渦動破壊者 〜アーマードジム〜【とりあえず完】 作:PureFighter00
「ビルドダイバーズって何者? あれチートじゃないの?」
「光の翼を00でやる……分からなくも無いけどあの翼はどっちかと言うとVガンじゃね?」
「バグなのかなぁ。やたら強いし」
荒れては居ないが騒ぎにはなった有志連合戦。割と皆がすなるブレイクデカールでも明らかだが、GBNプレイヤーは損得や強さに拘る。まぁ読者諸兄もご存知であろうが、ネトゲやソシャゲというのは収益構造として「強さを煽り」がちであり、そこへの執着がバグ利用やチートに手を出す主原因と言っても良い。特にチートは渦さんの様な古参ネトゲプレイヤーからは蛇蝎の様に忌避されるが、近年ではUGC小説界隈で「ギフトとしての異能」扱いされ若年層への悪影響が懸念される。
本来はゲームというのは競技であり、定められたルールの下で楽しむものだ。その中で競技性を高めるためにルールがあるのだが、近年のゲームではルールにより競技性を高めるよりも、運営側の収益性向上が求められがちではある。割と本気で運営側がチート対策を行うのは「強さを収益化しているから」であり、チートが収益を悪化させるからと言えなくも無い。事実ガンブレモバイルではV2.x系で強さに関係ない機体カスタマイズ記憶機能に重大なバグが存在したが、課金要素であるにも関わらずバグ修正は遅れた。
この様な状況はこのビルドダイバーズ世界でも見られるもので、実は比較的という修辞は付くが「ここはまだマシ」である。しかしやはり極論を申す者はどこにでもおり……
「違法改造じゃねーの?」
恐らくは規則に抵触すると言う意味での発言だろうが、ゲームでインチキする程度のことを日本国の法体系では規制していない(無常) 厳密に言えばプログラムという著作物への干渉とかで違法判定は取れるかも知れないが、安易に違法と言える様なものではない。事実違法で検挙可能な刑事罰ありの行為であるならば、サイバーポリスがノリノリで検挙しにやってくる。あくまで私契約での違反に過ぎず、公権力が猛威を振るう事はない。
不公平感や(実際に不利益を被る事は稀なんだが)損した気持ちが募り、勝ち負けや損得に拘る人間が増えると人々は錦の御旗を持っているが故に暴発する。十字軍が発動してしまうのだ。ある意味過日の有志連合にもその要素はあった。
その様な状況下で羨望は妬みに、拗けた優越感は嘲笑へと姿を変えがちだ。それが年若き人々なら、尚。
「お前んとこのメンツ、違法じゃね?」
ビルドダイバーズのユッキーは困惑していた。自分が引き込んだリク君が異常な速度で強者になっていく。元々何事も卒なく熟す器用さはあったが、先の有志連合で派手に光の翼でバッサバッサやって目立ったのが裏目に出た。そして実際敵わないからリクやアヤメへの非難は目立たず、言っても響いてる感の無いサラちゃんは言うだけ無駄だし、実の所十数人規模の親衛隊が組織されているので下手な干渉は悲劇を生む。
この様にして平凡な中学生であり、量産機好きという難儀な性癖を抱えたユッキーは1stガンダム終盤のGMの様に嬲られていた。悲しいことにTV版準拠で映画版における板野の動画補正は無かった。基本的にビルドダイバーズの中心人物のリクがGBNの接続を2時間以内に制限しているため、このフォースの仲間が集まる時間は短い。そして他メンバーとの実力差を痛感したユッキーはメガネ君らしいメガネ理論で自主練をしている。決してプレイが悪いわけでは無いのだが、親友に対する仄かな劣等感、周囲の心無い言葉、隣にサラちゃんが居ない引け目(当節では小学生でも彼氏彼女を作るのが普通らしい。よく見ると男女ペアで手を繋いで登校する小中学生は散見される)……様々な要素が心を掻き乱していた。
「んー! 悩んどるな悩んどるな人として! いいぞ少年悩め悩め! みーんな悩んで大きくなったんじゃい!」
野良で渦さんに出会ってしまった。割と歳食ってる割に初心者エリアで遊び呆けている変人だ。コスパが悪いと一部プレイヤーからは忌避され、初心者層からは(偶に)勝たせてくれる変な人として名高い怪人物である。
「悩み無さそうでいいなぁ。気楽になりたい……」
「何があったよ? 話ぐらいは聞くぞ」
肝心な事を聞いてもつまらない。つか、つまらない話をされるだろう。ユッキーは心につっかえている事リストのかなり下位にあるどーでもいーことを話題に選んだ。
「ビームマスター、デブいとか言われちゃいまして」
