超実況パワフルプロ野球VR 「王佐の才」獲得プレイ 作:見切り列車
一応勝ったのは雅ちゃんですが、流石にこの票差でルート分岐というのはあまりに忍びないので……なんとかします。
考えてなかったルートなのでどうなるかはわかりませんがご了承ください。
一票差とはいえ雅ちゃんの勝ちではあるので、気持ちメインになるのかなと思ってます。
「――――お前がこの中じゃ一番マシそうだから組んでやるよ。俺は天川才斗あまかわさいと、お前は?」
「奥居郡司だよ、よろしくね」
これが俺と相棒、奥居郡司との出会いだった。
俺は天才なのだと、ある時からそんな自覚があった。
そして事実として俺は天才だった、少なくともやろうと思ってできないことはなかったからな。
ただそれはある種のつまらなさというのを俺にもたらした。
片っ端から習い事を始めてはつまらなくてすぐ辞めるのを繰り返す俺に付き合ってくれた両親には感謝してる。
そんなある時、偶然テレビで流れていたプロ野球の試合が俺の目に入った。
――――これだ。
そう直感した俺はすぐに他の習い事は辞めて近所のシニアに入りたいと親に頼んだ。
突然のことに両親は困惑していたが今までと雰囲気が違うことを感じ取ってくれたのか、何も言わずにそうしてくれた。
そして俺は、相棒にして親友である「軍師」と出会うことになった。
集められた中で一番マシだと感じた、それ自体は嘘ではなかったが同時にどことなく覇気がないというのも感じていた。
凡人ではないのだろうが、俺と同種でもなさそうだった。
だからこそ俺は当然のように俺のほうが上だと思い込んだのだった。
実際に才能の有無であれば圧勝だったのだろうが、その時の俺はバッティングセンターしか行ったことのない俺とシニアの監督の息子という環境の差をあまりにも甘く見ていた。
今思えば案の定と言わざるを得ないが、キャッチボールという指示を無視して挑んだ1打席勝負で俺は完敗した。
ピッチングマシンと人の投げる生きたボールというのはここまで違うのかと驚かされた覚えがある。
だが一番驚いたのは、愕然とする俺に対し構え直すよう指示してきたあいつの行動だった。
「ほら、構え直して」
「えっ、ちょ、おい!」
そして無理矢理に俺に構えさせ、そうじゃないこうじゃないと俺のフォームをいじり始めた。
最初は抵抗していたが、次第に噛み合っていなかった歯車が少しずつ噛み合うような感覚がし始めた。
大人しくなった俺に気を良くしたのか手早く俺のフォームの修正を終えたあいつは「構えはそのままで、もう一回やろう」と言い放ちマウンドに戻っていく。
――――そして、俺の中の歯車がガチリと噛み合った。
「うわー、すごいなぁ」
捉えた打球は、あまりにもあっさりとスタンドへと突き刺さった。
「……は、ははっ」
すごい、単純にそう思った。
他人に対して賞賛する気持ちが湧いたのは、これが初めてだ。
今にして思えば、この時の俺にはどうせ俺一人でも強くなれるのだという思いがあったし、それ自体が思い上がりだったとは思わない。
だが俺一人でこいつのボールをホームランにしようと思ったらどれだけ時間がかかっただろう。
少なくとも一週間だ、だけどこいつはものの数分で俺をその領域に持っていった。
だからこそ、俺は確信した。
「――――すげー!! お前マジですげーよ!!」
「そうかなぁ、君のほうがすごいと思うけど」
俺はそれを否定しない。
俺のほうがすごいだろうというのは、事実だ。
じゃあこいつはすごくないのか、それは違う。
こいつもすごい、だからこそ俺にはこいつが必要なのだと確信した。
「いーや、お前もすごい。俺がそう決めた! お前は今日から俺の『軍師』だ!」
「? 確かに僕の名前は郡司だけど」
これが俺と相棒である郡司との出会いだった。
それからというものの俺は暇さえあれば相棒に野球について色々と教わり始めた。
ピッチャーについても教えろというと驚いていたようだが。
はっきり言って俺が相棒をスペックで上回るのに時間はかからなかった。
だからこそ、スペックで上回る相手にこれだけ様々なことを教えることのできる相棒の野球というスポーツに対する理解度の深さには舌を巻いた。
相棒をスペックで上回れるやつは探せば見つかるだろう。
だがこの知識やそれを他者に伝える技術というのは、同年代では唯一無二に等しい。
俺はそんなやつを相棒にした恩恵を全力で受けていた。
「才斗、ちょっといいかな」
「おう、どうした?」
「いや、そろそろはっきりさせておこうと思ってね」
ある日の練習終わり、相棒は俺にそう切り出した。
「単刀直入に聞くけど、才斗は
「どこまで……?」
「うん、はっきり言ってこれから先、君以上に才能がある人と一緒にプレイすることがあるとは思えなかったからはっきりさせておきたくて」
「そりゃ当然、プロ目指すに決まってるだろ」
趣味や思い出で終わらせる気など一切ない。
俺は最初から、俺の才能すべてを野球にぶつけるつもりでここに来ていた。
「そっか、じゃあ……僕も覚悟を決めなきゃね」
そう言って相棒は、俺に向かって手を差し出す。
「あの日才斗が僕に言ったように、僕は君を支え導く『軍師』になるよ。だから君は、僕の王様だね」
「……はっ! 今更何を言うかと思えは、俺は最初っからそのつもりだぜ?」
歓喜にうち震える内心をおくびにも出さす、その手を握り返す。
こうして俺は、本当の意味で相棒を手に入れた。
分量少ないですが更新したかったので取り急ぎ。
今週は頑張りたいので応援してください。評価感想待ってます。
追記:朝急いで書いたせいで前書き後書きが誤字だらけだったので修整、あまりにそのまま過ぎたタイトルを微妙に改題