お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
「地獄へ?」
「うん」
「いけ?」
「うん」
……………
「うわぁぁぁん!!!!局長のバカァァァァ!!!!」
「うるさいネぇ。誰も堕ちろとは言ってないだろ。まぁ堕ちてくれるなら此方としても願ったり叶ったりなんだがネ〜。私は連れて来いと言っているのだヨ。まぁそんな話は後にして、まずはこれを見たまえ」
涙を流しながら出て行こうとする千弘をネムが抱き上げながら止める光景を横目に、マユリは光る服を見せて来た。その服の放つ光は尋常ではないもので研究室全体を昼のように照らしていた。
「眩し!これって現世の子供達が着るパジャマによくある奴じゃないですか。なぜこんなものを?」
「奴らが撤退する際に黒い靄のような物へと消えていっただろ?その時から私は奴らが潜む場所を粗方、突き止めていたのだヨ」
そう言うとマユリは自身の足元にある影を指差した。
「奴らが潜んでいるのはここ。“影”の中ダ。だが、我々のような死神の影ではない。仮にそうだとすれば背後からぶすりダ。ならどの影か?答えは簡単。瀞霊廷中の至る所にある建物の影ダ。奴らは霊子の扱いに長けているからそれを応用して空間でも作ったのだろう。まぁ簡単な話、これがあれば侵入は防げるという事ダ」
「成る程」
「それともう一つ」
千弘が納得する中、マユリはある機器を手に持った。
「何ですか?それ」
「私が開発した霊子の働きを強制的に制御する装置だよ。奴らが固有の能力を持ってはいるのは知っているネ?」
マユリから尋ねられた千弘は自身に向けて霊子を応用した攻撃を向けてきたバンビエッタを思い出す。
「はい。特になんか、私の事をショタ とかいじってた人は爆弾を操る能力でしたね」
「そう。確かに厄介ダ。だが、根本的に考えればその霊子に当たらなければ問題ない。それでも避けるのが困難な技を使う奴らも中にはいル。そこでこれが役に立つという訳ダ。これがあれば霊子を応用した能力の発動を設定した時間遅らせる事ができる」
「成る程!では今日はそれの量産って事ですか?」
「それもそうだが、別の機器の整備もある。この数日間の内に奴らが必ず攻めてくる筈だからネ」
「……」
それを聞いた千弘は身体を一時的に固まらせるが、その後、すぐに目を開き炎を宿した。その理由は簡単だ。前回の襲撃で自身から収入源を奪い去り逃げた者達が向こうから現れるのだから。
「おっしゃぁぁぁ!!!!今度こそ逃がさねぇからなぁ!!」
「一々うるさいんだヨ!!まだこれについて説明していないだろう!!!」
雄叫びを上げた千弘を一喝したマユリは研究所の中でも一際巨大な装置へと指を向けた。
「これを見たまえ」
「ん?」
マユリに言われた通り千弘も目を向けると、驚いた。
「こ…これは…!!!!!」
それから千弘はマユリから機器を紹介されると了承し本来の仕事である機器の制作と整備へと移った。
ーーーーーーーー
ーーーーー
ーー
「…ん?隊長は?」
数日が経過した頃。既に千弘の手によって復興を終えた技術開発局にて調査や監視を行っていた十二番隊第3席である阿近は見当たらないマユリとネムと千弘の所在について尋ねた。すると同じく局員で千弘やネムと比較的に交流が多いニコが不思議そうに答えた。
「それが…数日前から副隊長や千弘ちゃんと研究室に篭ったきり出てこないんですよ…」
「……」
不審に思った阿近はマユリの研究室兼隊首室へと目を向けるとその周囲に配置されている監視蟲へと目を向けた。
「妙だな…隊長が24時間以上も籠ってるっつうのに監視蟲が動いてねぇ…こんな事は初めてだ…千弘がいるから大丈夫だとは思うが……」
阿近はその場からモニター付近のボードを操作すると、モニターを起動させる。
「えぇ!?なんですかこれ…!?」
「隊首室に仕掛けた監視カメラだ」
「ちょ…そんな事していいんですか!?」
「黙ってろ。映るぞ」
そう言いながら阿近が起動ボタンを押すとモニターに映像が映し出された。すると、そこに映ったのはややブレがありながらも背中を向けながら必死に何かを制作する3人の姿であった。
見る限り危険なものは製作していない。
だが、その3人の背後には…隊首室全体を埋め尽くす程の謎の装置が置かれており、千弘はマユリに指示を受けながら次々と部品を装着していった。
