ハリー・ポッター、英国魔法界崩壊RTA ヴォルデモート勝利チャート   作:らっきー(16代目)

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会話はマキマに聞かれているので初投稿です


おまけ4

 トム・リドルの嘆願は、苦労の甲斐無く失敗に終わった。

 リドルが偉業と思っていた、卒業後の行動はダンブルドアに悪感情をもたらすだけだったし、死喰い人と名乗り出した『友人』達の存在も、彼は気に入らなかったらしい。

 

 やはり、あの頃の失敗は痛かった。リドルは回想する。

 スリザリンの血統を証明しようとバジリスクを解き放った時。知識があり、懐柔しやすい相手だろうとスラグホーンにホークラックスについて尋ねた時。

 今となっては、どちらも軽率だったと思わざるを得ない。

 

 ……と、『トム・リドル』であればそこを反省し、次への活かし方を考えただろう。本心を巧妙に隠し、様々な人間を味方につけ、数という単純にして最強の力を手に入れていたかもしれない。

 

 だが、ここに居るのは最早自制心も優れた知性も失い始めている『ヴォルデモート卿』だった。

 自分の望みを拒絶したダンブルドアを憎悪し、ホグワーツへの愛情は裏返った。欲しい玩具が手に入らない子供のように怒り、それを持っている者を羨み、嫉妬の炎を燃やした。

 

 闇の魔術に対する防衛術の教師の座を望んだのは、それが一番生徒に悪意を感染させやすいと考えたからだ。不安を煽り、過激な対抗手段を伝え、潰し合わせ、憎み合わせる。子供のうちに人を信じられないようにして、壊れた大人を作り出す。

 だから望んだ──叶わなかったが。

 

 しかし、果たしてそれだけだったのだろうか。

 純粋に、初めての家と呼べる場所であったホグワーツに居たいという思い。焦がれた少女──もうそんな歳では無いが──と一緒に居たいという願い。そんな願いがあったからこそ、こうも深く憎む事になったのではないか。

 

 真実は分からない。確かなのは、深く、深く、呪うほどに妬んだこと。その職に就くものは全て不幸になればいいと思うほどに。

 

 

 

 ヴォルデモートが今回ホグワーツに来たのは、教師の座に付けて欲しいという交渉のためだけではない。知己の女性を訪ねること、思い出の場所であるホグワーツにとある物を隠すことも含まれている。

 

「やぁ、リリー『先生』」

 

「……からかわないでよ、リドル。あー……今は、ヴォルデモートって名乗ってるんだっけ?」

 

「ああ。まあ、どちらでもいい。好きに呼んでくれ」

 

「……じゃあ、ヴォルデモート、かな。そんなことより、随分と久しぶりだね。手紙ぐらいくれてもよかったのに」

 

 会話をしながらさらさらとボールペン──マグルの使う筆記具。羽ペンと違っていちいちインクに浸す必要が無い──で文字を書く。

 

『会話はダンブルドアに聞かれている』

 

 驚きと嫌悪の表情を一瞬で沈め、当たり障りのない会話を繋げる。

 

「……まあ、色々とあったんだよ。それに、夢を叶えた君にあの頃の僕の姿を見せるのは、恥ずかしかった」

 

『あの爺が? なら、どこか別の場所へ』

 

『必要の部屋?』

 

「……そう。ねえ、少し歩かない? 久しぶりに見たいでしょ、ホグワーツ」

 

「そうだな。……学生だった頃と、変わってるのか?」

 

「うーん……少しは? あんま変わってないよ」

 

 連れ立って、必要の部屋へ。秘密の部屋を除けばホグワーツで最も人の目から隠れることの出来る場所だろう。

 会話の内容が漏れない場所、でも作ってもらおうとリリーは思ったが、それより先にヴォルデモートの方が部屋を作り出していた。

 

 ガラクタが無造作に収められている、雑然とした部屋。どういう部屋なのか尋ねてみれば、物を隠すための部屋、とのことだった。

 

