覚えてないのはあなただけ   作:ピーナッツバター焼き

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今回は七駆視点のお話。
でも話が被るから潮視点の話はなし。すみません潮と潮ファンの方。
別の機会にしっかりやるのでお待ちを。


第1話 奇妙の連続(裏)

《漣side》

 前世の記憶がある。そんな話をすればよくて失笑悪くてドン引きでしょう。ってあんま変わってないね、コレ。

 

 

 そして漣にはこんなあり得ないでしょ事例が自分と姉妹で4つもありまして。その記憶によれば、漣達は艦娘という装備を纏った存在みたいで。なんか深海棲艦とかいう黒色の化け物と戦ってた……というモノ。

 

 そんな前世問題ありありな4姉妹……上からおぼろん(朧)、ぼのぼの(曙)、漣、しおっち(潮)は同じ鎮守府の所属の4人だった。この事実から提督含めた鎮守府の皆もこの世界にいるのかな~って考えて早10年と余年。

 

 うちの鎮守府の所属メンバーが少ないせいだろうけど……誰にも出会わず…なんの成果も得られませんでしたっていうね。

 

 もうこんなんだから他の皆に会うことは正直諦めてたんだけど……だから今日起こったことが夢みたいで。

 

 パパの仕事の都合で引っ越した影響で、中学3年生というラストスパートで転校生という心労マジやばしって感じ。これから頑張らなくちゃーなんて言い合いながら同じ中学に進学したしおっちと下校してた時だった。

 

 

 人通りの希薄な道で信号待ちをしている自転車に体重をかけている制服姿の黒色短髪の男の子がいた。

 

「あ、まっ漣ちゃん?!」

 

 その姿を見た瞬間思わず駆け出しちゃって、しおっちの制止の声も聞こえなくて、昔みたいに元気に話しかけた。

 

「お久しぶりです……ご主人様!」

 

 人違いかもなんて思いはなかった。だって漣があなたを間違えるはずないもん。

 

 だからこれからの不安なんて消し飛んじゃうくらいの幸せで、渾身の笑顔で言ったのに……振り返ったご主人様はぽかんって顔しちゃってて。

 

 そのとき理解はしなくても直感はしちゃたよね。やらかした!って。初めて会ったときより若いはずなのにそこまで変わってないなぁなんて考えは打ち消されちゃいましたよ。

 

 後ろから追いかけてきたしおっちは一連のことから予想して、ご主人様の記憶がないのでは?と漣に諭してきた。

 

 ……よく考えたらそれが普通だよねー。漣達みたいな人ばっかだったら社会がやばいよねー

 

 その場はしおっちが収めてくれたんだけど、ご主人様は一難去ったぁ、みたいな表情してて……なんか、凄くグッときてよね。何も見たくねえって感じだよ。

 

 まぁでも……逃げられないよ……あなたの初期艦、漣はしつこいからねっ!!

 

 なんとしてでも提督と笑い合える未来を実現しちゃうよ!


《朧side》

 

「春野くんは部活とか入ってるんですか?」

「ん?あぁ……釣り同好会」

「へぇ、面白そうですね」 

 

 春野くん……いや、提督は眠たげな目を擦りながら軽く笑う。

 

 今はホームルームの時間で、新学期にはよくある隣同士の自己紹介というものの最中だ。それにしても驚いたなぁ。まさか隣が提督なんてさ。そのせいでその1日何したかよく覚えてないですもん。……提督の記憶がないのな残念だけど。

 

 というか、これは相手を不快にさせないように意識しまくりの愛想笑いだね。知らない人から見ればこんな笑いかたなんだで終わるけど、知ってれば心からのモノじゃないとよく分かってしまう。

 

 まあほとんど初対面に何を求めてるんだと言われればそれまでの話なんだけど。

 

「まぁ人数は少ないけどそれなりに。七草さんは?」

 

「朧、編入生なのでまだ入ってないんですよ」

 

「……編入って、珍しいな」

 

 そうですね、と相づちしながら彼の顔をばれないように、でもよく観察する。

 

朧のよく知る提督と一緒の声、顔、仕草、性格。上げればきりがなくて、それがどうしようもないくらい寂しかったり。

 

「あ、でも一応陸上部だったのでこっちでもそうしようかなと」

 

気を取り直す意味も込めて先程の話の続きを始める。

 

「えっと、種目は?」

「短距離ですよ」

「……速かったりするのか」

「うーん…それなりに速い方ですかね……多分」

「そこは多分なんだな……」

 

 朧の口癖にツッコミを入れる提督を見て、昔もこんな会話したことあったなあ、と勝手にノスタルジーに浸る。

 

 ……いや、昔だけじゃない。今も、これからもそれを目指さなくちゃいけないですね、絶対。

 

 

 あ、そういえば曙ちゃん提督の部活凄く気になってたし、提督は釣り同好会って教えてあげなきゃ。

 


《曙side》

 

 来てしまった……!!

 

 私は現在廊下で震えだしそうなくらい緊張している。

 

 何故か?

 

 それは朧から聞いたクソ提督の所属している同好会の部屋前にいるのが原因だ。

 

 ま、まぁ私は別に興味なかったんだけど……あのクソ提督はどんな部活にいんのかしら、ってさりげなく呟いたら、朧がわざわざ教えてきたのよね。中学同様3年間帰宅部で終わるのもなんだし!折角だから!人も少ないこの同好会に入っちゃおうかなあって!この震えだってあれだから、今からどう貶してやろうかの緊張感だから!

 

 漣からは趣味の釣りの話をクソ提督と出来るとか最高だねぼのぼの、とか言われたけどそんなこと考えたこともないから。

 

 ないから!

 

 深呼吸して調子を戻し満を持して扉を開けると中には……本当にクソ提督がいて、此方を見たと思えば少しの間フリーズする。

 

 ……あんま見られると恥ずかしいんだけど。

 

 堪えながら、流石に今世は先輩と後輩ということで取り繕った敬語で彼に話しかける。私もそこら辺は考えているのだ。

 

 私はクソ提督に導かれるまま椅子に座りながら我ながら完璧な掴みだと自画自賛する。

 

 

 ていうか漣は初っぱなからご主人様はやらかしすぎなのよ。久しぶりですで止めとけばよかったのに……確かに私達は前世で戦争が終わったあと、こいつとは一緒にいれなかった…はずだから、こいつを見つけて有頂天だったのは……す、少しは分かるけど。

 

 グラウンドの喧騒を余所に軽く自己紹介を交わす。無駄だと分かっていながら下の名前を強調して。

 

 バカだなと思い自嘲していれば、クソ提督はこっちに用があるのか向かってきた。

 

 なんか足震えてるし。危なっかしいけど大丈夫かなぁ。

 

 そして、心配していたら案の定躓いてバランスを失ったクソ提督はこちらに倒れんできた。気になって後ろを向いていたせいでしっかりと向かい合いになるというおまけつきで。

 

 

 

「……っ~!!!」

 

 顔が、脳みそが熱くなる。冷静な判断など燃やし尽くすように。

 

「わ、わる――」

 

「とっとと離れろ!このクソ提督!!!」

 

 ……あ

 

 鳩が豆鉄砲を喰らいまくったような顔で停止するクソ提督を見ながら、後悔と取り繕う必要がなくなったことによる少しの解放感を覚えるのだった。




最近スマホの調子が悪くてつらい
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