ハリー・ポッター、英国魔法界崩壊RTA ヴォルデモート勝利チャート   作:らっきー(16代目)

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ホグワーツの性教育ってどうなってるんだろう……って悩んでしまったので初投稿です


おまけ2(2年生、3年生)

 一年の歳月というのは、大人にとっては短いものでも子供にとっては大きなものだ。無口で他人に無関心な生徒が、時折ささやかな笑顔を見せるようになるくらいには。

 

 二ヶ月ぶりにホグワーツに来たリリー・ウールは、少しばかり浮かない顔をしていた……と言っても元来の無表情故か、殆どの人間は気づいていなかったが。

 

 察した数少ないうちの一人であるホラス・スラグホーンとしては、無視するわけにもいかなかった。彼女が仮に普通の生徒だったとしても、この時期……長期休暇後の学校の始まりというのは、色々と不安定になりやすい時期であると経験から学んでいた。

 

「いえ、その……不気味な、よく分からないものを見まして」

 

 どうかしたのかと尋ねてみれば、返されたのはそんな答え。詳しく話すよう促す。呪いのかかったマジックアイテムに触れるような機会も無いだろうが、不気味なもの、というのが気にかかった。血みどろ男爵の事であれば笑い話で終わるのだが。

 

 信じてもらえないかもしれませんが、という前置きで話された内容は、幸いにして心当たりのあるものだった。不気味な姿で、見える者と見えない者がいる生き物。

 

「ああ……それはセストラルだ。不吉なものとされてはいるが、人を襲ったりすることは無いし、別に呪いをかけてくるわけでもない。見た目は確かに衝撃的だがね。と言っても見える人にとっては、の話だが」

 

 意識して明るめの声で話しているスラグホーンだが、内心には複雑なものがあった。

 

「せすとらる……こちらの世界の生き物はさすがにまだよくわかりませんね……それで、先生。見える人にとって、というのは?」

 

「……セストラルが見えるのは、『死』を見たことのある者だけだ。不吉とされているのもそこからでね。君の歳で見えるというのは珍しいんだ」

 

「……みんな平然としていたのは、産まれの差とかじゃなくてそもそも見えなかったから、ということですか。少しだけ安心しました」

 

 どうせ。ここで答えなくてもセストラルという名前を知った時点でそのうち辿り着く事実だろう。下手に隠したところでほんの少し偽善に浸れるだけで何の益も無い。

 孤児院出身と聞いたぐらいで、彼女の過去を知っているわけでは無いが。あまり気分のいいものでは無さそうだ。こんな形で知りたいとは思わなかったが。

 

「先生? どうし──ああ。……気にしないで欲しい、と言っても無理でしょうけど。別に私はそのことで思い悩んだりはしてないので、大丈夫ですよ。確かに思い出したくはないですけど」

 

 それは、『死』を思い出したい人間などそうはいないだろう。彼女の表情の硬さや無感動な様子の根源はその辺りに由来するのだろうか。

 

 先生のお陰で悩みが解決しました。と言ってほんのわずかな笑顔を浮かべている彼女が、スラグホーンにはどうしようもなく痛々しく思えた。

 

 

 

 

 

 

 それから、一年の歳月が流れた。

 三年生の特徴としてまず、選択科目が始まることが挙げられる。

 自己の興味で──つまりは面白そうと思った──教科を選ぶ学生が多いが、きっちりと教育を受けている純血の子供などの一部は将来を見据えて科目を選んでいる。

 

「リリー! 君マグル学なんか選んだのか!?」

 

 談話室に、トム・リドルの怒りと驚きと呆れのブレンドされた声が響く。周りからの注目を集めてしまった事に気がついて、続きは少し声が抑えられた。

 

「どういうつもりだ? 今更学ぶ事など何も無いだろう。それとも、あの世界に未練でもあるのか?」

 

 マグルへの嫌悪感を隠そうともしないその態度は、スリザリンにおいてはむしろ当然とも言える物。尤も、リリー・ウールにとってはどうでもいいことだが。

 

「未練? 無いけど」

 

「だったら何故!」

 

「え、楽そうだったから。なにも勉強しなくていいだろうし。その分他のことしようかなって」

 

 だからこそ、と言うべきか。返ってきたのはそんな気の抜けるような答え。思い悩んでいたことが馬鹿らしくなるほどの。

 

「……もういい。そういえば君はそういう奴だった」

 

 今度は呆れだけが籠もったそんな言葉。リリーはしばらくの間、よく分かっていないというような顔をしていたが、何かに気がついたのか、ほんの僅かに口角を持ち上げた。

 

「もしかして、一緒が良かった?」

 

「な──!」

 

「言ってくれればよかったのに。リドル、結構寂しがり屋だもんね」

 

 リドルの返事は、無言でその場を離れることだった。怒りからか、恥ずかしさからかは、本人だけが知ることだろう。

 それを黙って見送ったリリーの方が、何を考えているのか。してやったりと思っているのか、離れていくリドルを引き止めたいと思っているのか、それとも何も感じていないのか。それは誰にも分からない。

 

 本人にさえ。

 

 

 

 

 

 科目、闇の魔術に対する防衛術。細目、魔法生物に対する対処法。

 その特性上、座学だけではなく実技も行う。勿論危険性の低い相手に限ってではあるが。

 今回行うのはまね妖怪ボガートへの対処。

 

「では、ボガートの特性を答えられる者は?」

 

