お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ 作:狂骨
具現化した斬魄刀達は次々と瀞霊廷を襲い始めていった。その力は絶大であり、一般隊士達は勿論だが、卍解どころか始解さえも封じられてしまった隊長達も苦戦を強いられる事となり、瀞霊廷はパニックへと陥っていたのだ。
頼みの綱である元柳斎は乗っ取られた斬魄刀達の霊圧によって結界に封印されてしまい、もはやなす術がない。
唯一無事であるのは、始解も卍解も習得する事なく隊長へと登り詰めた更木 若しくは“本来の自身を封じている卯ノ花”ぐらいであろう。
そしてもう1人は_______
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「…」
「どうした村正」
瀞霊廷の巨大な建物の屋根の上で大混乱に陥る瀞霊廷を見渡していた村正は、何か違和感を感じたのか別の方向を見つめた。それを不審に思った鎧を身につけた武者『千本桜』が尋ねると村正はその方向をじっと見つめた。
「……一瞬だが…とてつもない霊圧を感じた…。この廷内に…山本重國に匹敵する得体の知れない“何か”がいるな」
「む…?それほどの奴など…」
千本桜は眉を顰める。そして自身の白哉と共に過ごしてきた記憶を辿り、それらしき人物がいたのか確かめた。
その時であった。
_____ッ!!!!
巨大な破壊音と共に自身らが立っていた建物が爆破した。
「「!?」」
唐突に鳴り響いたその音に驚いた2人はすぐさまその場から跳躍する形で離れ、別の建物へと移動する。
「…なんだ?殺気も何も感じなかった…一体何が…」
村正が驚きながらも、崩壊したその建物へと目を向ける。
「な…!」
そこには、完膚なきまでに叩きのめされている鬼灯丸の姿があった。全身に目立った傷は見えなくとも、顔には巨大な腫れ跡があり、殴打によって吹っ飛ばされた事が分かる。
「鬼灯丸…一体誰が…」
斬魄刀を殴打1発で倒す実力者。その者の霊圧をすぐさま感じ取ろうとするも、それらしき死神の姿は見当らず、村正も千本桜も不安要素を抱えながら無駄な時間を過ごしたのであった。
その後、斬魄刀達は夜明けと共に姿を消した。“1人の死神”と共に。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
夜が明け、斬魄刀達が去ったものの、その傷跡は深く四番隊のベッドは怪我人で埋められていた。隊の要でもある一番隊隊舎も焼け落ち、たった一夜にして護廷隊は大打撃を与えられてしまったのだった。
偶然にも、襲撃後に調査に訪れた夜一は四番隊隊舎で待機している隊長達から話を聞いていた。
「全く不甲斐ないな…まさかいきなりの敵襲でこのザマとはね」
「だがどうする?奴らはいずれまた来るぞ」
浮竹の言葉に額を手で覆いながら反省していた京楽は考え込む。
そんな中であった。夜一は何かを思い出し、“ある人物”について尋ねた。
「そういえば、奴はどうなっておるんじゃ?ほれ、あの十二番隊の」
◇◇◇◇◇◇◇
場所は変わり、技術開発局にて。
「あの局長〜どうしたんですか?いきなり呼び出して」
マユリから呼び出された千弘はネムと共に彼の研究室へと来ていた。目の前には笑みを浮かべながら身体の所々に装置を設置して自身の身体を調べるマユリの姿があり、千弘は彼に尋ねた。
それに対してマユリは彼の質問を無視するかの様に、目の前に表示された結果を見て、更に笑みを浮かべた。
「ふむ。予想通りだヨ。身体から斬魄刀の魂が抜けている」
「え?」
質問よりもマユリの唐突に放ったその言葉に千弘は首を傾げた。
「斬魄刀って持ち主の魂を写し取ったものじゃないんですか?」
「今は別のものになっている。能無しの癖に知った様な口を聞くんじゃないヨ」
「あ"ぁ!?装置ぶち抜くぞ腐れ局長!」
「やめろ馬鹿者!!給料全カットの刑にするヨ!」
それから研究を終えたマユリは調査書類をまとめた。
「さて、取り敢えず凡人共へ知らせるとしようか。ほらとっとと書類を四番隊に渡して来い。あと卯ノ花隊長にはここへ来る様に伝えろ」
「はぁ〜い」
◇◇◇◇◇◇
その後、千弘とネムは卯ノ花へマユリの研究結果と研究室への動向の趣旨を伝えた。
その内容について卯ノ花は頷くと、千弘、ネムと共に技術開発局へと向かうべく治療の場を離れた。その際に勇音は卯ノ花が技術開発局へ赴く事を不安に感じていた。
「うぅ…卯ノ花隊長が涅隊長に身体を弄られるのは何か嫌です…」
「あ、ご心配なく。変な事したら私の作った特性タバスコ飲ませるので」
「逆に涅隊長が心配になってきますよ!!」
そんな中であった。
