お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
少年の日常は普通の人と比べれば全く違う。
◇◇◇◇◇◇
ある日、いつものように実験や研究の絶えない技術開発局にて実験などの助手をしていると マユリが大量の書類を置く。
「これを頼むヨ。ネムは女性死神協会の集まりで留守だからネ。印鑑は全て押してある」
「分かりました」
積まれた書類は俗に言う報告書だ。十二番隊に所属する席次の者達からの全ての報告書が隊長に渡され、その隊長を通じて事務の方へと回されるのだ。
書類を抱え上げた千弘はその場から事務へと向かった。
「それとだ」
「……はい?」
◇◇◇◇◇◇
それから事務の方へと書式を渡してきた千弘は帰り道の回廊を歩いていた。死神特有の『瞬歩』というモノを扱えばすぐに到着するのだが、千弘はそんな事はしない。
「はぁ。今日はやけに人が少ないですね。これも『朽木ルキア』の処刑と何か関わりでもあるのですかね…」
そう言い千弘は辺りを見回す。朽木ルキアとは同じく護廷十三隊に所属する女性死神であり、尸魂界における法律に違反した為に処刑される事となったらしい。
千弘は3日前から噂程度に聞いていたが、先程、マユリから話された事で確信したらしい。
まぁ千弘にとってはどうでも良い事なのだが。
「…ん?」
考えながら帰り道の回廊を歩いていくと 目の前から白く長い髪を持つ男性死神が現れた。その男性死神は千弘を見ると笑みを浮かべながら手をあげる。
「…おぉ!千弘くんじゃないか!」
「これはこれは浮竹隊長。どうも」
その男を隊長と呼びながら千弘はゆっくりと頭を下げた。彼の名は『浮竹
十四郎』護廷十三隊の中で十三番隊の隊長である。
「調子はどうだい?どこか悪い所とかは?」
「いえいえ。見ての通り完体ですよ」
「そうか。それは良かった。そうだ!丁度いいからお菓子をあげよう!」
そう言いながら浮竹は懐や袖を弄るとお菓子を取り出して千弘へと渡していく。一体どこに入っているんだというツッコミもさせない程の素早い手付きで次々と取り出して渡していった。
「いいんですか?こんなに」
「気にしないで!ほいほいほい…と。彼女さんと食べてくれ」
「彼女?」
ふと彼の漏らした言葉に千弘は首を傾げた。その一方で浮竹自身も『え?』と予想外な反応をしていた。
「決まっているじゃないか。マユリ氏の娘のネムくんだよ。ほら、いつも一緒にいるだろ?」
「あぁ…」
千弘は思い当たる節があるのか今までの生活を思い出す。彼の周りには気楽に話せる人が少ない為に仕事場でよく一緒になる副隊長のネムと話していることが多い。彼女も彼女で入隊当初は他人行儀であったが、今ではすっかり千弘に懐いており友人の様な関係となっていた。
だが、異性という程までの感情はない。
「確かにそうですけども、別に彼女と言う訳ではないですね」
「む?そうか。まぁそれでも受け取ってくれたまえ。では」
「ありがとうございます。今度何か美味しいお茶でもお持ちしますよ」
「あぁ!楽しみにしているよ!」
大量のお菓子を渡すと浮竹は笑みを浮かべながら去っていった。その姿に一礼した千弘は再び回廊を進み始めた。
その時だった。
「よぅ…千弘ぉおおお!!!」
「ん?」
空中から猛々しい声と共に何者かが剣を振りかざしながら飛び降りてくる。それを見た千弘は何の表情も変えずに直立する。
その瞬間
「うぉ!?」
飛び降りてきた影が何かに弾かれる様にして吹き飛ばされた。
吹き飛ばされたその影を千弘は見ると表情を崩さずに挨拶をする。
「どうも更木ン隊長」
「いつつ…相変わらずのバケモンだな。全く刀身が見えねぇ上に2回も当てられちまった」
吹き飛ばされたその影は地面へと着地すると刀を振り払う。その男は身長が2メートルにも達する大男であり独特な髪型と強靭な肉体を持っていた。彼の名は『更木 剣八』護廷十三隊の中で第十一番隊 隊長を務める豪傑である。その実力は他の隊士や隊長の一線を凌駕しており護廷十三番隊の中でも最上位に位置する力を持っているのだ。
「残念ながら4回です」
「おいおいマジかよ…こりゃ今やっても遊ばれるだけだな…」
更木は残念そうに言いながら立ち上がると、刀を鞘に収めると手をあげて去っていった。
