渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】 作:PureFighter00
格納庫に上半身裸の男がいる。
カシャンという軽い音がすると、自衛隊じみた戦闘服の男である事がスポットライトに照らし出される。ワセリンでも塗ったのか鋭く切れ込んだ背面の筋肉はテカテカで、細身の身体は各所の筋肉が躍動していた。
男が振り返り、親しげに話す。
「やぁ、陸さんだよ。君の筋肉は暇してないか? 鍛えてる?」
タイトルが下からどん!
「陸さんと振り返る有志連合戦」
スコンブ君は極めて一般的なGBNプレイヤーである。中高生の頃には前身となるGPDで遊んだりもしたが、当時の彼にとって一戦する毎に安くても300円のコインとガンプラが一機必要になる遊びは経済的にかなり厳しく……もちろんそれでも流行りだから遊びはした。したが、腕が上がる程やり込める訳でもなく、遊ぶにしても素組でそれなりに見栄えはするガンプラを仲間と前日に組み立てて、派手にぶっ壊されるのをネタ的に楽しむ程度だった。
ゲームプロバイダー側も安価なSDガンダム主体とした大会を開催したり、改造による性能向上を制限したり、ガンプラにバトルチケットを添付したりしたが、流れは変わらない。一部のガチ勢は改造しまくった愛機を使い、或いは平成末期に見られた様にセミプロの組み立てたガンプラを購入して戦いに挑んだが……綺麗に磨き上げ塗装されたガンプラが見る間に破壊される「戦って見た」動画が流行り出すと……段々と、段々とプレイヤーの心は離れて行った。
時代の要請ではあったと思う。ガンプラの破損が一時的なものに収まるGBNが流行ると多くのプレイヤーはそちらに移った。正直それはコスト部分の問題が大きい。一戦ごとにガンプラ一機を消費するGPDはガンプラを売る企業的には「ガンプラの消費を促す」という点で大変理想的だが、ガンプラを組み立てるユーザーのニーズには合っていない。
そんな流れでGBNにたどり着いたスコンブ君は、フォース加入前はパチ組みガンプラで雑に戦うプレイスタイルをとっていた。GPDの一時的な隆盛によりガンプラはさっさと組み立てて実戦投入するものになっていたし、素組でも鑑賞に足るガンプラの開発がそれを加速させていた。戦う時は素組でそこそこのステータスを取れる機体を選び、幾つかの素組を用意してミッション毎に使い分けていた。Gチューバーはガンプラ毎に性能評価や最適ミッションを教えてくれるし、一部のGチューバーは簡単な改造も教えてくれた。外さ無ければ誰でも上手くミッションクリアは出来るのだ。それがゲームではなく……定石なぞった作業に落ちるとしても。
それで満足出来ていた。渦さん達に会うまでは。
奇妙な人たちだった。いい大人が「次はこうしてみよう、次はああしてみよう」と試行錯誤を楽しむのは奇異に見えた。なんでそこでEGガンダムを使わないのか。彼方のミッションの定番はズゴックではないのか。
最適化されて検証され尽くした王道ではなく、各人が好き勝手に効率無視して遊んでいる。しかもそれでミッション失敗したりもする。時間の無駄と野良パーティ組む前に抜ける奴も多い。そして渦さんたちはカッコいい改造機体を持ち、操作もかなり上手いのにいつまで経ってもダイバーレベルが低かった。低レベルミッションで遊び過ぎだ。下手したらこの人らミッション適性最低機体でクリア目指したりする。
「ガチ勢なんですか、エンジョイ勢ですか?」
と尋ねてみた事がある。アライアンス組んでちょいちょい気分転換してた頃だ。「ガチにエンジョイする勢だぞ」とはぐらかされた。じゃあ3on3(3人チーム同士での対人戦)やろうぜ!と誘われて、ホイホイ引き受けた僕らはカモだった。
攻略法が分かってて、解法が分かったミッションを小器用にこなせるだけの僕らは渦さんたちにボロ負けした。定番を調べずテキトーに遊んでた渦さん達は、咄嗟の判断が凄い。定番の無い対人戦では如実にそれが出た。ガチだと思ってた僕らは全然ガチじゃなかった。海さん曰く「熟練工ではあると思うよ。工場の」だそうだ。
「兵隊じゃないよな」
渦さん達は何度も同じミッションを「メンツや機体を変えて」遊んでた。後々バラされたが、まだガンプラ操作もよく分かってない素人を言葉巧みに指揮してミッションクリアする遊びをしていたのだとか。
