お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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刀振ってる時の千弘のイメージ

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新当主の訪問

 

ドドドドドドドドド

 

一番隊隊舎へと続く道を千弘とネムは土煙を巻き上げながら駆け抜けていった。

 

「これはまたとないチャンス!!今すぐにでも会って事情を聞き出さないと!!」

 

「現在はまだ隊首室にいらっしゃるかと…。では私はこの辺で失礼します。マユリ様の実験の補助があるので」

 

「了解です」

 

ネムと別れた千弘は加速して一番隊隊舎へと向かうが_______

 

「ハッハー!!!俺もいくぜ抜刀斎!!新当主様の顔を拝めるなんざ滅多にねぇんだからよぉ!!弱かったら速攻ぶっ殺してやらぁ!!」

 

齋藤不老不死

初代六番隊隊長。隊長格の中でも血の気が多く生粋の戦闘狂である。更にその剣の動きは初代剣八である卯ノ花にも劣らず、振り回すその姿は正に肉を食い散らす凶暴な獣であり1000年前は滅却師達をバラバラになるまで斬り刻み周囲を血の海へと変えたらしい。

 

「カッカッカッ!最近、現世のテレビなるものをみて北斗○拳とやらを習得してきたんじゃ。実験台には丁度良いわいのぅ!!!」

 

四楓院千日

初代二番隊隊長。四大貴族である四楓院家において歴代最強の当主とされており、斬術は勿論、武術である白打や瞬歩においては威力も素早さも夜一とは桁違いで右に出る者はいないとまで言わ締めた達人である。型がなく、動きが読めないその動きから繰り出される蹴りや拳の一撃は正に兵器であり、1000年前はその武術で滅却師達を蹂躙し尽くしたらしい。

 

彼は今の四大貴族の出立であるが、もう家に戻る気はないらしい。

 

この二人は話を盗み聞きしていたのか、付いてきてしまっていた様だ。

 

「なんでこの2人まで…」

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

一番隊隊舎__。そこでは巨大なテーブルを境にして互いに睨み合う死神の姿があった。

 

「就任して間もなくおめでたい時にこんな薄汚い隊舎に何用かな?」

 

1人は白く長い髭を伸ばし至る所から皺が目立つものの、全てを威圧する鋭い眼球が特徴的な護廷十三隊 総隊長『山本元柳斎重國』

 

そしてもう1人は 彼と対峙するかの様に向かい側の席に座りながら出された茶を啜っていた。

 

「いやぁなに、ただの再会の挨拶と別件ですよ山本重國殿…。それにしても、貴方は数百年前とも変わらず凄まじい霊圧ですね。滅却師との戦いの途中に退場したにも関わらず今でも隊士から厚い信頼が寄せられるその姿勢…重々恐れいるよ」

 

そう言い元柳斎の目の前に座る青年は軽く彼に対して皮肉を交えた言葉を取りながら出された茶を啜る。

 

そんな勇敢な青年の名は_____

 

______四大貴族 綱彌代家当主 『綱彌代 時灘』

最近になって死亡した前当主に変わり、分家から成り上がったキレ者である。

 

彼の飄々とした態度に、その空間の中に立っていた雀部は既に頭に来ていたのか鋭い目を向けていた。

 

そんな中 茶を飲み終えた時灘は閉じられていた瞳を元柳斎から離し、壁際に立っていた京楽と浮竹へと向ける。

 

「久しいな春水、浮竹。私が蛆虫の巣に収監されかけて以来かな?」

 

「そうなるねぇ〜」

 

「あれから数百年は軟禁されたと聞いていたが…相変わらずのようだな」

 

同期である時灘から声を掛けられた京楽は相変わらず楽な声色で返事をするものの、その目はまるで時灘の裏を読もうとしているかの様に鋭いものであり、浮竹も彼と同様に時灘へ鋭い目を向けていた。

 

「愚かな話しだよ。本家の連中は私に罪を背負わせるのを恥とし、存在自体を無かった事にしようとしたのだからな。そんな真似をするぐらいなら私を正式に捌き処刑なり追放なりするべきだった。その結果どうだ?その罪人にこうして全てを奪われてしまった」

 

