お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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裏切りそしてブチギレ

 

「やぁ隊長と副隊長の二人に園原君。よくここにいると分かったね」

 

目の前に立っていた藍染は自身らに目を向けると不敵な笑みを浮かべる。それに対してマユリは表情を変える事なく答えた。

 

「死体の人形が奪われ、君が失踪してから薄々気付き始めていたさ。そして人形に付けている『発信機』が感じる場所から確信がついてネ。君は“人形を身代わりに安全な場所へと身を隠した”と」

 

「まさか知らない間に発信機を付けられていたとは…これは一本取られたよ。だが、“これ”は死体の人形ではない」

 

そう言い藍染は“手に持っていた”『死体の人形』を見せる。突然と何の前触れもなく現れた死体の人形を見た勇音は驚きの声を上げた。

 

「な!?いつからそこに!」

 

「“いつから”?今までずっと持っていたよ。ただ、君らには“そう見せていなかった”だけだ。解くよ?」

 

そう言い藍染は解号を唱えた。

 

 

 

__砕けろ。鏡花水月__。

 

 

 

その言葉と共に死体の人形がガラスの様に砕け散ると一本の日本刀へと姿を変えた。

 

「これが僕の斬魄刀『鏡花水月』。その能力は『完全催眠』催眠を掛けた者の五感、視覚、嗅覚、聴覚を全て支配し、対象を別の物に認識させる事ができる。蝿を竜に見せる事も泥を花に見せる事も可能さ」

 

「ほぅ?あの人形から流れていた血もただ単に“血液”として認識していただけで本当はただの液体。だから血の性質も見られなかったのか」

 

「そんな…!!鏡花水月の能力は霧と水流の乱反射により敵を撹乱させ同士討ちにさせる能力の筈…副隊長を集めた際にもそのように説明して見せていたじゃないですか!?」

 

勇音が異議を唱える中、マユリが答える。

 

「それさえも奴の能力なのだヨ。“そう見せていた”だけに過ぎないのさ」

 

「その通りだ。術に掛かる為の条件は始解の瞬間を見る事。つまり盲目の者には術は掛からない。即ち東仙要も私の部下だ」

 

「そんな…!!」

「やはりね。どうりで同時に失踪しておかしいと思っていたが、グルだった様だネ」

 

藍染の言葉に勇音は驚き、卯乃花は目を鋭くさせる。そしてマユリが納得すると、卯乃花は鋭い目を向けながら今回の騒動を巻き起こした目的を問う。

 

「…なぜこのような事を…?貴方の目的は何なのですか?」

 

その質問に対して藍染は笑みを絶やさず答える。

 

「君達に教える義理はない。だが、それは“もうすぐ達成される”とだけ言っておこう」

 

藍染の言葉と共に側に立っていた市丸が袖から長い包帯の様な物を取り出した。

それは空中に飛び上がると意思を持っているかの様に唸り出し、藍染と市丸の辺りに巻きついていく。

 

「そろそろ時間だ。君達とはもう会う事はないだろう____

 

 

 

 

 

 

___さようなら

 

 

 

その一言と共に藍染と市丸の姿が布に包まれていった。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

「何帰ろうとしてるんですか?」

 

 

 

「「!?」」

 

 

その言葉が辺りにこだますと共に藍染達を取り囲んでいた布が一瞬にして微塵切りにされた。

 

布に包まれていた二人の姿が再び露わになると共に斬り刻まれた布は床に落ちていく。

 

「ほぅ?これすらも斬り刻むとは…やはり君の抜刀術だけでなく斬魄刀の切れ味も素晴らしいものだね」

 

「いや、褒めなくてもいいので。こんな事したんですからまず謝るのが先ですよね?」

 

「どこからそんな力が湧き上がるのか、そしてどうやって手に入れたのか気になって仕方がない」

 

「ほぅ?それは私も同意見ダ」

 

「いや気にならなくていいですから。あと局長は黙ってて下さい」

 

千弘の全身から発せられる巨大な殺気はこの場を包み込み空気を震わせていた。それによって辺りの建物から木が割れる音が聞こえ始める。その殺気に市丸は無意識に腰にかけてある斬魄刀へと手を掛けていた。

だが、即座に藍染はそれを制止させる。

 

「そうだ。去る前に君に一つ提案をしよう」

 

「そういうのいいので話ねじ曲げるのやめてもらっていいですか?」

 