本当にほんとーにどうでもいい事である。心底どうでもいい。
「? 太いか、あれ? ……そりゃ相手の見方がヘボいのでは……」
「基本構造は別に太く無いよな……」
「はい。武装盛りが良く無いのかな?」
「武装盛りは男の子の本懐ゾ。それを捨てるのはいかんやな。見せ方で誤魔化すという方法もあるが……」
「例えばこうだ。ジムIIIの基本構造部はオレンジにして、追加した部分の色変える。更に追加部は肥大化して見えがちだからオレンジの様な膨張色ではなく、寒色系に振って膨張感を抑える」
「ほうほう」
「腰に付けたバインダーの配置がかなり印象に影響与えてそうだね。配置位置変えて緩急付けるか」
「緩急って?」
「ユッキーは形の取り方上手いんだぞ。ボリューム設計はいい。ただ、それに囚われて細かなデティールが控え目になってる。大きな面の動きの隙間にチマチマを詰めると見栄えが増すぞ。対比を作るんだ」
「こんなんどうよ?」
「スッキリしましたね!」
「あれ? 渦さんこれは?」
「対MS地雷。さもガラクタの様な外観してて……と。ここからが本題だぞユッキー君!」
「ひゃい!」
「デザインや工作は良い。この膝とかかなり頑張ったな! キミの真面目な性根が透けて見える様だ……」
「あ、有難うございます!」
「しかしその見せ場をヒョイーとスルーさせる奥ゆかしさ、地味さ、なんちゅーかキミの「量産機しぐさ」が惜しい! なんで若者らしくハジけないのか。プロモデラーですらトゲトゲモリモリでハッチャケるのにっ!」
「イタく無いです?」
「中二でイタいのはしゃーない。それは誰も気にしないから気にするな。下手に中二の時に正しく厨二しないでハタチ過ぎたり40超えて厨二するからイタいんだよ。麻疹や水疱瘡みたいなもんだ。やっとけば抗体が出来て免疫が付く(断言)」
「そんなもんかなぁ……」
「で、周囲に気遣い小さくまとまる気質がビームマスターを弱くしている! 支援機作ったのに仲間は凄すぎて支援が出来ないのだろう?」
「うっ!」
「発想を変えるんだ。逆に仲間に支援させろ」
「た……例えば?」
「キミの構想では仲間が梃子摺る敵を支援火器でサポートする計画だよな?」
「はい、でも高機動なリッくんやアヤメさんの機体と戦うのは高機動な敵ばかりで……」
「布陣というものを意識させるんだ。キミを中心に陣を敷く。当たりにくいが当たると痛い武器持ちだから、敵は遮蔽物利用して近付くだろうねぇ?」
「まぁ、普通そうでしょうね。だから攻撃当たらないんですが」
「じゃあ、敵が隠れそうなトコに地雷敷設よ。当てるのではなく当たって貰おう……敵の意識が君に向いてると相手は軽く引っかかるぞ」
「酷い」
「当たらないなら当たる様にする。基本だ。本当は当たる距離まで近付けると良いんだが、近付くのが下手なら相手が自主的にこちらの攻撃に近付く様に仕向けたら良い」
「地雷、効くかなぁ?」
「近頃は足裏にスラスター付いてたりするからな。まさかスラスターを装甲化したりはせんだろう? 丸出しの噴射口など地雷にとっては旨味しかない。最悪機動性潰せる。当てやすくなるな!(悪い顔)」
「……戦術、か」
「そいつに皆を巻き込んでいけ。仲間の役に立つ様にではなく、仲間を使いこなしていけ。なんで君だけ仲間のフォローしなけりゃならんのだ。仲間がキミのフォローしたらいかんのか? リク君やアヤメちゃんはそれ程自分勝手な生き物か?
互いに利用し合える仲になんなさい。今君は利用されようされよう……他者から有能とみられたいという欲に凝り固まってないか?」
【ユッキー脳内心象風景】
(直撃被弾。消火班急げ!)
(3号隔壁閉めろ! このままじゃ誘爆する!)
(左舷弾幕薄いぞ! 近寄らせるな!)
(このままでは保たん! なんとかしろーっ!)
「ジムにもジムの役割があり、君には君の役割がある。それを取り違えていやしないかね? 君はリクやアヤメにならんでも良いんだ」
(ユッキー中破! 船体渦さん側に傾きます! 総員退避!)
「……そう言えばもう一つ相談したいことが……実はアヤメさんがブレイクデカールに絡んでたみたいで、連絡付かないんです……」
「な、何ィ!」
嗚呼主人公気質。今渦さんが一番欲しい情報がネギ背負ってやって来た。
渦さんモデルの布陣仕様ビームマスターはマジでユッキーとジム談義したいにゃーと思って作ったブツです。
5/17 ユッキーのリク君呼称を劇中設定に変更。