お腹が空いたのでお金を稼ぎたいです。剣術極めた死神の無自覚ライフ   作:狂骨

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いつもの日常?否

藍染が去った後。その場に大勢の救護班が駆けつけた。日番谷や雛森、そして吉良は勿論だが、なんと白哉まで重傷を負っていたらしい。

 

その他 多数の隊士達も治療所へ運ばれて、その日は深夜まで怪我人達の治療が続いていった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

そして次の日。廷内ではいつもの様な雰囲気が戻っていた。十二番隊隊舎から離れた十一番隊舎では旅禍の少年が一角と一本勝負を始めているらしい。 

 

そんな中 千弘は今日も縁側にネムと共に座っていた。

だが、いつもと状況が違う。

 

「…ネムさん」

 

「何ですか?」

 

「離れて下さい」

 

千弘は縁側に座るネムの膝の上に抱き締められながら乗せられていた。なぜ、この様な絵面になってしまったのか。それはマユリの命令だからである。

 

藍染達による騒動が去ったその翌日に千弘は研究室へ雑用として赴こうとしたのだが、マユリが門前払いをしたのだ。

 

理由は彼曰く騒動は休暇の期間には入らないらしく、故にもう3日は研究室だけでなく隊長室の雑用には来るなとの事だ。

 

更にマユリは千弘がそれを忘れると考え、阻止するべくネムを派遣したのだ。

 

『絶対に奴をここへ来させるな』

 

その命令を受けたネムは実行するべく彼を拘束するかの様に抱き締めているのだ。

 

「マユリ様の命令ですので」

 

「だからと言って密着しすぎです!緩めるだけでも!」

 

「ダメです」

 

千弘がネムの腕から出ようとするとネムは抱き締める力を更に強くさせていく。しかも何故か頬を紅潮させながら胸元に収まる千弘の頭を撫でていた。

 

「分かりましたから!行きませんから離して下さい!と言うか何で頭撫でてるんですか!?」

 

「お気になさらず」

 

そう言いネムは赤ん坊をあやすかの様に頭を撫でていき、一向に離す様子を見せなかった。まるでネム自身が今の状況を望んでいるかの様に。

 

その時だった。どこからともなく1匹の地獄蝶が飛んできた。その地獄蝶は千弘のすぐそばの縁側に着地すると伝言を渡す。

 

『十二番隊隊士『園原 千弘』四隊隊舎まで来るように』

 

「え…?何故急に…まぁいいでしょう」

 

千弘は疑問に思いながらも立ち上がる。すると、ネムも立ち上がった。

 

「おろ?どうしました?」

 

「四番隊隊舎へ行くのでしたら…私もお供いたします」

 

千弘が尋ねるとネムはゆっくりと両手を広げた。

 

「えっと…お供してくれるのはありがたいのですが…そのポーズは?」

 

「決まっています。“抱っこ”です」

 

ーーーーーーー

 

四番隊隊舎へと到着した千弘。目の前には優しい笑みを浮かべながらお茶を淹れる卯ノ花と杖を構えながら相変わらず厳格な表情を浮かべている元柳斎の姿があった。

 

「急にどうしましたか山本御大。何か違反でもしましたっけ?」

 

「違う。今回呼び出しのは貴殿の今後についてじゃ」

 

「今後?」

 

元柳斎から発せられた言葉に千弘は首を傾げる。

 

「まぁ座りなさい」

 

◇◇◇◇◇◇

 

千弘を座らせた元柳斎は卯ノ花が淹れた茶を飲む千弘をその鋭い眼光で見つめていた。

 

「……(やはり見ただけで感じるのぅ…完璧に一般の隊士程まで抑え込んでおるようじゃが…何という霊圧じゃ…)」

 

目の前で黙々と茶を飲む姿から感じるのは自身でさえも見た事がない巨大な霊力。1000年前に刃を交えた男よりも更に上にいく程だ。その大きさは例えるならば天に向けて聳え、屋上さえも見えない超巨大なビル。限界が見えなかった。

 

更に前回の藍染の裏切りの際に感じた超巨大な霊圧。正に千弘のものであったがあの時の霊圧は本当に規格外のものであった。仮にあの霊圧を発したまま現世へと赴いてしまえば確実に地鳴りが起こる程の影響を及ぼすだろう。

