お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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主人公 イメージ画


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いつも通りへ

 

 

時灘に殺された筈であるネムが現れた事で千弘は硬直し、先程まで瀞霊廷を覆っていた霊圧が消え去っていった。

 

「え…?貴方は…時灘に…」

 

「何を言っているのですか?私はマユリ様とずっといましたよ」

 

「局長の…!?」

 

すると

 

「全く。私が目を離している隙に下らん幻覚を見せられただけでこんなに暴れて…随分と迷惑な助手を持ったものだネぇ」

 

彼女の背後からマユリも姿を現し、首を横に振るう。

 

「局長…!?え…!?どう言う事ですか!?」

 

「まだ分からないのかネ?お前は奴に幻覚を見せられていたのだヨ」

 

「幻覚…!?」

 

「そうだ。零番隊から聞いた話では、奴の斬魄刀の名は『艶羅鏡典』一度見た斬魄刀の効果を模倣するものだヨ」

 

「…ってことは私が見た幻覚ってまさか…」

 

マユリの言葉に千弘はようやく理解したのか、先程、時灘が自身に見せた光景を思い出す。

 

「あれは…【鏡花水月】を模造した幻覚!?」

 

「その通り。まんまと奴に嵌められたという訳さ」

 

「…」

 

その言葉によって、先程まで周囲に吹き荒れていた黒い霊圧の嵐が収まっていき、千弘の瞳も元の色へと戻っていった。

 

「ってことは……私は……」

 

千弘はようやく理解した。彼の策略にハマるのみならず感情的になり暴れ回ってしまった事を。

 

 

そして、その様子を近くで見ていた京楽は安堵の息をつきながら尋ねる。

 

「ふぅ…ようやく落ち着いたかい?千弘くん」

 

「京楽隊長!」

 

京楽の姿を見た途端、千弘はすぐさま彼に向かって土下座した。

 

「ももも申し訳ありませぇぇえん!!!!本当に隊長方にはご迷惑をぉおおおおお!!!!」

 

「えぇ!?いやいやいや!そこまでしなくても…(えぇ!?これがさっきの千弘くんなの!?)」

 

そのスライディング土下座には勿論だが、先程とはまったく真逆の雰囲気にも京楽は驚き、アタフタとしていた。

 

 

そんな中であった。

 

「はぁ…。全く。相変わらず手の焼ける助手だネ」

 

その様子を見ていたマユリがこちらへと歩いてくる。

 

 

 

すると

 

_____千弘へと手を差し伸べた。

 

 

「ほら、さっさと立ちたまえ。君が留守にしている間、保留にしている研究が山程あるのだヨ」

 

「へ…!?」

 

彼から差し伸べられた手。長年、彼と共に働いていた千弘は初めて見るその人としての行動に驚きの声をあげると共に硬直してしまった。

 

「あらら。普段は冷たいけど、案外優しい所もあるんだねぇ」

 

「ふん。一応部下だからネ」

 

マユリが手を差し伸べるその姿に、京楽は感嘆の声を漏らす。

 

その一方で、手を差し伸べられた千弘は、目元から涙を流し始めた。

 

「きょ…局長〜!!!」

 

「全く。いつまでもこんな気持ち悪い姿勢を取らせるんじゃないヨ。さっさと手を取りたまエ」

 

「はい!!」

 

涙を拭った千弘はその手をゆっくりと握った______

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______スポン

 

 

「え?」

 

すると、何故か妙な音と共に握ったマユリの腕が袖から抜け落ちる。

 

「なにこれ?」

 

袖から抜けたその腕の先端には人形劇などで人形を支えるために扱われる棒のようなものが刺されていた。

 

「えっと…なんですか?これ…」

 

ザザザザーー

 

「え?」

千弘が尋ねようとすると、マユリとネムは京楽を引っ張りながら一瞬にしてその場から離れた。その様子に千弘は首を傾げてしまう。

 

 

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピー

 

 

 

ドガァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!!

 

 

 

 

 

巨大な大爆発が起こり、千弘を飲み込んだのであった。

 

 

「(゚Д゚)…………」

 

天にも昇る勢いで爆発したその光景を唖然としながら見つめていた京楽はゆっくりとマユリへと目を向ける。

 

「え…く…涅隊長〜…?」

 

そこには

 

「あ〜スッキリした。にしても、火薬の量が少ないねぇ。もっと増やしても問題無さそうだヨ」

 

「えぇ…!?」

鼻に指を突っ込みながらその様子を観察するマユリの姿があった。

 

「さて、馬鹿騒ぎは治った事だし、我々は研究に戻るヨ。ネム、ソイツを引っ張ってこい」

 

「はい」

 

命令を受けたネムは爆炎が晴れ、その場で全裸になって倒れている千弘を背負い、マユリと共に歩き出した。

 

「ちょちょちょー!?ちょっと待って!?さっきの感動的な場面は!?」

 

「私が奴にそんな気遣いをする訳ないだろう?あ〜技術開発局の修理が終わり次第寄越すから心配ないヨ。あとは煮るなり焼くなり好きにするといい」

 

「い…いや…堂々と勝手な真似されちゃうと困るんだけど……」

 

京楽の声に耳を貸す事なく、マユリ達はその場から去っていったのであった。

 

「は…はは……」

 

 

周囲の景色を見渡しながら京楽はゆっくりとその場に腰を下ろす。周囲の建物は倒壊し、地形は歪な形へと姿を変えており、その有様は数年ほど前の霊王護神大戦の時と比べるとまだ規模は小さいと見てもいい。だがあの時よりも一層、命の危機を感じていた。まるで、尸魂界を蹂躙したユーハバッハが“子供”に見えてしまう程にまで。

 

 

_____自身らは改めて千弘という男の“真の恐ろしさ”を知ったのだ。

 

 

すると

 

「隊長!!ご無事ですか!?」

 

後方から副隊長である七緒の声が聞こえ、振り向くと駆け寄ってくる彼女の姿が見えてきた。

 

「本当にこの世界は…何があるか分からないねぇ…」

 

 

ーーーーーーーー

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

その後、崩壊した瀞霊廷の建物は千弘が全力で修繕作業に当たることとなり、そのスピードや精密な技術から、たった“3日”で完璧に終えてしまった。

 

 

そして 暴れた千弘はというと。

 

「はぁ…またここに逆戻りですか…」

 

再び無間へと投獄されていた。それもそうだ。中央四十六室は時灘の悪事を知らないため、今回ばかりは千弘の独断で下手をすれば反逆行為としてもとられておかしくはない。

 

だが、その辺りは京楽達が何とかしてくれたのか大事にはならなかったようだ。そして隊士達にも瀞霊廷をメチャクチャにし暴れ回った死神については総隊長達が結束して倒したと知らされており、重要人物を除き、誰一人として千弘が暴れたと認識する事はなかったという。

 

 

更に一隊士の暴走も未然に防ぐ事ができなかった責任を取らされる形で、総隊長である山本重國も収監される事となってしまった。

 

 

千弘や初代隊長、そして総隊長という巨大な戦力を失った護廷隊は大幅に弱体化してしまったのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇

 

一方で、その様子を映像越しで見る青年の影があった。

 

「いやいやよかった。上手く事は運んだようだねぇ」

 

そして、この騒動のすべての結果さえも作戦の一つとして組み込んでいた恐ろしき男は遂に自ら動き出したのであった。

 

「あの邪魔な奴らがいない今、計画の発動には打って付けだね彦根」

 

「はい!時灘様!」

 

 

だが、彼らは知らなかった。これから自身らは____

 

 

 

 

 

 

 

______地獄以上の恐怖を味わう事を。

 

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