お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
突如として現れた千弘。その奇想天外な状況にユーハバッハの親衛隊と一護達は目を点にしながら唖然としていた。
「千弘…って…なにその格好!?」
「ん?あ、黒一さんどうも〜」
一護は千弘の闖入よりも、あまりにもの場違いな服装に驚き、それについて突っ込むと千弘は笑みを浮かべながら手を振る。
「お主は…」
「猫一さんもこんにちは。お久しぶりですね」
「ね…猫一!?変な覚え方じゃな!」
独特な覚え方をされて驚く一方で、夜一は千弘がなぜこの場にいるのか尋ねた。
「なぜ主がここに…?儂らと同じ空鶴に打ち上げてもらったのか?」
「え?誰ですかそれ?」
「え…知らんのか?お主をここまで吹っ飛ばした奴じゃ。それか喜助の門でも潜って来たのか?」
「吹っ飛ばした?潜って来た?どういう事ですか?」
「………え?」
千弘の様子を見た夜一は固まってしまった。ここへ来る方法は彼女によって打ち上げてもらう他ない。
だが、千弘はそれすら知らないかのように途端に首を傾げ始めた。ならばどうやって来たのか、恐る恐る尋ねてみる。
「お…お主……どうやってここまで来たんじゃ…?」
「いや普通に…“JUMP”してきましたけど」
「……は…」
その答えを聞いた瞬間___
「「「「はぁぁぁあああああ!?」」」」
その場に一護、夜一、織姫、岩鷲の驚嘆する声が響き渡った。
「待て待て待て待て!ジャンプじゃと!?」
「ここまで何キロあると思ってんだよ!?」
「そんな事どうでもいいです。みんなやってる事なので。それより……ん!?」
驚く夜一と一護を横目に千弘は再びユーハバッハへと目を向けたが、それとは別の人物を見て驚きの声を上げた。
「貴方は……“うーさん”!!」
「…」
それは一護達が旅禍として瀞霊廷へ侵入した時に初めて会敵し、一発KOした相手である石田雨竜であった。因みにうーさんとは千弘が雨竜を呼ぶときの名前である。
「なぜ貴方がこんな迷惑集団と一緒に!?一護さんと仲睦まじく親密な関係である貴方がなぜ!」
「誤解を招く言い方をするな!!!なぜかだと…?それは僕がく…」
「ま、いいです。取り敢えず後で聞くので」
「最後まで聞け!!!」
石田をアッサリと見放した千弘は最後に自身が殴り飛ばしたユーハバッハへと目を向けた。
「さてさてさ〜てユー何とかさん、前はよくも顔面踏ん付けてくれましたね…?あ、あと周りの人もそのまま止まっててください」
「「「「!?」」」」
その声が聞こえたと同時に周囲に散っていた滅却師達の足場に一筋の斬撃が走り出した。見ればその斬られた溝はその滅却師よりやや0.1ミリ離れた場所にできており、まるでその線を超えぬ事を示唆しているかのようであった。それによって千弘へと攻撃を仕掛けようとしていた滅却師達の動きが一瞬にして止まる。
だが、一名のみ止まらない人物がいた。
「…」
やや濃い肌を持つ滅却師 リジェ・バロ。ユーハバッハから“X”の文字を与えられた滅却師だ。そんな彼の能力は【万物貫通】彼の銃口から発射された霊子は弾丸の数百倍の速度に加えて、例え幾千もの障害に阻まれようとも全て貫通し最果てまで飛んでいくという恐ろしいものであった。
