お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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混沌なる戦場そして尸魂界崩壊の危機!

 

千弘が地獄へと落とされたその一方で 尸魂界の戦場は更に苛烈さを増して行った。

 

中でも特筆すべきは更木と星十字騎士団の一人であるグレミィ・トゥミューとの戦闘である。グレミィは当初は自身の聖文字である『The Visionary』という想像を現実にするという規格外の能力によって圧倒していたものの、千弘との修行によって本来の力を更に進化させた更木は後半からその力を使用し、彼が発生させた隕石果ては宇宙空間でさえも切り伏せて見せたのだった。

 

その後、更木は無事にグレミィを撃破。

 

だが、流石にただでは済んでおらず、闘いの反動でボロボロであり、その隙をジゼル・ジュエル達に襲撃され重傷を負ってしまった。

彼らによって追い詰められ、もはやこれまでかと悟ってしまいそうな状況へと陥ってしまった。

 

そんな時。霊王宮にて修行と治療を終えると共に新たなる斬魄刀を手にした一護が飛来し、更木を囲んでいた滅却師達を一掃すると共に彼の命を助けたのだった。

 

現れた一護は尸魂界が再び陥落の危機へと陥っている事と千弘が消された事を和尚から聞いたのか、皆を助けるとそのまま千弘を消し去った張本人であるユーハバッハの元へと進撃した。

 

だが、一護が霊王宮から降りて来たことによって本来は侵入を阻むための72層の膜が打ち破られており、それを利用されてしまう形でユーハバッハ達はそのまま霊王宮へと向かっていってしまった。

それでも一護達は諦めず、彼を倒すべく、友人である織姫や茶道の他数名を連れて霊王宮へと向かっていった。

 

その一方で、一護の進軍を見届けた皆は一護の首を取らんとした星十字騎士団と対峙する事となった。

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

皆が各地で応戦している中、マユリとネムは戦場へと出撃し二体の滅却師と交戦していた。

 

「眩しいんですけど…誰……?」

 

「偉大な相手というのは輝いて見えるのだヨ」

 

一人は触覚のような跳ねた髪に長髪を持つ中性的な容姿を持った滅却師。名を『ジゼル・ジュエル』彼女…いや、彼の能力は『the zombi』。自身の血を浴びた者をゾンビ化させるという恐ろしい能力であった。

そしてもう一人。

彼女の隣には変わり果てたバンビエッタの姿があった。その姿は以前の活気ある威勢は失われており、全身は生気のない灰色に染まり正気の失った目からは涙を流していた。なぜ彼女があのような姿になってしまったのか、それは狛村との闘いに敗れ、彼女が瀕死の重傷を負った際にジゼルによって止めを刺されると共に血を注入されたからである。

 

そんな彼女から不快感を露わにした目を向けられたマユリは不気味な笑みを浮かべながら発光するコートの光を消した。

 

「あれ?今度は見えるようになった…」

 

「光の尺度を調節したのだヨ。凡人であるキミらでも見られるようにネ」

 

「ん〜?よく見ればおじさん達…千弘っていう子の隊長さんじゃん?なんでそんな余裕そうなのかな?頼みの綱はとっくに消えたんだからサッサと死んじゃえばいいのに〜」

 

「おや?」

ジゼルの言葉を耳にしたマユリは金歯を見せる程まで口角を釣り上げた。

 

「コイツは笑えるネ。まさか滅却師の思考力がそこまでないとは」

 

「…は?」

 

「キミらの首領であるユーハバッハが警戒する相手が“地獄に落ちた程度”でやられたと思うのかい?もう少し頭を使って考えてみたまえヨ。想像できないまでの『もしも』の事を」

 

「へぇ?随分と買ってるんだね〜その子の事」

 

「買ってるも何も、園原千弘という1000年を生きる“未知の生物”の強さを誰よりも知り尽くしているから言えるのだヨ。奴はこのまま戻ってくる。“私の指示を予想した時間通りにし終えて”ネ。まぁ凡人であるキミらには理解できないだろう」

 

そう言いマユリは頭をつつくと、不気味な目を向ける。

 

「それにキミら程度ならば奴の手など必要ない……いや、寧ろ手を借りる方が屈辱的と思えるネ。こんな清掃作業に」

 