 

それを見据えた元柳斎は茶を飲み干すと改めて千弘へ目を向け話し始めた。

 

「藍染が去った今。お主の実力が公となるのも時間の問題じゃ。なればこそお主を隊士ではなく隊長として迎え入れ、隊士達の士気の底上げ、そして戦力の向上を図るべきじゃと思ってのぅ」

 

「はぁ…」

そう言い元柳斎は細めていた目を開き鋭い眼光と人差し指を向ける。

 

「今日付でお主を空席となった五番隊の隊長に任命しようと思う」

 

「…え?」

 

元柳斎の突然の切り出しに千弘は湯呑みを口に運ぶ手を止めた。そしてゆっくりと湯呑みを下げると確かめるかの様に元柳斎へと目を向ける。

 

「私が隊長ですか?」

 

「うむ」

 

「推薦も一対一の斬り合いも何もかも無しでですか?」

 

「左様」

元柳斎が頷くと千弘は茶を飲み干しすぐに答えを出した。

 

「お断りします」

 

「何故じゃ…?」

 

予想していた答えなのか、元柳斎は取り乱しもせず理由を問うと千弘は湯呑みを置き答えた。

 

「そもそも私には隊長に成る程の器量はありませんし技術も統率力もない。私よりも相応しい方が必ず他にいる筈です。仮に私に隊長と認められる程の力があったとしても統率力が無ければ務まりません。故にお断りします」

 

「…」

千弘の何の迷いなき理由と淡々と答える姿勢に元柳斎は一瞬黙り込むとすぐさま指を向ける。

 

「よいか…?お主の実力は既に零番隊と同等。零番隊に入れないにしろ本来ならば十三番隊の隊長になってもおかしくないのだぞ…!?分かっておるのか!?」

 

元柳斎は何度も何度も。まるで釘を刺すかの様に言い放つ。

【零番隊】それは護廷十三隊とは別の組織であり、尸魂界の王【霊王】の住まう霊王宮にて住居を構える猛者たちの総称だ。一人一人が百万年続く尸魂界の歴史に置いて名を刻んだ者達であり、その戦力はたった数人でありながらも護廷十三隊よりも上だと言われている。

 

「はい…!?」

それに対して千弘は心外なのか目を細めながら首を傾げる。

 

「いい加減にしてください。貴方は私の強さを買い被りすぎです。確かに私は血の滲むような努力をし自慢できる程の剣術を手に入れました。ですが私が隊長?おかしすぎますよ!」

 

「えぇ!?お…お主はワシにも勝ったじゃろ…?」

 

「それは貴方が手加減したからでしょう!油断していた貴方に私が不意打ちをしたに他なりません!!」

 

「えぇぇ!?(油断もしていないし初めから本気だった!!技も何もかも発動する前に倒されたのだぞ…!?此奴どれ程まで謙虚なのじゃ!?)」

 

千弘の圧倒的すぎる謙虚さに元柳斎は全身から力が抜ける程まで驚くと共に引いてしまい、頭の中でこの後、どの様にして会話を続ければ良いのか分からなくなっていった。

故に横で生花を作ろうとしている卯ノ花へと目を向け尋ねる。

 

「どうすれば良いと思うかの…?」

 

「今のままでよろしいかと…」

卯ノ花から小声で尋ねられた彼女は冷静に笑みを浮かべながら耳打ちをする。

 

「総隊長のご意志も確かですが急に彼の様な人が隊長になれば隊も隊で混乱するかと。隊の中では彼の力も知らない者が殆どですからね」

 

そう言い卯乃花は元柳斎から千弘へと目を向けた。

 

「千弘くん。今のままでよろしいのでしたら強要はしません。ですがもし私達が出撃する程の事態となりましたら共に前線で戦ってもらいますよ」

 

そう言われた千弘は頭に手を置き、困り果てながら答えた。

 

「微力な私でよろしければ…」

 

ーーーーーーー

 

それから元柳斎は茶を飲み干すと隊舎から出て行った。それに釣られて千弘も自身の隊舎へと戻ろうとした。

 

だが、それを卯ノ花は止めた。

 

