ハリー・ポッター、英国魔法界崩壊RTA ヴォルデモート勝利チャート   作:らっきー(16代目)

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分割して続きは明日なので初投稿です


おまけ12-1

 マグルを虐殺した殺人鬼。親友を裏切った男。アズカバンに閉じ込められても同情の余地はなく、当然の報い以外の感想はありはしない。

 

 シリウス・ブラックについての認識はそのようなものであったし、彼が脱獄したという知らせは英国を恐怖で包むには十分すぎた。

 

 ヴォルデモート卿が死んだと思って──あるいは信じたがって──いても、その部下への恐怖心はまだ残っている。死喰い人達の悪行は今でも記憶に残っているし、それが13人もの命を奪った男となれば猶更だ。

 

 次は誰を殺しに行くのか、そもそも十数年アズカバンに閉じ込められていた男にまともな思考力が残っているのか。何もわからないからこそ恐怖心が増幅されていく。

 

 国中から注目が集まり、魔法省は威信にかけて追う。アニメーガスでなければ逃亡生活は成り立たなかったであろうし、そうであっても相当に悲惨な生活を送ることになっただろう。もっとも、もしそうなっていたとしても、喜ぶ人間の方が多数派であるだろうが。

 

 

 

 

 

 見覚えのある犬が居ると気づいたのは、人の顔を覚えることに長けている彼女にしても僥倖であったと言っていい。アニメーガスを人と動物のどちらとして考えるかは難しいところではあるが。人の顔というよりは犬の顔だから覚えられたのかな、などということを彼女は考えていた。

 

 ともかく、新聞で懐かしい名前を見た彼女──リリー・ウールはある日見かけた黒い大型犬にかつての知り合いのあだ名で……すなわち、パッドフットと呼びかけた。

 強い確信があってそんな呼びかけをしたわけではなかったが効果は覿面。犬らしく勢いをつけて彼女の方へ駆け寄ってきた。

 

「……色々と聞きたいことはあるのだけれど、まずはその汚れた体をどうにかしようか。はっきり言って臭いし。事情によってはその後で殺すかもしれないけど」

 

 何の気負いも無しに放たれた殺すという言葉は、冗談として流すには余りにも感情が籠っていなかった。少しその辺に散歩にでも出かけようか、とでもいうかの如く気負いのないそれは、だからこそ嘘や冗談の類ではないと思わせた。

 

 二人、もしくは一人と一匹が向かったのはホグワーツ。単純に普段からそこで暮らしているというのが一つ、内密にしたい話をするのならホグワーツ以上に守られている場所は無いというのが一つ。

 

 学校に犬を連れてくるというのはどうなのかと言えなくもないが、そもそもホグワーツはネズミをペットとして許可するような学校であることを考えれば驚くには値しない。知能を考えれば犬の方がよっぽどマシであろう。

 

 各教授に割り当てられた研究室について、幾つか簡単な防犯魔法をかけて──ダンブルドアがその気になればこんなものは何の役にも立たないだろうが、やらないよりは良い──ようやくシリウス・ブラックは人の姿に戻った。

 

「さて。それで私はどんな話を聞かせてもらえるのかな? 友達を裏切った言い訳? それとも後悔の言葉?」

 

「……先生、本当にそんなこと思ってるんだったら、とっくに俺のことなんて殺してるでしょう」

 

「まあね。それで? 親友を裏切ってでも成すべきことがあったとでも言うのか……それとも」

 

「ピーターだ! 裏切ったのは俺じゃない!」

 

 激するその様子は、信頼している教師からも疑われているからというよりは、ピーター・ぺティグリューへの憎しみからだろう。もっとも、凶悪犯として疑われている人間のそのような姿を見せられれば、大半の人間は言葉の内容など考える間もなく逃げてしまうだろうが。そういう意味でシリウスが目の前の人物を頼ったのは正解だったと言っていいだろう。

 

「ピーター……ぺティグリューか。彼も君やジェームズ程じゃないにしても優秀だったしね。そのぐらいのことは出来るだろうけれど。それで、私は何を根拠にその言葉を信じたらいいのかな?」

 

「開心術、真実薬、それに……服従の呪文。信じてもらえるためなら何をしてもらっても構いません」

 

 非人道的な手段すらも受け入れる、というその言葉はある種の覚悟を示すものだったのだろうが、しかし何ら効果は発揮しなかった。

 

「確かに私はその全部を使えるけどね。ヴォルデモートがその気になって記憶をいじっていたら、そして君自身にその自覚すらなかったとしたら。私には……下手したらダンブルドアでも、確実に見抜けるとは言えないかな」

 

「そんな……先生も俺を信じてはくれないんですか?」

 

「君とピーターのどちらが裏切りそうかと言われればそりゃピーターだとは思うけどね。生憎、主観だけで信じられるほど純粋じゃないし、それを周りに信用してもらえるほどの名声もないんだ」

 

 前者に関してはともかく、後者に関しては真実とも言い難い。彼女の発言力を超える人物など精々がスラグホーンぐらいのものだろう。

 

「だったら──」

 

「だから証拠を揃えようか。君とピーターの記憶を見比べて矛盾が無ければ弄られてない証明にもなるだろうし、真犯人を捕まえたってことで君の社会復帰も簡単になるだろう。……もっとも、ピーターの居場所に心当たりがあるならだけど」