「なんか隠すってこと? わざわざここに?」

 

「ああ。まあ……ここが、一番相応しいと、そう思ったんだ」

 

 何を? と問われヴォルデモートが見せたのは、鷲が象られ、サファイアの嵌め込まれた髪飾り。刻み込まれた文字は『計り知れぬ英知こそ、われらが最大の宝なり!』

 

「え、女物の髪飾りを……? 何? 元カノの……?」

 

「違う! レイブンクローの髪飾りの話、聞いたことぐらい……無さそうだな」

 

 ホグワーツ創始者の遺品、というだけで歴史的価値は計り知れないだろうが、これにはマジックアイテムとしての効果もある。単純明快に、身につけたものの知性を向上させるというもの。プライドさえ許せば自分自身で使っていただろう。

 その辺りを説明してやると、得心がいったというように頷いていた。

 

「ああ、分霊箱?」

 

「……話した覚えはないが」

 

「あれだけ熱心に見てたら流石にわかるよ。……ねえ、何個作ったの?」

 

「これが三個目だ。合計で六個作ろうと思っている」

 

「へえ。験担ぎが好きだねぇ、相変わらず。何にするのかは聞かないでおくよ。予想はつくけど」

 

 隠す、と言っても必要の部屋自体知っているのは自分達二人だけだろうと──リリーはそのうち誰かが見つけるだろうとは思っているが、ヴォルデモートは自分達が特別に見つけられたのだと思っている──部屋に置いただけだ。

 

 

 

「なあ、リリー」

 

「ん?」

 

 別れ際……というより部屋を出る直前。意を決した様子で話しかける。

 

「あと十……いや、五年で純血共を纏めきってみせる。そうしたら。そうしたら……僕も君も、泣かなくていい世界を作って見せる。君が、傷つかない世界を」

 

 その気になれば誰よりも魅力的になれるはずの男が、飾りのない言葉で必死に語っていた。本心からの言葉などいつ以来か。

 

「だから。お別れだ、リリー」

 

「……うん、ばいばい。リドル」

 

 十年ぶりの再会はそうして終わり、一人部屋に残される。

 

「もしかしたら、君と永遠を生きる未来もあったのかもね。リドル」

 

 そんなことを、一人で呟く。

 それは、あり得たかもしれない未来。そして、今となってはあり得ない未来。

 

 泣かなくていい世界など無い。傷つかない世界など作りようが無い。だって、もう手遅れだから。

 信用できるのは死体だけだ。安らげるのは一人で居るときだけだ。

 

 何もかも壊れてしまえばいい。誰も彼も死ねばいい。世界に価値など無いのだから。

 

「だから、頼んだよ。ヴォルデモート。精々憎悪を集めてね」

 

 あのやり方で、上手くいくはずがない。本当に世界を変えたいならテロだとか殺人に頼るべきじゃない。リドルなら、時間をかければ真っ当に世界を変えられただろうに。

 

「……そうならないようにしたのは、私か」

 

 毎年孤児院で過ごすようにしてマグルへの憎悪を煽った。闇の魔法を学ぶことを勧めた。他人を自分の為に犠牲にする狡猾さを教えて、自分を特別な存在だと思うように仕向けた。

 

 精々。踊って、憎み合って、殺し合ってくれ。

 

 全て壊れてしまえ。

 

 

 

 

 

 ノクターン横丁を彷徨くのは、リリー・ウールの数少ない趣味と言えるかもしれない。

 

「ああ、嬢ちゃん。今日は何を買いに?」

 

「んー? まぁ、いつも通り。良いものがないか見に来てるだけだよ」

 

「値段を気にしないなら、良いものが入ったぜ? 外国製の、魔法の目だ。透明マントも見破れるって触れ込みらしい。俺は付けたことが無いから本当かは知らないが」

 

「試さないの?」

 

「義眼だからな。流石に売り物を試すためだけに隻眼になる覚悟はねぇよ」

 

「……そう聞くと不便そうだね。というか、それなら私だって買わないよ。両目揃ってるし」

 

