お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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騒動の幕開け

 

「己ぇ…園原千弘ぉお!!!」

 

あれから部下達によって担架で運ばれ屋敷へと帰還した時灘は、自室の中で怒り狂っていた。

 

「貴族であるこの私に恥をかかせるとは…!!」

 

その顔からは一番隊隊舎で見せていた余裕な表情は消え失せており、代わりに余裕も冷静さもない怒りに満ちていた。彼はこれまで何度も苦難に見舞われてきたものの、あれ程の仕打ちをされたのは初めてであったのだ。その上に、現在の彼は貴族の当主であり、あの仕打ちは彼の肉体のみならずプライドにも大きな傷を残したのだ。

 

「…今一度…君には立場というものを弁えてもらわなければな」

 

そして時灘は書物をしたためると共に部下を呼び出す。   

 

そんな中であった。時灘は何かを思い出したのか額に手を当てる。

 

「……ん?そういえば彦禰 の奴は随分と遅いな…一体何をやっているんだ…?」

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

虚圏。それは虚のみが暮らす別の世界。

 

ユーハバッハが倒されて以来、滅却師が退散した為に虚圏にも再び平和が訪れたのであった。

 

 

「行くわよぉお!!今日も美しくエレガントに!!」

 

「「「「はい!先生ッ!!!」」」」

 

 

そんな虚圏の砂原の上では異形な虚達がクールホーンと共にポーズを決めていた。

 

「ほらそこぉ!!もっと脚を上げなさい!美しさとはいわば完璧な肉体…それを得るためなら、訓練での一ミリのズレも許されないのよ!!!」

 

「「「はい!先生!!」」」

 

クールホーンのお叱りに虚達は声を合わせながら答えると再びポーズを取っていく。

 

その中には…ネルの姿も。

 

 

 

 

そんな景色を虚夜宮の窓から見ていたハリベルは…………まさにそれについての苦情を部下であるアパッチから受けていた。

 

「ハリベル様!本当に“アイツら”何とかできないんですか!?」

 

「…」

 

彼女の言葉を聞いたハリベルは冷や汗を流しながら外の景色を見る。

 

そこには外の砂丘にて、多くの異形な虚達が列をなしながらクールホーンと同じポーズをとっていた。その雰囲気はマジで暑苦しく、見ているこっちも暑くなってくる程のものであった。

 

「無理を言うなアパッチ…できたらとっくにしている…それにクールホーンは井上織姫と同じく…私やスタークを救ってくれた恩人だ。あまり強く言えん…」

 

そう言いハリベルは頭を抱えながら返す。因みにクールホーンの行動には毎度毎度、頭を悩ませており頭痛の種となっている。因みに前もグリムジョーやウルキオラ達を体操に強制参加させており共に汗を流していたようだ。

 

「…あと、奴のストレッチは少し気持ち良いからな…(ボソっ)」

 

「ハリベル様ぁ!?」

 

ハリベルもまた彼の生徒となっていたのだ。

 

 

その時であった。

 

「…!!!」

 

突然と妙な寒気が背中を襲った。

 

「なんだ…この不気味な霊圧は…!?」

 

感じられるのは破面でも滅却師でも、ましてや死神でもない“異質”な霊圧。それはアパッチや周囲の破面そして、外にいた破面達も感じ取っており警戒していた。

 

「出るぞ」

 

「はい!」

 

ーーーーーーー

 

外へと出たハリベル達は先程感じられた霊圧を再び探り、出所を探し出す。

 

すると___

 

 

____突然とその正体は現れた。

 

 

「な…!!」

 

驚くハリベルや破面達の目の前には空に開いた巨大な黒腔。そこから小さな影が飛び出して先程の霊圧を撒き散らせながら凄まじい勢いで地上へと落下して数百メートルもの巨大な砂煙を立ち上がらせた。

 

「何だありゃ…?」

 

「ただの子供…には見えませんね。感じられるのは我々と同じ破面…いえ、それどころか滅却師や死神の霊圧も混ざっております」

 

「…アパッチ達の混獣神と似ているな」

同じく外へと出てきたグリムジョーとクールホーンのストレッチに参加していたルドボーンもその子供に対して警戒心を露わにしており、彼らの言葉を耳にしたハリベルも改めて現れた存在から感じ取れる混沌とした気に警戒を更に高めた。

 

 

すると

 

「あいたたたた…砂って飛び込むと硬くなるんですね。なるほど勉強になりました!」

 

緊迫した空気を打ち壊すかのような軽快な声と共に砂煙の中からは死覇装とは異なった衣服を身に纏った少年が顔を出した。

体格や身長は日番谷と同程度であり、美形というよりかは幼さを残した中性的な顔立ちをしていた。

 

現れた少年は目の前のハリベル達を見つけると頷き周囲を見回した。

 

