お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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地獄へ堕ちます!そんなこんなでトラウマと再会?

 

千弘が地獄門へと飲み込まれて行くと、ユーハバッハはその場に膝をついた。

 

「が…はぁ…はぁ…はぁ…!!」

 

感じるのは疲労。千弘との戦いによる痛みが今となって現れ身体機能を少し低下させたのだ。更にそれに加えて地獄門も発動したためにその反動は大きいものであった。

 

だが、その見返りも大きい。敵の最も危険な戦力を離脱させたのだから。

 

「(短時間に千弘の攻撃を受けすぎたか…だが…これで一番厄介な奴は潰せた…後は残りの死神共を殲滅するのみだな…)」

 

そしてユーハバッハはしばらく息を整えた後に即座に元の玉座へと戻っていった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

千弘の霊圧が消失した。それは彼の実力を知る隊長、副隊長のみが認識しており、皆は一斉にして驚きの表情を浮かべていた。

千弘の消失により戦況が覆されようとしたが、それと同時に浦原喜助が卍解を取り戻す『浸影薬』を開発し、各隊長へと送られた事で巻き返されようとした戦況は再び一変し、卍解を取り戻した隊長格らは次々と敵を撃破していった。

 

 

だが、それでも彼の霊圧の消失が信じられないのか、緊急用の医療用テントにて待機していた勇音は瞳を震わせていた。

 

「隊長…千弘くんの霊圧が…!!!」

 

「狼狽えるのではありません勇音。どんな手を使われたかは分かりませんが、彼が簡単に倒される人ではない事を我々が一番よく知っている筈です」

 

滅却師の術により医療施設が消えた事で緊急用のテントがいくつも設置された治療場にて四番隊をまとめていた卯ノ花は彼の霊圧の消失により震え始めた勇音を叱責し彼女を宥めた。

 

「今はただ、我々にできる事だけを考えるのです」

 

「はい…!」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

そして所変わり技術開発局にて。マユリや浦原達も千弘の霊圧が消失した事を感じ取っていた。

 

「奴の霊圧が消えた…となると、私の予想通りという訳か」

 

「いやぁ〜さ〜すが涅さんっスね〜♪まさか地獄に堕とされた場合すらお見通しとは」

 

マユリの言葉に浦原自身も勘付いていたのか、わざとらしい笑みを浮かべる一方で、今度は本当に予想外であったかのような表情を浮かべた。

 

「それに“死人を生き返らせる”なんて私でも思い浮かびませんでしたよ」

 

「フンッ。その煽てる素振りをやめたまえヨ。奴と研究して行くうちに…私にも馬鹿げた思考が移ったのかもしれないネ…」

 

そんな中 浦原はある疑問をマユリへと尋ねた。

 

「それで、千弘さんが地獄から自力で戻れる確証はあるんすか?」

 

その問いに対してマユリは考えることもなく即座に答える。

 

「愚問だネ。そんなもの_____

 

 

 

 

______考える必要もない」

 

浦原の疑問に答えたマユリはただ不気味な笑みを浮かべるだけであった。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

その一方で ユーハバッハの術により地獄へと落とされた千弘は…………

 

「あんの野郎ぉおお!!!よくも顔踏んづけやがったなぁぉぁ!!!!」

 

地獄の空を落下していた。

 

 

因みに地獄とは死ぬ前に悪行を働いた人間が堕とされる場所であり何の秩序も存在せず、ただ定められた刑罰を定められた年数が経過するまで受け続けるという恐ろしい場所である。

 

千弘がいる場所は周囲が煮えたぎる溶岩が溢れ出る山とその周辺を取り囲む海がある階層であった。その場所では常人が吸えば数時間で死に至る毒素が蔓延しているが、その点は相変わらずであり、瘴気が蔓延しているというのに千弘は無病息災であった。

 

「あ、そうだ…まずは局長の指示通り初代隊長達を探さないと…」

 

落下する中、千弘は数日前の事を思い出す。

 

ーーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーー

 

それはマユリから装置などの説明を受けているときであった。

 

「それから、これを見たまえ」

 

マユリが指を向けた方向には半径が数メートルのカプセルがあり、周りの数本の管と繋がっていた。分かりやすく言えば○ラゴンボールに出てくるメディカルマシンの液体の無いバージョンである。

 

「これは…」

 

「隊長格である死神限定〔蘇生装置〕だヨ。ここで君に一つ教えておいてあげよう。魂葬礼祭…というものは知っているかネ?」

 

「確か…隊長格が死んでから12年後に開かれる…」

 

