お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
『特記戦力』
それはユーハバッハが警戒する6名の実力者の総称である。
メンバーは『黒崎一護』『更木剣八』『浦原喜助』『藍染惣右介』『兵主部一兵衛』そして『園原千弘』であり、その6名全員は必ず未知数のステータスを持っていた。
中でも千弘は他のメンバーとは明らかに扱いが異なっていた。未知数とされているステータスは___戦闘力、霊圧、知能といった全てであり、その数値も他の5名とは桁違いである。出生、育ちが普通でありながらも卍解をした元柳斎を刀身を見せずに一撃で下し、更に多数の破面や崩玉で強化された藍染を斬魄刀を使わずに体術だけで圧倒するというその規格外の身体能力から、『UNKNOWN』と呼ばれ、他の5名は発見次第、即排除が義務付けられているが、千弘に限っては上記に加えて逃走が許されていた。
ーーーーーーー
一番隊隊舎跡地。周囲が崩壊した風景の中、千弘によって殴り飛ばされたユーハバッハはゆっくり立ち上がりながら、ネムと共に麦わら帽子を被る農家の様な服を纏う千弘へと笑みを浮かべた。
「やっと会えたな…園原千弘」
「はい?何故私の名前を?まぁいいです。それよりも…畑を滅茶苦茶にした修繕費を払ってもらいます……ってぎゃぁぁぁ!?山元御大!?更木ン隊長!?どうしたんですかその傷!!」
千弘は倒れている元柳斎と更木を見て驚きの声を上げると、即座に治療を始めた。
目の前で千弘が二人を治療をしている光景を見つめている中、ハッシュヴァルトは通信班からの通達を耳にし、それをユーハバッハへと伝える。
「陛下……たった今通達が…我々以外の侵入した星十字騎士団全員が倒されたとのこと…」
「ほぅ…星十字騎士団でさえも奴の足止めにならぬか…」
「いえ…大半は園原千弘の仕業ですが…そのうちの二人…『ドリスコール・ベルチ』と『蒼都』は別の死神によって倒された模様…一人は“盲目の剣士”もう一人は“伸縮自在の斬魄刀を操る男”…とのこと」
「囚人を解放するとはよほど手が足りていなかったか…だが…千弘が出てきた以上、今回の侵攻は失敗だ。通信班へ伝えろ。すぐに全員回収しろとな。奴らにはまだやってもらうことがある」
「はい…では陛下も速やかに『見えざる帝国』へ…」
「いや」
ハッシュヴァルトが帰還を促すとユーハバッハは首を横に振る。
「私はしばし奴と話し、できれば直に力をみたい」
そう言うとユーハバッハは今もなお元柳斎を治療している千弘へと目を向ける。
「園原千弘。私はお前に会える日を待っていた」
「あ〜申し訳ないんですが、今 手が離せないので後でお願いします」
「………我が名は『ユーハバッハ』。滅却師だ。私はお前の力に興味がある」
「はいはい〜分かったので、すいませんけども、後でお願いします……えっと、後はここをこうしてっと……」
いくらユーハバッハが声を掛けても、千弘は返事だけしかせず、顔を向けようとはしなかった。今もなお元柳齋と更木の治療へと専念しており、その態度にハッシュヴァルトは怒りを露わにした。
「……おい……陛下の話を聞……」
「うるっさいですよッ!!!!後にしてって言ってるでしょッ!!!!」
「貴様…!!!」
「よせハッシュヴァルト…迂闊に手を出すな」