その光景をモニター越しで目の当たりにしていた阿近達は目を大きく開かせる。
「…な……なんだあの見た事もねぇ妙な装置は…隊長は……一体何を作っているつもりなんだ…!?」
その時であった。
ピーピーピー
「「「!?」」」
機器からけたたましい程の異常発生を知らせるブザーが鳴り始めた。それを耳にした阿近達は即座に持ち場へと着き、機器を操作する。だが、いくら操作をしても機器が表す計測値が異常であり、原因も何もかも分からずパニックに陥り始めた。
そして その数値と横に取り付けられた映像を見た阿近は冷や汗を流しながら固まる。
「嘘だろ…?瀞霊廷が…消えた…!!」
ーーーーーーー
そしてその同時刻。技術開発局と同じくして瀞霊廷全域がパニックへと陥っていた。
「うわぁ!?なんだぁ!?」
「景色が…変わっていく!?」
慌てふためく大衆達が目を向けた先には射魂膜が瀞霊廷の景色と共にまるで喰われていくかのように空へと消え去り、それに置き換わるかの様に白銀の西洋都市が現れる光景が広がっていた。
「なんだこの建物!?どうなってんだよ一体!!!」
突然と風景が変わり瀞霊廷が消え去った事で訓練や日常を過ごしていた隊士達は唐突な現実を受け入れられず、混乱していく。
そんな中。その光景を一際高い場所から見下ろし見物する影があった。
「侵攻完了だ」
そこには数日前に千弘にコテンパンにされた挙げ句の果てにタバスコを飲まされ大恥をかいた滅却師の始祖であるユーハバッハが二人の滅却師を連れながら立っていた。その顔からは千弘から受けた傷が完全に塞がっており既に完治しているように見える。
ユーハバッハは混乱する瀞霊廷“だった”場所を見つめながら雨竜へと問う。
「雨竜よ…『聖帝頌歌』を知っているか?」
「はい…“封じられし滅却師の王は900年を得て鼓動を取り戻し90年を得て理知を取り戻し9年の時を得て力を取り戻す”」
「それにはまだ続きがある。“9日間を持って世界を取り戻す”…とな」
その言葉と共にユーハバッハは腰に掛けてある新調された刀剣を取り出した。
「ゆくぞ雨竜、ハッシュヴァルト。世界の終わる9日間へ」
『卍解』【残火の太刀】
その瞬間 ユーハバッハの刀剣がメダリオンから現れた灼熱の劫火へと包まれていき焼け焦げた刃へと変化した。
そしてそのまま地面へと突き刺す。
「さて…山本重國よ……貴様から奪い取った卍解の力…ありがたく使わせてもらうぞ…!!!」
すると 突き刺した場所を起点に各地に亀裂が走り始めると共に砕け散り、クレーターを形成すると、その場から赤く染まった人骨が姿を現した。
_____[残火の太刀]【火火十万億死大葬陣】
元柳斎の卍解の見せ損ねた技であり卍解を奪い去った事でユーハバッハは発動させる事が可能となったのだ。
刀を担ぎながら現れた骸は群れをなし骨と骨が重なり合う事で鳴る不気味な音を奏でながら進軍し始めた。それによって周囲からは絶叫する声が飛び交い始めるが、それでもユーハバッハはまだ手を止める事は無かった。
「さて…これで土台は揃った。あとは……」
その光景を目にしたユーハバッハは手を勢いよく合わせる。するとユーハバッハの全身から収束されていた霊子が呼応するかの様に輝き出し彼の両手へと宿っていく。
「死神共よ。諸君らに私からプレゼントがある。擬似的ではあるが受け取取るがいい…!!!」
そして最大限の輝きへと到達するとユーハバッハは片膝をつき力を込めながら両腕を広げ地面へと叩き付ける。
「かつての仲間との再会だ…!」
その瞬間 ユーハバッハの両腕から放たれた霊子が光の経路を形成し、進軍する骸一つ一つへと繋がった。
すると その骸骨達の進軍する動きが止まり、足元から突如として発生した塵芥に包まれていった。
それは彼自身が熟読していた書物の世界にて禁忌とされていた秘術。
“穢土転生の術”
穢土転生の術
ユーハバッハが愛読していた『NARUTO』の世界の術であり、死者を蘇らせ自在に操る。
本来は蘇生する者のDNAや依代となる生身の人間が必要となるが、ユーハバッハはDNAを必要とせず、卍解により発生した骸骨達を依代にする事によって発動に成功した。
だが、DNAがない為に甦る人物がランダムである上に本来の術は術者が死んでも解けないが、ユーハバッハ自身が無理やり発動させている為に、少しでも意識を刈り取られればすぐに解除されてしまうという弱点が存在する。