そう言い時灘は今回の自身の当主襲名について自傷気味に語り出した。それを聞いた元柳斎は閉じていた目を開き彼へと向ける。

 

「ほぅ?それは…此度の当主暗殺の件……犯人は貴殿である…と受け取って良いのかな…?」

 

「お戯れを。ただの皮肉に決まっているでしょう。ですが、受け取るのも取らないのも貴方の自由ですよ山本重國殿。ただ…」

 

その視線を向けられても時灘は意に介す事はなく、アッサリと彼らから目線を逸らし目の前の元柳斎へと目を向けた。

 

「今の私は当主だ。仮にそうだとしても揉み消すことなど容易だよ。たかだか護廷隊の総隊長“ごとき”に私の動きにどうこう言えるとは思わない事だ」

 

「…」

 

その言葉に元柳斎は何も言い返す事はなかった。五大貴族は霊王宮とさほど変わらぬ権力があり、それどころか綱彌代家は今現在において五つの家の中で最も影響力と権力がある。それは裁判官である中央四十六室よりも上であるために尸魂界のいち自警団組織でしかない護廷十三隊では彼の言葉に無闇に口を出す事は不可能なのだ。

 

特に元柳斎は立場を厳守している故にタチが悪い。

 

そんな中で、彼を軟禁まで追い詰めた京楽が口を入れる。

 

「思う思わない以前に…キミには前科があるでしょうよ〜?」

 

「あの時のことをまだ覚えていたか。私も予想外だったよ。まさかいつも女の尻ばかり追いかけていた君がああもキレ者だったとはな。見事に私の罪を暴いてくれたものだ」

 

「僕は何も暴いちゃいないさ。『口論の末、親友を殺し、咎めた妻をも殺した』…そういう結論にしか出来なかった時点で全て藪の中だよ」

 

そう言い京楽が淡々と返すと時灘は表情を変える事なく元柳斎へと目を向けた。

 

「……まぁいい。それよりも総隊長殿…聞きましたよ?随分と優柔不断なご決断ですな〜まさか敵方の勢力の残党を始末もせず生かすどころか霊王宮へ住まわせるとは」

 

「…おや、既に耳に入っておったか」

 

その言葉に元柳斎は目立った反応を見せず、ただ湯呑みに入った茶を啜る。現在、霊王宮には霊王護神大戦時の敵方の勢力の数人が住み着いているのだ。本来ならばとらえて死刑または幽閉が当たり前であるものの、彼らを捕縛した千弘に判断を任せているために元柳斎は特に指示を出していないのだ。

 

「えぇ。聞いた当初は私も耳を疑いましたよ。剣の鬼として恐れられ、今でこそ落ち着かれてはいるものの、それでも目的を果たすためには隊士どころか自らの命も顧みない性格であった貴方が、『1人の隊士』に処遇を任せたのですから」

 

時灘の言葉に元柳斎は返す言葉が無いのか、茶を啜る。その一方で、時灘は市丸よりも一層に不気味な狐の様な笑みを浮かべながら続ける。

 

「その様子ですと…そろそろ交代の時期…でしょうかね?」

 

その言葉は周囲の皆は勿論だが、元柳斎を尊敬していた雀部の逆鱗に触れてしまった。

 

「貴様…」

 

「やめよ長次郎」

 

雀部が前に立ち斬魄刀へと手を掛けようとすると、元柳斎はそれを収め、下がらせると彼に答えた。

 

「霊王宮への滞在を認める権利は儂にはない。全て零番隊の許可が降りたからこそ故。そもそも…此方に奴らの処遇を決める筋合いはない。あれば迷わず処刑しとるわい」

 

「なるほど…では、全て“園原千弘”に任せていると」

 

時灘の先を読んだかのような言葉に元柳斎の細い目が再び開く。彼の名と実力は一般隊士達の間では御伽話のようになってはいるが、彼ら隊長や貴族の当主そして四十六室の数人には伝わっており、時灘自身も多少なりとも知っていた。

 

「やはり総隊長殿もあの子を気に入ってらっしゃるご様子ですね。確かに彼を無闇に罰っせれば肝心な時に頼りの綱にならない。賢明なご判断と改めるべきでしょう」

 