いくらユーハバッハが声を掛けても適当にあしらいながら治療に専念する千弘にハッシュヴァルトは遂に腰に掛けてある刀へと手を掛けるが、ユーハバッハはそれを制し、そのまま待つ事にした。
「がはぁ…千弘…儂の事はいい…早く奴らを…ぐほぇ!?」
「怪我人はお静かにお願いします。ネムさん、両足を押さえておいてください」
「はい」
因みに目を覚ました元柳斎は千弘の腹パンによって気絶させられた。
ーーーーーー
それから元柳斎の治療を終えた千弘は麦わら帽子を外して立ち上がると瓦礫の上で座りながら待っていたユーハバッハへと目を向けた。
「さてと…お待たせしました。それで、私に何の御用でしょうか?」
千弘が尋ねると待っていたかの様にユーハバッハは瓦礫から腰を上げ千弘に目を向けた。
「私はお前の力に興味が……「あ、名前のところからお願いします」………我が名は『ユーハバッハ』滅却師だ。私はお前の力に興味が……」
「あの〜!すいませんけども!もうちょっとこっち来てもらえませんか〜!?どうも遠くて何言ってるのか分からないんです!」
「……(なぜだろうか…聞こえないのは分かるが…無性に腹が立ってくる…)」
次から次へと来る注文に流石の寛大?であるユーハバッハも限界が来たのか、額に青筋を浮かべるも、すぐさま冷静になり、彼らとの距離が数十メートル程度となる場所まで近づいた。
take2
「私はお前の力に興味がある」
「はいはいはい」
「山本重國だけでなく破面共も一撃で下し更に崩玉を手にした藍染さえも寄せ付けぬその強さは正に芸術といって言い。この世界のどこを探してもお前のような奴はいない。お前の肉体には神が宿っているのだ」
「成る程…」
「我が『見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)』の軍門に降り、持て余しているその力を振るってみる気はないか…?さすればお前とお前の選ぶ死神の命を約束し、十分な地位と力が振るえる場を与えよう…」
そう言いユーハバッハは手を差し出した。彼が行ったのは藍染惣右介へ行った事と同じ勧誘である。
「…ですって。どうします?」
千弘はユーハバッハからの提案に後ろに立っているマユリとネムへと尋ねた。それを見たユーハバッハは千弘が後ろの二人を選んだと見て声を掛ける。
「涅マユリとその娘か。園原千弘が此方に降るのならばお前達の身の安全を保障し独自の研究室や有能な部下を与えてやるぞ」
「はぁ〜?」
ユーハバッハから勧誘を受けたマユリは、迷う素振りどころか、逆に嫌そ〜な顔を浮かべると小指を鼻の穴に突っ込んだ。
「お断りに決まってるじゃないカ。研究室など今ある設備で十分な上に必要ならば改良すれば良いし、そもそも私の部下など技術開発局にいる馬鹿どもで十分なのだヨ」
「マユリ様が行かないのであれば私もお断りします」
「…らしいので私もいいです。それに胡散臭いですし」
アッサリと拒否の返事をする千弘達にユーハバッハは予想はしていたのか、話を続けた。
「まぁ結論を急ぐな。まず私の真の目的を聞___
「そういうのって、後でしっぺ返しが来るマルチ商法みたいなものですよね?最初は甘〜い言葉で惑わせて入った途端に聞いてもない条件を提示したり法外な料金を請求したり不遇な対応しても文句を言わせない様にするんですよね?
