お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
この胸の熱いものは…いつからできたのだろうか…
その日。初めて少女は恋をした。
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ネムと彼が初めて会ったのは彼が十二番隊に所属されて数日経った時であった。主人であるマユリあらある人物の監視を命令されたネムはその人物が待っている部屋へと向かうと襖を開けた。
「…!」
そこにいたのは此方に向けて背を向けながら正座をする一人の少年だった。その少年は死覇装を纏っているために死神である事は間違いない。体格を見る限り十番隊隊長である日番谷冬獅郎とほぼ同じであるためにまだ年頃が幼い者だろう。
するとその少年はゆっくりと振り返った。
「あ!初めまして!この度 十二番隊に所属する事となりました『園原千弘』です!よろしくお願いします!」
その少年の声はまるで少女の様に高くとても幼いものであった。
「この度…貴方の監査役を命じられました『涅 ネム』です」
その日から主ではなく千弘という名の少年と過ごす日々が多くなった。それはマユリの命令故に従う他なかったが。主の命令の元、彼の日常を何日も観察していった。
朝は起きて廷内の見回り。そして掃除。彼の日常はただそれだけであり、ごく稀に異常な力を観察する事ができた。暴走した刀獣の討伐や現世の視察。更に十一番隊隊長である更木剣八の奇襲捌き。だが、その異常な力の根源が何であるのかはサッパリ分からなかった。
「あ、ネムさん!暑いのでアイスでも買っていきませんか!?」
彼は熱い日や寒い日などはこの様にして自身と接してきてくれる。そして遂には悩み事まで相談される様になった。
最初は彼を観察してそのデータを送る事が任務であったが、彼と過ごしていく内に…気が付けば自身も楽しくなっていた。
「…はい…!小豆ものを…!」
いつしか自身は彼を観察対象ではなくただ一人の友として認識していたのだ。
それから私は観察をすると共に彼と日常を謳歌し始めていった。任務を共にした後は食事を摂り、開発を共同したりと__
だが、そんな感情もすぐに異常が現れ始めた。
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そんな日常が続き2年が過ぎた時であった。いつもの様に隊舎の回廊を歩いていると彼と遭遇する。
「あ!ネムさん!どうもこんにちは!」
「…」
軽く会釈する。すると、彼はジッと此方を見つめた。
「あの…どうかされましたか?」
「髪が少し乱れてますね。ここへ。私が直しますよ!」
「いえ…そこまでしていただかなく___!?」
断ろうとしたが彼に肩を掴まれそのままその場に座らせられた。だが、彼の肩が触れたと同時に何故だが心の中が突然と熱くなった。いつもならばこんな事はない筈だ。なのに何故か今はとても熱い…。
「はい!終わりましたよ!」
「あ…ありがとうございます…」
「では、私はこれで」
そう言い彼は小さな足取りで通り過ぎていった、気が付けばその後ろ姿が見えなくなるまで見つめていた。
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「…」
過去を思い出しながら必死にこの胸の熱いものの正体を知ろうとするものの、全く分からなかった。
そんな時だった。
「あら?ネムじゃない。どうしたの?」
「…松本副隊長…」
目の前の角から長いウェーブの掛かった髪を持つ女性死神『松本乱菊』が現れた。
「珍しいわね。いつもなら千弘と一緒にいる筈なのに今日は一人だなんて」
「…」
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ネムが事情を話すと松本は頷きながら自身の隊舎へと場所を移す。隊長不在の執務室にて向かい合う様にソファーに座りながら松本は先程の話について頷くと目を向けた。
「それってやっぱり……恋じゃないの?」
「恋…ですか?」
「だってそれしかないじゃない。アイツの側にいると熱くなるんでしょ〜?」
「はい…ですが…私が恋な_____」
自身が恋心など持つはず無いと言い掛けた瞬間 ネムの脳内を千弘との思い出が駆け巡った。何度も助けてもらった思い出や彼を抱えながら走った思い出、そして彼と共に虚圏へ行った思い出。それが浮かび上がる度に心の奥底から再び熱くなり始めていったのだ。
「(私は本当に…あの人に…)」
その時であった。
「失礼します。松本副隊長!新しいお菓子が手に入ったので女性死神協会の皆で集まって食べませんか!」
扉が開きオレンジ色の髪を持つ小柄な女性死神が現れた。彼女の名は虎徹清音と言い、四番隊副隊長である虎徹勇音の妹である。因みに彼女が所属しているのは浮竹が率いている十三番隊である。
