎は両手で掴んでいた手を右手で掴み出す。すると、その杖の木面が弾け飛び一振りの大太刀が姿を現した。
「お主の力を知る為じゃ」
___万象一切 灰燼と為せ 【流刃若火】__!!!!
その言葉と共に大太刀へと炎が灯された。
「私の力…!?」
「左様。霊術院にて…どの課程においても主は過去の中で比べ物にならぬ記録を叩き出しておる。特に筋力、霊力、体術、探索力、共に歴代でダントツ…そして何よりも儂が目にしたのは“剣術”じゃ。聞けば斬魄刀を手にしてからお主の刀身を見た者も一太刀浴びせた者も誰一人としておらん…と聞いておる。その実力……今一度。この者らの前で見せてもらおう…!!」
その言葉と共に大太刀を包む炎が激しさを増していった。それを見た辺りの隊長格の者のうち、十二番隊 以外の全員が驚愕する。
「山爺!いきなり『卍解』は…!!」
「黙っておれ京楽!!」
八番隊隊長である『京楽 秋水』の言葉を一蹴した元柳斎はそのまま刀を水平に持ち出す。すると、刀を包んでいた炎が消えると共に中から煙を放つ黒色の太刀が現れた。
いや 消えたのではない。あまりにもの高温により炎さえも焼き尽くしてしまったのだ。
【卍解】
______“残火の太刀”
その刀の一振りは千里一帯を灰燼と化す劫火の刃となる。
「全員…下がっておれ…!!!」
長年に渡り総隊長の座に居座り続けていた歴戦の死神は最初から目の前に立つ少年を消し炭にするつもりで刀を振るい出す。
北__【天地灰尽(てんちかいじん)】__ッ!!!!
そして 黒色の太刀が振るわれた瞬間 巨大な炎の渦が波の様に巻き起こり少年ごと斜線上の景色を消し飛ばしていくかのように迫っていき少年を飲み込んでいった。
その光景を後ろから見ていた隊長格の皆は冷や汗を流していた。全員が全員 突然の卍解の使用に理解が出来なかったのか疑念の目を向けていた。
「なぜ…元柳斎先生は卍解を…!?」
「僕も全然理解できないよ浮竹…もしかしたら山爺自身が理解してるんじゃないのかなぁ…卍解を使わなきゃいけない程___
___あの子が強いという事をねぇ…!」
その時であった。
目の前を焼き尽くしていた炎が一瞬にして消し飛んだ。
そしてその直後。
目の前を焼き尽くしていた激しい劫火の炎が掻き消されると共に太刀を構える元柳斎の目の前に少年が現れ一瞬にして元柳斎の身体をすり抜けていった。
“完全不可視の峰打ち”__!!!!
「ぬ…!!」
刀を振り翳していた元柳斎は自身の身体をすり抜け少年が背後に立っていた事と攻撃を受けた事をようやく認識すると刀を握り締めた両腕を下ろしながらゆっくりと口にした。
「見事…」
その一言と共に総隊長である元柳斎の身体は地面へと倒れたのであった。
「「「「…!!!」」」」
その光景を目にした一同はようやく認識したかのように瞳を震わせた。だが、認識した時には既に少年の身体は“そこ”にあり総隊長である元柳斎の身体が床へと倒れていたのだ。
「き…京楽…今の…見えていた…か…?」
「いや…全く見えなかった…あの子が太刀を振るってる姿も…というか…太刀を振るってたのかな…?こりゃまた…とんでもない子が出てきたものだね〜…」
二人以外の全員も目が飛び出す程まで開いておりその光景を瞳を震わせながら見つめていた。少年の動きは極限なまでに高められた隊長格らの動体視力でさえも捉える事が不可能な程の速さだったのだ。
中でも最も驚いていたのが五番隊隊長である藍染であった。千弘の刀を握るその姿勢に瞳を震わせていた。
「流石のお前も驚きを隠せなかったようだな…」
「うん…彼の霊圧を感じたがもう何も言えない…僕も多少なりと霊圧に自身があったんだけど、それが豆粒に見えてしまう程の凄まじい霊圧だったよ…」
日番谷の質問に答えながら藍染は驚くと共に一瞬ながら笑みを浮かべていた。その笑みがどの様なものであったのかは本人以外が知るよしも無かった。
隊長達が動揺している中、その少年は倒れた元柳斎に目を向けると、慌て始めていた。
「わ!?大丈夫ですか!誰か!救急箱がどこにあるか知りませんか!?総隊長が突然倒れて…!!」
「い…いや…君がやったんじゃないの…?」
「私が!?とんでもない!私はただ柄を打ち込んだだけです!私程度のものが総隊長を気絶させられる程の技量など身につけておりません!恐らく何か“病気”に掛かっているのでは…」
そう言い少年は慌てながら元柳斎の身体を仰向けにすると心臓マッサージをし始める。
だが、総隊長は病など患っていない。むしろ完体であり強さも過去と大差はない。それに最初から油断もしておらず霊圧も乱れず冷静であった。
総隊長を一般の隊員よりも知っている皆は確信した。
この少年は本気かつ細心の注意を払っていた元柳斎を“一突き”だけで倒したという事を。
そしてその光景を見つめている隊長格の中で一人だけその強さを目の当たりにして目を光らせている者がいた。
「いいねぇ。アイツの強さ…実に興味深い…!!」
十二番隊隊長 『涅 マユリ』
後に元柳斎を破ったこの少年はマユリの進言によって十二番隊へと配属される事となった。それと共に元柳斎を破った事は隊長格らの間での秘密とし混乱防止の為に口外禁止という指令が出されたのであった。
それと同時にこの少年に零番隊となる期待の念も持たれ始めていった。