千弘の視界から外れていた彼はユーハバッハから与えられていた聖文字の威力の自信により、その静止に耳を貸す事なく、武器である銃の銃口を向け、引き金を引いた。
___!!!
音もなく放たれた銃弾。それによって周囲の滅却師達の緊張も解け、鼓舞されるかのように、発砲したリジェ・バロに続き千弘に向けて攻撃を仕掛けようとする。
その直後____
「止まっててくださいって…言いましたよね?」
「…!!」
______千弘の目が向けられると共に全てを貫く霊子の弾丸がその手で掴まれ粉々に砕かれた。
「なに!?」
更に彼が驚いたと同時に、霊子兵装によって作り出された銃に亀裂が走り、弾丸と同様に粉々に破壊された。
「止まれって…言ってんのが聞こえないのですか…?」
「…!?……あ……あの…その…」
向けられるその視線によってリジェ・バロの全身に超高密度の重圧がのし掛かり彼の冷静なる心を掻き乱していく。
そして彼と目線が合った瞬間にある考えが本能的に脳内に浮かび上がった。
“答えなければ殺される”__と。
「もう一度お尋ねします。聞こえないのですか?」
「き…聞こえます…」
「よろしい」
千弘の目線が逸れるとリジェ・バロだけでなく他の親衛隊達までもがその場に膝をつく。先程まで零番隊を倒して優越感と高揚感に浸れていた彼らからは一瞬にしてその感情が取り除かれたのだった。
その一方で、この場の空間を一瞬にして制した千弘は再び目の前へと目を向ける。
すると 巻き上がる煙の向こう側から声が聞こえて来た。
「…やはり来たか千弘…一体どうやって地獄を抜け出してきた?」
「そんな事どうでもいいでしょう?それよりも…
貴方はなんど私を怒らせれば気が済むのですか!?私の農場を部下を使って焼き払うのみならず…顔面まで踏みつけるとは!!マジでいい加減にしてくれませんかねぇ!?」
そう言い千弘は次々と今までユーハバッハとその部下による悪行を愚痴り始める。だが、それをユーハバッハは鼻で笑う。
「フッ。記憶にないなぁそんなもの。それに話さぬのならば良い」
その声と共に煙の中にある影がゆっくりと立ち上がった。
その瞬間___
_______一瞬にして千弘の目の前に刀剣を振り回す姿勢のまま現れた。
「今はお前に構っている時間はないのでな。悪いが一時退場してもらおう」
「…え?」
その直後。その刀剣の振り回しが千弘へと直撃し、彼の身体を宮殿から外へむけて吹き飛ばした。
「千弘!!」
「更にサービスだ。受け取れ」
一護が叫ぶ中、吹き飛ぶ千弘に向けてユーハバッハが手を掲げると千弘の頭上に超巨大な霊子の弓矢が形成され千弘に向けて放たれた。
“大聖弓”___ッ!!!!
それによって放物線運動をしていた千弘の身体はそのまま霊子の弓矢によって垂直に落とされて行った。
「なんのぉ!!バレリーナキィィックって……ああああああ〜!!!!」
下から千弘の声が響くと共に放たれた霊子の弓矢が全て蹴り飛ばされ上空へと上がっていくも、千弘の身体はそのまま落下していった。
「嘘だろ…アイツが…!?」
一護は何が起こったのか理解出来なかった。ユーハバッハは先程まで自身達から離れていたにも関わらず突然と自身らの前へと現れた。それに一番驚いていたのはあの千弘が反応できない程の速度で迫っていた事だ。いつもならば千弘は反応してカウンターを浴びせる筈だがそれすらもさせずに彼を吹き飛ばしたのだ。
そしてもう一つ。なんとユーハバッハが千弘に殴られたにも関わらず傷一つ負っていないのだ。
すると そんな一護の思考を読み取るかのようにユーハバッハは笑みを浮かべながら答える。
「気になるか一護。なぜ千弘に“気づかれる事なく接近できたのか”なぜ“反応される事なく攻撃できたのか”。ここへ来た時にも言った筈だ。“全て視えている”と…」
「!?」
その一言が向けられた瞬間 再びユーハバッハが目の前に迫り自身に向けて手を向けた。
するとそれによって一護の身体も千弘と同様に外へと吹き飛ばされてしまった。
更に石田も矢を放ち織姫達がいる足場を破壊した。
皆が落下していく中、一護は石田に向けて叫ぶものの、彼がその声に答える事は無かった。
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その後 一護達は先に着地していた夜一と千弘によって救助され、近くの離殿へと着地した。
「さて、反撃と行こうか」
「え?いや…ここからだと結構距離があるぞ?井上の三点結盾で上がれたとしても狙い撃ちされちまうし…」
「ふむふむ…」
唐突に放たれた夜一の言葉に一護達は疑問の声を上げるが、千弘は頷き、上を見上げた。その先には自身らが先程までいた霊王の離殿が浮かんでいた。
「成る程。ジャンプして戻るって事ですね」
「断じて違う」
千弘の肩を叩きながら首を振ると夜一は何も無い空間へと目を向けた。
「開けてくれ!」
すると
ギギギギギィ_____
目の前の空間が短冊上に亀裂が走り左右に開き始める。その開き方は正に破面が空間を行き来する黒腔そのものであった。
そしてその奥から一人の人影が見えてくる。それを目にした一護と千弘は驚きの目を向けた。
「お…お前は…!!」
「貴方は…!!」
水色の髪にワイルドなリーゼント、獣のような鋭い瞳。その男は一護を目にすると笑みを浮かべた。
「久しぶりだなァ…黒さ…」
「グリムジョーさん!!」
「……」
ギギギギギィ…(ゆっくりと閉める音)
ガンッ!!!!!(千弘が黒腔の門を掴む音)
黒腔を掴み無理やり開いた千弘は顔を覗かせる。
「久しぶりですね〜グリムジョーさ〜ん!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!この化け物がぁぁぁ!!!!」
※主人公はずっとエプロンと三角頭巾を被ってます。