「そうか? 嬢ちゃん、目的のためならそのぐらいしそうだがね」

 

「どんなイメージ……ちなみに、いくらなの?」

 

 提示された値段は、ホグワーツ教師の年収五年分ほど。払えない訳では無いが、使う予定のない物には高すぎる。

 

「……目が駄目になったら買いに来るよ」

 

「期待しておく。どうせこんなもん買うやつ居ないしな」

 

 結局何も買わずにその店を出たが、その目が必要になるのはすぐのことだった。

 

 

 

 魔法使い同士の決闘において、勝利に必要なものとはなにか。

 当たれば殺せる死の呪文? 相手の攻撃を防ぐ盾の呪文? 杖を奪うための武装解除呪文? それとも、最強と謳われるニワトコの杖だろうか。

 

 答えはもっと単純で、誰にでも出来るものである。

 

『ディフィンド 裂けよ!』

 

 意識の外からの不意打ち。それで杖腕を奪えば良い。

 背後から飛んできた呪文が、リリーの右腕を肘から切断した。

 

 激痛と出血を無視して無理矢理左腕で杖を抜こうとしたところで、武装解除に弾き飛ばされた。

 顔も名前も知らない女。恨みを買った覚えは……無いとは言えないが、確信はない。

 

「リリー・ウールだな?」

 

「そうだけど。確信もないのにこんな事したの? 顔と同じくらい頭も悪いんだね。可哀想に」

 

『フリペンド 打て』

 

 痛みなど感じていないかのような悪態には衝撃呪文の返事が返ってきた。

 強かに吹き飛ばされ、血を撒き散らした後、治癒呪文で止血だけはされた。

 

「帝王のことで貴様に聞くことがある」

 

「帝王……? そんな痛々しい名乗りの知り合いは居ないよ」

 

「ヴォルデモート卿だ!」

 

「ヴォルデモート? ……ああ、リドル?」

 

「……その名で呼ぶな。……罰だ。腕と足、残したい方を選べ」

 

「んー、腕かな。両方無くなると食事も苦労しそうだし」

 

 二度目の切断呪文。足首から先に別れを告げる事になった。

 失血死をさせないために、再び止血のための治癒呪文。

 

「貴様、帝王とどういう関係だ?」

 

「……幼馴染みで、親友で、もしかしたらそれ以上かもね。何? そんなこと……聞きたいだけ? 随分と、暇そうで、羨ましいね」

 

 蒼白な顔をして、荒い呼吸で、憎まれ口を叩く。

 

「親友だと言うなら、何故帝王を裏切った?」

 

「は?」

 

「惚けるな。……帝王は、我らを纏め上げ、栄光を齎すお方だ。それが、貴様のような奴に心動かされるなど──」

 

「……何? 嫉妬、してるの? ……ああ、君、リドルに惚れたんだ。よくいる、馬鹿な女みたいに」

 

「その名を呼ぶなと言ったはずだ!」

 

 図星を突かれた動揺と、発言を無視された苛立ちと、嘲弄に対する怒りで。最早思考力を失った。純血にはよくある、病的なまでのプライドの高さ故に。

 呪文を唱える手間すら惜しんで、杖をリリーの眼窩に突き刺した。

 

 だが、期待していたような反応──苦痛の悲鳴の一つも上がらなかった。

 

 代わりに。無言のままに、残った左腕で杖を取り、魔法を──武装解除を放つ。

 

「杖を折っておくぐらいすればよかったのに。やっぱり、頭悪いね。君」

 

「きさ──」

 

『クルーシオ』

 

 立場は一瞬で逆転した。拷問をする方からされる方へ。違いは、襲撃者の方は苦痛に耐えきれそうも無いことか。

 

「拷問なんて、この方が早いだろうに。……ああ。君みたいな、馬鹿には使えないか」

 

 リリーの言葉は悲鳴にかき消され、届いてはいなかった。そうでなくとも、苦痛でそれどころではなかっただろうが。

 