「あ”ぁ…?」

 

それを聞いたジゼルは不快感を露わにする。

 

「…まじでムカつくんですけど〜……バンビちゃん!!!」

 

「…!!!」

 

その瞬間 バンビエッタの周囲から数十個の霊子が生み出されマユリ達に目掛けて放たれた。

 

だが、それをマユリとネムはアッサリと回避し、空中へと飛び出したマユリはネムへと指示を出す。

 

「ネム、あれを」

 

「はい。時間は?」

 

「そうだネ………3秒といったところか」

 

アタッシュケースを取り出したネムは頷くとアタッシュケースの中から取り出した機器へと入力していく。そして マユリはネムの作業が終了した事を見計らうと、即座に胸元から数個の球状の機器を取り出し周囲へと放り投げた。

 

すると その装置にバンビエッタの霊子が打ち込まれたが、打ち込まれたにも関わらず周囲の装置は何も反応を起こす事はなかった。

 

それによって飛んでいたマユリとネムはその場を通過し、近くの瓦礫の上へと着地する。

 

「な…爆発しない…!?」

 

その一方でマユリ達を追う為に飛び出していたバンビエッタと彼女の背中に捕まったジゼルの周囲に霊子が打ち込まれた装置が落ちてきた。

 

 

その瞬間

 

 

ピー

 

「「!?」」

 

周囲にあった機器が謎の機械音を放つと共に霊子が打ち込まれた装置が爆発を起こし彼女達を爆炎へと飲み込んだ。

 

煙が舞う中、その中からジゼルとバンビエッタは飛び出し、近くの瓦礫へと着地する。見ればジゼルは多少の火傷は負っているものの、バンビエッタは全身に傷を負っていた。

 

 

「なんなの今の〜…爆発が遅れてたけど?」

 

「凡人であるキミらでも理解できるように教えてあげよう。これは私が開発した霊子固定装置さ。これを扱う事で設定した時間内はキミらの霊子を用いた能力を制御できる。爆弾になるのが遅れたんじゃぁない。爆弾になるまでの機能を3秒程停止させた……至極単純な仕組みだヨ。そして、この単純な仕組みでそこの爆弾娘の力は封じた…」

 

 

そう言い機器を懐にしまったマユリは完全に厄介な能力を封じられ追い込まれた様に見える二人に目を向けた。

 

 

「あとはキミ達二人とも仲良く私のモルモットになってくれたまエ」

 

「ふ〜た〜り〜?どの二人のこと〜?」

 

マユリの言葉に聞き返すかのようにジゼルは立ち上がると不気味な笑みを浮かべ始める。すると 周囲から青ざめた顔をした十一番隊の隊士達が現れた。

 

「見知った顔がちらほらあるね...」

 

「あぁ...まさかゾンビにされちまったとはな...」

 

それを見た斑目や弓親達は歯を噛み締めるものの、マユリは表情を変える事なく額に手を置いた。

 

 

「ふむ…どうしたものか…護廷十三隊の隊士達が相手とは……慈愛という感情が骨や神経の隅々まで通っている私にとっては大変心苦しいものだネぇ」

 

白々しい言葉と共にマユリは顎へと手を当てると、すぐさま指を鳴らした。

 

 

 

「まぁここは一つ……

 

 

…………彼らに何の思い入れもない破面にでも任せようか」

 

 

その瞬間。マユリの背後に四人の破面が現れた。

 

「あの坊やはどこかね!?」

 

「私はあの滅却師のガキに用があるのよ!」

 

「あの…千弘さんはいませんよね…本当にいませんよね…?」

 

三人は一護達が会敵した破面。二人の破面は自身らと会敵した一護や雨竜を探す一方でもう一人の破面ルピは反膜にヒビを入れた千弘にトラウマを植え付けられていたのか震えながら周囲を見渡していた。

この三人は既に死亡しているものの、マユリの技術によってゾンビとして蘇ったのだ。

 

そして 更に続くかのようにもう一つの影が飛来した。

 

「…」

その影は戦場へと出ると大きく息を吸いながら戦場を見渡した。周囲には生き絶え倒れた死神や滅却師達の姿、そしてゾンビとなった隊士達。

戦場へと降り立ったその影は大きく息を吸い戦場の空気を鼻へと取り込んでいくと、

それを不味そうに表現するかのように表情を曇らせた。

 