現れた彼女に乱菊は軽く会釈する一方で、ネムは駆け巡る思い出によって彼女に気づいていなかった。
「あ!涅副隊長も丁度良かった!一緒にお菓子を_え?」
「清音!丁度いいところに!」
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あれからネムは意識をハッキリとさせる。その一方で松本から事情を聞いた清音はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべていた。
「ん?どうしたのよ」
「いえいえ…(ふふふ…前までは姉さんと千弘くんの凹凸カップルを想像してたけど…そこに涅副隊長が合わされば…はぁ〜!!小さい男の子が二人のお姉さんにメチャクチャに…!!!)」
そう言いながら清音は頭の中で左右からネムと勇音が千弘を挟む様にして抱き締める光景を思い浮かべながらお盆を抱き締めた。それによって彼女の鼻からは赤い液体が。
「何を想像してるか知らないけど…取り敢えず鼻血止めなさい」
それから気を取り直した清音は松本と共にネムの相談に乗る事となった。だが、ネムは粗方、自身が彼に恋心を抱いている事を自覚した模様であるが、その後の接し方が分からない様だ。
「これからは…千弘さんと…どの様にして接していけば良いのでしょうか…それにこの後に顔を合わせた際にも…」
「「う〜ん…」」
尋ねられた二人は腕を組み考え込む。そんな中、オトナな女性乱菊が目をカッと開き立ち上がった。
「じゃあこうしなさい!!!」
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二人からアドバイスをもらったネムはそのまま十二番隊隊舎へと戻り回廊を歩いていた。
すると その次の曲がり角でバッタリと千弘と会った。
「ね…ネムさん…!?」
「千弘さん…」
出会い頭に千弘は先程の逃げ出してしまった事を悔やんでいるのか、申し訳なさそうな目で此方を見つめていた。
「あの…先程は申し訳ありませんでした…。突然と逃げ出してしまいまして…」
「いえ、お気になさらず。それよりも千弘さん」
「な…なんでしょう…?」
ネムはそのまま千弘を凝視するとゆっくりと両手を広げた。両手を広げる中、ネムは先程、松本や清音から言われた事を思い出す。
『取り敢えず気持ちを伝える事が大事よ。抱えたままじゃストレスにもなるし今後も接し辛くなるわ。もしも逃げようとしたら大胆に行くのよ。__
______キスなり抱き締めるなりしちゃいなさい!』
頭の中で二人のアドバイスを思い出したネムは両手で千弘の顔を挟み込むと自身の顔へと引き寄せた。
「キスなり…抱き締めるなり…」
「え…!?なんですかいった___」
その瞬間
____ネムと千弘の唇がゆっくりと重ね合わされた。
「!?」
唇が触れた瞬間 千弘の顔が一瞬にして真っ赤に染め上がる。その一方で押し付けていた唇をゆっくりと離したネムはそのまま彼の身体を胸元に抱き寄せた。
「!?ね…ネムさん…!?いまのって…!?」
「千弘さん…私は貴方の事を異性として好いています」
「えぇ…!?」
そう言いネムは力ある限り千弘の身体を強く抱き締めた。自身の思いを必死に伝えると共に彼の心臓の鼓動をその身で感じ取るかの様に。すると千弘の身体は更に熱くなっていった。
「千弘さんは私の事をどのように思っているのですか?」
千弘の身体を抱き締めながらネムは尋ねた。その一方で彼女の胸元では千弘は顔を真っ赤にさせながら状況を飲み込めずパニックに陥っていた。
「千弘さん…聞こえてますか?」
「はひぃ!?あ…あのえぇと…」
ネムから尋ねられた千弘は驚きながら顔を逸らす。先程の事が頭から離れず恥ずかしさのあまりネムと顔を合わせられなかったのだ。
そんな中。千弘は京楽と藍染の言葉を思い出す。
『思い立ったが吉日。ハッキリと言っちゃいなよ』
『素直に言え』
二人の言葉で我に帰った千弘は一度深呼吸をし緊張を抑え込むとネムと目を合わせる様に顔を向けた。
「私も…私も貴方の事が好きです!友達としてではなく…一人の女性として!!」
その叫びは周囲に強く響き渡っていった。そして叫んだ千弘は彼女の両手を自身の両手で包み込み強く握り締めた。
「貴方の事を愛してます!!」
「…!」
その言葉を身に受けたネムは大きく目を開くと瞳を震わせる。そして瀞霊廷を照らす夕陽に照らされると共にネムは頬を緩ませ今まで見せた事がない程の満面な笑みを浮かべた。
「はい…!!」
その後。互いに両想いとなった千弘とネムは部屋に戻りいつものように夜を共に過ごしたのであった。
次回から新章の始まりです。といっても2、3話程度で終わると思いますが。