「私と共に来ないかい?君のその力を存分に発揮できる場を設けると共に一生分の富と食を約束しよう」

 

そう言い藍染は手を差し出した。その手を取るか否か提案を持ちかけて来たのだ。本来、金に汚い上に食事にも気を使う彼ならば間違いなく手を取るだろう。

 

 

だが

 

 

「だ〜から………」

 

 

今は全く違う。自身の発言を無視された上、藍染達の後ろで倒れている日番谷と雛森を見た事でそれが起爆剤となり彼の頭の中にある糸が一本切れてしまったのだった。

 

 

 

「謝るのが先だと言っているでしょうが…ッ!!!!!」

 

 

 

 

「「「「…!!!」」」」

 

その瞬間 この場だけでなく尸魂界全土を巨大な殺気と霊圧が包み込んだ。その霊圧は空気を振動させるどころか割れ掛けていた木面や氷を音を立てながら壊す程の威力であり根本である千弘の足元にある板は粉々に壊れていた。

 

 

それを後ろで受けていた四人のうち、勇音は全身を卯乃花は脚を振るわせていた。

 

「流石にこの霊圧は予想外だ。君は本当に『死神』なのかい?」

 

「知りませんよそんな事。取り敢えず貴方達をとっ捕まえて局長共々、特性下剤の刑に処します。1ヶ月間トイレに籠る覚悟ぐらいしてもらいますよ?」

「なぜ私まで入っているのかネ!?」

 

だが、千弘の殺気を向けられても尚藍染と市丸の顔からは余裕が消える事はなかった。

 

その様子を見ていたマユリは驚くと共に興味を抱き尋ねる。

 

「それよりもまさか千弘の殺気と霊圧を直に受けても余裕を崩さないとは…君達をそこまで余裕にさせるとはそれ程の“何か”があるという事かネ…?できたら教えてほしいものだ」

 

「君に教える義理はないよ涅隊長。だが、“それ”は私達のすぐ近くにありもうすぐ手に入る…とだけ言っておこう」

 

「おや残念。だがまぁ君達は本当に覚悟をしておいた方がいいよ?千弘を怒らせてしまったのだからねぇ」

 

 

マユリが笑みを浮かべたその瞬間___

 

 

 

_____藍染の側に千弘が現れ藍染の身体に向けて裏拳を振り回し脇腹へと打ち込んだ。

 

それによって藍染の身体がその場から吹き飛ばされ、壁へ巨大な破壊音を轟かせながら叩きつけられた。

 

 

「謝るのが先だと何弁言ったら分かるのですか?それに倒れているのが誰かと思えば獅郎君とお雛さんじゃないですか。まさか貴方がやったのですか?なら、もう下剤だけじゃ済ませませんよ。あと市丸隊長は引っ込んでてください」

 

「まだ手を掛けてすらないのに気づくなんて…アンタの感知能力どうなってんの…」

 

その言葉と共に千弘は目も向けずに刀へと手を掛ける動作へと移行しようとした市丸へと忠告する。その感知能力に市丸は驚きながら冷や汗を流していた。

 

「おい。原型はなるべく留めておいてくれたまえ。後の解剖に差しつかえる」

 

「えぇ勿論。でなきゃ生き地獄を味わわせられませんからね。一回殴り飛ばした程度では済ましませんよ」

 

「いやいや…パンチだけでこの威力って…バケモノですやん…」

マユリの指示に千弘は拳を鳴らしながら答える。その傍らでは、市丸は冷や汗を流しながらもその笑みを垂らす事なくある事を添えた。

 

「それよりも大丈夫?今のが“本物の藍染隊長”だったんか?」

 

「え?」

 

その言葉を聞いた千弘は驚きながら吹き飛ばした箇所に目を向ける。

 

 

その時だった。

 

 

『砕けろ。鏡花水月』

 

「「「「…!?」」」」

 

 

その言葉が入り口から聞こえた。その瞬間 辺りの景色が横にいた市丸ごとガラスのように砕け散り、見れば目の前には誰もおらず、先程の藍染が吹き飛ばされた箇所には何もなかった。

 

「こういう能力さ。分かったかい?園原君」

 

その言葉が聞こえた時にはもう遅かった。声が聞こえた入り口付近に振り向くとそこには二人の姿があったものの、既に先程の布が再び辺りを包み込んでいた。

彼は一度解いた鏡花水月を再び発動していたのだ。

 

そして布が包み込む中、藍染は自身らへと目を向ける。

 