「千弘くん。ここに座りなさい」

 

そう言い卯ノ花は自身の膝下を指差す。

 

「え?」

突然と膝に座ることを命令された千弘は首を傾げながらも卯乃花の膝下に腰を掛けた。すると、卯ノ花の手が腹に回り身体を抱き締められると共に頭を撫でられた。

 

「あの卯ノ花隊長。何をしているのですか?」

 

「見れば分かるでしょう。撫で回しているのですよ」

 

「は…はぁ…」

 

それから千弘は十数分間に渡り卯ノ花に撫でられたらしい。

 

「また来てくださいね。お菓子もご用意しておきますから」

 

「分かりました〜」

 

卯ノ花から解放された千弘はそのまま彼女の部屋を出ると四番隊隊舎の出入り口へと歩いていった。その様子を後ろから見ていた卯ノ花は薄らと不気味な笑みを浮かべる。

 

「(必ず来るのですよ…私を満たした最高の男よ…)」

 

その目は四番隊隊長である母性溢れる優しい目ではなく“血に飢えた獣の様な目”であった。

 

因みに千弘は帰り道にて勇音とも会い彼女からも撫で回された様だ。

 

◇◇◇◇◇◇

 

四番隊隊舎から出た千弘は背伸びをする。入り口の目の前にはネムが待っており千弘を見ると歩いてきた。

何故、彼女がここにいるのかというと、監視の為らしい。彼女にとって監視とは24時間目を離さない&行く時は必ず同行というモノのようだ。

 

「お戻りになられましたね」

 

「えぇ終わりましたよ。では帰りましょうかね」

 

「はい。では…」

 

千弘が答えるとネムは手を彼の脚に通してお姫様抱っこをする。それをされた千弘は複雑な表情を浮かべていた。

因みに四番隊隊舎に来る際もネムにこの様に抱かれながら送られており、見かけた乱菊や吉良からは大笑いされたらしい。最初は赤ん坊をあやす様な抱き方であったが、千弘が必死に懇願した結果、この様な形になったらしい。20センチ以上も身長が離れている為か、ネムが千弘を抱き上げると様になってしまっている。

 

「…抱き心地が良いですね」

 

「複雑なのでやめてください」

 

それからネムに抱き上げられた千弘は彼女と共に十二番隊隊舎へと戻った。ネムに抱えられる中、照りつける太陽が廷内を照らしている光景が目に入ってきており、昨日の騒動があったにも関わらず、いつもの風景と雰囲気で目の前が溢れかえっていた。

 

 

そんな時だった。

 

「…ん?」

 

目の前から誰かが走ってくる姿が見えた。それはオレンジ色の短髪を持ち死神特有の装束を身に纏う一人の少年ともう一人はやや濃いオレンジ色の髪を持った少女であった。

 

それを見た千弘は驚きの声を上げる。なんとその少年は先日、瀞霊廷内を騒がせていた旅禍だった。

 

「ん!?あ…アンタは!?」

 

「おや、いつぞやの旅禍の少年ではありませ…あら?」

 

「すまん!今急いでるからまた今度な!」

 

此度の中心人物であり、尸魂界の恩人と記された少年と少女は自身らの状況にツッコミもせずあっという間に横を通り過ぎて走り去っていった。

 

「彼はまだいたのですね」

 

「そのようですね。そうだ、帰りにアイスでも買って帰りましょうか」

 

旅禍の少年達の名前も聞かずに見送り帰路へとついた二人は軽く談笑しながら廷の道を歩いていった。

 

「では私は小豆バーを要求します」

 

「私が奢りですか…まぁ良いですよ。ネムさんにはいつもお世話になってますから」

 

瀞霊廷に再び平穏な日々が戻ってきたのであった。

 

 

 

だが、それも束の間である。否、寧ろ平穏が去ったと言うべきだろう。藍染が護廷十三隊を去った翌日から尸魂界の中でも化け物の住まいとされる“虚圏”にて多数の強大な“何か”が不穏な動きを起こし始めていた。

 

 




次回で虚圏編へと突入です。

皆さん。想像してみてください。剣八モードと化した卯乃花隊長が襖からコッソリと覗いてくる光景を。ホラーでしかない…
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