「酷いものね……そこら中から悲しみと後悔…そして無念の臭いがするわ」

 

その戦場を、荒んだ瞳で見つめた影は大きく跳躍するとゾンビ達の前に現れた。

 

「こんな闘い……サッサと終わらせるわよ」

 

その影は景観を照らす月明かりの角度が変化する事によって次第に鮮明になっていく。

 

 

そして 姿が顕となった時、そこに立っていたのは___

 

 

 

___救世主『シャルロッテ・クールホーン』であった。

 

 

「しっかり着いてきなさい!アタシの可愛い生徒達!」

 

「「「誰がだ!?」」」

 

クールホーンは宣言すると共にその場から戦場へと飛び降りると蔓延るゾンビ軍へ向けて飛び出していき、それに続くように蘇生された破面達も跡を追って行った。

 

「全く身勝手な行動をするヨ。アイツにも装置をつけておくべきだったネ。まぁ……この三人でも事足りるか」

 

マユリはクールホーン達が向かっていった方向を睨みながら溜息をつくも、再び目の前の状況へと目を向けた。

 

いくら死体であろうとも、彼らの元々の戦闘能力はやはり別格なのか、ゾンビと化した隊士達を次々と葬っていた。

 

 

その時であった。

 

『涅隊長〜!!』

 

耳につけてある通信機から浦原の陽気な声が聞こえてきた。その声を耳にしたマユリは不快感を顕にしながらも応答する。

 

「…なんだネ?私は今忙しいのだヨ」

 

『これは失礼。ですが報告だけはしておこうと思い連絡しました〜』

 

そう言うと浦原は陽気な口調ではなくトーンの低い声で報告する。

 

『ようやく帰還しましたよ。貴方の部下が。指示通り装置を起動しておきました〜』

 

「…ほぅ?」

 

『…てな訳で……ってあぁ!?ちょ…やめ!?待って!!アタシは味方ですよ!?ちょ!園原さん!どこ行くんす……』

 

プチン__

 

その報告を聞き通信を切ったマユリは笑みを浮かべると目の前のクールホーンが次々と敵兵を葬っていく現場へと目を向けた。

 

「ならば此方も早く片付けようじゃないカ」

 

ーーーーーーーーー

 

同時刻____診療所付近にて。そこでは髪を解き“死剣”と謳われていた頃へと戻った卯ノ花が侵攻してきた滅却師達から負傷した隊士達を守り抜くべく刀を振るっていた。診療所にて療養している死神の中にはユーハバッハによって傷を負った(大半は千弘の所為)元柳斎の姿もあり、ユーハバッハの指示なのか彼を討つべく多くの滅却師達が攻めてくるが、彼女は通さんが為に必死に守り抜いていた。

 

「…」

 

その目からはいつもの優しき眼差しは消え失せており、あるのはただ光を失った眼球のみ。彼女の周囲には夥しい程の尸が転がっており、血溜まりを作っていた。その中には星十字騎士団の一人である『ロバート・アキュトロン』の姿もあった。

 

 

血溜まりの上に立つその姿に四番隊の皆は畏怖の念を抱くものの、自身らを守ってくれている心優しき彼女に変わりはない為に、必死になりながら治療に専念していた。

 

それは長く彼女の傍にいた勇音も同義である。

 

「隊長…少しお休みになられた方が…」

 

「…いえ……ここは戦場……いつ誰がどこから見ているのか分かりません。少しでも気を抜けばすぐに突破されてしまうでしょう…」

 

そう言い勇音の言葉を退けた卯ノ花は刀についた血を払うと周囲に目をやった。

 

「私の心配をする暇があるのならば怪我人の回復に専念なさい」

 

その言葉と共に敵の気配を察知した卯ノ花は刀を構える。

 

 

 

その時であった。

 

「…!!」

 

背後から殺気を感じ、咄嗟に卯ノ花は刀を振り回した。

 

 

すると 金属音が響き、自身の刀の刃には振り下ろされた刀が切先を向けながら向けられていた。

 

一体誰が自身の背後を取ったのか、自身の背後を取るなど半端な者では不可能だろう。

そう考えながら卯ノ花は自身へと刀を振り下ろした相手を見た。

 