【魂葬礼祭】それは護廷十三隊における儀式の一つであり隊長格の死神が死亡してから12年後に開かれる催しである。内容はその隊長の目の前で捕獲した虚を殺すという簡易的なものである。

 

だが、この催しにはとんでもない“裏”があった。

 

 

「亡くなった隊長の墓の前で虚を殺すんですよね?」

 

「あぁ。“表向き”はそうだろうネ。だが、それは建前にすぎない。本当の目的は…」

 

頷きながらもマユリは真実を口にした。

 

「死んだ隊長を地獄へと堕とすのだヨ」

 

「…!」

 

マユリの答えに千弘は目を大きく開かせる。

 

マユリの話によると死神の霊子は霊威という濃度によってランク付けされており、二十等、十九等と段々と上がってくる仕組みになっている。一番高いのが一等である。隊長格の死神となると三等以上で、三等以上の霊子は死してなお尸魂界の大地には還元されずそのまま残り続けてしまう。それを防ぐ為に何の秩序も存在しない地獄へと解き放つのだ。

 

「…って事は…これまで隊長を、務めてきた方々は…」

 

「み〜んな地獄にいるヨ。今頃最下層で退屈しているだろうネぇ」

 

そう言いマユリは再び機器へと目を向けた。

 

「そこで、この機器の出番という訳サ。これを扱う事で遺伝子情報と精神を残した隊長の霊子を核に尸魂界にある大量の霊子によって肉体を再構成させ、この世に蘇らせる事ができる。構成度は本人の意思に依存して強ければ強い程 蘇った時の肉体の強度も全盛期と同じか近いものになる。これから来るユーハバッハとの決戦に向けて人手も欲しいからネ。それに…」

 

そんな中、マユリは機械から目を離し千弘へと指を向けた。

 

「ユーハバッハが何の対策も無しに攻めてくるとは考えられない。今度は君に対してしっかりとした対策を練った上で攻めてくると思うヨ。例えば……君を地獄へ堕とすとかネ」

 

「はい?私一人の為にそんな手を……それにあのおっさん...ってそんな事も出来るんですね...」

 

「確証はない。だが、仮に奴が空間を自由に動けて出入りできるとなればここに加えて現世、虚圏、更に地獄の四つを行き来できる筈ダ。滅却師が地獄の扉を開けるとは考えられないが、奴なら開けてもおかしくはないだろう。地獄以外の2つは必ず君が戻って来れると考え、必然的に残りの地獄へと堕とすだろうネ。

 話を戻すと私が与える任務はこうだ。君が仮に地獄へと堕とされた場合はすぐには戻らず、隊長達の霊子を連れて戻る事だ。向こうでは実体化しているから見つけやすいだろう」

 

「成る程…」

 

マユリの遥か先を見通した推測に千弘は納得するも、死人の蘇生に何やら抵抗があるようでマユリへと尋ねた。

 

「というか、そんな簡単に生き返らせちゃっていいんですか?何か色々と引っ掛かりそうなんですが…」

 

それに対してマユリは鼻をほじりながら答えた。

 

「あ〜。まぁ何かあったら君に全責任押し付けるから問題ないヨ」

 

「こんの腐れ局長がぁ…」

 

千弘が腕をポキポキと鳴らす中、マユリは続けて答えた。

 

「ま、仮に責任なんてものはいくらなすり付けられようと痛くも痒くもないがネ。利用できるものなら何でも利用する…戦争というのはそういうものなんだヨ。一々そんな規則などを気にしている様ではまず勝てまい」

 

ーーー

ーーーーーー

ーーーーーーーーー

 

 

「……早く探して戻りますか…一応、名前も一通り覚えたし」

 

目的を再び認識した千弘はその場から空気を蹴り、次々と階層を突き抜けていくと、一瞬にして最下層へと到達する。

 

 

「よっと…到着…」

 

千弘が霊圧を感じ、降り立った場所は空が夕焼けに染まり地面が蒼く光る美しい景色が広がっていた。だが、それ以外は何もない。ここに落とされれば最初はその景色に魅入られるが次第に飽きてしまい、その後は無限の退屈に悩まされるだろう。

 

 

「ここが一番霊圧を多く感じる…ここに初代隊長達が……」

 

その場に到達した千弘は周囲を見渡しながら歩き出した。だが、いくら探してもそれらしき人影が見当たらなかった。

 

 

 

 

その時であった。

 

 

ドドドドドドドドド…

 

 

「ち〜ひ〜ろ〜く〜ん!」

 