「動きが読めない若い子動かすのは楽しい」のだそうだ。意外性がある、とも。
「ゆーこと聞かないヤツぁー何処にもいるしねー」
「いい人材なんて、SSR引く様なもんだよ」
「うっわ、使えねーって奴を使うのがオトナ☆」
逆の意味でガチだった。彼らは指揮訓練の為に低レベルを維持してた。強いやつは強いからほっとけば敵倒す……まぁそりゃそうだけど。
例えば彼らのフォースの桃さんとかは突撃バカだ。よく分からない機体を駆って勝手に死ぬ。その彼に重火器仕様の鈍重な機体を当てがって、突撃やらせない様にする。回避しないから当たっても直ぐには死なない機体を当てがう。
「説教しないんですか?」
「説教なんてしょんぼりさせるだけで無駄だぞ。個々の特性考えて「実戦で役立てる」のがマネジメントって奴なんだぜ!」
ああしろこうしろとは言わない。ただ疑問には答えて導く……彼は次第に……次第に変わって行った。多分、僕も。
「突出しすぎー☆」ばきゅん。
僕は味方ばかり撃っていた。対マスダイバー有志連合戦。渦さんの予想通り、洗濯機の中の洗い物の様に戦場は混乱してた。傍目から見たらわかる……若い子ほど武器レンジを考えずに突っ込んでいく。当たらないから当たる距離まで近付くのは当たり前だけど、そりゃ回避できる奴のやり方だ。ビームライフルの威力をトコトン下げて威嚇する。彼らは脅威度の査定もせずに全部避けようとする。そんな子は前線出たらダメです。狙って撃ちましょー。
格闘機が張り付いて敵の集中を消費させ、他からの弾で意識を逸らした瞬間にスナイプ。弱装でも目眩し程度にはなるし、その隙見逃す程格闘機は甘く無い。というか、頭に血が上って手加減ないね、素敵だね。
このマスダイバー、確かに強い。強いが機体性能高いからってゴリ押しし過ぎ。連携とかしないで戦う様は正に呂布。兵の中の兵かもしれないが、将でもなく軍でもない。
「じゃー僕ちょっとアレ弄って来るんで、後ろ向いたら斉射おなしゃーす!」
螺旋を描きながらゆるゆると進む。常に推進軸を2軸で変化させながら、アクセル操作で緩急を付ける。NPCはやらない機動だ。こうなると狙いづらくなる。当たらぬ弾をピシュピシュと放つと格闘機が闇雲に攻めて来て、デキるマスダイバーさんはより脅威度が高い格闘機に集中せざるを得ない。
格闘機の後ろをパスする時に、グッとワザとらしいフェイント掛けるとマスダイバー機の視線が一瞬僕を追う。
「中身は変わらず人間だからな。視界内の素早い動きを「注視する」なんてのは余程訓練しないと消せないモンよ」
訓練バカの陸さんは訓練の効果を知っている。英語も英語筋鍛えたら喋れるぜ!とまで語る陸さんは、鍛えない奴の挙動を熟知してる。
脅威度が判定できる程度に頭が良く、反射行動を抑えられない程度に訓練されてない……反射に自信のある奴が陥り易い陥穽、だとか。そこに付け入る隙がある。
「なんぼ鍛えても腕は2本、足も2本。出来ることは限られる」
「敵の機体を障害物にして周りを占領しろ」
格闘機が虚を突いてというか、闇雲にサーベル振り回して攻撃する。僕は回り込んで肩に足掛けて(割とポイント。ムカつくw)マスダイバー機後頭部にビームライフルぶち込んで、肩を蹴り飛ばしながら離脱する。丁度離脱する姿が「彼に見える様に」加速しつつ離脱する。
「逃すかぁ!」
死にフラグごっつぁんです!「離れてー」と伝えたが、格闘機君逃げてくれるかな?
5発ほどビームが飛ぶ。後方射撃部隊の砲撃だ。視界内の速くて大きい動きには反応したくなり、遠方の小さな動きは無視されがち。NPCも同じパターンで動くけどね。マスダイバー氏も機体が強力なだけで挙動自体は変わらない。つまり、いつも通り「僕らのカモ」だ。
砲撃に耐えようと姿勢を固める。僕のこと忘れちゃったの? 酷いや……えぃっ!☆
あ、格闘機君巻き込まれた。勇敢な戦士に敬礼☆
ナイフムーブナイスショットナイスタクティクス!
良く戦闘筋を鍛えたね!(陸さん談)
3300文字(ウチの1話平均の倍)書いてみた。ある程度文字数あった方が良いなら描写増やしますが、どーか?(必然的に文字密度が上がりウケにくい文体になるんだけど)