ハリー・ポッター、英国魔法界崩壊RTA ヴォルデモート勝利チャート   作:らっきー(16代目)

8 / 33
毎日投稿が途切れそうなので初投稿です


おまけ3(5年生)

 その日、ホグワーツは葬式のような雰囲気に包まれていた。……いや、事実として死人が出ている以上、ような、という言葉は不要かもしれない。

 被害者はレイブンクローの女子生徒一人。外傷は無く、死んでいる事以外の異常も無い。まるで、死の呪文を受けたかのような死体だった。

 

 これが授業中の事故だとか、イジメを苦にした自殺だとかだったらこうはならなかっただろう。その授業の教師、寮監が責任を取らされて、それで終わる話だ。ホグワーツの長い歴史の中で、死者が皆無だった訳では無い。

 

 今回の問題は、責任者が不明確なこと。だからこそ内々で処理しきることも出来ず、魔法省の介入を拒否しきれなかった。

 生徒の安全を守るために、最低でも原因を突き止めるまでの休校。長ければどれほどになるか分からない。

 

 下級生は単純に事件に怯えていられたが、そうでない者達もいる。

 例えば、魔法省での出世を狙う者にとっては、教育の遅れはキャリアに致命的な傷をつけることになりかねない。

 家で魔法の使えないマグル出身の上級生は、ふくろう・イモリ試験の際に純血の同期と差がつく事を恐れている。

 

 そして家が無い二人にとっては、ホグワーツの閉鎖は耐え難い事だった。

 夏休み休暇の間を孤児院で過ごすだけでも大変な苦痛だ。それに耐えられるのはその時間を終えればまたホグワーツに帰れるから。

 

 終わりの見えない時間を、苦痛に苛まれて過ごすなど耐えられるものでは無い。トム・リドルは精神的に追い詰められて──原因が自分自身にある、という理由がそこに含まれていたのかは分からない──ホグワーツを閉鎖しないでくれと校長に直談判をしていた。

 無論、そんな要求が通るとは思っていない。真の目的は、犯人さえ──或いは原因さえ──分かればホグワーツの閉鎖は行わないという言質を取ること。そして、それは容易く果たされた。

 

 リドルがこの時点で考えていたのは、服従の呪文を使って適当な生徒──死の呪文が使えてもおかしくない純血の最上級生が望ましい──に自白をさせ、犯人に仕立て上げるというもの。

 

 率直に言って、穴だらけの作戦だ。

 例えば。服従の呪文は命令通りのことをさせられるが、逆に言えばそれ以外は何も出来ない。自白させたところで、動機など突っ込まれたことを聞かれればすぐに違和感が露呈するだろう。ホグワーツの一生徒が殺人を行うことに違和感のないようなストーリーを考えるには、あまりにも時間が足りていない。これが殺人趣味の人間や極度の差別主義者なら話は別だろうが。

 

 或いは。呪文の効力が切れる、誰かに解かれる可能性を考慮していない。服従の呪文は別に、リドルが考え出した呪文というわけでもないのだ。見抜く方法、解除する方法が魔法省に把握されていないはずがない。

 

 リドルに、これが通せると確信があったわけではない。それなのに、決して知性に劣るはずもない彼がこのような手段をとろうとしたのは、ホグワーツ閉鎖に耐えられないというだけでなく、初めての殺人という行為に精神が悲鳴を上げていたからだろう。

 望んだことであっても、罪の意識に襲われないわけではない。人を殺すことの意味を本当に理解していたわけではないのだから。

 

 その無謀な考えを実行に移さずに済んだのは、その思案を吹き飛ばすような衝撃を受けたから。

 バジリスクは元気? なんて当たり前のような顔で問いかけられるのは、心臓に悪いなんて言葉では言い表せない。

 

「な……どこで、知った?」

 

「あ、やっぱりそうだったんだ。カマかけだったんだけど」

 

 発言者がリリー・ウールでなければ、即座に口封じを考えていただろう。

 

「蛇になってうろついてると、ヤバイ声が聞こえるからさ。あとゴーストから死んだときのこと聞いて、これかなってさ」

 

「ゴースト……? 死んだアイツのか?」

 

「うん。……ああ、大丈夫。本人も黄色い目としか覚えてなかったよ。君がやったとはバレてない」

 

「そうか……ならいい」

 

「事故だったとかは言わないんだね。いや、どっちでもいいんだけどさ」

 

 また失言をした、と彼女の反応があってからリドルは気がついた。バジリスクの暴走とでも言っておけばよかったものを。

 

「で、どう収める気? 君はホグワーツ閉鎖なんて耐えられないでしょう? 私もだけど」

 

 リドルが考えていた案を話してみると、彼女は少し考える様子を見せた後に、少し違う話をし始めた。

 

「グリフィンドールにさ。やたら身体のデカイ後輩が居るの、知ってる?」

 

「ハグリッドか? アイツが……今、関係あるのか?」

 

「彼、ベッドで人狼の子供育てたり、森まで行ってトロールとはしゃいでたり……知ってる?」

 

 化け物が好きだとか、その程度の噂は聞いていたが、そんな具体的な話は知らなかったから首を横に振った。彼女としてはどちらでも構わなかったようで、話を続けていく。

 

「まだ……多分、ダンブルドアも知らないことだけど。彼、アクロマンチュラを飼い出したらしい」

 

 アクロマンチュラ。魔法省による危険度分類の中で最上級であるxxxxx──魔法使い殺しであり、訓練も、飼いならすこともできないという分類──に含まれる生き物。分かりやすく言えば、バジリスクと同程度の危険度である。