 

「今度こそさようなら。もう君達とは会う事はないだろう」

 

 

「「…!!」」

 

その言葉に一番近くに立っていたマユリ、卯乃花、ネム、勇音の内、ネムと勇音が捕縛すべく動き出そうとするもそれよりも早く二人の姿は虚空へと消えてしまった。

 

 

 

だが、千弘は諦める事は無かった。

 

「あんなに言って謝罪どころか返答無しとは…」

 

藍染に完全に揶揄われた事で騙された事に対する怒りではなく揶揄われた事に対する怒りが爆発してしまったのだ。

 

「絶対にぶっ飛ばぁぁぁす!!!」

 

そこから即座に藍染の霊圧をその身で感知すると、その場から駆け出した。

 

「待て千弘!」

 

「待ちませんよ局長!アイツ一発ブン殴らないと気が済みません!!!」

 

◇◇◇◇◇

 

その場所から外へと出た千弘は藍染の気配をその場から遠くにある双極の丘から感じ取った。

 

「(…距離数千…双極の丘ってとこか…)」

 

心の中で感じ取った霊圧の濃度から藍染の居場所を即座に特定するとその方向へと目を向け腰を低くし、一気に駆け出した。

 

「…!!」

 

凄まじいインターバルで足音を鳴り響かせながら千弘は廷内にある道を駆け抜けていく。

 

 

その時だった。

 

「…?」

誰かが道を隔てる壁に背中を預けながら倒れている姿を見つけた。それは市丸が所属する隊の副隊長である『吉良イズル』であった。

 

「吉良副隊長…?大丈夫ですか…!?」

 

即座に吉良に駆け寄る千弘。すると、吉良は瞑っていた目をゆっくりと開き、目を覚ます。

 

「園原く__ぐぇ!?」

 

「喋れるなら大丈夫ですね。近くの詰所まで送ります」

 

目を覚ました吉良が喋ると、すぐさま首根っこを掴み背中に背負うと走り出した。

 

そんな中 頭の中に勇音の声が聞こえてくる。

 

『瀞霊廷内にいる全隊員及び旅禍の皆さん。こちらは四番隊副隊長の虎徹 勇音です…。これは四番隊隊長【卯乃花烈】と私【虎徹勇音】からの緊急伝心です…暫しの間 ご静聴願います…これからお伝えする事は全て真実です…』

 

鬼道を扱い皆へと先程の出来事を伝えようとしているのだ。

だが、それを聞いた千弘の額には青筋が浮かび上がり始める。

 

『五番隊隊長…藍染 惣右介は__

 

 

「うるせぇええええええええッ!!!!!」

 

 

「のわぁ!?どうしたんだいいきなり!?」

 

「今アイツの名前聞くだけでもムカつくんですよ!!あのインテリ眼鏡!獅郎くんやお雛さんを斬っただけじゃ飽き足らず人の質問に一切答えず格好ばっか付けて消えやがって!!」

 

「え…それは…ぐえ!?」

 

詰所へと到着した千弘は吉良を即座に門の前に立っている見張りの隊士へと吉良を預けた。

 

「すぐに治療をお願いします!」

 

「はぁ!?お前…一般の隊士がなに__うぉ!?」

 

吉良を預けられた隊士が文句を言うよりも早く千弘は駆け出していき、突風を発生させる。

 

再び廷内を駆け抜けていく千弘。そして、小さく見えていた双極の丘が遂に巨大に見える程の距離にまでやってきた。

 

 

「…あそこです…か…ッ!!!」

 

語尾を力むと共に脚を踏み込むと千弘は跳躍する。その跳躍力は瞬発力合わせて他の隊長を軽く凌駕しており、一瞬にして処刑場から数十メートル下の地点から処刑場全体が見渡せる高度まで飛び上がっていた。

 

そこには既に他の隊長達が集まっており藍染、市丸、東仙を包囲していた。

それと共に空は割れており、中から仮面を被った謎の生物達が顔を出し奇妙な呻き声をあげていた。

 

 

だが、千弘にとってそんな事はどうでも良い。

 

「…!!」

 

そこに向けて落下していく中、刀の柄へと手を掛ける。藍染を拘束している二人の女性の内、褐色の肌を持つ女性と目が合うも意に介す事なくそのまま藍染へ向けて突っ込んでいった。

 

 

「離れろ砕蜂!!」

 

「…!?」

 

