気が付くと日がもうすっかり傾いていた。
いつからか変えなくなっていたバケツの水が、ぬるくて気持ちいい。
さて、
まだ晩ご飯までには多少時間があるとは思うけど。
「この後どうしよっか」
最後にもう一個、短いゲームならできるだろうけど。
そういうと司令官は、
「疲れたし、そろそろやめとこっか」
って言って、『ん〜』って伸びをした。
まあ、
「そうしとこっか」
別に、急ぐ様なことでもないしね。
後片付けを終えて、でもまだ帰るのはもったいなくって。
せっかくだから二人して縁側に座って、
濡れた足を、なんとなくぶらぶら揺らしてる。
なんとなく、心地がいい。
「ねえ、司令官」
ちょっと、そう声をかけてみた。
別に、何か言いたいことがあったわけじゃないけど。
ただ、ちょっと話しがしたかった。
「なんかさ、いいよね。こういうのってさ」
うまくいえないけど。
そう言って、司令官に笑いかけてみる。
そうすると、司令官は、ちょっと驚いた様な顔をして、
それから、
「そうだね」
って言って、司令官も笑った。
そうして、縁側に背中を預けて、
「もしかしたら、明日も暇かもね」
なんて、穏やかな声でそう言った。
「きっと暇だよ」
自信なんてないけどさ、
きっとそうだ。
司令官は仰向けになって、空を見てる。
わたしだけ座ってるのも、なんだか変な気がして、
わたしも縁側に寝っ転がってみる。
赤から紫に変わっていく空に、月が浮かんでた。
いつの間にか、鈴虫が鳴き始めていた。
、、、
「なんかさ、敷波」
そんな風に、しばらく二人で空を眺めていると、司令官が話しかけて来た。
「うまくはいえないんだけどさ、今、こうやってるとさ、なんだか『ようやく終わった』って感じがするんだ」
そう言って、『なんか今更だけとね』って苦笑いした。
「でも、昨日から、仕事がなくなって、本を読んだりして暇潰しして、
そのあとあれだけ暇になってもずっと、なんとなく夢を見てる様な気分だったんだ」
「でもね、」そういうと、司令官は背を起こして、
「こうやって敷波とここに来て、遊んで、寝っ転がって、ようやく『終わった』って、そう思えたんだ。
何が終わったのか、ていうのはうまく言えないし、
なんていうか、こう言うのも変かもしれないけどさ、
でも、」
『ありがとう』
司令官はそう言って、こっちを向いて恥ずかしそうに笑った。
わたしはなんだか恥ずかしくって、
思わず司令官と反対の方に転がって、
なんとか、
「うん」
ってだけ言った。
毎日何回も、お互いに「ありがとう」なんて言ってはいるけど、
言ってることはおんなじでも、こういうやって、改めて言われるのは、やっぱり慣れない。
いつまでも顔の熱が引かないで、そのままおんなじ格好でいると、
司令官は笑いながら、『ごめんね』って言って、
お茶を濁す様に
「じゃあさ、敷波。明日から何しよっか」
って訊いて来た。
きっと司令官も恥ずかしがってる。
そう思うと、なんかちょっと落ち着いた。
でも、うん、そうだね、今日ももうすぐ終わりだ。
明日から何しよっか。
「また、ここに来てもいいね」
そうだね、まだまだゲームは残ってるし。
「でも、あんまりここにいると、きっとみんなに叱られちゃうよ」
港から遠いしさ。
報告の人が大変だよ。
「じゃあ、今度はみんなで来よっか」
司令官が、ちょっとふざけてそう言った。
うーん、どうだろ。
どうしても外せない任務はあるから、
そんなことできるかどうかわかんないけど。
でも、
「そうだね、きっとそれがいいよ」
そうしたら、きっと楽しい。
もう一度仰向けになって空を見てみる。
月の周りに、星が散らばっているのが見えた。
「司令官、帰ろっか」
もうそろそろ晩ご飯もできているはずだ。
「うん、そうだね」
司令官はそう言って立ち上がった。
わたしも、差し出された司令官の手を掴んで立ち上がる。
そうしてわたし達は、
暗くなった帰り道を、鎮守府に向かって歩き出した。
敷波さんと司令官の話はまだまだ書くつもりですけど、
一旦他のキャラの日常もの描きます。