「おや?毎度毎度、嫌味を言うキミにしては珍しいじゃないの」

 

「嫌味とは失礼な春水。それに私も彼には興味がある」

 

京楽の言葉に笑みを崩さずに答えると時灘は元柳斎へと目を向け千弘について話出した。

 

「“逆賊”藍染惣右介を単騎で撃破した上に霊王護神大戦の時は敵の手によって地獄に落とされたにも関わらず初代の隊長方を数人連れて生還し黒崎一護をサポートしたとか……いやぁ〜前代未聞のバーゲンセールですねぇ〜」

 

そう言い時灘は千弘が霊王護神大戦時に成し遂げた偉業を次々と話し始めていった。それについて元柳斎は額に眉を顰める。特に千弘が数人の初代隊長達の霊子を奪い取り浦原とマユリが蘇生させた事は尸魂界を震撼させた大ニュースとなり、四十六室がパニックに陥る大事件となったのだ。

 

「ぐぅ…」

だが、それを耳にした元柳斎は眉を顰め、額に手を当てる。初代隊長達の殆どが尸魂界の歴史に名を残す程の大罪人であるためにそれを再び世へと解き放つ危険性や制御できず謀反を起こされる可能性を危惧した四十六室からこっぴどく責め立てられた事で、元柳斎にとってそれは最も酷な記憶として残っていた。

 

「左様…。確かにバカをしでかしはしたが、奴の力によって世界の安寧が保たれている事もまた事実」

 

「確かにそれは言えますねぇ。使える物は何でも使う…園原千弘は言わば霊王に続く世界の均衡を保つための鎖…貴方らしいお考えだ。その決断がいままでのような“裏目”に出ない事を祈りますよ。例えば逆賊に踊らされ1人の死神の処刑を執行しそれを止めた教え子2人に牙を剥いた時の様にね」

 

「…」

 

その言葉に元柳斎は何も言葉を返さなかった。確かに彼は藍染によって乗っ取られた四十六室に命じられるがまま、ルキアの処刑を執行し、それを妨害しようとした教え子達に剣を抜いた過去がある。それは紛う事なき己の人生における大失態といえるだろう。

 

そんな中、その緊迫した空気を打ち破る浮竹の声が入った。

 

「お前は今回…何のために来たのだ…?先生や京楽に対する嫌味を言うためか…?」

 

「ん?あ〜忘れていたよ。それもあるし、もう一つある」

そんな緊迫した空気を作り出した張本人は悪びれる事もなく話を続けた。

 

「私と同じ現四大貴族…いや、元貴族である夜一に連絡を頼みたい」

 

 

『四楓院夜一』100年前に二番隊隊長を担っていた女性であり、四楓院家において初の女性当主である。今の彼女は過去の罪は全て帳消しになっているものの、尸魂界にはあまり訪れず、現世にある『浦原商店』にて居候していた。

 

「彼女とは貴族の連絡網では連絡がつかなくてね。其方ならあのじゃじゃ馬との連絡の付け方ぐらい知っているだろう?」

 

時灘の言葉に元柳斎達は納得する。彼女は貴族ではあるものの、もう当主ではないために限られた間柄でしか連絡が取れない貴族の連絡網では繋がることが不可能なのだ。

 

だが、ここで元柳斎は勿論だが、京楽や浮竹もある疑問を抱いた。それはなぜ現当主『夕四郎』すなわち彼女の弟ではなく、前当主である彼女へ連絡をつける必要があるかだ。

 

「彼女はもう弟の夕四郎君に当主の座を譲ってるけども…何を企んでいるんだい?」

 

「別に何も。私はただ真っ当な提案をしようと思っているだけさ。現世や尸魂界を含む全ての世界の調和のために…ね」

 

「…ふむ」

 

その申し出を元柳斎は受け入れることに決めたのか、ゆっくりと頷いた。

 

 

そして、元柳斎が頷いた事で時灘はここへはもう用はないのか、ゆっくりと席を立った。

 

「では、私はそろそろ失礼させていただきますよ」

 

「ほぅ、もうお帰りか?しばし待てば茶菓子も出せるぞ?」

 

