お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
その後 霊王宮への門を開けるために隊長達に加えて夜一の弟である夕四郎や仮面の軍勢である皆が集結し、何とか離れた場所にて待機している初代隊長達がいる事はバレないまま、門の制作が進められた。
だが、その直後に事態は急変を迎えるのであった。
突如として尸魂界が激しい揺れに襲われた。それは千弘の霊圧とは別のもので、まるで世界全体が揺れている様であった。その現象は浦原曰く“霊王が死亡した”という事であった。霊王とは尸魂界、虚圏、地獄の3界を繋ぎ取める為の禊の様な物であり、それが殺されてしまったと言うことは3界のバランスが崩れ、崩壊してしまうと言うのだ。
「う〜ん……ん?」
崩壊が進む中、マユリは何かを思い出したのか、小声で千弘へと尋ねた。
「おい、前に霊王宮へ行った事があったネ…その時はどうやって行った…?」
「え?ジャンプして行きました」
「成る程…」
千弘の答えを聞いたマユリは顎に手を当てると、皆に聞こえない様な声で静かに千弘へ耳打ちした。
その一方で、皆は地震のみならず地鳴りの音さえも聞こえる事に驚き慌て始めていた。
「不味いっすね……このままじゃ霊王宮へ攻め入る前に尸魂界ごと我々もペシャンコになっちゃうッス…」
「おい!何とかならないのか!?」
砕蜂が浦原へ対策案を急かす。そんな時であった。
「ここは…俺に任せてもらおう…」
皆よりも遅れて研究室へと到着した浮竹が上半身の服を脱ぎ捨て、何やら呪詛の様な物を唱え始めた。すると、浮竹の全身から黒い霊子が湧き始めた。その霊子はまるで生きているかの様にうねり浮竹の背中へと収縮していく。
「俺は三つの頃に肺病を患い…死ぬ筈だった…だが、俺の父母がその地に祀られている土着神『ミミハギ』様へ何度も念じた事によって今まで生きながらえる事ができた…」
その言葉と共に背中へと収縮された黒い霊子は形を変えていくと、右腕へと変わっていき、更にその掌らしき箇所には不気味な一つ目が開いた。それを見た浦原は驚きの目を向けた。
「ミミハギ様…確か尸魂街に祀られている…」
「あぁ……そしてその『ミミハギ様』…それは遥か昔…地上へと落ちてきた…“霊王の右腕”を祀った物だと伝えられている…」
そして浮竹は唱える。
“ミミハギ様_ミミハギ様__御眼を開き給え__。
我が腑に埋めし御眼の力を我が腑を見放し開き給え__。
ミミハギ様_ミミハギ様__御眼を開き給え__。
我が腑に埋めし御眼の力を我が腑を見放し開き給え__。”
瀞霊廷を離れている間、浮竹が行っていたのは“神掛”己の命を長らえる為に一部の臓器に喰らい付いていた力を全ての臓腑へ広げる為の儀式だ。己の身を捧げる事で霊王の右腕そのものへと成ろうとしているのだ。
そして、その詠唱と共に湧き上がった黒い腕は一瞬にして天へと昇っていく。すると、しばらくして尸魂界の崩壊が止まった。
「振動が……止まった…」
「ふむ……」
尸魂界の崩壊が止まり、浦原が状況を整理する中、マユリは神掛を行った浮竹へと目を向けた。見れば彼は身体をのけ反らせながら膝から崩れ落ち、目や口からは黒い霊子が天井へと向かって湧き上がっていた。それを見たマユリは推測する。
「成る程。これは…奴の命が持つまで…という事か」
「「「!?」」」
マユリの推測に皆は驚き、浦原へと目を向けるが、彼もその悲しき推測に同意に等しい意見を言った。
「そうかもしれないッスね…命綱であった土着神を解放すれば命を削るのも当たり前…」
浦原は時間があまり残されていない事を推測すると、すぐさま門の作成へと意識を向ける。
「今のうちに門を作りましょう…。園原さん!申し訳ないですが、手を貸して………ってあれ?園原さんは…」
門の作成のための霊圧を千弘へと頼むべく浦原が振り返ると、そこには先程まで立っていた千弘の姿がなくなっていたのだった。
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それと同時刻___にて。霊王宮の中でも最も高い位置にあり尸魂界の王である霊王の棲家となる宮殿では侵攻していたユーハバッハ、そして彼と対峙する織姫、茶籐、ガンジュ、そして一護の姿があった。
戦っていく中、力の9年を終え本来の力を発動させたユーハバッハは次々と零番隊達を葬りながら霊王宮を進み遂に目的地である霊王の御前へと到達し、彼の胸元を刀剣で貫いたのだ。だが、それでも霊王は死ぬ事はなく結晶の中で輝き続けていたが、追いついてきた一護の体内に眠る滅却師の力を利用して彼を介して霊王を結晶ごと真っ二つに切断し殺害してしまった。
衝撃に駆られる一護を嘲笑うかの様にユーハバッハは崩壊する景色を眺めながら歓喜の表情を浮かび上がる。
だが、その直後にその笑みは途絶えた。
「…!!」
両断された霊王。だが、突如として足元から黒い“何か”が現れ、その胴体を繋ぎ止めんとするかの様に接着し始めた。
「何だこれは…!?まさか…貴様霊王自身か…!?」
ユーハバッハが問いただす中、その黒い“何か”から浮き出てきた目はユーハバッハを見て笑うかの様に三日月型となる。
「…崩壊する尸魂界に情でも湧いたか…!?まぁ良い…ならば貴様を…!!!」
ユーハバッハが霊王へ絡みついた物体へと手を掛けようとした時であった。一護が前へと回り込み、その手を掴む。
「どけ…一護」
「断る。俺はお前を止めに来たんだ」
「“止めに来た”…だと?母の仇であるこの私を“殺す”とさえも言い切れぬか。それが貴様の弱さだ…!!」
その時であった。
「…!!!」
ユーハバッハは何かを感じ取る。それは一護も同じである。
「来たか…」
「こ…この霊圧は…!?」
感じられるのは死神の中でも最も得体の知れない霊圧。その者は既に、その場に到達していた親衛隊達の背後に立っていた。
「「「!?」」」
ユーハバッハの言葉を耳にしてから数秒。ようやく彼らも気がつき、その場から飛び退いた。
そしてその者の姿を見たユーハバッハは笑みを浮かべると共に目の中に蠢く不気味な三つの赤い瞳を向けた。
「ちひ___」
その瞬間
「____ぐぼぅへぇえええ!!!!」
ユーハバッハの頬が歪むと共に殴り飛ばされた。それによってユーハバッハの身体は霊王の横を通り過ぎ、背後にある壁へと巨大な破壊音を響き渡らせながら叩きつけられた。
「陛下!!」
ハッシュヴァルトが声を上げる中、その場にいた一同はユーハバッハを殴り飛ばした影へと目を向けた。
揺らめく煙が薄れて行き、その中に立つ影の正体が露わとなっていく。
「新年のご挨拶です」
その一言と共に砂煙が晴れた。
「あけましておめでとうございます」
そこには 死覇装の上にハートのアップリケが付けられたエプロンと三角頭巾をつけた千弘が立っていた。
因みにこの時、別地点で待機していた初代隊長達の大半は霊圧を抑えながら寝ています。
あと藍染は感知能力が半端じゃないので、初代隊長達かどうか分かっていませんが、得体の知れない何かがいる事は何となく分かっています。