ぜ〜ったいに嫌ですよ!聞きたくないです!美味しい特典があっても聞きませんからね!!はいおしまい!!」
そう言い千弘は完全に拒否をする。もはや自身らを一介の詐欺集団と認識している様だ。
「…そうか」
その様子から、今は交渉など無意味であることを悟るとユーハバッハは頷きながら背を向ける。
「だが私はまた来るぞ。その時にまた良い返事を期待している」
それだけ言い残すとユーハバッハは目の前に影の領域を展開させるとハッシュヴァルトと共に向かった。千弘達に背を向けて去る中、後ろを歩いていたハッシュヴァルトは険しい表情を浮かべながら尋ねた。
「よろしいのですか…?」
「あぁ…下手をすれば私でさえも危うい。故に時間をかけて引き込むのだ。そう焦る必要はない…。それに、そろそろ時間だろう。戻るぞ」
そう言いユーハバッハはハッシュヴァルトと共に影の領域へと戻ろうとした。
その時であった。
「…!!!」
背後から言葉で言い表せない程の霊圧が感じられた。その霊圧は元柳斎の霊圧の強さを二乗してもなお軽く上回る程のものであり、地面どころか空間さえも震わせていた。
その正体はわかっていた。千弘だ。振り向くとそこには怒りの表情を浮かばせながら歩いてくる千弘の姿があった。
「何しれっと帰ろうとしてるんですか?まだこっちの話が終わってないんですよ…?」
「…!?」
その瞬間 千弘から発せられる霊圧の強度が更に高まり、周囲を振動させるどころか地面を揺らし始めた。それによってユーハバッハとハッシュヴァルトの全身の身の毛がよだつ。
咄嗟にユーハバッハは滅却師の基礎の技である静血装の応用である『外殻静血装』を発動させた。すると、ユーハバッハとハッシュヴァルトを覆うかの様にユーハバッハの身体からサークル状のフィールドが形成された。
「…ん?何ですかこれ」
「『静血装』…本来ならば体内に構成し身体を硬質化させるが私はその力を応用し体外へ放出させる事で擬似的な結界を__
「えい」
パリィィィン
その直後。千弘が拳を打ち付けると共にその結界は粉々に砕け散った。
「…!!!」
「バカな……陛下の血装を叩いただけで…!?」
ハッシュヴァルトが驚愕する中、ユーハバッハ自身も唖然としていたが、即座に立て直し両腕に霊子を収束させると、小さな弓矢を生成し、千弘に向けて放った。
「話し合いに何かご不満でも?ご安心を。働くのであれば、勿論その分のお給料は出します…んん?」
すると 千弘の身体へと当たった弓矢が変形すると培養液の如く体積を拡大させ、千弘を包み込み檻の形へと変わった。
それを見たハッシュヴァルトは驚きの表情を浮かべる。
「この能力は…キルゲのthe Jale…」
「あぁ。先程、キルゲの力が私の中に戻ってきた。奴は死んだという事だ。だがまぁ好都合だ。これに囚われれば最後…死神ならば私の意志で解除しなければ一生__
「よいしょ」
ガキィン…ッ!!
その瞬間 その場に巨大な金属音が響き渡った。その音を耳にしたユーハバッハは閉じていた目を即座に開き、目の前の状況を目にすると冷や汗を流した。
「なん…だと…!?」
そこには拘束していた霊子の檻をまるで金属の様に折り曲げながら出てくる千弘の姿があった。自身の能力に多少の自信を持っていたユーハバッハはそれを破られた事で気を抜いてしまう。
それによって影の領域へと入る隙を逃してしまい、千弘の接近を許してしまった。
「私を拘束しようとしてるようですが……」
「!?」
気がつけば既に千弘の身体は目の前へと迫っていた。
「話し合いがそんなに嫌なのですかぁ!!!このバカチンがぁぁぁ!!!!!!」
スパァァンッ!!!