「うん!時灘さまの言う通り破面がたくさんいますね!!これなら命令が実行できそうです!」

 

相変わらず緊張感のない少年。純粋無垢な仕草から警戒する必要はないように思えるものの、皆は決して油断も警戒も解くことはなかった。何故ならば、先ほどの異質な霊圧を放った正体がこの少年なのだから。

 

「止まれ…お前は一体何者だ…?」

 

「ハイ!自分はヒコネ。産絹彦禰 と申します!」

 

ハリベルの質問に現れた少年『彦禰』は元気よく答えるが、その姿を見ていたグリムジョーは嫌悪感を持ち始めた。

 

「何なんだあのガキ…目が全然笑ってねぇ…」

 

「それに死神や滅却師の気配まで…どうして…?」

 

ネルも得体の知れないその風貌や気配に警戒する中、彦禰 はそのまま言葉を続けた。

 

「えぇと破面の皆さんに時灘様から贈り物があります!」

 

「贈り物…?」

 

聞いたこともない名前にハリベル達は更に困惑するも、彦禰 は続ける。

 

「バラガンさんと言う方と藍染さんと言う方がいなくなってこの世界には王様がいなくなったと聞きました。ですので、時灘様はこのヒコネをここの王様にもして下さるそうです!良かったですねぇ!いい王様になれるように頑張ります!!」

 

 

そう言いながら彦禰 はペコリと頭を下げるが、その言動と仕草に破面達は更に警戒を強めた。

 

 

そんな中であった。その言葉によって警戒よりも、藍染に対する侮辱として受け取ったのか、ルドボーンが能力を解放しながら前へと出た。

 

「不敬極まりない。あの“白い衣を茶色に染めた”下痢の王である藍染様に成り代わろうなど…」

 

「不敬なのはお前だ」

 

ルドボーンの皮肉混じりの言葉にハリベルは突っ込むがそれを気にせずルドボーンは自身の能力を発動させ周囲から骸骨の戦士達を呼び覚ます。

 

 

「行け」

 

ルドボーンの指示によって現れた骸骨兵士達の刃が彦禰 へと振り下ろされるも、その刃は彼に傷を負わせることなく、身体へと当たった瞬間に砕け散った。

 

 

「あれは…鋼皮…!?」

 

ネリエルが驚きの声を上げる。自身らの技をなぜあのような虚とも死神とも取れないような子供が扱えるのか、そんな疑念を抱く皆の前で彦禰 は笑みを浮かべた。

 

 

「やはり時灘様の言う通り誰も納得しませんね!その場合は……納得するまで、心を折るまで、打ちのめせ…だそうです!」

 

 

そして 彦禰 は背中に背負った刀へと手を掛けると唱えたのだった。

 

 

「星を巡れ____已己已己巴…!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時であった。刀を掴んだ彼の手を巨大な拳が優しく包み込んだ。

 

「可哀想な坊やね…まだこんなに幼いのに大人の手駒にされるなんて…」

 

「……へ?」

 

その巨大な拳と突然と感じられた超巨大な霊圧によって、彦禰 の顔からは先程まで見せていた異質な雰囲気が一瞬にして消え去り、驚きながらゆっくりと上を見上げた。

 

 

 

そこには……彦禰を見つめる筋骨隆々なオカマ破面『クールホーン先生』の姿があった。

 

 

「安心なさい…私達大人はあなたの味方よ♡」

 

その言葉と共に彦禰 の刀に亀裂が走り出す。

 

「うわぁぁぁ!!!時灘さま助けてぇええ!!!!」

 

 

ーーーーーーー

ーーーーー

ーーー

ー  

 

 

時灘の訪問から一夜明け、瀞霊廷では貴族に就任した時灘の話題でもちきりであり、檜佐木が編集長を務める瀞霊廷通信にも大きく掲載されていた。

 

 

だが、一部の者は興味を示すことなくいつも通りに過ごしていた。それは勿論……十二番隊の皆も…。

 

 

「よいしょ…と」

 

千弘はマユリの指示によって廷内にある技術開発局の新たなる私有地に呼ばれていた。

 

「何なんですか一体?」

 

「普段頑張っている君に不本意だが、プレゼントをと思ってネ。持ってきたモノをここへおきたまえ」

 

「プレゼント…?」

 

マユリの言葉に首を傾げながら千弘が持ってくるように指示を出されていた『ロケット』を発射台に置く。千弘が持ってきたのは、高さがおよそ5メートルで幅が3メートル程の小型のロケットであった。

 

発射台に置かれたロケットをマユリが点検する中、千弘は彼の先程の言葉について尋ねた。

 

 

「あの…プレゼントっていったいなんですか?」

 

「ん?決まっているだろう。_______

 

 

 

 

 

 

 

 

_______ネムとの旅行さ」

 

 

「………え?え!?い…いまなんと…!」

 