 

「それならあります! ……先生、日刊預言者新聞は?」

 

「購読してるよ。マグル式の掃除をしたくなった時に便利なんだ」

 

「掃除……? ともかく、最近の……これです!」

 

 そう言ってシリウスが指さしたのは、とある家族がガリオンくじを当てて旅行に行ったというインタビュー記事。より正確に言うのならその記事に載っている家族写真の1匹のネズミ。

 

「そういえばピーターもネズミだっけ。私には流石にこの写真だけで区別はつけられないけど……」

 

 シリウスが示した根拠である指先の欠け。事ここに至って、偶然同じ怪我をしているだけのネズミだと断言することは流石に出来そうにもない。

 

「……ウィーズリーのペットか。どうにかして捕まえてみれば確かめられも……いや、もっと早い方法があるか。とりあえず久しぶりにあの地図を使うことになりそうだね」

 

 忍びの地図。ホグワーツにあるあらゆる隠し通路を記載し、どこに誰がいるのかを自動で表示してくれる魔法道具。とあるイタズラ4人組といくつかの手助けをした1人の教師によって作られたそれからは、アニメーガスやポリジュース薬ですらも隠し通せない。

 

「とりあえずシリウス。余計なことをせずに私が確信を持てるまで大人しくしていられる? 約束できるのならピーターと君、2人を並べて真実を知る協力をすると誓うのだけど」

 

 嫌だというはずもない。脱獄囚であるシリウスには元より他に頼れる相手もないないのだ。居場所と協力者が同時に手に入るなど考えうる最上級の結果だろう。

 

 だが、ついでと言わんばかりに続いた言葉はあまりにもシリウスの予想に無い言葉だった。

 

「そうそう、そういえば君に会えるとは思えなかったから諦めてたんだけど……レギュラスのこと、覚えてるかい?」

 

 そう言ってシリウスに見せられたのは1枚の便箋。闇の帝王への反抗が記されているそれは、紛れもなく彼の弟の筆跡だった。

 

「これは……紛れもなく弟の……」

 

 驚愕、といつた表情でそれを読み進める彼の顔は、どこか後悔しているようでもあり。

 

「レギュラス……馬鹿野郎が……」

 

 そんな言葉で締めくくられた時には涙を浮かべてすらいた。

 

「……どうだろうシリウス。分霊箱に心当たりはないかな。もしかしたら残骸になっているかもしれないし、壊されずにそのままかもしれないのだけど」

 

「分かりません……分かりませんが、もしかしたら俺の家にあるのかも……クリーチャーは色々な物を勝手に自分の所に持ち帰るような奴ですし、俺自身、何があるのか把握しようなんて思いませんでしたから」

 

「じゃあ取り引きをしようシリウス。私はピーターを君の隣に並べるよう努力をする。代わりに君の家に案内して……いや、君の屋敷しもべ妖精に心当たりを聞いてみてくれないかな?」

 

 否と答えるはずもない。そうと決まればと、2人が姿現しでブラック家の屋敷に向かうのは、それからすぐの事だった。

 

 

 

 ブラック家の屋敷の惨状は酷いものである。

 一家で闇の陣営につき、残った1人もつい最近までアズカバンにおり、屋敷しもべ妖精も老いて充分な働きは出来ない、ともなれば仕方の無いことではあるのだが、この有様もシリウスが屋敷に帰りたがらない理由の一つでもある。それ以上に、脱獄囚の身分であろうとあんな家に頼るのはという矜恃の問題があるのだが。

 

 ともかくとして、レギュラス・ブラックの遺品があるのならばここであろうと、そんな予測の元にやってきた2人を迎えたのは案の定というべきか年老いた屋敷しもべ妖精であった。

 

「血を裏切るものが帰ってきた……しかも女連れで……クリーチャーの知らない女だ……」

 

「黙れ、お前と無駄話をしに来たわけじゃない。おいクリーチャー、このロケットに似た物に心当たりは無いか? 持っているのならば今すぐ差し出せ」

 

 たとえそれがどんなに受け入れ難いものであっても、屋敷しもべ妖精は主人の命令には逆らえない。パチン、と音が2度した時には2人が持ってきたロケットとよく似たロケットを差し出していた。大きな違いはSの文字が刻まれていることか。

 

「先生、これが……?」

 

「おそらくは。調べてみないと分からないけどね。まあそれは君の問題が片付いてからにしようか。それじゃ帰る……前に。クリーチャー」

 

 リリー・ウールがクリーチャーに差し出したのはSの字が付いていない方のロケット。

 

「レギュラス・ブラックの遺品だ。私が持つのは相応しくないし、シリウスも同じようなものだろう。だからこれは、きっと君が持つのが1番いい」

 

 2人からすれば要らない物を押し付けただけとも言えるその行為ではあったが、レギュラスという主人を慕っていたクリーチャーにとっては、恩を感じるには充分な行為であった。

 

「帰ろうかシリウス。……今年も面倒なことになりそうだなぁ。ピーター、さっさと見つかればいいんだけど」

 

 

今後について

  • 映画版の情報で書いていいよ
  • ちゃんと小説版を元に書いてクレメンス
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