魔法少女まどか☆マギカーanother mindー 作:ナハトムジーク
「さっきから聞いてればあんたは恭介を騙せって言ってるようにしか聞こえないんだよ! 確かに恭介は大切な幼馴染だけどそんなんじゃないってさっきから言ってるでしょ!?」
「さ、さやか、落ち着いて……」
ま、まずい。さやかが暴走状態になって来た! このままじゃまずい!
「さやかって何!? あたしはあんたに名前で呼んでいいって言った!?」
「それは言ってないけど……」
ぞわり……
急に俺の首筋に虫が這いずったような、頭の上から水が滴り落ちたような生理的恐怖を覚える。
「じゃあ、止めて! 馴れ馴れしいの! 一回あたしを助けたからってそういう関係になったつもりだった!?」
「え?」
どうしてだ? 何でそういう事を言う? もうコミュニティは成立してるんだぞ?俺達はもう友達じゃなかったのか?
「あんたなんか……」
や、止めろ……
声が出ない。
「あんたなんかぁ!」
言われてはいけないと心の奥底から声がする。だが、さやかを制止するすべを俺は持っていない。こういう時どうすれば良いかという"知識"が、止めろと言える"勇気"が、さやかを諭す"伝達力"が、その言葉を包み込む"寛容さ"が、そう言われてもさやかと友達だと思える"根気"が俺には無い。
「友達でも何でもないんだから!」
「あっ」
深い喪失感に襲われる。とても……とても大切な物を失ったような気がする。しかも、二度と戻ってこない。そんな確信がある。
「うぅ!」
足元がおぼつかない。まるでボールの上にでも立っているかのようだ。涙が自然と溢れてくる。ついには座り込んでしまった。
「さやか……ぅ…ひっく……」
おかしいな……いつもだったらこんな事無いはずなのに……この程度で泣くような歳じゃなくなった筈なのに……
「どうしてか……涙が止まらないっ……」
さやかが戻てくる前に帰らなきゃ。こんな顔は見せたくない。
俺は立ちあがってトボトボと逃げ出した。
Break!
暁美ほむらは"戦車"のアルカナを失った。
それからの俺はこの世界を諦め、残りの日数を無意味に過ごすことに決めた。もうすでにグリーフシードは手に入れている。当初の目的は果たした。それに美樹さんと顔を合わせずらかったと言うのもある。
4/5日
上条恭介が登校してきた。同日昼、クラスメートの志筑さんと美樹さんが一緒に出ていった。たぶん、志筑さんからの宣戦布告だろう。帰って来た美樹さんは俺に何か言おうとしていたが、すぐに思い直して席に着いた。
4/6日
深夜。俺が眠りに就こうとしている時にそれは起こった。
Break!
暁美ほむらは"星"のアルカナを失った。
「え?」
急に沸き起こる喪失感。わかる。わかってしまう。
「……ごめん。まどか」
こうなる事は分かっていた。たぶんさやかは今回はソウルジェムが穢れきって魔女になってしまうだろう事も、魔女化の事を知ったマミがまどかを殺すことも全部分かっていた。それなのに俺は拒絶されるのが怖くてさやかを助けようとしなかった。
「ほむらも……ごめん。まどかを救えなかった」
俺は急に俺の目の前に現れたソウルジェムと盾に向かって言う。
「でも、次こそは頑張ろう。俺とお前の絆の力で……それしか残らないから。それだけで戦わないと」
俺はほむらのソウルジェムにグリーフシードを当てる。すでに黒だったグリーフシードがソウルジェムの穢れを吸って更に黒くなる。だが、ソウルジェムはまだ少し濁ったままだ。
「飛んでくれ、もう一度、まどかを救える日まで」
盾の歯車が動く。このループは終わり、また新たなループが始まる。"死神"のアルカナが示したように何度も、何度も。
Break!
暁美ほむらは"女教皇"のアルカナを失った。