「…ん?」
隊舎を出ようとした千弘は付近の隊舎から“異質な霊圧”を感じ取り、感じ取られた方角へと目を向けた。
「どうしましたか?」
「う〜ん…」
卯ノ花が尋ねると千弘は首を傾げながら答える。
「変な霊圧がありますね」
「変な…?」
「はい。何かこう…虚が混じった様な」
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場所は変わり別の隊舎にて。そこでは周囲に巨大な氷の柱と共にクレーターが出来上がっていた。
広大な庭中心を丸ごと抉り取られたかのように出来たそのクレーターは深さは軽く10メートルはあり、ハシゴを使わなければ決してでられない程の深さであった。そんなクレーターの中心では倒れ臥すルキアと卍解し斬魄刀を構える一護そして____
「私は君に興味がある。黒崎一護」
___先日、斬魄刀をまとめ上げ瀞霊廷を襲撃した村正の姿があった。
「私と共に来い」
「ハッ。誰がテメェらについてくかよ!」
村正のその誘いを一護は強く拒絶しながら再び刀を構えた。
「…場所を変えるぞ」
「好きにしろ」
そして2人はその場から瞬歩で姿を消すと、まだ傷のない隊舎の門の目の前へと現れた。
その時であった。
「あ、見つけた」
「ん?」
背後から何者かの声が聞こえた。その声に村正が振り向くと、そこには1人の死神の姿があった。
「(子供…?全く気配を感じなかったぞ…?)」
突如として現れた謎の死神に、一護の斬魄刀を振り払った村正は改めてその死神へと目を向ける。
すると、少年の死神は懐から伝令神機を取り出した。
「もしもし局長〜変な格好した輩を見つけました。はい。何か変なコート着てます」
「お…お前は…」
そんな中、村正の振り払いによって距離を置かれた一護はその少年を目にすると見覚えがあったのか名前を口にする。
「千弘!?」
「ちひろ…?彼の名か」
一護の声を聞いていた村正はこちらへと目を向ける千弘を観察する。
「(見るからに霊圧が…いや、感じられるが何だこの霊圧は?一介の死神と比べると大差ない…だから先程は気づかなかったのか)」
千弘の身体から感じられる弱めな霊圧に村正は彼については警戒する必要はないと判断したのか、彼に向けての警戒を解いた。
「君、今すぐ立ち去りたまえ。私を捕えに来たか知らないが、君程度の霊圧ではどうする事もできないよ」
警戒を解いた村正は馬鹿にしているとも、紳士的にも捉えられる様な素振りで千弘へと言い放った。その一方で、千弘は村正の言葉を意に介す事なく通話を続けていた。
「え?あ〜分かりました」
ピッ
「どんな内容だったのかな?」
通話を切った千弘に村正が尋ねると千弘は答えた。
「えっと何が何でも捕まえろ…らしいですね」
「そうか。だが、もう一度言うよ」
その答えを耳にした直後、村正の姿が消え、一瞬にして千弘の前に現れた。その手には一護と対峙した際に使用した刀も握られており、村正は千弘目掛けて振り下ろした。
「君程度では私を捕えられない…!!!」
「危ねぇ!!千弘!!!」
一護が叫んだ。その瞬間_______
「いや刃物とか危ないんでやめてください」
「がはぁ!?」
____千弘の平手打ちが村正の頬へと刀を振り下ろすよりも前に直撃し、村正をその場から吹き飛ばした。
「………え」
突如として目の前に広がったその光景を目にした一護は目を点にする。
「いや…まてまて…」
その光景を現実と受け止めきれず、一護は一度、目を拭い再び目を向けるも、先程と光景は変わらなかった。即ち、村正が刀を振り下ろすよりも早く千弘の平手打ちによって、瀞霊廷の壁を何重にも貫きながら吹き飛ばされていったのだ。
「えええええ!?」
「全く。初対面の人に向かっていきなり襲ってくるとかどういう神経してんですかあの人。…ん?あ!貴方は旅禍の人!奇遇ですね」
「え!?普通に話しかけてきた!?あ…えっと…あぁ」
一護が驚く中、千弘はその声によって一護に気付き手を振ると、一護は一瞬、驚きながらも返す。
「…って!それどころじゃねぇ!アイツ捕まえなきゃいけねぇんだろ!?」
「あ、そうでした!すぐに_______あれ?」
一護の言葉によって千弘は村正の捕獲を思い出し、すぐさまその場へと目を向けるが_______
_____既に彼の姿は消えていた。
「「………」」
ピッ
再び千弘の持つ伝令神機が光り出すと千弘は恐る恐る通話に出る。
すると
『今月の給料は50%カットだネ』
マユリの声が聞こえると共にすぐに通話は切れた。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
そして千弘はその場で泣き崩れたのであった。