「グホェッ!?」
その怒鳴り声と共に一瞬にしてユーハバッハへと接近した千弘の懐からハリセンが取り出され、ユーハバッハに向けて振り回された。振り回されたハリセンはユーハバッハの頬へと深く入り込むと共にその場から横へと殴り飛ばした。
殴り飛ばされたユーハバッハの身体はそのまま地面をバウンドし、近くにあった瓦礫の山へと砂煙を巻きがながら突っ込んでいく。
「おい、ちゃんと装備品の原型はとどめておくんだヨ。卍解の取り返し方がまだ解析できてないのだからネ」
「了解ですよ局長…それに…死んでは困りますからねぇ…ちゃんと弁償させないと…!!!」
ーーーーーーーー
「…久方振りだな…自分の血を目にするのは…」
近くの瓦礫の山まで殴り飛ばされ、崩れる瓦礫の立ち込める砂煙の中でゆっくりと立ち上がったユーハバッハは鼻から流れる血を手でとり眺めていた。そして殴られた頬へとゆっくりと手を当てる。
「…!!」
感じられたのは、殴られた瞬間には感じられる事がなかった“痛み”である。その痛みは無くなる事なく、その箇所へと残っていた。
「(やはりな…予想以上の威力だ…たった一発食らっただけでこの様とはな…一撃一撃が千年前の山本重國の卍解の数十倍はある…)」
すると 目の前に舞う砂煙の中から声が聞こえてきた。
「貴方…何で逃げようとするんですか…?」
「!?」
その声を耳にしたユーハバッハは咄嗟に目を向ける。すると、目の前の砂煙が晴れ、ハリセンを手の中でペンの様に回しながら千弘が歩いてきていた。
「話しようとする前に…なに逃げようとしてんですかオイコラァ…!!言わせてもらいますがねぇ!!こちとら収入源が無くなってイライラしてんですよ!?お宅のとこの人達の所為で私はまたしばらく貧乏生活に逆戻りなんですよ!?どう責任とってくれるんですかぁ!?」
「ぐ!?」
そう叫びながら千弘はハリセンを捨てると、立ちあがろうとしたユーハバッハの首を掴み上げた。咄嗟にユーハバッハは右手から高濃度に圧縮した霊子を数百発の弾丸へと変化させて放つが、千弘はそれを指先だけでキャッチし全て握り潰し、更に握った手を広げるとそのまま振り上げた。
「やられたらやり返す…倍返しだッ!!!」
「ぬぅ…!!」
その動作を見たユーハバッハは今度は体内へと巡らせている血液に霊子を送り込み限界まで活性化させ超高密度の静血装を発動させた。
だが
その静血装でさえも意味を成さなかった。
パァァァン…ッ!!!!
「ぶべらぁ!?」
その瞬間 綺麗な音と共に千弘の平手打ちがユーハバッハの頬へと放たれた。
限界まで強度を高め、もはやダイヤモンドでさえも及ばない程の超硬度なまでの身体が、そのビンタによって頬を歪ませながら再び吹き飛ばされていく。
「やはり貴様の力は素晴らしい…!!!だが…」
吹き飛ばされる中、ユーハバッハは気が昂ったのか歓喜の表情を浮かべると状態を立て直しながら着地し千弘に向けて手をかざした。
「だが私もやられたままでは終わらんぞ…!!」
すると、千弘の周囲が青く輝き出した。
_____聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)
滅却師が扱う極大防御呪術であり、散布した3箇所から光の柱を出現させ、その真ん中へと立っている者を神々しい光で切り裂くものであった。
「えい」
だが、その技も千弘が刀を振り回す事でアッサリと掻き消してしまうが、その隙をユーハバッハは狙っていたのだ。
「山本重國…!お前の卍解…お前の率いる隊士を葬るために使わせてもらうぞ…!!」
____卍解『残火の太刀』
その言葉と共にユーハバッハの右手に握られた剣がメダリオンから溢れ出た炎につつまれると共に吸収され、その剣が焼け焦げる。ユーハバッハは先程、元柳斎から奪った卍解を発動させたのだ。
「ヌゥン…ッ!!!!」
「ん?」
その場からユーハバッハは刀を振り上げる。炎を纏った劫火の一振りを千弘は受け止めるが、そのままユーハバッハは刀を振り上げ、千弘を空中へと突き飛ばした。