「らしくないおもてなし痛み入るよ山本重國殿…。私は新当主ゆえに少々忙しいのでね。モタモタしていると私の噂を聞きつけて______

 

 

 

 

________貴方方ご自慢の秘密兵器である園原千弘が来てしまいますからね」

 

 

 

そう言い時灘は扉の方へと向かっていった。

 

「待て。いま行くのは危険じゃ」

 

 

ーーーーーーー

 

ドドドドドドドドド

 

一番隊隊舎へと到達した千弘は門などを飛び越え、警備を抜けていきながら隊首室の前へと差し掛かっていた。 

 

だが、そこには大量の門番らしき兵達がおり、自身らを見つけた途端に槍や刀を引き抜いた。

 

「止まれ!!ここは____」

 

 

「すいません!!」

 

 

 

その瞬間 千弘の姿が一瞬消えると、扉の前に現れ、その直後に立ち塞がった大勢の兵達が床へと倒れた。

 

「おいおい抜刀斎。峰打ちなんてらしくねぇぞ。遠慮なく斬り殺しちまえよ」

 

「そんなこと出来るわけないでしょう!?ほら、着きましたよ!!」

 

斎藤の言葉に言い返しながらも、隊首室前へと到着した千弘は、その入り口を閉める扉の両脇に手を掛ける。

 

「待ってください皆さん!!ここは今…」

 

「邪魔じゃペタ子」

 

「下がっとれペッタン子」

 

「ぺ…ペタ子!?ペッタン子!?」

残っていた七緒を千日と斎藤が軽く流すと、千弘が扉へと手を掛ける。

 

 

 

そして____

 

 

_______バァァァァン

 

 

 

思いっきり両手で開いた。それによってその場に凄まじい音が響き渡った。

 

「失礼しますッ!!!」

 

「しゃぁぁ!!!!」

 

「ホワッタアアア!!!」

 

目の前の扉を勢いよく開けた千弘は挨拶しながら齋藤、千日と共に中へと飛び入る。

 

「な…千弘くん…!?」

 

「こりゃまぁ随分と派手な登場だねぇ…」

 

突然と千弘が登場した事で中にいた浮竹や京楽、そして周囲の皆全員が千弘の登場に驚きを隠しきれず唖然とする。そんな中、部屋の真ん中で此方に身体を向けて座っていた元柳斎の鋭い視線が千弘へと向けられた。

 

「何用じゃ…?」

 

「決まってんだろぉ糞爺!!新当主様をぶちころ…ふがぁ!?」

 

「しぃー!!!!」

思わず齋藤が本音を吐いてしまうのを口を塞ぐ形で防いだ千弘は来た理由を話す。

 

「ここに来ていらっしゃる綱彌代家の新当主殿にご挨拶とお話をお聞かせ願いたく参りました」

 

「ぷはぁ。その通りだぁ!!おいおい新当主様はどこダァ!?この齋藤不老不死様が名誉ある五大貴族に相応しいかどうか試してやろうじゃねぇかぁ!!!…あ?今は四大貴族だっけか…どっちでもいい!!」

 

「ほぉら出てこんかいのぅ〜!!」

 

「少し黙っててください!!!」

 

初代隊長である齋藤や千日も一緒であり、3人は中へ入ると周囲を見渡した。だが、それらしき人物は見当たらなかった。

 

「あれ?いない…霊圧はまだ感じるのですが…」

 

「逃げたか…?よし追うぞ抜刀斎!!」

 

「いちいちその名前で呼ばないでください!」

 

そう言いながら3人は扉をそのままにしながら走り去っていった。

 

 

そして 無理矢理開かれた扉がゆっくりと動き出し元の位置に戻ると_____

 

 

 

 

 

____そこには壁にめり込む時灘の姿があった。

 

「あ……ああ……」

 

壁に叩きつけられた時灘は腕をピクピクさせながらそのままゆっくりと地面に崩れ落ちていったのだった。

 

「じゃから危ないと申したというのに」

 

 

 

その後、時灘は立ち上がれない程の重傷をおったのか部下によって担架で運ばれていったらしい。

 

 

 

 

そしてその翌日。事態はとんでもない方向へと進んでいくのだった。

 

 

 

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