だんだんと寒くなって、冬の足音が聞こえ始めるこの頃。
南方から、別の鎮守府の司令官がやってきた。
「きたっぽーーーーい!!」
元気一杯の、夕立と一緒に。
、、、
鎮守府や泊地なんかの間で直接話し合いがある時は、前もって、司令官は司令官、艦娘は艦娘同士で話す。
そんなルールがある。
今じゃもう形骸化して、提督同士の酒盛りの言い訳に使われる様なルールになっちゃってるけど、
うちの司令官とあっちの司令官は歳や立場が近いせいかとっても仲が良いのと、
それに二人共、このルールが意味を持っていた頃からのつきあいだから、今でもたまに何かの用事で会うっていうときには、司令官とわたしは毎回別行動になる。
「楽しんでこいよー」
「そっちもね」
お互いにそう言い合って。
、、、
「で、夕立は、いつまでわたしの肩にもたれ掛かってるのさ」
「うーん、いつまでもっぽい~?敷波ちゃんの背中、気持ちいいっぽい~」
わたしと夕立は、同じ秘書官って言うのもあって、結構長い付き合いなんだけど、まさか、出会って早々後ろから抱きつかれて、司令官達と別れても、そのままずっと寄り掛かられるとは思わなかった。
「え、えっと、そんなこと言ってないでさ、わたしの部屋にクッキー焼いてあるから、行こうよ」
ためしに、そんなことを言ってみると、夕立は『ばっ』て起き上がった。
「クッキー!!それは素敵なお誘いっぽい!行くしかないっぽい!!敷波ちゃん、早く行きましょ?」
そしてそう言って、わたし達はちょっと笑いあって、
それから、ちょっと早足で、わたしの部屋に向かって歩き出した。
、、、
「で、今回はどんな用事なの?」
二人して、低い机を挟んで、座椅子の上でクッキーを摘まみながら、わたし達は話を始めた。
「んーと、明日皆で話すのは、南方の作戦終了の報告よ。豪州の奪還完了のお知らせっぽい」
南方は、開戦以来の激戦地だ。そして、夕立の司令官が長く総指揮を務めている場所でもある。
「それと、まだ残敵掃討はあるけど、あんまり前線に出ない娘達から段々と再配備があるっぽい。今回はその受け入れの相談でもあるっぽい」
今こそうちは最前線ではないものの、海上護衛や、いざって時の本土防衛の要でもあるから、新人の育成の場としての振り分けがあるってことだろう。
「まあでもそれは、そんなに大した人数でもないっぽい。ここに来るのは、せいぜい2、3人ってところっぽい」
ここが最前線で、他の鎮守府から艦娘が派遣されていた時はまだしも、部屋が余っている今なら全く問題の無い人数だ。
「それのくらいの人数なら問題はないけど、、、」
一体どんなこが来るんだろう?
「そう?それなら良かったっぽい」
夕立はそう言うと、伸ばしていた背を座椅子に預けて、『ぽ~い』と伸びをした。
「仕事の話はこれで終わりっぽい。ていうことで敷波ちゃん、これからはプライベート話をしても良いっぽい?」
それはまあ、
「別に構わないけど」
一体、なんの話があるんだろう?
仕事の話は終わりって言うけど、ここまでの話なら南方の総司令官が東方まで、しかもわざわざ秘書官まで連れて泊まりをしてまで来るようなことじゃない。
「ありがとうっぽい」
そう言うと、夕立は膝を正して、ピンと背筋を伸ばした。
思わずこっちも姿勢を正す。
「この度、私、夕立と、南方総司令鷹司冬嗣は、結婚することとなりました。これからも、変わらぬお付き合いのほど、よろしくお願い申し上げます、ぽい!」
、、、、え?
えっと、
それは、
「おめでとう、ございます?」
人間と艦娘の結婚なんて前例はなかったはずだけど、でも、一応わたし達にも戸籍はあるし、、、うん?
あんまりにも突然のことで、混乱しちゃってるみたいだ。
「ありがとうございますっぽい!!」
それを知ってか知らずか、夕立は花のような笑顔を向けてくる。
えっと、、、
え?