「更に大サービスだ…!!!」
そしてその場から飛び立ち千弘と同じ場所へと到達したユーハバッハは周囲の霊子と自身が集めた霊子を収束させると千弘の周囲に無数の剣や弓を生成した。
「それって御大将の…うぉ!?」
ユーハバッハは残火の太刀と化した刀剣を再び千弘に向けて振るった。それを千弘は空中で身体を回しながらアッサリと躱す。
それを見たユーハバッハは笑みを浮かべると次々と焼け焦げた刃を振り回した。
すると、残火の太刀の特性である放射線状にあるすべての物体を消しとばしていく力によって千弘の周囲にあった瓦礫が消え去り、更にユーハバッハの周りから霊子で構成された無数の剣や弓が連動するかの様に放たれていき、まるで雨の如く千弘へと襲い掛かっていった。
「さぁ千弘!私に見せてくれ!誰も彼も見たことが無いお前の力に耐えうる斬魄刀の姿を…!!!」
「…ムカッ」
千弘は額に青筋を浮かび上がると腰から鞘ごと抜いた斬魄刀で迫り来る剣技と霊子兵装の嵐をその場から一歩も動く事なく鞘で悉く防いでいった。本来ならば、残火の太刀を一振りさえすれば並大抵の者は一瞬にして消し飛ぶ。それはユーハバッハの達人さえも超越する剣術によって更に強化されているが、それすらも真正面から対峙していた千弘には効いていなかった。それどころか隙間がない程まで生成され、四方八方から放たれてくる霊子の剣や弓矢さえも涼しい顔で防いでいた。
だが、やはり太陽の温度には耐えられないのか、千弘の額からは汗、そして受け止めた斬魄刀の鞘が形を変形させていった。
それでもユーハバッハを驚かせるには十分なものであり、今ある限界の力を振り絞っているにも関わらず未だに千弘の振るう斬魄刀の姿を捉える事は出来なかった。
すると
「あの…そろそろいい加減にして欲しいんですが…」
迫り来る斬撃の嵐を防ぐ中、千弘がボソッと呟く。だがその言葉はユーハバッハに届いていたのか、更に剣を振るう速度が増していく。それはもはや千弘が剣を振るう速度に近づいており、遠目から見ていたマユリの目にはもはやユーハバッハの振るう剣の姿さえも見えなくなっていた。
「どうした!?速度が落ちてきているぞ…!!やはりスタミナが切れ___
その時であった。
「!?」
千弘が突然、刀を腰へ仕舞うと、振り下ろされたユーハバッハの剣を握っていた腕を掴んだ。
「いい加減にしろって……」
その直後__。
千弘が一瞬にしてユーハバッハの懐へと潜り込み、その腹部目掛けて拳を放った。
「言ってんでしょうがぁあああッ!!!!!※暴力反対パァァァァンチッ!!!」
「!?」
※暴力反対と叫びながら相手を殴りつける千弘の必殺技である!!
「ガハァ…ッ!!!」
その拳は空気を螺旋状に纏いながら突き抜けていき、ユーハバッハの腹へと脆い音を響き渡らせながら深々と突き刺さっていった。それによってユーハバッハは目を大きく開くと共に両頬を大きく膨らませると体内から押し出された空気を微量の胃液と共に吐き出した。
そして ユーハバッハの身体はくの字に曲がりながらそのまま背後にある瓦礫の山を次々と突き抜けていきながら地上へと叩き落とされていったのだった。
ーーーーーーーー
近くの瓦礫の山まで殴り飛ばされたユーハバッハは体制を立て直し立ち上がるも腹から伝わってくる痛みに耐えきれずその場に片膝をついた。足元には空き出された血があり、その量からかなりのダメージを受けたと見れるだろう。
「ハァ…ハァ…ハァ…!!(肉弾戦のみでここまで傷を負わされるとは…やはりすぐに撤退すべきであったな…好奇心は猫を殺すとは正にこの事か…)」
推測通り園原千弘の力は予想外であった。今の自身はおろか…力を解放した自身でさえも倒す事は叶わないだろう。今後に予測できるのは完全なる一方試合のみである。改めてユーハバッハは目の前に立っている少年が全くの別次元の生物である事を認識した。
「陛下…!!」