 

「なんだと? だがそれが何の関係が……いや、そういうことか!」

 

「ん。人より、怪物のほうが罪を被るには相応しいでしょ。反論も出来ないし」

 

 結局、リドルは彼女の提案に飛びついた。

 何日かの張り込みでハグリッドがアクロマンチュラを育てている場所を見つけ出し、ハグリッドがコソコソと来たタイミングを見計らって断罪を行う。

 

 ともかく人を襲うであろう生き物の死骸を見せれば。死んだ女の保護者も、理事会も、校長も、誰もが納得するだろうと考えて。

 いつの間にか、人を殺した罪悪感は消えていた。目の前の劣等生に罪を被せることにも、なんら感傷を覚えなかった。

 

 魂が、砕ける音がした。

 

 

 

 結果だけを見れば、リリーの……リドルの行動は成功したと言っていい。生徒の死に対して、危険度最大である生物の存在というのは、あまりにも明確で分かりやすい、実に便利な存在だった。

 やっていないと主張するのは本人……ハグリッドと、アルバス・ダンブルドアだけだった。

 

 だが違法であるアクロマンチュラの飼育を行っていたような──それ以前にも法律をいくつか破っていたような──人間の主張が信頼されるはずもなく、生徒の死の責任というババを引かされたのはハグリッドで終わった。

 ダンブルドアが居なければ、アズカバン──魔法界の監獄──行きは免れなかったであろう。

 

 アクロマンチュラによる死体にしては綺麗すぎるというダンブルドアの主張は正しいものではあったが、彼ら二人以外、誰も真実など求めてはいなかった。責任を押し付けられる所を探していただけなのだから。

 それでもハグリッドが退学という処分で収まったのは、ダンブルドアの影響力の大きさを示すものだろう。ダンブルドアにへそを曲げられては、これで解決しなかった時に対処することが難しくなるという保険のような意味合いもあったかもしれない。

 

 この事件の顛末として。

 トム・リドルは学校功労賞を授与されることになった。ホグワーツの安全を守った英雄として。それは、彼の自尊心を大いに満たしたことは間違いないだろう。

 

 代償として、ダンブルドアの監視の目が光ることになった。バジリスクの事をつかんでいた訳では無いが、冤罪を着せるような人間……それも、能力不足故などとはありえない人物。疑いの目を向けるのは当然だろう。

 

 彼は、少なくとも在学中はバジリスクと接触することを諦めると決めた。

 殺人のついでに実行しようと考えついた呪文──ホークラックス。魂を封じた物に記憶を混ぜ、いつかの機会に備えることにした。

 誰かが、彼の意志を引き継げるように。或いは彼の記憶に引き継がせるために。

 

 

 

 マグルを汚らわしいと思うようになった。

 自分の父親が……恐らく自分の母を捨てたであろう男がマグルであったから。自分の半身と言えるような相手に、消えない傷を刻み込んだ男がマグルだったから。

 どちらが優れているのかもわからないような奴らに、身の程を教えてやりたいと思う。

 

 ……そして、半分とはいえ自分にそんな汚らわしい血が流れていることも我慢できなかった。リドルに自覚はないが、マグル生まれを蔑み、人とも思わなくなった原因はここだろう。

 本当は。魔法界の血だけで構成されている純血でありたかったと思っている彼は、マグル生まれを見下すことでなんとか精神を保っていた。混血であることから目を逸らせた。彼女を犯した生き物と同じ血が入っていると意識しなくて済んだ。

 

 今回彼がマグル生まれを殺した理由は。その意志を引き継がせたいのは。そんなちっぽけなくだらない理由だった。

 

 

 

 

 

 少女は嗤う。

 誰一人、自分まで辿り着くことは無かった。それどころか。リドルも冤罪をかけたことについて、半分以上は自分の意志でやったことだと思っているだろう。唆したのも道を示したのも少女の方であるのに。

 

 それにしても。魔法という、簡単に結果を手に入れられるものがあるせいか。魔法族というのは馬鹿ばかりだ。過程を考えようともしない。それとも、長い村社会で特権階級に溺れた間抜け共が地位ばかり高くなっているせいか。都合の悪いことから目を背ければ、今日と同じ明日が来ると思っているらしい。ここでバジリスクがもう一度人を殺せば、今度は冤罪で退学処分にしたという罪まで加わるというのに。

 

 それはそれで見ものではあるのだろうが、流石に人生と引き換えにするには細やかすぎる。

 

 魔法界に来て、五年目。少女が一番興味を持ったのは、トム・リドルでもアルバス・ダンブルドアでもなく、ゲラート・グリンデルバルドだった。より正確に言うなら、彼のマグルとの闘争。

 

 魔法使いによる、マグルの支配。優れた者が支配するべきだというグリンデルバルドの思想に感化されたわけではない。そのようなものに少女は興味を示さない。

 彼女が興味を示したのは、その過程の方だ。すなわち、マグルと魔法族の戦争。

 

 戦争が起きれば、人が大勢死ぬ。それこそが望むところ。

 私から尊厳を奪った(マグル)も、助けてくれなかった(魔法使い)も。みんな死ねばいい。

 

 私自身も。

 




リドルが石化&マートル殺害をしたくせにホグワーツ閉鎖を嫌がるっていう原作に疑問が……
それやったらそうなるってぐらいリドルなら分かるやろ……それともバジリスク君にテンション上がっちゃってたのかな……じゃあしょうがないか……


評価300人ありがとナス!

今後について

  • 映画版の情報で書いていいよ
  • ちゃんと小説版を元に書いてクレメンス
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。