 何人かの手が上がり、指名された者が答える。

 簡単に言えば、対峙した者にとって『一番怖いもの』に変化して恐怖を与える魔法生物。物理的な危険性はないが、精神的なダメージはある。ただし、子供であれば可愛げのある範囲で収まることがほとんどだ。

 

 対処方法としては、一人で立ち向かわないこと。個々人の一番怖いものに変身するため、複数で挑めば何に変身するべきか分からず有利となる。

 場合によっては『一番怖いもの』同士を中途半端に混ぜた馬鹿馬鹿しい姿になることもある。

 

 退治の呪文は『リディクラス』

 コツは恐怖心を拭って、どうしたら怖くなくなるかをイメージしておくこと。

 

 実際に実技に移って、予定通り順調に進んでいた。

 ボガートが変身するのは蜘蛛やネズミ、架空のモンスター。とある生徒の前で、血みどろ男爵に化けた時は笑いも起きた。

 

 そんな中で注目、ある意味では期待されている二人がいる。トム・リドルにリリー・ウール。

 リドルは、あの完璧超人──リリーとやり取りしているときを除いて──が怖いものを見たらどんな反応をするのだろうかという好奇心。涼しい顔で退治するだろうと思っているものが半分に、リリーに怒られているところでも出るのではないかと思っているものが三割。残り二割は予想を諦めた者達。

 

 リリーは完全に予想不能なものとして期待されている。もしかしたらボガートが何にも変身しないのではないかと、少数だがそうとまで考える者も居た。

 

 一人ずつ、思い思いのやり方で『ばかばかしい』姿にボガートを変えていく中、いよいよリドルの番が回ってきた。

 

 リドルが予想していたのは、自分の死体への変化だ。ボガートの変身とはいえ死んだ自分などという無様なものを周りに見せるのは癪ではあったが、鬱憤ばらしも兼ねて精々『ばかばかしく』退治してやろうと考えていた。

 

 ボガートが倒れた人間に変化した時までは、予想通りだと平静を保っていられた。

 それをよく見た時……見てしまった時。考えていたことなど全て吹き飛んだ。

 

 色素の薄い髪、あまり外に出ようとしない故の白い肌。美しいと評せたはずの物は赤黒い液体に染まって台無しになっていた。

 腕と足はありえない方向にねじ曲がり、うつ伏せになった腹部と床に、はみ出た小腸が潰されている。いつも殆ど動かない表情筋は、苦痛を可能な限り表現し二度と仕事をすることは無くなっていた。

 少なくとも、子供に見せて良いものではないだろう。それが見知った同級生のものであればなおさらに。

 

 リドルがなんとか絞り出した呪文は、最低限の効力だけは発揮した。と言っても、血が拭い取られた程度の変化だが。

 しかしすぐにじわじわと血が滲み出し始め──

 

 代わりにリリーが前に出たことで、ボガートは姿を変えた。

 

 全裸の男というそれはそれで見せてはいけないようなものではあったが、先程に比べればまだ『ばかばかしい』ものだろう。それを一番怖いと思っている本人にとっては話が違うだろうが。

 

 リディクラス。の呟きによってボガートは灰になり、実技は終わった。実は順番の回ってきていない者も居たが、誰もそんな事を言い出そうとはしなかった。

 

 

 

 例年であれば、自分がいかにして『一番怖いもの』を退治したかで盛り上がるはずの授業後の時間は、葬式もかくやという雰囲気であった。クラスで最も優秀な人物が塞ぎ込んでいて、誰も話しかけられなかったというのも大きいだろう。

 

「……リドル」

 

 リリーが話しかけても、無言のまま。

 それに腹を立てた……かは表情からは読み取れないが、ともかく好きにさせてもらうことにした。

 くっつくと表現するには強く、抱き締めると表現するには遠慮がちに。お互いの体温を感じられるように。

 

「大丈夫だよ、リドル。私は生きてる。君を一人にはしないよ」

 

「……本当か?」

 

「うん、約束」

 

 相も変わらぬ少ない言葉だが、きっと彼らにはそれで充分なのだろう。

 少なくとも、リドルは平静を取り戻したようだ。そのせいで距離感を恥ずかしがったという笑い話のような一幕があったが。

 

「……そういえば、リリーのボガートは誰だったんだ? あんな人を見た覚えは無いんだが……」

 

 彼女が孤児院に来てからはほぼずっと一緒に居る。それで見覚えがないということはもっと昔に会った相手なのだろか。

 

「ん? ああ。お父さんだよ。生きてた頃の」

 

 親が怖い、なんて普通の子供のようなことを言うんだな、とリドルは思った。

『そういうこと』への知識があれば察せるものもあっただろうが、幸か不幸か、産まれた時から孤児院で育ち、同級生からも一歩引かれた立ち位置のリドルにそんな話題への知識があるはずも無い。

 すぐにその話題は終わり、いつも通りの二人に戻った。

 

 

 

 余談だが。授業の報告を聞いたスラグホーンは頭を抱え、これからどう接するか、どこまでこの情報を共有するべきか深く悩むこととなった。

 彼女に……ひいては彼女達に甘いと言われるようになったのはこの頃からだ。

 

 尤も、彼の人材収集家としての一面は誰もが知るところであったから、優秀な生徒に甘い事に特に違和感を持たれはしなかったが。

 

 

 

 

 

 

 




日間4位ありがとナス!
お気に入りと感想と高評価も宜しくな!(ホモは欲張り)

感想返信は次話投稿を優先してるので遅れます

今後について

  • 映画版の情報で書いていいよ
  • ちゃんと小説版を元に書いてクレメンス
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