お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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決着 安らかに眠れ

 

 

覚醒したユーハバッハにはもう一つ特別な力がある。それは己の命を二つに分ける能力だ。

簡単に言えば自身の細胞を分裂させる事でもう一人の自身を作り出す事ができる。細胞の数によって強さと優劣が変わり、仮に分裂する側の細胞が多ければ分裂した元の身体の身分が下となってしまう。

 

千弘と空中で闘っていたユーハバッハは僅かな隙をつき、自身の膨大にある細胞のうち、たった100個を分身体として真世界城へと産み落としていたのだ。

 

その100個という全体の1%にも満たない数の細胞で作られた分身体でも強さは覚醒する前とは大差がない上に聖文字であるthe allmighty も扱えるために厄介である事は変わりない。

本体から生み出された分身体は地上へと降り立つと姿を変え、覚醒する前のユーハバッハへと変化していった。

 

そしてそのユーハバッハと対峙していたのが一護であった。

 

 

___!!

 

__!_____!!!

 

周囲に金属音を響き渡らせながらユーハバッハと剣を交えていた一護はユーハバッハの剣術に対応しその動きについて行っていた。一護自身も千弘の戦いを何度も目にしていた為か、動体視力が鍛え上げられていたのだ。だが、それでも一筋縄ではいかない。相手は分身体とはいえユーハバッハ本人であり剣術の心得は勿論だが影を用いた拘束や罠も仕掛けて来ていた。

 

 

「ほぅ…?初めて刃を交えたが…ここまでとはな」

 

「当たり前だ…それよりもお前…どうやって千弘から逃げてきたんだ?」

 

「逃げてきた…か。酷い間違いだ。私は奴から逃げも隠れもしていない。“今もなお戦い続けている”」

 

「…は!?どういうこ______

 

 

その時であった。

 

 

 

 

________ッ!!

 

その場にいた二人を超巨大な霊圧が襲う。その霊圧を感じた両者はすぐさま戦いを中断すると離れ、上を見上げた。

 

 

「この霊圧は……千弘と…誰だ…!?」

 

感じられるのは全てを覆い尽くすかのように放たれる千弘とそんな彼に対向するかのように発せられるドス黒い霊圧であった。

その霊圧を感じ取り、一護が驚く一方でユーハバッハは笑みを浮かべた。

 

「…どうやら決着が着きそうだな」

 

ーーーーーーーー

 

『日輪』

 

その名を口にしたと同時に千弘の身体からは今までにない程の霊圧が溢れ出した。その霊圧の強さは過去最高であり周囲の空間を振動させると共に歪め始めていった。

 

対して千弘の霊圧を身に受けながらも平然としていたユーハバッハは斬魄刀を構えるその姿に口元を震わせていた。

 

 

「日輪…それが貴様の斬魄刀の名か…」

 

「えぇ。結構前に夢で変な人が現れて教えてくれました」

 

目の前で刀を向ける千弘に対してユーハバッハは過去最高の笑みを浮かべる。その理由はなぜか?刀を構え自身を敵として認識された事でようやく彼と対等の立場に立てたからであった。

 

 

「ようやくだ…私はお前を待っていた…!!」

 

笑みを浮かべ絶頂に達していたユーハバッハも霊子の剣を構えると全身に力を込め、力を最大限に解放した。

 

すると ユーハバッハの全身へと周囲の霊子が集められていく。その霊子は全て彼の両手に握る刀剣へと吸収されていった。今の彼の身体に宿る細胞はほぼ千弘の細胞である。それは即ち本来の力に加えて千弘の力を得たも同然な状態であった。

彼の全身から放たれる超巨大な霊圧によって周囲の空気が振動し始める。

 

「ここからは私もフルパワーでいかせてもらうぞ…!!!決して油断などするなッ!!!!」

 

「……えぇ」

 

ユーハバッハの宣言に頷いた千弘は死覇装の上側を脱ぎ上半身を露出させる。死覇装の下から現れたのは細身でありながらも極限まで鍛え上げられた肉体であった。身体の所々には傷があり、歴戦を潜り抜けてきた印象を与える。

 

上着を脱ぎ捨てた千弘はユーハバッハの言葉を受け取ると共に自身も本気になる事を宣言する。

 

「私も全力でお相手しますので御覚悟を」

 

互いに全力を出すと誓い合った二人は睨み合いながら己の心の奥底にある闘志を燃え上がらせていく。二人の間の空間は互いに発せられる超高密度の霊圧によって歪み始めて行った。

 

 

 

 

 

そして 一筋の風が吹き両者の頬を撫でた時であった。その感触がゴングとなり互いは己の得物へと手を掛ける。

 

 

「ゆくぞ…!!!」

 

先手を取ったのはユーハバッハであった。そのまま剣を構えて千弘目掛けて振り回して行った。

 