 

千弘は訳が分からず耳を疑いながらももう一度尋ねるとマユリは答えた。

 

 

「だからネムとの旅行と言っているだろう。普段頑張っている君には偶には褒美を与えようと思ってネ」

 

「〜!!!」

 

その言葉に千弘は一瞬ながら驚くものの、即座に顔を赤く染め上げながら笑みを浮かべた。

 

「やったぁぁぁ!!!!」

 

初めてだった。彼からこれほどまで喜ばしい程の報酬は。恐らくかつてないものであるだろう。

 

 

「ありがとうございます局長〜!!!」

 

「いちいちうるさいヨ。一応、これを乗り物として扱おうと思っているが、まだ試作品なのだヨ。それに試乗してもらうために呼んだのだ」

 

その言葉を耳にした途端、最近のマユリの忙しさをようやく理解すると共に心の中で唾を吐き捨てるほど嫌っていた彼の印象を改めた。

 

この男は一見、人を食ったかのような口ぶりではあるものの、内面ではとても気にかけていてくれたのだ。

 

「局長…!!」

 

「ほら、さっさと手伝いたまえ」

 

「はい!」

 

 

それから千弘は満面の笑みを浮かべながらロケットの整備を手伝っていき、いよいよ整備が終わり発射スタンバイが完了し飛ぶ時が来たのであった。

 

 

「発射準備完了。いつでもカウントダウンOKです!」

 

「よし。では早速乗ってもらおう」

 

部下からの合図にマユリはロープを取り出すと、発射台に設置されたロケットへと千弘を縛りつけた。

 

「あれ?何ですかこれ…?」

 

縛り付けられた千弘は不思議に思いながらマユリへと尋ねるとマユリは懐から一台のSw○tchコントローラーを取り出しながら答えた。

 

「言い忘れていたが、これは遠隔操作機能が付いていてネ。この装置を操作することで自由に操縦できるのだヨ。一応、縛り付けているのは事故防止のためさ」

 

「成る程」

 

千弘はマユリからコントローラーを受け取るといつでも飛べるように心の準備をする。

 

 

 

「よし。ではカウントダウンと行こう」

 

マユリの指示と共に班員達が次々と機器を操作していくと、次々とロケットの噴射口に青い霊子のエネルギーが充填され始めていったのだった。

 

 

それによってカウントダウンも始まる。

 

 

5

 

 

4

 

 

3

 

 

2

 

 

1_______

 

 

 

 

 

 

 

 

______発射。

 

 

その瞬間 千弘の縛り付けられたロケットは空高く飛び上がっていった。

 

 

ドォオオオオオオオオンッ

 

 

凄まじい音と共に噴射口から霊子を溢れ出しながら千弘を乗せたロケットは次々とスピードを上げていきながら上へ上へと上っていく。その音や後に残る煙の後は瀞霊廷中の注目を集めており、全死神達の目線がロケットへと向けられた。

 

 

ゴォオオオオオオオオオオオオオオ

 

 

 

「わぁ…すごい…!!!」

 

飛び上がったロケットは遂に瀞霊廷が一望できるほどの高度にまで達した。広大な瀞霊廷の景色を目にした千弘は感動の声をこぼしながらも、先程のマユリから渡されたコントローラーを取り出して操作を試みる。

 

「よし!そろそろ…………あれ?」

 

 

だが、

いくらリモコンを操作してみてもロケットの軌道が変わる事は無かった。おかしいと思いながらも千弘は何度も何度もコントローラーを動かすものの状況が変わることはなかった。

 

いや、それどころか霊子の噴出が終わり今度は先端部分を下に向けながら落下し始めていったのだ。

 

それをみた千弘は更に焦り始めながらコントローラーを操作するが、相変わらずうんともすんとも言わなかった。

 

「あれ…ちょっとあれ!?えぇ!?操作できないですけど……ん?」

 

すると そのコントローラーが突然 変形すると一枚のスクリーン画面を搭載した通信端末へと変形し、そのスクリーンに2頭身のマユリの絵と共に文字が投影された。

 

 

 

 

『バーカ』

 

 

 

「え…?」

 

そのロケットは空気をつけ抜けていきながらグングンと加速していき_______

 

 

 

 

「さて…奴をどうしてやろうか…涅マユリや初代隊長共と同じ反乱因子の疑いをかけてしばらくは無間に……ん?なんだこの音は___」

 

 

 

 

 

 

 

 

_______貴族街にある綱彌代家へと墜落したのだった。

 

ドガァァァァァァァァァン

 

 

「局長テメェこのやろぉおおおおおおおおおお!!!!!」

 

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーー

ーー

 

煙が巻き上がる景色を見ながらマユリは頬をポリポリと掻く。

 

 

「ロケットが操縦できる訳ないだろ」

 

 

 

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