 

「…!!」

 

その瞬間 卯ノ花は目を大きく開き驚きの目を向けた。

 

「…勇音…!?」

 

「へ…!?な……なんで……私…隊長に…!!」

自身に向けて刀を振り下ろしていた正体は先程まで話していた勇音であった。その光景を見た卯ノ花は驚きを隠せぬまま、彼女を拘束できず刀で受け止めてしまう。

その一方で彼女自身も己が何をしでかしたのか受け入れきれず動揺していた。

 

 

 

その時であった。

 

「ゲッゲッゲ…流石の初代剣八も堕ちたものネ。自分を斬ろうとした仲間を斬らないなんて」

 

「…!!!」

 

不快感を表すような歯切れの悪い笑い声が聞こえて来た。振り向くと死体の上に乗りながら此方を達観する小柄な老人の姿があった。

 

「貴方の仕業ですか…?」

 

「そのとぉ〜り!!ミーは『ぺぺ・ワキャプラーダ』!陛下から与えられた能力は『the Love』!ミーの攻撃を受けた子はみ〜んな!ミーに惚れて下僕となるのです!つまりそこの長身モデルガールはミーの完全なお人形という事で〜す!」

 

「…」

 

癪に触るようなステップを踏みながらの自己紹介に卯ノ花は再び目を細める。

 

すると 勇音の刀が再び自身へと迫って来た。

 

「…」

 

自身へと振り下ろされた刀を卯ノ花は何の迷いもなく受け止める。

 

その一方で、彼女達が剣を交える様を見物していたぺぺは頬を釣り上がらせると共に紅潮させると気味の悪い笑みを浮かべながら絶頂した。

 

「ゲッゲッゲ!見苦しいねぇ!可哀想だねぇ〜!!部下を斬らざるを得ないなんて〜!まるで…ミーを奪い合ってるみたい〜♪  ヤメテ〜!ミーのために争わないでぇ〜♪」

 

「…」

 

その動きや言動に流石の卯ノ花も堪忍袋の尾が切れたのか、眉間に皺を寄せながらぺぺを睨みつけた。

 

その一方でぺぺは敵軍の中でも厄介な卯ノ花を足止め成功に高揚感を得たのか、更に陽気なステップを踏んでいた。

 

「味方同士の争い程 醜いモノはないねぇ♡そう言えば園原千弘も仲間を斬れないって聞くよね〜!!だったらこの能力を使ってあの子の側にいる涅ネムって子もミーの下僕にしちゃおっかな〜!!そうすれば彼ももう手も足もでなくなるねぇ!!まぁ地獄に堕ちたから必要ないと思うけどぉ〜!!」

 

そう言いぺぺは気を舞い上がらせたのか、ステップを踏みながら再び残酷な事を口にした。敵味方を不自然なく争わせる能力となれば確実に厄介なものとなるだろう。

 

 

「く……自身では手を下さずに他人を扱うとは下劣なモノですね……」

 

 

 

だが、この時 ぺぺは考えもせずに発言をしてしまった為にとんでもない事をしでかしてしまった。

 

“涅ネムを下僕にする”

 

この発言によって尸魂界へと___

 

 

 

 

_______崩壊を招いてしまったのだ。

 

 

「今なんて言いました?」

 

 

「…へ?」

 

すると 高笑いするぺぺの肩に手が置かれた。その声に高笑いしていたぺぺは笑いを止めるとゆっくりと振り向いた。

 

 

 

 

その瞬間

 

 

「ひ…ひぃぃい!?」

 

先程まであった威勢が嘘のように消え失せると共にその場から腰を抜かした。まるでバケモノを見たかのように。

 

そしてそれは卯ノ花と、能力が解除され彼女に介抱されていた勇音の目にも映っていた。

 

 

ぺぺの背後へと立ち、今まさに自身らの目の前に立っていたのは___

 

 

 

 

____光を失った瞳を向ける千弘であった。

 

「今なんて言いました…?」

 

「へ…へぇ…?」

 

 

「だから今……なんて言ったかって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_______聞いてんでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああッ!!!」

 

 

その瞬間 千弘の身体から今までの比では無いほどの超高密度の霊圧が放出し尸魂界を激しく揺らした。

 

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