対して千弘も剣を振るった。両者の剣が交わり金属音を響き渡らせると周囲の空間が次々と歪み始めていく。

 

 

___!!

 

______!!! __!!

 

   __!!!

 

__!!______!!!

 

 

何度も何度も両者の剣が重なる。それは側から見て二人が剣を交えていない間もだ。両者はただ一言もはっする事なく剣をぶつけ合った。

 

 

そして、ある一撃と共に刀が大きく衝突し周囲の空間を歪め始めた時、互いに後方へと跳躍すると、遂に千弘から本格的に動き出した。

 

「…!!!」

 

後退した直後に日輪を構えた千弘はユーハバッハ目掛けて空気を突き抜けながら飛び出していく。対してそれを見たユーハバッハは笑みを浮かべながら叫んだ。

 

 

「言った筈だ千弘…油断はするなと…!!!」

 

 

その瞬間 

 

景色が変わり千弘の背後へとユーハバッハが現れた。事前にthe allmightyを発動させ、最初に映り込んできた未来を改変し、千弘の目の前にいた自身を背後に立つように改変したのだ。

 

「さらばだ千弘!!お前の事は決して忘れぬぞッ!!」

 

背後を捉えたユーハバッハは全身全霊の力を込めると、千弘目掛けて刀剣を振り回した。振り回された刀剣は蓄えられたエネルギーを全て吐き出すかのように神々しい光を放ちながら千弘へと向かっていく。

 

 

 

 

その直後。

 

 

「…な!?」

 

ユーハバッハの手から剣が溢れ落ち空気へと溶けていくかのように消滅した。それと同時に全身から力が抜けていくかのような感覚に陥っていく。

 

「何が……起こっ__まさか!?」

 

力が抜けていく中、ユーハバッハは自身の身体を見ると目を大きく開いた。見ればいつの間にか胴体が真っ二つに切断されていたのだ。下半身はそのまま直立している一方で上半身は空中へと投げ出されていた。

 

「なぜ私の体が…!?」

 

突如として自身が真っ二つになっている事に驚きをかくせなかったユーハバッハは0.1秒前の自身が千弘の背後に立った時を思い出した。その時、微量ながらも彼の腕が動いていたことを。

自身が背後を取り攻撃へと移った たった0.01秒。森羅万象の生物が反応する事が不可能な領域である。その時間の中で既に千弘の刃が自身を斬っていたのだ。

 

 

「あの一瞬で…私が気づかない程の速度で斬魄刀を…!?」

 

ユーハバッハが自身の胴体を見て驚く中、千弘へと目を向けると千弘は手に持っていた刀を下ろしていた。

 

「何を言っているのか分かりませんが、隙だらけだったので攻撃させていただきました」

 

「…ッ!」

その一言でようやくユーハバッハは理解した。全身全霊に力を込めた上に彼の細胞を取り込んだ自身でさえも 本気となった彼に全く敵わなかったことを。

 

ユーハバッハはthe allmighty を発動し現状を打破するべく未来を見る。だが、どの未来を見通しても全て千弘に倒される未来へと行き着いてしまう。

 

己の身体を再生すれば即座に両断され、先程の斬撃が届く様に改変しても目立つ傷は与えられない上に再び両断される。

 

そこからばら撒かれた砂の様に一粒一粒に未来が記されるが、それらも全ては必ず“千弘に斬り伏せられる未来”へと繋がっていった。

幾千もの未来全てにおいて自身はどのみち彼に倒される定めであったのだ。どんな未来を改変しようとも必ず新たなる未来にて千弘に斬り飛ばされる。それは即ちどういう事か?

 

 

_______もはやthe allmightyなど無意味なのだ。

 

 

「…もはや成す術なし…か」

 

 

全てを出し切った滅却師の王は満足そうな笑みを浮かべると自身をここまで追い詰めた死神へと目を向けた。

 

「千弘」

 

「…ん?」

もはや何かを考えることさえ馬鹿らしくなってしまったのか、ユーハバッハは抵抗することなく、自身の死を悟りながらも千弘へと目を向けた。数千年を生きる自身に唯一無傷で勝利した男へ。

 

 

「私の目的は霊王の力を取り込み…三界を融合させ…人間を死の恐怖から解放する事だった。貴様に敗れた事でそれはもう叶わん。だが……貴様とのこの闘い…死しても忘れはせんぞ…」

 

己の悲願も達成できず、千弘にも敵わなかった事を無念に思うかのように口に零ながらも、ユーハバッハは満足気に笑みを浮かべながらゆっくりと目を閉じて息を引き取った。それと同時に宙を舞っていた上半身はゆっくりと落ちていった。

 

「……貴方も強かったですよ」

 

落下していくその身体を千弘はしっかりと受け止めるのだった。

 

 

 

 

 

一方で、同時刻の瀞霊廷にて。

 

「終わりだ何もかもッ!!現世も尸魂界も…我が力の前に一つとなるッ!!」

 