「じゃあな。明日も頼むぜ〜」
「いいですけど時と場合を考えてくださいよ〜」
千弘はその姿を手を振りながら送り返す。彼は何よりも闘いを欲しており、一度、刃を交えて以来彼に興味を抱き毎日、このようにして奇襲を掛けてくるのだ。前にネムと一緒にいた際に奇襲をしてきた時は彼女が巻き添えを喰らいそうになった為に千弘は『一人でいる時ならいい』と念を押しこの様な形になったようだ。
◇◇◇◇◇◇
それから研究室へと戻った千弘は辺りで研究に没頭する職員達のサポートに回った。
「コーヒーお持ちしました〜。それと床のゴミを片付けときますね。あ、あと頼まれていた薬品はもうすぐ届く様です」
来て早々に人数分のコーヒーを淹れて置き、その後すぐさま頭巾を被ると床に散らばっているクシャクシャに丸められた紙や実験装置の隙間にある埃などを次々とゴミ箱の中へと入れていく。
「それじゃは私はこれで失礼します」
技術開発局の掃除を終えた千弘は研究員達にペコリとお辞儀をすると開発局を出ていき、マユリのいる隊長室へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「局長。研究室の掃除終わりましたよ。これコーヒーです」
「おやおや気が効くじゃないか。……ぐぼぇ!?」
千弘から出されたコーヒーを口に入れたマユリはぷはぁと何もない机の上に飲んだコーヒーを吹き出した。
「ゲホッゲホッ… 何だネこれは!?甘すぎるぞ!」
「いや…研究で疲れている局長にただのコーヒーでは申し訳ないと思い砂糖とミルクを入れました」
「糖尿にさせる気かネ!?もういい!私は少し仮眠を取るから邪魔しないでくれたまえヨ」
「じゃあお任せを」
「何故に刀を構えるのかネ!?永眠する訳ではない!!仮眠を取るのだ!!あぁもういい!しばらく休暇を与えるからもう一度気配りというモノを学んできたまえ!!ついでにコーヒーの味付けもだ!!」
そう言いマユリは指先を向けながら命令する。それに対して千弘は相変わらず笑みをたやさずに頷いた。
「はい!では少し寝て調べたらすぐ戻りますので!」
「ちがぁぁぁう!!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
それから隊長室を出ていった千弘は首を傾げていた。
『いいか!お前はこれまで1日も休んでない!だからコーヒーに砂糖とミルクを入れたり寝ると言った時に刀を出そうとするおかしな行動を取るのだ。3日休暇を与えるから絶対に研究室へは来るな!いいな!?絶対だぞ!あと休暇という言葉を調べておけ!!』
去り際に釘を刺されるかのように言われた一言をずっと考えていたのだ。
「う〜ん…と言っても…3日も…何もできないなんて…」
彼にとっては手伝いや雑用は遊びのようなモノである。それ以外となると食事しかない。
そんな時だった。
「…ん?」
背後から自身の後を付いてくる足音が聞こえた。振り返ってみるとそこには相変わらず無表情なネムが立っていた。
「ネムさん。今日は女性死神の集会ではなかったのですが?」
「それは終わりました。ですがその後にマユリ様から3日間貴方を監視する命令を受け、ここに。『絶対に奴をここに来させるな!絶対だぞ!?』……との事で」
「成る程」
ネムの言葉に納得すると千弘はネムに尋ねた。
「休暇をもらった時は…どのようにして過ごしてますか?」
「それは…」
◇◇◇◇◇◇
城下町へと出た二人は料亭へと着く。
「まずは外食です」
その料亭にてネムが頼んだのはマユリと同じ焼き秋刀魚である。その一方で千弘は巨大なチャーシューメンを注文する。
それから食事を終えた二人は店を出る。
「基本はマユリ様に同行するので食事の後は…分かりません」
「そうですか。なら、軽く雑談でもしましょう。お茶とお菓子くらいなら出しますよ」
「ありがとうございます(この調子ですと夕方まで持ちませんね…)」
今もなお沈むことのない陽の光を見ながらネムは心の中で呟いた。
それから千弘はネムと共に自室に向かおうとした。
その時だった。
『西方府外区にて湾面反応!!3号から8号付近に警戒警報!!』
瀞霊邸に巨大な警報が鳴り響いた。それと共に空の景色が少し歪む。
「ん?」