次はもうちょっと早く出せると思います。
これは、まあ、ちょっと前の話。
ただ、なんていうか、
二人で映画を見たっていう、
それだけの話だ。
司令官とわたし達が着任して2週間くらい。
確か、8月の13日だったと思う。
話の切っ掛けが、その日が金曜日だって事だったはずだからさ。
、、、三年前・深夜の執務室 、、、
「ねえ、司令官」
「ん?」
「今日ってさぁ、金曜日だったよね、確か」
「そういえば、、、そっか。今日は13日か」
わたし達はその頃、曜日感覚消滅のちょっとした危機に陥ってた。
休みとか基本無いし。
やることも大して変わんないし。
いや、そうならないために海軍が作ったのが日替わりのご飯の当番と金曜日のカレーなんだけどさ。
まずそもそも、当時の鎮守府には司令官を入れても6人しか居ないかったのと、
何よりみんな、作れるものが多いとか少ないとかいうレベルじゃなくて、
司令官と皐月以外は、カレー以外に作れるものが殆どなかったから、毎日が半ばカレー祭りだったんだよね。
いや、たまにハヤシライスもあったけど。
まぁ、わたしもそれ以外に作れたものなんて片手で足りるぐらいだったから、あんまり他人の事は言えないんだけどね。
「そういえば、映画も暫く見てないなぁ」
「わたしは見たことも無いよ」
わたし達艦娘は、産まれ(?)つき現代の事についも多少の知識はあるんだけど、実際に経験があることっていうのは結構少なかったりする。
「へー、そうなんだ」
「テレビは割と観るんだけどね。色んな所にあるし。でも映画は見たことがある娘の方が少ないんじゃない?」
あ、でも横須賀は鎮守府のすぐ側に映画館があるんだっけ。
「じゃあ、何があって何が無いかは分かんないけど部屋で映画のDVD探してこようかな。良いのがあったらここで一緒に見ようよ。折角だし」
「わたしだけ、良いの?」
当時はまぁ、今ほどっていう訳じゃないけど、それからに比べればまだ出撃もほとんど無い落ち着いた時期で、
夜の見廻りや哨戒の報告を待つまでの間くらいは仕事をしなくても余裕があったし、
交代で寝るっていうような時間もそんなに長くなかったんだ。
まだそんなに偉くもなかったしね、うん。
「僕の好みのしか持ってないけど、それで良ければ。」
「、、、じゃ、お言葉に甘えようかな」
まぁ、執務室にさえ居るのが任務みたいなものだったしね。
お酒を飲むわけでもっていうか、わたしも司令官もまだ16で飲めなかったし。
今も飲める訳じゃないけどさ。
「あ、そうだ。敷波は映画の中身、何か要望ある?」
あのときは今以上に『艦娘』になってから時間が経ってなかったから、あんまり好みみたいなものも無かったんだけど、
「、、、ホラー以外」
いや、まぁ別に嫌いな訳じゃないんだけどね。
、、、うん。
「分かった、ちょっと待ってて」
そういってちょっと笑って、司令官は一旦自分の部屋に戻っていった。
、、、
「お待たせ」
「お茶淹れといたよ」
「ありがと」
司令官が持ってきたのは、ちょっと長めのコメディだった。
「他の皆が帰ってくるまで30分くらいかぁ」
「それが二時間だから、、、まあ、明日にまたげばいっか」
当時は見廻りと哨戒で二人ずつ出撃するだけでいっぱいいっぱいだったから、今の消灯時間を過ぎても全員が起きてた。
だから、その二つが終わって、やっとその日の業務も終了、みたいな雰囲気だったし、
わたし達が交代で寝始めるのもその時間からだった。
「じゃあ、早速だけど観よっか」
「そだね」
そうやって、暇潰しみたいに見始めた映画だったけど、
案外、っていうか結構面白くって、
報告が来るっていう数分前まで、
『面白いね』って、
二人して、声を殺してずっと笑ってた。
、、、
その後は、別に悪いことをしてたわけじゃないんだけど(出撃組は日中は結構時間があるし)、
二人とも何となく後ろめたいような気分になって、
司令官と二人で、皆が報告に来る前にあらかたの痕跡は隠したんだけど、
その日の報告で時雨と雪風が、『そんなことある?』っていうようなことででわたし達が何か見てたって気づいて。
結局その次の日から、寝る時間と起きる時間をちょっとずつずらして、皆でその映画を最初から、それが見終わったらまた別の映画をっていう風に見るのが、ちょっとした日課みたいになったんだ。
まあ、人数が増えてきて時間皆が空いてるっていう時間が少なくなったり、
単純に戦況の変化で忙しくなったりでだんだんまばらになっていって、半年もすればそういうこともほとんど無くなっちゃったんだけどね。
でも、楽しかったな。
皆と映画を見てた日々も、
司令官と二人だったあの日も。