褐色の肌を持つ女性は即座に砕蜂へ呼びかけ、二人は即座に藍染から離れた。その一方で藍染は千弘の霊圧を感じていないのか不思議そうに首を傾げると、褐色の女性が見ていた方向へと目を向けた。

 

「ほぅ?」

 

向かってくる千弘を見た藍染は余裕の笑みを崩す事なくその場に直立していた。

 

「来てもらって申し訳ないんだが、もう迎えが来てしまってね」

 

 

「何言ってるんですかこの腐れ眼鏡…ッ!!!!」

 

 

千弘があと少し。ほぼあと少しという所まで藍染へ迫り自身の間合いへと入った時であった。

 

 

 

空にある割れた空間から特殊な光が放たれ藍染と市丸、そして東仙を包み込んだ。

 

「…!!」

 

その光を見た千弘は刀から手を離し身体を回転させると藍染にスポットライトの様に当たる光に脚を突き出すと、三角飛びをし、着地をする。

 

「何ですかこれは…?」

 

千弘が疑問に思う中、ボロボロの姿で上半身を曝け出していた元柳斎が答えた。

 

「…反膜…大虚が同族を助けるために使うものじゃ…。あの光に包まれたが最後…内と外では完全に別の世界。即ち…今の藍染には触れる事ができぬ…!」

 

「成る程…本当に貴方の用意周到さには恐れ入りますよ」

 

そう言い千弘は光に包まれている藍染を睨みつける。その一方で光に包まれている藍染達はゆっくりと上昇していった。

 

 

すると 浮竹が駆け寄り上昇していく藍染に鋭い目を向けた。

 

「藍染…大虚とまで手を組んだと言う事か…!?何故そこまで…」

 

「高みを求めてだよ」

 

「…!完全に地に堕ちたか…!!」

 

「傲りが過ぎるぞ浮竹」

裏切りを確信した浮竹の言葉に対して藍染は声を強める。

 

「誰も彼も最初から天になど立っていない。君らも僕も。だが、そんな空白もすぐに終わる」

 

そう言いながら藍染は自身の眼鏡を取ると手で握り締めて粉々にすると共に髪に手を掛け後ろへと流した。

 

「これからは__

 

 

 

 

_____私が天に立つ」

 

 

眼鏡の奥にあったその目は先程まであった穏やかさが完全に消え去っており野望に燃える野心家の様な鋭い目付きへと変わっていた。

 

皆が驚きのあまり硬直している中、元柳斎の前に立っていた千弘が前に出た。

 

「随分な事を言いますね。天に立つ?何を根拠にそんな事を」

 

「いずれ分かるさ。手に入れた“崩玉”さえあればすぐに君など超えられる」

 

そう言い藍染は懐から結晶に包まれた一つの球体を取り出した。それを見た千弘は何も驚きもせず、ただ溜息を吐いた。

 

「はぁ…超えるとかそんなのどうでもいいですけど、謝罪が無いようでしたので、私からせめてもの罰を受けてもらいましたよ。光があってちょっとしか出来ませんでしたが」

 

「何を言っているんだい?君の剣は私へは届いていない。世迷言が過ぎるぞ」

 

「“届いていない?”ならもう一度自分の“髪”に手を当ててみて下さいよ」

 

「…は?」

 

藍染は崩玉を懐に入れると再び後ろへ流した髪へと手を当てる。そこには髪のサラサラとした感触ではなくまるで磨いた宝石の様な固みと若干、ザラザラとした感触があった。

 

「あ…あらぁ…こんな事に…」

 

「…!?」

 

後ろに立っていた市丸の驚き様に藍染は釣られる様に驚くとようやく理解した。

 

「…」

だが、それでも取り乱す事なく再び冷静となると下に立ちながら此方を見つめている千弘へと目を向けた。

 

「覚えておけ園原千弘…!!君は必ず私がこの手で殺す…!!」

 

そう言い藍染は市丸達と共に空間の割れ目へと着地する。すると、ゆっくりと空間の裂け目が消えていった。

 

此方に向けて背を見せた際に見えたのは___

 

 

 

 

 

 

 

____頭頂部の髪だけが切り飛ばされ某キリスト教宣教師の様な髪型となっていた藍染の後ろ姿だった。

 

 

「似合ってますよ」

 

「黙れ!」

 

千弘の言葉に藍染が声を荒げた事を最後に空間の裂け目が消えた。

 

 

 

 

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