すると 先程まで後方にて待機していたハッシュヴァルトが駆け寄ってくると、千弘を睨みながら耳打ちをする。
「撤退準備完了です…お早く…」
その言葉と共に背後に見えざる帝国への入り口となる影の領域が出現した。
「あぁ…活動限界も今になってきたか…」
ハッシュヴァルトの言葉にユーハバッハは頷いた。これ以上戦えば間違いなく自身は倒されてしまうだろう。自身が荒い息を吐いているのにたいして、先程まで瀞霊廷中を駆け回りながら怪我人の救助に加えて星十字騎士団の殆どを倒し、更に先程の斬撃の嵐を防いでいた目の前にいる千弘は疲れる素振りを何一つ見せていなかった。
「やはり化け物だな…これ程の力をどうやって身につけたのかじっくりと調べてみたかったが…残念だ」
「陛下…差し出がましいようですが…“あれ”を取り込むまでは、まだ正面から闘うべきではないかと…」
「そうだな…」
ハッシュヴァルトに頷いたユーハバッハは即座に自身の背後に展開された影の領域へと後退する形で身を投じようとした。
その時であった。
「……んぐ!?」
突然 喉元に何かが放り込まれ、驚いたユーハバッハは誤ってそれを飲み込んでしまう。
「陛下!?」
「な…なんだこれは…!?何か玉の様なものが私の口に…!!貴様…!私に何を飲ませた!?」
「はい?」
何かを飲み込んだユーハバッハは目の前で、振りかぶり後の姿勢で立っていた千弘を睨みつけた。すると、千弘は首を傾げながら答えた。
「いや、これ以上だと埒が開かないので、取り敢えず落ち着ける様に鎮静剤をカプセルに包んだ薬を投与しました……ってあれ?」
すると 千弘はポケットを弄ると、またもや錠剤を取り出すが、千弘はそれを見て驚いた。
「あ〜!すいません間違えました!それ別のやつです!鎮静剤はこっちだ!」
「なんだと…!?ならば私に投げたのはなんだ!?」
自身が飲み込んでしまった正体不明の錠剤にユーハバッハは冷や汗を流しながら千弘へと問い掛ける。すると、千弘は頬をポリポリと掻きながら答えた。
「あちゃぁ…せっかく局長の為だけに用意したのに…」
「答えろッ!!!」
「はい!ええっと、それは今度局長の食事に混ぜようとした_____
_______改良型タバスコの錠剤です。因みにスコヴィル値は5000万です」
※スコヴィル値とは辛さのレベルで通常のタバスコが2500〜5000。
「…タバスコ…だと!?」
その単語にユーハバッハは耳を疑うが、その直後に喉元から違和感が走り出した。気づいた時にはもう遅い。
するとユーハバッハの口元が段々とゆっくりと赤く輝いてきた___。
その直後____
「ぎィィやぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
____その場に激しい劫火が巻き上がると共に皇帝の超巨大な悲鳴が響き渡った。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
しばらくして。キルゲの拘束から抜け出した一護は後方から駆け出しようやく、賊軍の首領の霊圧が感じられるこの場に到着した。
「テメェらだな…尸魂界を滅茶苦茶にしたの……は……」
その光景を見た一護は固まってしまった。
「ぁがぁ…!うがぁぁ…!!!!」
「陛下!お気を確かに…!!」
「貴様ァァァァ!!!あんなものを私の食事に混ぜようとしていたのかネ!?」
「大丈夫ですよ!いざという時のために水(可燃性)も用意してありますから!さ!という訳で局長も飲みなさぁぁい!!」
「誰が飲むかぁぁぁ!!!」
目の前には口から炎を出し転げ回りながら絶叫する大柄なおっさんとそれを横目に千弘とマユリが取っ組み合う光景が広がっていた。
「なに…この状況…!?」
目の前に広がる奇想天外かつ多大なる情報量の光景に一護は戸惑うのであった。
さすがに何かを与えたり奪える陛下も辛さまでは奪えないでしょう(笑)
千弘の技
暴力反対パンチ
この世で最も矛盾なパンチ
ハリセンの振り回し
ただハリセンを振り回す。