「こうみえても、教師だからね。馬鹿には、ちゃんと補習をしないと」

 

 磔の呪いは解かれたが、返事をする余裕も無いようで答えは無かった。

 

『フィーンド・ファイア』

 

「じゃあ、身体で学んでもらおうか」

 

 蛇を象った炎が襲撃者を包んで、肉も血液も残さずに燃え尽きた。

 

 

 

「うお!? 嬢ちゃん、どうした?」

 

「……悪いんだけど、フルーパウダー使わせてくんない? お金は、払うからさ」

 

 一番近くにある暖炉を考えて、思いついたのは先程まで居た店だった。

 

「……義手と義足も売ってるが、買わないか? ついでに目も」

 

「あは、商魂たくましいね。……目だけ置いといて欲しい、かな。多分、買うから」

 

「毎度あり。フルーパウダーはオマケとして好きに使ってくれ」

 

「助かるよ」

 

 暖炉にフルーパウダーを入れて、ホグワーツ校長室と唱える。緊急ということで流石にアポイント無しでも許してもらえるだろう。

 

 

 

 リリーの姿を見たダンブルドアは、寧ろ彼女が落ち着いてしまうぐらいには慌てていた。

 

「リリー!? その姿は──」

 

「あー……通り魔、ですかね。ちょっと襲われまして」

 

「校医……いや、聖マンゴに──」

 

「それより。先生これ治せません? 最強の杖と最高の魔法使いでしょう?」

 

「……難しいな。死の秘宝とはいえ……切り離された先があれば別だろうが」

 

「……しまったな。もう灰になってるからな……」

 

「時間さえかければ、可能な限り近づけた義手ならつくれるかもしれんが……」

 

「……いえ、それより。先生。十年ぐらい前の話、覚えてますか?」

 

「……賢者の石か?」

 

「話が早くて助かります。アレなら、このぐらい作れるのでは?」

 

 ダンブルドアは賢者の石を使った経験が無い故に即答はできなかったが、恐らくは可能だろう。ニコラス・フラメルの全てを捧げたあのマジックアイテムは、死の秘宝に勝るとも劣らない。

 要は、用途の違いだ。賢者の石は生命の維持に特化している。どのような仕組みかは製造者しか知らないだろうが、寿命を延ばせる物なのだ。肉体を生み出すくらいは出来るだろう。代償として、命の水に依存することにはなるだろうが。

 

「……フラメルの許可が出ているのだ。儂がとやかく言うことではないだろう。ただ、一つ聞かせてくれ」

 

 生きるつもりは無いと言っていた。今更不老不死を求めるとは思えないが、わざわざ石を使ってまで身体を治したいという意欲が出たのは何故か、知りたくなった。単純に不便だからなどかもしれないが。

 

「まあ、不便なのと……死ぬのを避けるつもりはありませんが、生きている限りは全力を尽くすつもりですので」

 

 

 

 殺したい。壊したい。──死にたい。

 

 だが。矛盾したようだが、自分で死ぬつもりはない。それでは意味が無い。

 

 これは、世界と私の勝負だ。

 

 世界を壊すか。どこかで失敗して死ぬか。

 

 勝ちしか無い、価値の無い勝負。

 

 やるのなら、真剣に。

 

 どうせ、無意味な人生だ。




命の水は、飲めば不老不死になる霊薬でしょうけど、流石に賢者の石の効果が金属を純金にするのと合わせて2つだけってことは無いんじゃないですかね。
なので肉体の修復は命の水というより賢者の石の独自設定です。無から有を作るぐらい限定的にやらせてくれ。変身術で質量保存の法則も無視してるし。

イメージとしては賢者の石で作った肉体を命の水を飲んで無理矢理馴染ませてる感じです。なので水を飲むのを止めれば拒絶反応が起きるなり接合部分が弱っていくなりするでしょう。

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今後について

  • 映画版の情報で書いていいよ
  • ちゃんと小説版を元に書いてクレメンス
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