秘書艦の敷波さんの所の諸々   作:刈谷知立

12 / 23
作者的には久しぶりの投稿です。


同い年の敷波さんと(その七)

「ええっと、それで色々考えた結果、なんか悲しくなっちゃったってこと?」

まあ、うん。

その通りなわけだ。

なんだか、言葉にしてみると、

我ながら変な悩み方をしてると思う。

「ねぇ、、、わたしってさ、どうしたら良いと思う?」

まあ、誰かに訊いても、仕方ない事なのかもしれないけどさ。

「えっ?えっと、、、」

やっぱり困るよね、、、

「う、うーんと、そうだね、、、敷波、まず聞いておきたいんだけどさ、敷波はなんでそんなに悲しくなっちゃったの?」

それは、えっと、

「、、、わたしってさ、この鎮守府のこととか、今の日々とかさ、

そういうものをどう思ってるのかなって考えたら、自分でも分かんないなって思って。

それで、じゃあ司令官は、どう思ってるのかなって考えたんだ。

別に、そんなに司令官の事を分かったつもりでいたわけじゃないよ?

でも、思ってたよりも何にも分かんなくってさ。

それで、なんとなく寂しいような気持ちになっちゃってた」

なんとかそこまで言葉になった。

「なるほどね、それでああなってたんだ、、、」

皐月は、何かしら納得がいったみたいだ。

「ねえ敷波、それってどっちかっていうと『恋』っていうより、『愛』ってやつなんじゃないかい?」

「へっ?!」

『恋』ですらなく『愛』って、

「そ、それは、流石に飛躍しすぎだよ」

、、、多分。

「うーん、そうかなー。そんなに的はずれでもないと思うんだけどなぁ、、、うーん。でも、なんていうかさ、上手く言えないんだけど、

夫婦とか幼馴染みたいな、、、そう!パートナーっぽさっていうのはあると思うんだよ!

なんていうか二人ってさ、よく見てて『お互いを大事にしてるなぁ』って感じるんだ」

うーん、、、

夫婦とか幼馴染み、っていうのはともかく、パートナーっていうのはまあ、実際そうだかいうのは、なんかちょっとしっくり来ない。

「あんまり納得いかないかい?」

不思議そうに、そう尋ねられた。

「じゃあ、それを愛って言うかどうかは、今は置いといてさ」

皐月はちょっと落ち着いた口調になって続けた。

「敷波は、とにかく司令官の事が大切なんだと思うよ。現に今、悩んで迷って辛いくらいに」

皐月は泣いてしまうくらいに、とまでは言わなかったけど。

きっとそういうことなんだろう。

「そうだね。怖いくらいに大切だよ」

仲間が大切だ、なんて当たり前のことなんだけど。

それでも、特別に。

「間違ってしまうことが、どうしようもなく嫌なくらいに」

自分でも驚くほどすっと言葉が出てきた。

「そっか。そんなに大切なら、仕方ないね」

うん。大切だから、仕方ない。

「、、、ねえ、敷波。司令官がもし、敷波と一緒にいたいって思ってたらさ」

皐月はそこまでで言葉を切った。

その先の言葉は、

『どうするんだい?』

だったかもしれないし、

『嬉しいかい?』

だったのかもしれない。

でもその顔が、

『それってとっても素敵なことだって思わないかい?』って、笑ってる様にも見えるのは、

きっと、わたしの気のせいなんだろうな。

「ありがと」

「どういたしまして」

じゃ、がんばって、と言うと、皐月はひょいと立ち上がってみんなの方に戻っていった。

 

、、、

 

一人になったわたしは、皐月がしてたみたいに空を眺めてみた。

きれいな青空が広がってる。

「どうしよっか」

なんとなく、そんな言葉が口をついた。

このまま縁側に腰を掛けてるのも落ち着かない気がして、

コップにちょっとだけ残った水を飲みほして、

わたしは二階に上がった。

 

、、、

 

二階に上がってすぐの、ちょっと開けた場所に背を預けて座る。

さて、どうしよっか。

何でなのかはよく分からない。

でもわたしは、

『大切』っていうのに、どうしようもなく納得しちゃってる。

『恋』っていうのはよく分かんないし、

『愛』っていうほど大層なものな気もしない。

吹雪に言ったら呆れられそうだし、

雪風に言ったら、愚痴でも聞いてくれそうだ。

でも、不思議と悪い気はしないな、なんて。

とりとめもなくそんなことを考えていると、

『トントン』って、一階から誰かが上ってくる音がしてきた。

まあ、『誰か』なんて言っても、

きっと司令官なんだなって、

なんとなく分かる。

風の通る二階に涼みに来たのかも知れないし、

もしかしたら、大勢で遊ぶのが久しぶりで、

なんとなく落ち着かないのかもしれない。

ねえ、司令官。

わたしは、君が大切だよ。

それをなんて呼ぶかは、よく分かんないけどさ。

ただ君も、おんなじような気持ちでいてくれたらいいな、なんて、

わたしは心のなかで、君に向かってそう呟いた。

 




また違うのを挟んで続きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。