全身が黒色へと染まったユーハバッハが自身の影を瀞霊廷全域へと巡らせて飲み込もうとしていた。

 

真世界城にて一護達と交戦していたユーハバッハは一度、一護を退けると尸魂界へと降り立った。だが、そこにはなんと幽閉されていた藍染ならびに市丸や東仙そして回復した元柳斎が待ち伏せていたのだ。当初は藍染と東仙の斬魄刀による鏡花水月や閻魔香爐によって感覚を狂わせられる共に元柳斎の残火の太刀や市丸の神殺槍による猛攻に押されていたが、the allmightyによって4名の斬魄刀を破壊し途中から圧倒した。

 

それによって藍染を残した皆はその場に力尽いてしまったものの、直後に一護と恋次が現れた事で再び戦いが始まった。

 

一護と恋次、藍染の3人が共闘し鏡花水月などを駆使して撹乱した結果、遂に一護の刃が彼を貫いたのだった。

 

それによってユーハバッハの身体はゆっくりと大地に倒れ瀞霊廷を飲み込もうとした影も動きを止めた。

 

これで全てが終わった。誰もがそう思っていた。

 

だが

まだ終わってなどいなかった。なんとユーハバッハはthe allmighty によって自身が死ぬ未来さえも書き換えたのだ。それによって飲み込もうとしていた影も再び動き出し藍染や恋次達を拘束してしまったのだ。

 

 

ユーハバッハの不気味な高笑う声が響くと共に瀞霊廷の建物が次々と崩壊して地盤も天変地異の如く崩れていく。

 

 

その時であった。

 

 

「ガ…!?」

 

背後から一筋の白銀の矢が放たれ、ユーハバッハを貫いた。それによって撃たれた箇所から電撃のような青い模様が広がるとユーハバッハの身体を覆っていた影を押さえ込むかのように収縮させていった。

 

 

「こ…これは…!?」

 

ユーハバッハが振り向くとそこには弓矢を構えた石田の姿があった。そしてすぐさま自身の胸元へと手を当てる。そこにはなんと一つの銀色の矢が突き刺さっていた。それは“静止の銀”と呼ばれるものであった。

 

“静止の銀”とはユーハバッハの聖別を受けた物の体内から採取できる銀をユーハバッハの血と混ぜた矢であり、これを打ち込めばユーハバッハの持つ能力をほんの一瞬だけ無効化させる事ができるのだ。

 

それを打ち込まれた事でユーハバッハの全身から発動させていた力が抜け落ちていき頭部を覆っていた影も消え鋭い目が見えてきた。

 

「そうか…“静止の銀”か…雨竜め…。だが…私の力を止めたからなんだッ!!!」

 

そう叫んだユーハバッハは風を切りながら此方へと向かってくる一護へ向けて手を伸ばす。

 

「たとえ力を止めたとて負傷した貴様の剣など私の身には______」

 

 

そう言いユーハバッハは一護へ向けて霊子の矢を放とうとした。

 

 

 

 

 

だが、それを許さない正義を司る虚がいた。

 

 

 

 

_________チン_。

 

 

ユーハバッハの股下から剛腕が伸び彼の股間を鷲掴みにする。それによってユーハバッハの顔からは笑みが消えて、代わりに大量の冷や汗を流し始めた。

そんな彼の背後には筋骨隆々の美しい肉体を持つ影があった。

 

 

「知っているかしら?やんちゃな死神も滅却師も去勢をすると猫と同じく大人しくなるのよ…?」

 

 

ユーハバッハの背後に立ち股間を掴んでいた救世主は何とクールホーンであったのだ。

 

「き…貴様…!!」

 

「あら、納得してない様子ね。なら試してみようかしら」

 

「ま…待て!金的は___

 

 

 

グシャァァァァ

 

 

「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」

 

クールホーンによって去勢された事によりその場にユーハバッハの痛ましい悲鳴が響き渡る。それによって周囲を飲み込もうとしていた影の勢いが更に弱まると共に一護も無事に目の前まで接近できた。

 

 

「今よ!一護ちゃん!」

 

「やれ!!黒崎!!!!」

 

クールホーンと石田の声に応えるかのように立ち上がった一護は一瞬にしてユーハバッハへと迫ると剣を振り回した。

 

 

「ヴォオオオオオオオオ!!!!」

 

雄叫びと共に放たれたその一閃はユーハバッハの身体を斬り_____

 

 

 

_______彼へトドメをさしたのであった。

 

 

 

かくして。一護達の活躍によってユーハバッハが倒され、多くの犠牲が出た滅却師達との戦いは幕を閉じたのであった。

 

千弘がもう一人のユーハバッハを倒し世界を救った事は特定の者以外は知る由もない。

 

 

 




少々強引ですが、これで戦いは終わりです。

あとは事後処理…
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