「ええっと、それで色々考えた結果、なんか悲しくなっちゃったってこと?」
まあ、うん。
その通りなわけだ。
なんだか、言葉にしてみると、
我ながら変な悩み方をしてると思う。
「ねぇ、、、わたしってさ、どうしたら良いと思う?」
まあ、誰かに訊いても、仕方ない事なのかもしれないけどさ。
「えっ?えっと、、、」
やっぱり困るよね、、、
「う、うーんと、そうだね、、、敷波、まず聞いておきたいんだけどさ、敷波はなんでそんなに悲しくなっちゃったの?」
それは、えっと、
「、、、わたしってさ、この鎮守府のこととか、今の日々とかさ、
そういうものをどう思ってるのかなって考えたら、自分でも分かんないなって思って。
それで、じゃあ司令官は、どう思ってるのかなって考えたんだ。
別に、そんなに司令官の事を分かったつもりでいたわけじゃないよ?
でも、思ってたよりも何にも分かんなくってさ。
それで、なんとなく寂しいような気持ちになっちゃってた」
なんとかそこまで言葉になった。
「なるほどね、それでああなってたんだ、、、」
皐月は、何かしら納得がいったみたいだ。
「ねえ敷波、それってどっちかっていうと『恋』っていうより、『愛』ってやつなんじゃないかい?」
「へっ?!」
『恋』ですらなく『愛』って、
「そ、それは、流石に飛躍しすぎだよ」
、、、多分。
「うーん、そうかなー。そんなに的はずれでもないと思うんだけどなぁ、、、うーん。でも、なんていうかさ、上手く言えないんだけど、
夫婦とか幼馴染みたいな、、、そう!パートナーっぽさっていうのはあると思うんだよ!
なんていうか二人ってさ、よく見てて『お互いを大事にしてるなぁ』って感じるんだ」
うーん、、、
夫婦とか幼馴染み、っていうのはともかく、パートナーっていうのはまあ、実際そうだかいうのは、なんかちょっとしっくり来ない。
「あんまり納得いかないかい?」
不思議そうに、そう尋ねられた。
「じゃあ、それを愛って言うかどうかは、今は置いといてさ」
皐月はちょっと落ち着いた口調になって続けた。
「敷波は、とにかく司令官の事が大切なんだと思うよ。現に今、悩んで迷って辛いくらいに」
皐月は泣いてしまうくらいに、とまでは言わなかったけど。
きっとそういうことなんだろう。
「そうだね。怖いくらいに大切だよ」
仲間が大切だ、なんて当たり前のことなんだけど。
それでも、特別に。
「間違ってしまうことが、どうしようもなく嫌なくらいに」
自分でも驚くほどすっと言葉が出てきた。
「そっか。そんなに大切なら、仕方ないね」
うん。大切だから、仕方ない。
「、、、ねえ、敷波。司令官がもし、敷波と一緒にいたいって思ってたらさ」
皐月はそこまでで言葉を切った。
その先の言葉は、
『どうするんだい?』
だったかもしれないし、
『嬉しいかい?』
だったのかもしれない。
でもその顔が、
『それってとっても素敵なことだって思わないかい?』って、笑ってる様にも見えるのは、
きっと、わたしの気のせいなんだろうな。
「ありがと」
「どういたしまして」
じゃ、がんばって、と言うと、皐月はひょいと立ち上がってみんなの方に戻っていった。
、、、
一人になったわたしは、皐月がしてたみたいに空を眺めてみた。
きれいな青空が広がってる。
「どうしよっか」
なんとなく、そんな言葉が口をついた。
このまま縁側に腰を掛けてるのも落ち着かない気がして、
コップにちょっとだけ残った水を飲みほして、
わたしは二階に上がった。
、、、
二階に上がってすぐの、ちょっと開けた場所に背を預けて座る。
さて、どうしよっか。
何でなのかはよく分からない。
でもわたしは、
『大切』っていうのに、どうしようもなく納得しちゃってる。
『恋』っていうのはよく分かんないし、
『愛』っていうほど大層なものな気もしない。
吹雪に言ったら呆れられそうだし、
雪風に言ったら、愚痴でも聞いてくれそうだ。
でも、不思議と悪い気はしないな、なんて。
とりとめもなくそんなことを考えていると、
『トントン』って、一階から誰かが上ってくる音がしてきた。
まあ、『誰か』なんて言っても、
きっと司令官なんだなって、
なんとなく分かる。
風の通る二階に涼みに来たのかも知れないし、
もしかしたら、大勢で遊ぶのが久しぶりで、
なんとなく落ち着かないのかもしれない。
ねえ、司令官。
わたしは、君が大切だよ。
それをなんて呼ぶかは、よく分かんないけどさ。
ただ君も、おんなじような気持ちでいてくれたらいいな、なんて、
わたしは心のなかで、君に向かってそう呟いた。
また違うのを挟んで続きます。