「…え!?」

遠くの方から自身を呼ぶ声が聞こえ、振り向くと遠くの方から此方に向けて砂煙を巻き上げながら迫ってくる影があった。その影が近づいてくる度に霊圧も鮮明に感じ取れてくる。

 

「あ…あれ…?何だろうこの感じ…」

 

すると、千弘の身の毛がよだち始めた。まるでその霊圧に身体が拒絶しているかのように。その寒気を感じ取った千弘の頭の中で1000年前の景色がフラッシュバックする。

 

その時、駆け寄ってきたその影はその場から飛び上がり此方に向けて両手を広げながら迫ってきた。

 

それによって暗くなっていた影が消えていき、姿が顕となり、それを見た千弘の顔からは大量の冷や汗が流れ始める。

 

「ま…まさか…!!!」

 

眼鏡にお下げ。そして自身を軽く越す背丈。

その正体はなんと___

 

 

 

 

 

________自身にトラウマを植え付けた女性であった。

 

 

「会いたかった〜!!!!」

 

「ぎゃぁぁぁ!!何で貴方がここにぃ!?」

 

 

飛び降りてきた女性は背中に背負っていた薙刀をいきなり取り出すと千弘に向けて振り下ろした。

 

「…!!!」

 

それを見た千弘は驚きながらも彼女でさえ見えない速度で刀へと手を掛け見えない抜刀術を発動させ、此方へとダイブしてきた女性の手に持っていた薙刀の刃を弾き、そのまま彼女を跳ね除けた。

 

 

「はぁぁぁ怖かった…」

 

「!?」

 

 

彼女を跳ね除けた千弘は顔から冷や汗を流していたが、対するその場に着地した女性は金属音と共に向けていた薙刀が弾かれた事に驚き、弾かれた刃を見つめながら瞳を震わせ始めた。

 

まるで何が起こったのかを推測するかの様に。

 

すると

 

「……」

 

「え…?」

 

女性の目が再び千弘へと向けられる。その目は先程のキラキラと輝いてた目とは異なりまるで鍛錬に打ち込む護廷隊のように鋭い目つきへと変わっていた。

そして彼女はその場から駆け出し再び薙刀を千弘に向けて振るった。

 

「ひぃ!?」

 

振り回した薙刀を千弘が避けると女性は下がる事なく次々と先端を突き出していく。

 

「危な!?」

 

迫り来る無数の連撃。それを一つでも受けてしまえば先端の刃によって胴体を真っ二つに割かれてしまうだろう。

 

だが、千弘はそれを見切っているかの様に次々と鞘で防いでいく。周囲にはとてつもない数の金属音が響き渡り火花を散らしていった。

 

 

「あの…すいませんが…」

 

「!?」

 

すると 千弘が鞘を腰へと収めると共に再び不可視の抜刀術が発動し、向かってきた女性の刃を弾き飛ばした。それによって薙刀は彼女の手から離れていくと空中で弧を描きながら地面へと突き刺さった。

 

 

更に千弘はその場から一瞬にして女性の懐へと潜り込むと斬魄刀の柄を彼女の腹へと突き出したのだった。

 

「少し落ち着いてください…!!!」

 

「がッ…!?」

 

腹部から伝わってくる衝撃。それによって女性はそのまま空気を吐き出しながら二、三歩後ろへ下がるとその場に膝をついた。

膝をついた彼女は以前の千弘と会った頃の事を思い出しデジャブを感じたのか、妙な笑みを浮かべ始めた。

 

 

「ふふ…懐かしいですね。1000年前もこの様に不意を突かれて貴方に負けてしまった…」

 

「こっちもトラウマが蘇ったじゃないですかこんチクショー…」

 

 

彼女へと柄を突き出した千弘は呆れながら斬魄刀を腰へと戻すと、彼女に手を差し出した。

 

「立てますか?」

 

「えぇ。先程は申し訳ありません。つい…貴方の剣舞を確かめたいと思い自身を見失ってしまいまして…」

 

「いや…別に良いのですが、それよりも、前にも会いましたが…貴方は一体何者なんですか?」

 

そう言い千弘は立ち上がった女性へ名前を尋ねた。

 

「あ!前にお会いした時はまだ名乗っていませんでしたね」

 

千弘から名前を尋ねられた女性は姿勢を正し千弘へお辞儀をすると自身の名を名乗った。

 

 

「初代八番隊隊長 『鹿取 抜雲斎(かとり ばつうんさい)』と申します。以後お見知り置きを…」

 

「え…えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!?????」

 

 

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