お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
その破面がなぜ生まれたのか。神の悪戯か?はたまた__
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それは一年以上前に遡る。護廷隊を裏切り虚圏へと拠点を移した藍染は崩玉を扱い次々と配下である破面を生み出していた。
だが、藍染が盗んでいたのは崩玉だけではない。もう一つは以前より目をつけていた『千弘細胞(せんげんさいぼう)』即ち千弘の細胞である。彼の未知数の力に興味を持っていた藍染はこの細胞を取り込む事ができれば少しでも彼に近づけるのではないのかと考え、裏切る数ヶ月も前に技術開発局に潜入し保管されていた細胞の一つの瓶を奪っていたのだ。
だが、それは容易に試すべきでない事も分かっていた。あれ程の強大な力を宿す身体を構成する細胞となれば、その分 デメリットも大きい。軽い気持ちで体内に注入してしまえば自身の細胞が耐えきれず壊死してしまう恐れがある。
そう考えていた藍染にとっては虚は最高の実験体であった。破面が誕生していく中、千弘細胞を注入していくものの、強さも霊圧も何もかも特筆すべき変化が起こることはなかった。
そんな中、藍染は次の虚へと目をつける。
「次は君の番だ…」
ゴリラの様な骨格を持つ虚を呼びよせると崩玉を扱い変化させる。
そして
「君にも特別なプレゼントをあげよう」
「!?」
千弘細胞が入れられた注射器を変化していくその身体へと注入した。すると、変化していた虚の身体が発光し辺りを光に包み込んだ。
その瞬間
___!!!!!
とてつもない霊圧がその場を覆った。その霊圧の質は正に規格外であり冷静であった藍染は額から冷や汗を流し始めていた。
「藍染様…!これ程の霊圧…万が一謀反でもされれば…」
「あぁ。ただでは済まないだろう。だからここからは慎重にいくよ要」
そして 辺りを包み込んだ光が晴れた時であった。藍染は目の前の破面へと変化した虚に目を向けた。
「ほぅ…この様子だと成功し______んん…!?」
その姿を見た藍染は言葉を失った。
「シャルロッテ・クールホーン。貴方のために変身成功♡」
光が消えたその場所に立っていたのは筋骨隆々な身体を持ちボサボサの髪を後ろへと流したオカマであった。
「がぁ…!?」
そのあまりにもの巨大な霊圧と独特すぎる風貌にギンは冷や汗を流し東仙は口を開けながら唖然としていた。
その一方で冷静を保っていた藍染は立ち上がると破面へと変化した虚『クールホーン』へと歩み寄った。
「さて、君の望みはなにかな?」
「私の望み……それはただ一つ…!!」
そう尋ねるとクールホーンはクルクルと回りながら最後は跪く姿勢で答えた。
「この美しき世界を邪悪な者から守り抜く為です…!!」
「!?」
その言葉遣いに更に藍染は違和感を覚えた。その仕草や先の行動の読みづらさやバカさ加減が明らかに千弘そっくり………否、正に千弘と同じであったのだ。恐らく細胞の影響をとてつもなく強く受け継いでしまったのだろう。
「(んん…何故だか無性に腹が立ってくるな…)」
ここへ来る寸前に藍染は千弘に頭頂部の髪を刈り取られていた為にいつのまにか憎悪が湧き出し、クールホーンをつい千弘と重ね敵視してしまうが、なんとか冷静に持ち直し手を差し出した。
「…そうか。私と共にくればその望みが叶う事を約束しよう」
すると、跪いたクールホーンは差し伸べられた手をクールホーンは握った。
「このクールホーン…世界を夜明けに導くべく貴方に尽くす事を誓います…!」
「(ほっ…)」
この日、過去未来において最強の虚が誕生したのであった。そして藍染は心の中で何とか調伏できた事に安堵の息を吐くのだった。
これが後に過去、未来において最強の虚の誕生である。
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虚圏にてクールホーンと対峙していたキルゲはクールホーンの言動に耳を疑う。
「捕らえた破面の解放が目的ですか…?随分と仲間思いの虚ですね…」
「仲間?何言っているのかしら?そんな安っぽいものじゃないわ」
キルゲの言葉にクールホーンは首を横に振り否定すると人差し指を向ける。
「あの子達は掛け替えの無い大事な生徒達。守るのは当然よ」
「さっきから何を言っているんですか貴方は…!?」
「えぇと…まさか…あたしらまで入ってる感じで…?」
「勿論よ浦原ちゃん」
そう言い付近の岩場で何か策を考えていた浦原に答えたクールホーンは近くで横たわる破面達へと目を向けた。倒れていたのは3名の女性型の破面でありハリベルの従属官であったアパッチ、ミラ・ローズ、スンスンだった。
「う…うぅ…」
「…?」
そんな中 倒れている3人のうち、アパッチが立ちあがろうと呻き声をあげた。それを耳にしたクールホーンは駆け寄ると抱き上げる。
「かわいそうに…こんなにボロボロになって…」
「うぅ…ん…?」
そんな中 抱き上げられたアパッチは目を震わせながらもゆっくりと開いた。
「よく頑張ったわね。あとは私に任せなさい…うふ♡」
「え…」
その瞬間
「ギゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
急に悲鳴をあげると共に首を垂らす様にして気絶してしまった。その様子を見たクールホーンは眉間に皺を寄せるとキルゲへと目を向けた。
「貴方………よくも私の大事な生徒を叫んでしまう程まで追い詰めてくれたわね…!!!」
「はぁ!?どこからどう見ても!貴方の顔を見たのが原因でしょ___
「嫌味か貴様ッ!!!!!」
「何が!?」
キルゲへと怒声を上げたクールホーンは気絶したアパッチやスンスン、ミラ・ローズをそれぞれ担ぎあげると近くの岩場にて待機していた浦原の元へと運び、再びキルゲの前へと立つ。
「さて滅却師の坊や。私の生徒達をいたぶった罪は重いわよ。本当は後ろで待機してる子達に任せるつもりだったけど」
「…ん?」
クールホーンの言葉にキルゲは驚き背後へと目を向ける。そこには砂に突き刺さった障害物の上に立ちながら此方を見下ろしているグリムジョーとその障害物の根本で腕を組みながら立っているウルキオラの姿があった。どちらも敵意を剥き出しており身体から巨大な霊圧を放っていた。
「気付かないうちに集まってきましたか…まるで砂糖に群がる蟻の様ですねぇ…」
「だけど私自ら貴方の相手をしてあげるって言ってるのよ」
そう言うとクールホーンは手を差し出しキルゲを招く。
「掛かってらっしゃい」
「く…!!!」
宿敵である虚の挑発。それはキルゲのプライドと怒りを刺激させた。
「この…!!」
その挑発にキルゲは額に青筋を浮かび上がらせると全身の力を解放させる。
「虚如きがぁぁぁああ!!!!!」
その叫びは虚圏全体へと響き渡ると共に周囲から次々と霊子を吸収していった。
滅却師特有の能力『聖隷』。それは周囲の霊子を分解して己に取り込む技だ。中でもキルゲの規模は一線を画しており頭部に再び聖隷を扱う為の絶対条件である光輪が現れ周囲一帯の霊子全てを己へと集めていた。
それによってキルゲの四肢は次々と膨張していくと共に上げていた叫びも人間性を失っていった。
そして 周囲の霊子を全て吸い付くした時にはその姿はもう人のものではなくなっていた。
「ソの醜イ姿を今すぐに消し飛ばシテ差シ上げまショウ…!!!私のコの聖ナる力デねぇ…!!!」
生物が発するとは思えない様なノイズの掛かった声と共に全身から10本の腕を生やしそれぞれ剣を生成すると共に吸収した霊子を血管へと流し込み『血装』を発動させた。
滅却師が扱う『血装』は2種類あり攻撃力に特化した『動血装』防御力に特化した『静血装』に分けられている。
この時、キルゲはほぼ全ての霊子を血管へと流し込み超高密度の動血装を展開していたのだ。
___滅却師完聖体『神の正義』
キルゲは戦闘体制を整えるとクールホーンに向けてゆっくりと歩いていく。
そして 一気に仕留めるべく全身に力を込め脚を踏み込んだ。
「イキますヨッ___!!!!」
その言葉と共にキルゲの身体がその場から消え去ると共に空気を突き抜けて行きながら音速を超えた速度でクールホーンに向けて飛び出していった。
その瞬間
「……遅いわよ」
「ガハァ…!?」
肉を叩く巨大な打撃音と共に走っていたキルゲの身体が大きく“く”の字に曲がった。
その光景を見ていた浦原や一護達と同行してきた茶道と織姫は目を点にしていた。
「何なんすか…今の動き…全く…見えませんでしたよ…!?というかこの速度…まるで千弘さんじゃあないですか…!?」
浦原が冷や汗を流しながら驚いている一方で
キルゲの懐に入り込み巨大な拳を放ったクールホーンはよろけるキルゲに向けて再び拳を構えた。
「まだよ…貴方の罪はこれだけじゃ……」
その一言と共にクールホーンの拳がキルゲの顔面へと放たれた。
「これだけじゃ許されないわ…ッ!!!!!」
その拳が打ち込まれた直後__
_______超音速の拳の乱舞が打ち込まれた。
「オラァ!!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ…!!!」
「ぐぼべらごがぎぶべばぼ…!?」
残像を残す程の速度で放たれた拳が次々とキルゲの全身という全身へと打ち込まれて行き異形の姿となった彼の身体を脆い打撃音と共に歪めていく。更にガラスの割る音と共に霊子に構成された霊装を破壊していった。その速度は放っていく度に増していく。
「オラァ!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!____
_______オラァッ!!!!!」
そして
最後の一押しとなる拳を放つと共にクールホーンの身体がキルゲをすり抜けていった。
「が…!?」
クールホーンがすり抜けたキルゲの身体はその場に静止すると共に全身の至る所から亀裂が走り出す。そんな中、キルゲをすり抜けていきラッシュを終えたクールホーンは雄大な背中を向けながら言い放った。
「授業料と殺された生徒達の恨みよ。あの世に持っていきなさい」
「___!!!」
その直後。亀裂の走っていたキルゲの身体が青く発光しながら爆発したのであった。
青い炎がガラスの様に割れ空に散っていく中、クールホーンは振り返り浦原へと目を向けた。
「あ…あの何すか…?」
「決まってるじゃない。捕まった子達を助けにいくのよ」